発行年月:2013年9月
外界で行方を絶った兄を捜すため王国を出た姫君は、天を衝く塔が聳える未知の世界に降りたち、雑踏の中、一人の工員と出会う――どこまでも純粋、かぎりなく繊細な、下町の恋物語
(中央公論新社HPより)
読み始めの雰囲気は、異世界を描いたSFファンタジー小説。
でも徐々に何か違う。
え?そういう事だったのか?
主人公・エンノイアは王国の後継者候補にひとり。
一番の後継者は兄のヌースだが、今は王国に居ない。
外の世界に幽閉されている可能性がある。
エンノイアは、その兄を探し王国に連れ戻す使命を自ら望み王国を後にする。
そして、出会った杉本諒。
お供の者と逸れて困っているところを助けて貰う。
そして、次第にわかってくるエンノイアの居た世界のこと。
エンノイアは、静(しずか)という別名があった。
自分の居た世界の知らなかった事実を知る。
そして、杉本の助けで兄に再会するが、兄は王国に戻る気はなく、静にもここに
とどまるように言う。
そして、静は、ある決心をし王国に戻ると決める。
物語は、ここでお終い。
この後の静の行動が気になる。
続編があるかな?
あれば読みたい。
★★★★
発行年月:2013年9月
過去に愛した、今は会えないあなたへ――
『欲しいのは、あなただけ』『美しい心臓』……恋愛の真実を追い求め続ける著者による鎮魂歌。「未来から現在へ、現在から過去へと時の流れを遡り、立ち上がってくる記憶と声に身をゆだねながら、愛しい人の不在を、私は「存在」として書く――」職場の後輩だった女の子、はじめての仕事をくれた編集者、何通もの手紙をやりとりして別れた人、若くして旅だった詩人、亡き祖母、大好きな仕事のパートナー……亡くなってしまった、音信不通の、今はもう会うことのできない人々への思いを、記憶だけをたよりに綴る私小説的短編集。
「雪と炎の記憶」「赤いりんごと肩に置かれた手」「死に魅入られた詩人」「菜の花畑に立っている人」「まるで活字のような文字」「死は美しい」「私につながる戦争の記憶」「四羽めの小鳥たち」「約束は生きている」「一九八八年の別れ」「心におりてきた闇」「私の家の鍵」「誕生日」「たまご八個の玉子焼き」「ふたつの時計」「空席」の16編を収録。
(実業之日本社HPより)
これは、著者自身の近い人のことを想って書いているのかなぁ~?
どの話も、良かった。
今は会うことが出来なくなった人たちとの思い出を語る話が多かった。
そんな16編の話のなかで、ちょっと違っていた「四羽めの小鳥たち」は
なかなか衝撃的だったなぁ~。
自然界で生きる動物たちの生命を描いたお話でした。
りすが小鳥を・・・・・の描写は残酷だったけれど、他者の命を奪わなければ
自分が生きていけないのは、人間も考えてみれば同じかも。
スーパーで買う食材だって、元は命があったものなんですよね?
そんなことをふと考えてしまいました。
「たまご八個の玉子焼き」でのおばあさんとの思い出話が好きだった♪
あとは、「死は美しい」。
これは12歳で投身自殺した少年が遺した『ぼくは12歳』の詩集をいくつか
紹介しながらの話。
わたしもこの詩集は10代の頃に買って読んで衝撃を受けたので、
今、この年齢で読んだら、どう感じるのか?再び詩集を手に取りたくなった。
読みながら、いろいろと考えることができる短編集だったなぁ~。
★★★★
発行年月:2013年12月
新たな警察小説ミステリの誕生!
思わぬ不祥事のあおりを受け、まさかの警視庁捜査一課に配属されることになったキャリア警部、道定聡。
変わり者の美人刑事・山口ヒカルとコンビを組まされ、戸惑いながらも5つの難事件に挑んでいく!
主人公は道定聡25歳。
東大卒のキャリア。
群馬県警総務課長として実務に励むが、部下の汚職事件の責任を取らされ本庁送り。
警視庁捜査一課強行犯三係に配属される。
そして、事件解決のため、捜査に当たるパートナーは山口ヒカル28歳。
容姿は、身長175cmでモデル並みの美貌。しかし・・・勤務態度はいい加減。
警視庁一のやる気のない刑事。
しかし、ある事件には、やる気を発揮し、普段とは全く違う能力を発揮。
凸凹コンビの会話が笑える。
第一話から五話まで5つの異なる事件の捜査をする二人。
やる気はないけれど、勘は冴えてるヒカル。
キャリア警部の道定には、タメ口というか、おちょくってる^m^
東大卒のエリートなのに偉ぶってる感じが全くない道定もいい。
このコンビ、案外いいかも~。
事件の内容は、大したことないけれど、二人の会話が楽しいから
最初から最後まで退屈せず、スラスラと短時間で読みました。
もしかして、シリーズ化されるのかな~?
凄くおもしろいわけじゃないけど、続きが出るのなら、読んでもいいな。
★★★
発行年月:2013年11月
非番になると必ず祖母から商店街の相談事を持ち込まれ、いつのまにか解決のために奔走する羽目になる若手刑事のほのぼの事件簿。
(ポプラ社HPより)
前回の『花咲小路四丁目の怪人』は、老紳士がご近所の謎解きをしていましたが、
今回は、新米刑事・赤坂淳が、謎解き人。
祖父母が営む「和食処あかさか」に居候しながら、非番の日に、主に祖母から
頼まれてご近所の謎を解いていく。
<猫騒動><天国からの手紙騒動><ティーラードメイド騒動><檸檬騒動>
そして最後は<あかさかでの騒動>
事件解決にちょいちょい絡んで来る、三家あきらは何者?の謎もなんとなく
解けて、淳とちょっと良い感じになっていくのも楽しかった。
花咲小路って何丁目まであるんだろ?
少なくても、2丁目、3丁目はあるはず。
ぜひ、その話も読みたいな。
気楽なかんじで、アッという間に読み終えました♪
★★★
発行年月:2014年1月
武将の妻たちの凛とした姿
徳川頼宣に嫁いだ加藤清正の娘八十姫の秘話、鍋島直茂の妻と姑の間のふとした会話、伊達家から立花へ嫁に来た母の実家への想いなど。
(文藝春秋HPより)
今回は、短編集。
豊臣時代の末期から江戸時代(島原の乱あたり)までに生きた武将の妻たちの物語を
7編。
時代の波に翻弄されながらも、そのなかで強く自分の信念を持って
策略的に嫁ぐ場合も多かった女性たちが秘めていた思いや、嫁いだ先で
感じることを史実に基づきながら、淡々と綴っていた。
淡々と語るなかに、女性たちの思いが強く伝わり、
過酷な状況でも常に凛として生きた女性たちの生き方がとても美しかった。
<汐の恋人>
戦地の朝鮮に居る夫に文を出した瀬川采女の妻・菊子。
その文が、秀吉の目にふれ、それが元で、菊子と会うことにする秀吉。
采女も戦地から秀吉の元に戻り、切腹か?という事態に・・・
<氷雨降る>
京の公家の娘でキリシタンのジュスタ(洗礼名)が島原半島に4万石を領する
有馬晴信の元に嫁する。
関ヶ原の合戦後、晴信は領土問題に巻き込まれ罪を問われるが、キリシタンは自死は
禁じられていると斬首を望みその通りになる。
ジュスタは二人の娘とともに実家に戻り、幕府がキリシタンへの迫害を強める中でも
宣教師たちに潜伏場所を与える。
<花の陰>
細川忠隆と千世の話。
忠隆は、忠興、ガラシャ夫人(玉子)を両親に持ち、千世は前田利家の末の娘。
ガラシャ夫人が石田三成の命を拒み自害した折、一緒に居た千世は前田家に逃れた
ことで細川家の非難を買い、忠興の手前、妻とは離れたままとなった忠隆だが
自身の気持ちは千世を責めていなかった。
二人は再び、ともに暮らすことを選ぶが、忠興の怒りをかうことになる。
<ぎんぎんじょ>
肥前の大名鍋島直茂の継母・慶銀誾如(けいぎんに)が亡くなる。
93歳の大往生であった。
その最期を看取った直茂の正室・彦鶴。
姑の顔をしみじみ見入っている彦鶴に侍女が草花の蒔絵を施した黒漆塗りの文箱を
提げてくる。そのなかには一通の書状。
<くいのないように>
加藤清正の娘・八十姫が徳川頼宜の元に嫁すことになる。
父・清正の当然の死を徳川家康の謀ではないか?と疑っている八十姫だったが
父が嫁入りのときに待たせよと用意してあった清正愛用の片鎌槍の意味と
自分のなまえの由来を知る。
<牡丹の咲くころ>
伊達正宗を祖父にもつ鍋姫が立花忠成の元に嫁ぐ。
当時の立花家は、伊達家にとっては格下。
忠成自身も身分が合わないと戸惑っていた婚儀ではあったが、二人は仲睦まじく暮らす。
その後、起きた伊達騒動。
<天草の賦>
1637年島原の乱。
肥後前島原と肥後天草の農民およそ2万8千人が蜂起した。
総大将は16歳の益田四郎時貞(通称:天草四郎)。
その天草四郎の命を救おうと奮起する万という女性。
時代の波に翻弄されながらも、どの女性たちも己の信念は強く持ち、
言いなりになるのではなく、自らが生きる道を切り開くのだというような
力強さも感じた。
本当に凛としていて美しい武将の妻たちの物語でした!!
表紙の絵が、いつもの葉室さんの書とは、違う雰囲気なのも好みです。
★★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;