発行年月:1986年2月
昭和25年7月2日未明、鹿苑寺金閣は焼亡した。
放火犯人、同寺徒弟・林養賢、21歳。
はたして狂気のなせる業か、絢爛の美に洵じたのか?
生来の吃音、母親との確執、父親ゆずりの結核、そして拝金主義に
徹する金閣への絶望・・・・・。
6年後、身も心もぼろぼろになって死んでいった若い僧の生を
見つめ、足と心で探りあてた痛切な魂の叫びを克明に刻む長編小説。
(新潮文庫解説文より)
先に三島由紀夫の『金閣寺』 を読み、三島の作品は事実を基にしたフィッション
なので、実際のところはどうなの?と疑問がわき、犯人の林養賢と同郷であり
当時の事件について、また、林養賢という人物像を綿密な取材によって書いた
こちらの作品を読んでみた。
著者も若い頃、寺の徒弟として修業した経験があるという。
しかもそこから逃げ出したとか。
犯人の養賢とも偶然、道で知り合いが一緒に歩いていたところで会い、言葉も交わしているそう。
いろいろな縁を感じ、金閣寺を焼くというとんでもない行動を起こした
養賢のことを詳しく調べてみたくなるのも納得できた。
三島の『金閣寺』での犯人像に比べると、大人しく吃音により蔑みの言葉や態度を
受けたことはあったそうだが、攻撃的にそのことに向かうというより、争いを避け
目立たぬように居ることを選ぶような印象であった。
ごく普通の青年だったのに、やはり金閣寺に実際入ってから、様子が変わってくるのが
わかり、その理由も、なんとなく理解できた。
実際に火を放ち、自死を試みるが失敗し、投獄されるのだけど、
その後も苦しみだけの生。
なんとも哀しい一生。
今、美しい姿で存在する金閣寺・・・今度見る時は複雑な気持ちになりそう。
しかし、こちらも読んで良かった!
★★★★★
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発行年月:2014年4月
小規模なテロが頻発するようになった日本。ひとつひとつの事件は単なる無差別殺人のようだが、実行犯たちは一様に、自らの命をなげうって冷たい社会に抵抗する《レジスタント》と称していた。彼らはいわゆる貧困層に属しており、職場や地域に居場所を見つけられないという共通点が見出せるものの、実生活における接点はなく、特定の組織が関与している形跡もなかった。いつしか人々は、犯行の方法が稚拙で計画性もなく、その規模も小さいことから、一連の事件を《小口テロ》と呼びはじめる――。テロに走る者、テロリストを追う者、実行犯を見下す者、テロリストを憎悪する者……彼らの心象と日常のドラマを精巧に描いた、前人未到のエンターテインメント
(毎日新聞出版HPより)
読んでいて、怖くなった。
小説のなかのことが、リアルで、実際にこんなことが起きても不思議じゃないかんじで。
短編連作の形で、色々な人の日常を描きながら、そこに共通して出てくるのが
『小口テロ』。
最初は、なんだそれは?と思ったけれど、そのテロを起こす人たちには
今の日本の社会に絶望し、恨みを持っている。
ネット上で何らかの関わりを持っている共通の人物『トベ』と名乗る人物。
しかし、『トベ』は、一人ではなかった。
テロに反感を抱きながらも、そこに走った者の気持ちも分からなくはないと
考える川渕政昭のような人が政治家に居たらいいのに・・・・。
考え方は理想的でも一国民では、何も出来ない現実。
読んだ後は、気分がど~んと落ち込む。
どうしたらいいのだろ?
考えてもうまい答えは全く浮かばないんだけど・・・
政治家が税金を正当に使うと信じられる国に先ずはなって欲しい!
★★★★
発行年月:2014年8月
スカイツリーを見上げながら、水上バスで通勤する富田宝子、28歳。
浅草にあるおもちゃ会社の敏腕プランナーとして働く彼女は、
次から次へと災難に見舞われる片想い中の彼のため、
SP気分で密かに彼のトラブルを解決していく……!
やがて、自分の気持ちに向き合ったとき、宝子は──。
(東京創元社HPより)
片想い歴5年の富田宝子28歳。
ルームメイトは遊び人のレズビアン・菅沼玲奈。
宝子が片想いしている相手は、西島裕也31歳。
フリーのグラフィックデザイナー。
仕事を通じての知り合いでもある二人。
宝子は、容姿も良いし、仕事も出来て、後輩からも憧れられている女性。
性格もいい。
なのに・・・相手の西島は、どこに魅力があるのやら???
西島のために陰で働く。
その働きが報われることはないのに・・・。
ああ、なんて健気なんでしょう。
彼に恋人がいると知っても、そして後輩が彼と付き合うことになっても
寛大な心でそれを受け入れ、尚且つ片想いは継続される。
ほかを向けばもっと素敵な男性居るのになぁ~なんてヤキモキしたけれど、
最後の最後に西島が思っていたよりまともな人とわかって良かったわ~。
宝子の存在が自分にとって大事だと気づいた?
宝子が幸せになれますように・・・。
ササッと読めて楽しかった♪
★★★
発行年月:2014年9月
植物性吸血鬼バンブーとの許されぬ友情物語
竹から生まれた吸血種族バンブー。固い掟で自縛し、ひっそりと暮らすバンブーが、ある日、人間の孤児を拾った。禁じられた絆の物語
(文藝春秋HPより)
3つのお話から構成されている。
それぞれ別の話だけれど、バンブーと人間の交流があって、特に最初の話は良い!
<ちいさな焦げた顔>
家族を殺された男の子・梗ちゃんを助けたバンブーのムスタァ。
連れの洋治と共に人間の男の子を育てる。
3人の生活が微笑ましかった♪
けれど、バンブーの掟では、その生活は禁じられたこと。
ああ、切ない。
でもいい話。
表題作の<ほんとうの花を見せにきた>は
最初の話にも梗ちゃんとも友達になった女の子のバンブー・茉莉花の話。
バンブーの寿命は120年くらいだけど、茉莉花の寿命はあと10年くらい。
見た目は若いけれど・・・。
そして人間の子・桃と一緒にいる。
桃は元はムスタァが拾った子。梗ちゃんのときと同じように家族が居ない子ども。
桃は梗ちゃんが亡くなるまで育てていた子。
次第に大人になる桃と口論の末、離れるけれど・・・・喧嘩前の約束を守って
茉莉花が現れる。
ああ、これも切ない。
でも、やはりいい。
最後の話、<あなたは未来の国に行く>は、生まれながらに竹族(バンブー)の王家の娘として生まれた女の子の話。
人間に追われる状況から山奥に移動するという王(父)に逆らい、親しい庶民のバンブーと人間が川を下り未来に国に行くという話を聞いて、自分もそちらに付いて行こうと決めるが
王には反対され、彼女を慕う弟と未来の国行きを決めるが・・・・
ああ、またまた切ない話。
でもこの世界観はたまらなくいい。
切ないファンタジーでした。
表紙の写真(?)もなんか雰囲気あっていいな~。
★★★★★
発行年月:2014年4月
17歳の少女が自ら警察に保護を求めてきた。その背景を探る刑事に鑑識から報告が入る。少女が生活していたマンションの浴室から、大量の血痕が見つかったのだった。やがて、同じ部屋で暮らしていた女も警察に保護される。2人は事情聴取に応じるが、その内容は食い違う。――圧倒的な描写力で描く事件は、小説でしか説明する術をもたない。著者の新しいステージを告げる衝撃作!
(双葉社HPより)
実際に北九州で起きた監禁殺人事件を基に書かれた物語だそうです。
監禁した人間を虐待するシーンは気持ち悪くて飛ばし読みしました^^;
物語の最初は、ごく普通の同棲中の男女の描写。
横内辰吾29歳と小倉聖子24歳のカップルの元に聖子の実父という男がやってきて
居候生活が続く。
謎なかんじのその男・中本三郎。
辰吾と聖子と三郎の生活と並行して語られる、事件が監禁事件。
監禁先から脱出して警察に助けを求めた17歳の少女・香田麻耶。
監禁事件の真相が明かされていく。
中本三郎とその事件の関わりは後半、徐々に明かされる。
が・・・事件の本当の張本人とされる梅木ヨシオ(タケイ?)は最後まで登場せず
なんだかよくわからないままに終わった感じ。
ただただグロテスクなお話だったなぁ~。
こんな事件が実際に起きたのだとしたら・・・なんて恐ろしい!
一気読みしたので、面白くないわけじゃないけれど・・・
う~ん。正直、好きじゃないな。
★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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