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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2013年10月


 「東京に逃げることにしたの」道立湿原高校卒業から二年、図書部の仲間だった順子から深夜に電話がかかってきた。二十も年上の職人と駆け落ちすると聞き、清美は言葉を失う。故郷を捨て、極貧の生活を“幸せ”と言う順子に、悩みや孤独を抱え、北の大地でもがきながら生きる元部員たちは、強烈に引き寄せられていく-----。

                       (双葉社HPより)


北海道の高校で同級生だった人やその関係者が1章ごとに語り手となり進む。
そして、それぞれの話のなかに度々登場するのが順子。
全体を通して、暗いかんじ。
これは前作の『ホテルローヤル』に似た雰囲気でした。
けれど、彼女たちの一生懸命に、それぞれの人生を生きている姿は力強いものを感じた。



<1984 清美>
高校を卒業して地元ホテルに就職。
営業社員として働くが、仕事は楽しくないことばかり。
ある日、高校時代の同級生・順子から、妻子持ちの男と東京に駆け落ちすることに
したと連絡を受け驚く。


<1990 桃子>
カーフェリー「シーラブ号」の乗務員として働く。
1年の2/3は海の上。
海の上だけの恋人・直樹は妻子持ちで同じ乗務員。
休みの日、東京の順子に会いに行く。
順子はラーメン屋を営む夫と幼い息子と暮らしていた。


<1993 弥生>
高校を卒業したばかりの若い従業員と夫に駆け落ちされた。
父から受け継いだ創業80年の老舗の和菓子屋を今は一人で営んでいる。
夫は東京にいるらしい。
離婚もせず、出奔したままの状況を変えるため、夫に会いに行く。


<2000 美菜子>
35歳で同じ職場の教師と結婚することに。
相手は高校時代の教師・谷川。
谷川は美菜子が高校生時代、同級生の順子から告白された経験がある。


<2005 静江>
東京に好きな人と出て行った娘の順子に会いに行く。
初めて会う孫の輝(あきら)は、国立大の工学部で学んでいるという。


<2009 直子>
看護師として働いている。
東京で暮らす同級生の順子が病で先が長くないと知り、会いにいく。



6人の女性たちの話をバラバラに読みながら、常にそこにある順子の存在が
気になってくる。
この物語の主人公は順子でしょうね。
高校を卒業して、和菓子屋に就職し、そこの菓子職人である男と東京に出て
二人で古い店舗を受け継ぎ、ラーメン屋を始める。
息子が生まれ、その息子も立派に成長し、最後は余命短い病に倒れてしまったけれど
幸せな時間は、きっと多かったんだろうな~。

駆け落ちされた側の和菓子屋の女主人・弥生が格好よかったなぁ~。
夫に会いに行き、どうなる?と思ったけれど・・・
「わたしも幸せになる。あなたも体に気をつけてね」と言葉をかけて去っていく。


ホテルローヤルよりもこちらの作品の方が、わたしは好きだな。


                          ★★★★★



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発行年月:2013年4月


悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ――。
7年前、25歳で死んだ一樹。
遺された嫁のテツコと一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフとの何気ない日常に
鏤められたコトバが心をうつ連作長篇。


                  (河出書房新社HPより)



義父・寺山連太郎と二人暮らしのテツコ28歳。
夫の一樹を7年前に癌で亡くした後も、義父との暮らしを続けている。
最初は、なんで?と思ったけれど・・・
連太郎の人柄が、なんとも良い感じで、そしてこの家のかんじが安らぎを生む
雰囲気。
こんな状況ならば、居心地いいだろうなぁ~。

そしてテツコの恋人・岩井の存在も良かった!
義父とテツコとも関わりを持ちながら、このまま家族になっていって
欲しいなぁ~と思った。

そして、亡くなっている連太郎の妻・夕子の物語も良かった。
連太郎と見合いをするまでの経緯としてからのこと。
やはり連太郎は素敵だな。


ラストの話「一樹」は、表題に繋がるエピソード。
一樹とテツコの出会いの物語でしょうね。


どの話も心が温かくなる物語でした。

木皿泉さんって、ご夫婦で脚本を書かれているんですよね~。
1952年生まれの和泉努と1957年生まれの鹿年季子夫妻。

はじめて手掛けたというドラマ「すいか」も大好きでした!!
小説は今作が始めてだそうですが、これからも小説ぜひ書いて欲しいです!!


                           ★★★★★




発行年月:2013年10月


 ここは天に近い場所なのだ——。『家守綺譚』以後を描く、心の冒険の物語。

亡き友の生家の守(もり)を託されている駆け出し文士、綿貫征四郎。行方知れずになって半年余りが経つ愛犬ゴローの目撃情報に基づき、家も原稿もほっぽり出して鈴鹿山中に分け入った綿貫を瞠目させたもの。それは、自然の猛威には抗わぬが背筋を伸ばし、冬には冬を、夏には夏を生きる姿だった。人びとも、人にあらざる者たちも……。

                   (新潮社HPより)


途中までは、植物に纏わる話が短編連作のように続く。
が・・・後半は、居なくなった愛犬・ゴローを鈴鹿の山のなかで見たと友人であり
菌類の研究者である南川から聞く。
そして、その山には、イワナの夫婦が営む宿があるとか?

鈴鹿の山へ出かける綿貫征四郎。
前作『家守奇譚』では、家のなかや庭くらいしか動きがなかったインドアの綿貫が
今回は、山のなかを歩き廻る、アウトドアの物語。


出会う人々(人とは限らないけれど・・・)も沢山。
掛け軸から度々、登場の高堂の出番は少なく最初は寂しいなぁ~なんて思いましたが
山のなかで出会う者たちとのやりとりが愉快。

人のようで、河童だったり、イワナだったり・・・・。
周りの人たちもそんな人だか、何者かよくわからない者たちとの共存を自然に
受け入れて生活している様が良い。

しかし、ゴローは山でどんなお役目をしていたのでしょうか??

表題の「冬虫夏草」は、サナギダケの話で出てくる。
南川が綿貫に説明した話をここに書きとめておこう。

サナギダケ=冬場、幼虫のうちに糸状菌の一種に感染し、菌糸が内部で増殖し
ちょうど、サナギになったときに体表を突き破って子実体が外に現れる。
根っこはサナギに繋がった状態。


実際、そんな不思議な状態の植物があるのかな?
後で調べてみよう。


今回も、多くの植物の話、勉強になりました。

物語も御伽噺と現実の中間のような、なんとも不思議なお話ですが
梨木さんの文章は、やはり読んでいて心地良かった!!


                           ★★★★★








発行年月:2013年1月


 青春の痛ましさを描いた名作『ボトルネック』の感動ふたたび!

この町はどこかおかしい。父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る――。血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて田舎町のミステリーに迫る。著者2年ぶりとなる待望の長編登場。

                 (新潮社HPより)



主人公のハルカ(中学1年生)の胸に秘めたいろいろな思いが強く伝わってきた。
父親が会社のお金に手を出し蒸発。
父親の再婚相手の母とその連れ子のサトル(小学3年生)と一緒に
母の故郷に引っ越して来た。

その土地には昔から伝わる「タマナヒメ伝説」があった。
タマナヒメは予知能力があったらしい。
そして、サトルにもそれに似た能力があると気づくハルカは、その伝説を
調べてみようと社会科の三浦先生に話を聞く。
三浦先生もその伝説に興味を持って他の土地から来たと言う。

そして起きる事件。
過去にも起きていたタマナヒメ伝説に関する事件。


事件の真相も気になったが、ハルカという少女の置かれた境遇を考えて
血のつながりのない家族と全く知らない土地に、それも不可解な事件が
周りに起きるという不安要素ばかりの状況で、よく頑張ったなぁ~と
褒めてあげたくなった。
冷静に起きたことを分析し、自分がどう行動するのが良いのか?考えて・・・

でも・・・・伝説についてはちょっとよくわからない部分あったな~。
伝説を受け継いで、ヒメ役を担う少女が役目を終えると自ら死を選ぶって・・・
なんで!?

ハルカの失踪した父親が最後は出てくるのか?と期待したけれど
出てこなかったなぁ~。
とても厳格だったという父親が、なぜ職場のお金に手を出したのか?
その辺も気になったけれど、分からず仕舞いなのが、やや消化不良気味。

でも、まあまあ面白かった。


血のつながりのない姉弟だけど、ホントの姉弟のように結構、言い合いしていた
場面が、微笑ましかった♪


                         ★★★




発行年月:2013年8月


あなたに逢いたい。命にかえても。


幕末の江戸で熱烈な恋を成就させ、天狗党の一士に嫁いで
水戸へ 下った中島歌子。
だが、尊王攘夷の急先鋒である天狗党は暴走する。
内乱の激化にともない、歌子は夫から引き離され、囚われの身となった。
樋口一葉の歌の師匠として知られ、明治の世に歌塾「萩の舎」を主宰し
一世を風靡した歌子は、何を想い、胸に秘めていたのか。
落涙の結末!

葉室麟氏絶賛!
女性はこれほどまでに恋を抱いて生きるのか。

                     (講談社HPより)



歌人・中島歌子の生涯を、その門下生であった三宅花圃が、語る。
花圃は作家として、その後活躍し、後輩には樋口一葉が存在していた。


樋口一葉の名は有名ですが、中島歌子と聞いても????
その師匠であった人の物語。

中島歌子は、後定宿の指定を受けている「池田屋」の娘として裕福な暮らしを
していたが、宿に泊まった林忠左衛門以徳に恋心を抱き、その恋を成就する
形で妻となる。
この辺りまでは、読み手も明るい気持ちで物語に向き合えます。
が・・・・以徳は、水戸藩士の侍。
時代は尊王攘夷を唱える若い侍たちがあちらこちらの藩にいる時代。
藩に迷惑がかかってはいけないと脱藩して、天狗党の一員としてその志を貫こうと
する以徳。
結婚して憧れの人の妻とはなったものの、離れ離れの日々。
そして、動乱に巻き込まれる以徳たち。

志のために、ほかのグループと戦ったり、敗れれば逆徒扱いで処刑。
その妻子までが囚われ、同じように処罰を受けるという厳しい時代。
歌子も囚われの身として、いつ命が絶たれるのかわからない状況のなか
生き延びる。
幼い子どもまでが斬首という酷い最期。
辛いことが続くと読むのも苦痛になってきましたが、これが歴史なんだと
我慢して読みました。

辛いなかでも恋しい人を想って歌を詠む女たちが哀しい。


牢から離れ命からがら生き延びた歌子のおかげで、今日まで知られる
歌人や文筆家が育ったと思うと、よく生き延びてくれたという思いが
強く沸いてくる。
読み応え十分の作品でした!!


                         ★★★★★

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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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