発行年月:2006年6月
空と谷のあいだを列車が走ってゆく。ゆっくりと、人生の哀しみを脱がせながら。
切なく、懐かしく、優しい、珠玉の書き下ろし小説!
(ポプラ社HPより)
疲れた男をつき動かしたのは一通の手紙だった。
記憶の底に封じこめた故郷の町から届いたそれは
廃業が決まった映画館の最後の上映会を報せる懐かしい
百合子からの手紙だった。
あの百合子が、なぜ?
男は渓谷を走る小さな鉄道に乗りこんだ。
(本の帯文より)
主人公は、甲斐敬介。30代後半でテレビ制作に関わる仕事をしている。
世界中を旅してテレビ番組の構成も考える日々。
故郷を飛び出した理由は、そこに居場所がないと感じたから。
父親が絡んだ事故。その後の父と母の死。
故郷を遠ざけていたけれど、懐かしい人からの手紙で、思い出の映画館が
最後の上映をすると知り、故郷に向かう。
そして、そこに向かう電車の中で知り合った人たちとの交流。
たわいもない世間話から、名前が知られ、そして、父の話になり・・・。
避けていたかったことが、掘り返され最初は戸惑うが、その気持ちがだんだんと
変化していく様子がいい。
電車は、水害のため鉄橋が流されたことで先に進めなくなり、代替えのバスの
乗客たちは乗り換える。
そして、そのバスに乗りこんで来た人たちも敬介と同じ目的である
映画館に向かう人たち。
人と人との出会いは不思議な力を生むんだなぁ~。
初読みの著者だけど、プロフィールを見ると
宮崎県高千穂の出身。
ウィキペディアで高千穂鉄道をなんとなく調べてみたら。。。
2005年9月6日、台風14号による暴風雨で甚大な被害を受け全線運休となる。
その後、県や沿線治自体が復旧費用の負担に難色を示し再起断念。
とありました。
物語の舞台は、高千穂鉄道だったのかな?
たまたま図書館棚から手に取った1冊でしたが、こういう雰囲気を
描く作家さん、好きだな。
ノンフィクション物の方が多く書かれている様子なので、またそちらも
手に取ってみたいな。
★★★★
発行年月:1998年12月
僕はこの黒猫にロックって名をつけたんだ。
小さいのに、強そうで、プライド高く自由に生きてるって意味。
少女と少年、女と男の12のストーリー
(本の帯文より/」角川春樹事務所)
図書館棚から手に取り、猫の話?と思ったら12編の短編集でした。
猫の話は意外と少なかったなぁ~。
・雨のガードレール
・今日もブランコで泣く
・黒猫ロックは窓辺に来る
・HERO/ヒーロー
・星の並ぶレストラン
・ミスドン
・ルーキーたち
・放課後の匂い
・沐浴する幼い女
・YO-!
・愛を教えて
表題の黒猫ロックは、3番目のお話<黒猫ロックは窓辺に来る>で登場。
飼い猫じゃなく、ふらりと窓辺に現れる野良猫。
16歳のサトシの周りの人との人間関係にやや面倒臭さを覚えていて
ふらりと現れるロックと名付けた黒猫のことが誰より好きだと感じる。
ああ、なんか、こういう感覚わかる気がする。
男女のいろいろな関係を描いているけど、特に好きだったのは<ルーキーたち>
大学まで、野球一筋で会社入社も体育会系としては入った高山享。
新人社員研修で知り合った村上浩一と知り合う。
村上は、文学部卒で長髪のやせ形。
何もかも正反対な二人が妙に気が合っていくのが愉快。
社会人になると今まで自分の周りに居なかったタイプと知り合えたりするから
面白いんだよね~なんて思ったりして・・・。
ササッと読めて、それぞれ面白い短編集でした
黒猫ロックの長編みたいな話、ないかなぁ~。
こんな短い話だけじゃ猫好きとしては物足りないよ~。
★★★
発行年月:2014年2月
自分がまがいものであることは承知の上で、スーパースターになって2010年代を疾走することを夢想する堂上弥子(どうのうえやこ)。耳の中で鳴る音に連れられ、どこかに行きたいというきもちがつねにうねっていた鈴木笑顔瑠(すずきにこる=ニコ)。
北海道の小さな町で運命的に出会ったふたりの中学生は、それぞれ「ここではないどこか」に行くため、一緒に「仕事」で有名になることを決める。その方法は弥子が背後に回り、ニコが前面に出るというもの。最初の仕事は読書感想文コンクールでの入選。弥子が書いてニコの名前で応募した感想文は見事文部科学大臣奨励賞を受賞、授賞式にはニコが出席した。
ふたつめの仕事は、史上最年少で芥川賞を受賞すること。ニコの曽祖父の遺品の中にあった小説を弥子がアレンジして応募した小説「あかるいよなか」は、芥川賞の登竜門となる文芸誌の新人賞を受賞する。作品はその後順当に芥川賞にノミネート、そしてついに受賞の時を迎えるが……それは「てらさふ」仕事を続けてきた、ふたりの終わりのはじまりだった――。
てらさふ――とは「自慢する」「みせびらかす」こと。「てらさふ」弥子とニコがたどり着いた場所は? 女の子の夢と自意識を描きつくした、朝倉かすみの野心作。
(文藝春秋HPより)
いつも変わった物語を書く朝倉さん。
今回の話は、二人の少女・弥子とニコが、二人で組んで完璧なひとつの
「わたしたち」になるという目的のために、手段を選ばず有名になる方法を探り、
その目的を達成していく物語。
読書感想文で全国コンクールまで進み入賞したあたりまでは、よしよしよくやった!と
二人と一緒に喜べたけれど・・・・
その後の芥川賞の史上最年少を狙うあたりから、いいのかなぁ~?
そんなことまでして、大丈夫?と心配しながら読みました。
でも、二人だけであれこれやってきたけれど、有名になると、いろいろな人とも繋がりが
生まれて、そんな中から、ほころびが・・・。
結局、二人のしたことはほかの人にばれるのですが、ばれて良かった。
このままばれなかったら、二人は間違ったまま大人になって、取り返しがつかない
人生を歩んでしまうことになったから・・・。
まだ高校生。
二人は別々に違う道で正しい大人になってほしいなぁ~。
特に感動はなかったけど、面白い話だった。
★★★
発行年月:2014年3月
第1回角川Twitter小説コンテスト最優秀賞受賞作!!
痴漢をして捕まり、平和な日常を失った「俺」の居場所は、職場の片隅と家庭だけ。身を隠して暮らしていた「俺」だったが、他人の善意をきっかけにすべてが失われていき――。
ツイッター発の新たなる”文学”。
(角川書店HPより)
嫌な話だった。
それなりの学歴を持ち、教師としても優秀だった男が、電車内で女子高生に痴漢を
したことで、退職になり、その後はどん底の人生という話。
妻と就学前の娘がいる家庭の長なのに・・・
なんとも情けない顛末。
男性のことはよくわからないけれど、同じような状況の人は幾らでもいるでしょうから
痴漢をしたことの正当性なんて全くない。
改名して、引っ越して別の職場で再スタートを切るが、思わぬところから
過去のことが明るみに出そうな状況に追い込まれていく。
嫌な話なのに、読まずにいられないのは、文章が巧いからかもしれないけれど
あまり人には勧められない1冊だな・・・^^;
5歳の茉莉ちゃんが、この先、幸せな人生を歩めるといいんだけど・・・
それが一番、気がかりです
★★★
発行年月:2013年4月
旅、日常が新鮮に愛おしくなる角田マジック
●アジアは水で、ヨーロッパは石なのだ●旅の疲れは移動の疲れと言うよりも、野生の本能を始終使っている疲れなんだろう●7月のあたまにセールなんてするなら、金輪際、5月6月に夏物なんて買わないからな!●じつは若いときからずっとサザエの母、磯野フネに憧れていた。●毎日仕事中、ほとんど負け戦ながらチョコ衝動と闘い続けている。・・・・いずれも本文より。
(小学館HPより)
2つの章から成るエッセイ。
最初は「旅に思う」と題して13の話。
最初の話<はじめに世界があると知る>は、衝撃的だったなぁ~^^;
角田さん、おもしろすぎる!!
海外文学を読んでも、日本人の誰かだと思い込んで読んできたとか。
ホントかなぁ~?
そして大学生活に入って初めて、どうやら世界は私にいる「ここ」だけではなく、途方もなく広いらしいと、ほかの人がとうに知っていることに気づきはじめたとか。
ホントかなぁ~?
読みながら、思わずウソでしょ?そんなわけないよ~と突っ込み入れながら読んでいました。
で、ほかの場所に興味を持ち始めて、あちらこちら旅をするようになったのかなぁ~。
それはそれは沢山の国を旅していて、ビックリ!!
旅した国で、体験したことが独自の視点で描かれていて、楽しい。
次の「モノに思う」は、25の話。
お弁当の話は、お母様との思い出も。
既に他界されているんですね~。小学生~高校までお母様のお弁当を持参していたそうで
給食の経験がないんですね~。
セッセとお弁当づくりをされたお母様、大変だったでしょう。頭が下がります。
角田さんの金銭感覚的な話も出てきて、庶民的なその感覚には共感を覚えました。
ネットでの買い物は5万円未満やら。
わたしの場合2万円未満かなぁ~(笑)。
そして、文中に突然、「夫」の文字が出てきてビックリ!
結婚されたのを知らなかった~。
これからは、結婚生活の話もエッセイで書いてくださるといいな~
★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;