発行年月:2014年6月
母さんはなぜ、僕を捨てたの? 答えはきっと、盤の上にある。
母子家庭で育ち、幼いときに母に捨てられた少年・慶吾。孤独の中で囲碁に打ち込む慶吾の姿を、写真部の香田のカメラがいつも捕らえていた。香田の屈託ない態度のおかげで徐々に心を開いた慶吾は、それまで避けて通ってきた母の家出の理由と向き合おうとするが……。囲碁を通じて自分を取り戻す青春ミステリ。
(新潮社HPより)
母親の帰りを待つ5歳の慶吾。
約束の日に、帰らず、空腹と寒さで外に飛び出し、犬小屋の犬に温めて貰い、犬の食べ残しの
食事で飢えを凌いだ。
最初の話で、これはいったいどういう物語になっていくのだろ?と先を読むのが
楽しみになった。
その後、施設に入所して18歳で高校卒業と同時に1人暮らしを始める慶吾。
あまり人とはかかわりを持たずに居た慶吾だが、高校時代、
前に現れた香田純隆が彼の人生の転機になる。
純隆は1学年下で写真部。慶吾の写真を撮るために毎日のように囲碁部の部室に潜入。
明るくて屈託のない純隆。
最初は、疎ましく思っていた慶吾も彼のペースにはまって会話をするようになり
放課後一緒に過ごす時間も増えて行く。
あるとき、ちょっとした口論になり、少し距離が出来てしまった時期があったけれど
その間に二人がそれぞれのことを思う行動が良かった。
慶吾は、純隆が好きなコーラを毎日、買って冷蔵庫に。
純隆は、囲碁を習いに碁会所に通っていた。
そして、ずっと心の奥にあった「なぜ、母は自分を捨てた?」の疑問を香田の助言も
あり逃げずに確かめる行動に出る。
5歳の慶吾の元に約束の日に帰らなかった理由はわかった。
けれど・・・施設に簡単に入れてしまった理由はよくわからなかったなぁ~。
でも、全体を通しては、良い物語でした!
友達って大事だなぁ~。
慶吾が純隆に出会って居なかったら、こんな風なラストにはならなかったでしょう。
囲碁に詳しい人だったら、もっと楽しめたでしょう。
その点はちょっと悔しかったな^^;
★★★★
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発行年月:2014年5月
終戦直前、焼け跡から助け出された赤ん坊。
長じて彼女はアメリカに渡り、人間の愚行と光をその手で切り取っていく―
著者の新境地にして最高傑作。
(Bookデータベースより/ポプラ社)
今まで読んでいた小手鞠さんの作品とは全く違う。
ノンフィクションに近いフィクションというかんじで、読み応え十分!
物語の主人公は、鳥飼茉莉江。
冒頭登場の美和子が、茉莉江の生き様を追う形で、物語が進行。
茉莉江は1945年焼け跡から赤ん坊の時、14歳の鳥飼希久男によって
焼け跡から救い出され、希久男とともに彼の叔母宅で暮らす。
その後、実母が訪ねて来て、10歳で実母と共にアメリカに渡る。
16歳の時、母親が自殺し単身ニューヨークへ。
知人の手助けでホテルに住み込みでアルバイトをさせて貰いながら、絵の勉強をしようとしていたが、それを続けるにはお金がかかると悩んでいた時、
日本人のカメラマン・坂木真人と知り合う。
カメラなら独学で学べると知り、カメラマンになりたいと思う茉莉江。
最初は美しいものを撮り続けていたが、ふと目にした写真に衝撃を受ける。
それは悲惨な戦地での写真。
写真を撮ったのは、岩井連慈。
その後、クリスマスパーティの会場で偶然、連慈に会い、その日のうちに意気投合。
二人は恋人同士になり結婚も約束する仲になる。
が。。連慈には、日本に妻が居る。
茉莉江も報道カメラマンとなり、日本で1972年に起きた浅間山荘事件など
現地に向かい取材している。
他にも、三菱重工業東京本社ビル爆破事件、日本航空機墜落事故、ベルリンの壁崩壊
チェチェン紛争、そして9.11。
事件を追いながら、当時のことを生々しく描く。
知らなかったことも多々。
世界の紛争、戦争に、必ずアメリカが絡んでいることが9.11に繋がったのか?
社会派の小説とも言える本書。
主人公・茉莉江の言う、「世界は美しくないもので満たされている」の言葉が衝撃的!
茉莉江の報道カメラマンとしての潔い覚悟にも感動した。
今、平和な日本がこのまま平和で居られるのかな?
なんていう事も少し考えてしまった。
素晴らしい本でした!!
★★★★★
発行年月:2014年4月
真実は「悪夢」の中に隠されている――。幻惑の極致が待ち受ける道尾ミステリーの頂点!
あの女が、私の眼前で死んだ。かつて父親が犯した殺人に関わり、行方不明だった女が、今になってなぜ……真相を求めて信州の寒村を訪ねた私を次々に襲う異様な出来事。はたして、誰が誰を殺したのか? 薬物、写真、昆虫、地下水路など多彩な道具立てを駆使したトリックで驚愕の世界に誘う、待望の書下ろし超本格ミステリー!
(新潮社HPより)
大槇辰男は離婚し、一人息子の俊也と定期的に会っている。
そして、出張のため、息子を預かって欲しいと頼まれる。
辰男には、32年前、体験したあることが元で見る悪夢に苦しんでいた。
そして、その32年前かつて住んでいた村から行方不明になっていた女を駅のホームで
目撃し動揺する。が・・・・次の瞬間電車に飛び込み轢死。
物語の最初から謎が生まれ、期待度が高まりました。
32年前の真実を求めて、信州のかつて暮らしていた寒村を訪ねる辰男。
預かった息子・俊也と共に。
昔からの村のしきたり。
村に起きた事件の噂話。
現実の話のなかに辰男が見る夢が混ざり、謎がより深まる。
事件の真相は、明かされてみれば意外とふつうでした。
悪夢を見ることが、もっと深く絡まってくるのかと思っていましたが・・・・^^;
ま、途中の何とも言えない不穏感を増強させる役目は果たしたからいいのかな?
話の展開は、複雑に広がりますが、最後にそれを収束させる力は、やはり流石!
暗くて重いたい話のなかに、俊也くんの存在が癒しになっていた。
ぎこちなかった辰男との関係も、良い感じになってきたし、辰男も悪夢から
解放されて生きる希望を持てるかな?と期待させるラストに救われた。
★★★
発行年月:2014年3月
放蕩の末、家族に見捨てられた祖父の背中に、孫娘は長い時間のただならぬ気配を感じていた。
人生最後の日々を過ごす老人とその孫娘の静かな同居生活を描く「寝相」。失業中の男、元女番長、なぜか地面を這うようになった小学生が織り成す異色の群像劇「わたしの小春日和」。奇妙な美しさを放つ庭を男女四人の視点で鮮明に描き出す「楽器」(新潮新人賞受賞作)。目を凝らし、耳を澄ませるための三つの物語。瞠目のデビュー作。
(新潮社HPより)
3編からなる本。
どれもなかなか面白かった。
<寝相>
27歳のなつめは築39年の古い家に住んで3年半。
そこに母方の祖父を一緒に住まわせている。
祖父・竹春は85歳。若い頃は、やりたい放題で61歳の時に妻は出て行った。
竹春には、娘・弥生(なつめの母)と息子・原郎(なつめの叔父)がいるが、竹春のことを本気で面倒みたいとは思っていない。
なつめにとっての竹春は、憎めないおじいちゃんなんでしょうね~。
若い頃の竹春の生き様は、関係ないところで聞くには面白い。
最後、竹春の元を離れた柿絵も元気で生活している様子が知れて良かった。
<わたしの小春日和>
仕事を辞め、職探し中の行夫。
妻・伊知子は、出版社勤務。
ささいなことで口論となり、試験的別居に入る夫婦。
行夫が実家に滞在することにする。
同級生たちとの再会。そしてちょっと変わった子で有名だった安西加代子。
地元に戻った行夫に、同級生たちとの交流が復活し、行夫の生活もなんだか動き出す。
この後、試験的別居は解消されるのかな?
なんとなく丸く納まったラストは、ちょっと愉快。
<楽器>
ちょっとした目的のため、毎年5月に、とある街を訪ねることが恒例化した
男女4人。
今年も出かけ、その先で広い庭を持つ1件の家で宴会をしている様子を観察する。
よくわからないうちにどんどん、登場人物が出てくる。
話があちらこちらに飛びながらで、ちょっと混乱したけれど、なんだか楽しそうな
4人の様子が良かった。
感想が書きにくいけれど、なかなか面白かった。
最初の<寝相>が一番好きかな?
この本の表紙も可愛くて好き♪
★★★
発行年月:2014年5月
そうなのよ、これがわたしたちのやり方だわ――姉妹の絶望的なまでの愛憎を描く「風」、15年の歳月を80枚の中で疾走する「二人の場合」他、特別な「関係」を描いた作品集!
(河出書房新社HPより)
3つの作品と、おまけのようにあった表紙裏の短編「予感」。
どれもそれぞれ面白かったぁ~。
<ダンス>
小さい頃から踊らなかった優子。
お遊戯会、フォークダンス、ナイトクラブ・・・踊らない方が不自然な場所で
頑なに自分を通す優子だけれど・・・
でも結婚して、子どもも生まれて、生まれた子が踊りが上手ってオチがなんだか
平和でいいなぁ~と思った。
<二人の場合>
大学を卒業し、希望の会社に就職した実加と未紀。
二人は営業二課に配属されるが、二人とも業績が低く課の落ちこぼれとして認識される。
入社時は希望に燃えていたのに、だんだんとそれが萎んで行く二人。
女の集団を見ると不快感を覚える二人。
二人のその先15年くらいを描く。
それぞれいろいろあっての今。
みんなこういう過去があるんだな。
<風>
広い緑地のなかの奥に建つ一軒家に引っ越してきた姉妹。
澄子58歳、貴子55歳。
大金持ちだった父が遺したその土地に住む姉妹。
二人は風が嫌い。
二人だけで閉鎖的な暮らしをしていたけれど、ちょっとした事から周りと関わる生活に
変化していく様子が楽しい。
3つの話に登場する、いろいろな女性たち。
最初は、変わってる?と思ったけれど、案外普通な人たちかも。
同じような事、誰も考えたりするし・・・
たまたま、出会った人によって、環境がそれぞれ違っていくだけかもね~。
★★★
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女性
自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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