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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2014年5月


 生きづらい世の中を生きる全ての人たちにエールを送る山女子小説!



40歳目前、文芸誌の副編集長をしているわたし。仕事は充実しているが忙しさに心擦り減る事も多く、私生活も不調気味。そんな時に出逢った山の魅力にわたしの心は救われていき……。じんわりと心ほぐれる連作長編。

                      (角川書店HPより)




山登りのお話。
主人公の女性は、職場の同僚に最初は誘われて山登りをし、その後、訓練しやや難度の
高い山登りを体験していく。

山登りは、今、ブームだけれど、危険と隣り合わせなんだなぁ~。
彼女は、一人で行動する。
確かに登るペースとか、それぞれ違うから単独行動がベストなんだろうけど、
広い自然のなかで自分しか居ない空間って、想像しただけでちょっと恐怖で
自分には無理だな~。


単独で上っていても、人と会い、そこで生まれる交流の場面は、温かいかんじで
いいな。

物語は月日が経過しながら、いろいろな季節に山登りをする様子を描いている。
普段は文芸誌の編集をして、山に入れば、目的地を目指しひたすら進む。
過酷な状況を、自分自身の体調の変化を気にしながら続けるのか断念するのかの
判断も大事。

登山後の食事の風景が、美味しそう♪

山登りをする人には共感する部分も多いんでしょうね~。


                             ★★★
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発行年月:2014年9月

胸奥の深い森へと還って行く。見失っていた自分に立ち返るために……。

蘇りの水と水銀を司る神霊に守られて吉野の地に生きる草壁皇子の物語――歴史に材をとった中篇「丹生都比売」と、「月と潮騒」「トウネンの耳」「カコの話」「本棚にならぶ」「旅行鞄のなかから」「コート」「夏の朝」「ハクガン異聞」、1994年から2011年の8篇の作品を収録する、初めての作品集。しずかに澄みわたる、梨木香歩の小説世界

                       (新潮社HPより)


どれも素晴らしいお話。
梨木さんらしいちょっと独特な不思議な空間に連れて行かれるような気持ちに
させられて、それがすごく心地ちいいのです!!
ああ、さすが梨木さんだぁ~と思わせてくれる作品集でした!!


表題作の「丹生都比売」だけやや長めのお話。

時は1300年以上前の壬申の乱のころのお話。
大海人皇子・おおあまのおうじ(天武天皇)と
鸕野讚良皇女・うののさららのひめみこ(持統天皇)の子どもである草壁皇子の物語。
 心優しき皇子が戦乱の世に巻き込まれる様子はなんだか痛々しい思いがしました。

このお話だけでも読み応え十分!
 

他は短いお話。
特に好きだったのが2つ。

「コート」
2つ違いの姉と幼い時からずっと冬になるとお揃いのピンクのコートを母親が用意してあり着せられていた。
母は9着のサイズ違いの同じ型のコートを買ってあったから。
でも16歳の姉は、自分好みのコートを買い、わたしはおさがりでないコートを着る。

妹が姉を想う気持ちが切なく温かかった。



「夏の朝」
6歳の誕生日に特別な球根(親指姫の生まれる球根)が欲しいとねだるが
代わりにユリの球根をお花屋さんからプレゼントとして貰った夏ちゃん。
なかから女の子が生まれたので、春ちゃんと名付ける。

子どもの個性を大事に見守るって大事だな・・・・。
夏ちゃんが可愛い♪
お母さんも一時は悩んだと思うけれど、見守る姿勢は素晴らしい!


梨木さんのあとがきも良かった!
今度は新作の長編を読みたいな。


                            ★★★★★



発行年月:1968年7月


 少年は覗き穴から母の裸を凝視した――。
大人の世界を許せない少年たち。その心理を克明に描く問題作。


船乗り竜二の逞しい肉体と精神に憧れていた登は、母と竜二の抱擁を垣間見て愕然とする。矮小な世間とは無縁であった海の男が結婚を考え、陸の生活に馴染んでゆくとは……。それは登にとって赦しがたい屈辱であり、敵意にみちた現実の挑戦であった。登は仲間とともに「自分達の未来の姿」を死刑に処すことで大人の世界に反撃する――。少年の透徹した観念の眼がえぐる傑作。

                    (新潮社文庫HPより)



読む本が手元になくなり・・・自宅本棚にあった本を読んでみました。
「金閣寺」が面白かったので・・・。

とても薄い本で、頁数は168頁。
すぐに読み終えましたが。。。。面白かった!!
三島作品に今更ながらのめり込みそうな予感(笑)。


これは、13歳の少年たちの持つ残虐性も描いていて、大なり小なり
男の子にはこういう気持ちを秘めているものなのかも・・・なんて思った。

主人公の黒田登は、父親を亡くして、家には母と使用人が住む。
母は登が寝る時間には部屋の外から鍵をかける。
そんな彼はある日、母の寝室と通じる壁に穴を見つける。
その穴は普段は気づかない大抽斗の棚を引き出したところにある。
母親の裸体を偶然見て、その後、母が連れて来た二等航海士の塚崎竜二との
様子も覗き見る。

竜二の前では、子どもらしい屈託ない明るさを演じる登。

そして、物語の結末は・・・おぉ~そう来たか!?というかんじ。
読み終えてみると、この表題は、凄い!巧い!

 
 
ウキペディアで調べたら・・・これ日米英合作で映画化されているんですね!
ちょっと見てみたいなぁ~。

海が見える景色が、どんな風に映像では写っているのかな?
ラストシーンも気になるし・・・。
小説では舞台は横浜の港町でした。
日本の景色でも十分美しいものは出来たと思うのだけど、俳優陣を見ると
外国が舞台でしょうね。


                            ★★★★



発行年月:2014年8月


 奈良時代。父・藤原不比等(ふじわらのふひと)から「闇を払う光となれ」と光明子(こうみょうし)の名を授かった一人の少女は、やがて聖武天皇の妃に。女として、母として、皇后として、苦難の日々を凜と歩んだ生涯に魅せられる歴史長編。      

                      (集英社HPより)
 
 
  
 
 

 主人公は45代聖武天皇の妃となった光明子。
父から幼いときより、やがて天皇になるだろう首皇子(おびとのみこ)を助けるのだと
言われて育った光明子。
まだ幼いとき、「生まれてから一度も母に会ったことがなく、会いたい」と
首皇子から言われ、母に会わせようとするがそれは叶わず。

聖武天皇の母・宮子夫人は心を病んで出産後から離れた場所で療養していた。


首皇子が天皇になるのを阻もうとした長屋王(ながやのおおきみ)側との敵対関係も
興味深かった。
長屋王の息子・膳夫(かしわで)は、そんな関係にあるなかで、光明子には敬意を
払い、お互いが惹かれあう仲であったのが、なんとも切ない。

長屋王の変は、そんな敵対する関係のなかで起きた事件で、痛ましい。
それによって自害した膳夫の最期は哀しかった。


こうして読むと、聖武天皇よりもその妃であった光明子の方が、人間的には
とても魅力的。光明子が居たから聖武天皇が存在できたというかんじ。

奈良の大仏=聖武天皇の認識でしたが、光明子の力も大きかったんですね~。
光明子は、施薬院や悲田院を設置したり、民が平穏に暮らすための施設を
建てたり、名前の通り、人々に光を明るく届ける働きを生涯した方。
素晴らしい。

聖武天皇の49日後には、多くの宝を正倉院に納め、今
、それが奈良(国立博物館)で公開されているんですよね~。
ああ、見たいなぁ~。
今年はムリか?^^;


子どもの頃、叶えてあげられなかった「母に会いたい」の気持ちを
ちゃんと皇后になってから、叶えてあげられた場面が一番好きでした。


しかし、昔は次に誰が天皇になるのか?でこんなに争いがあったんですね。
それだけ皇族が多かったということでしょうけれど
そして女帝も多かった。名前だけだとよくわからなかったのですが・・・・^^;
今は皇族も段々に減って行って・・・・  なんとなく今後の日本の皇族のあり方も
考えてしまった。
女性が天皇になってもいいんじゃない?なんて個人的には思います。


名前の読み方で慣れるまで難儀しましたが、大変面白かった!!


                          ★★★★ ★



発行年月:1986年2月


昭和25年7月2日未明、鹿苑寺金閣は焼亡した。
放火犯人、同寺徒弟・林養賢、21歳。
はたして狂気のなせる業か、絢爛の美に洵じたのか?
生来の吃音、母親との確執、父親ゆずりの結核、そして拝金主義に
徹する金閣への絶望・・・・・。
6年後、身も心もぼろぼろになって死んでいった若い僧の生を
見つめ、足と心で探りあてた痛切な魂の叫びを克明に刻む長編小説。

                        (新潮文庫解説文より)




先に三島由紀夫の『金閣寺』 を読み、三島の作品は事実を基にしたフィッション
なので、実際のところはどうなの?と疑問がわき、犯人の林養賢と同郷であり
当時の事件について、また、林養賢という人物像を綿密な取材によって書いた
こちらの作品を読んでみた。

著者も若い頃、寺の徒弟として修業した経験があるという。
しかもそこから逃げ出したとか。

犯人の養賢とも偶然、道で知り合いが一緒に歩いていたところで会い、言葉も交わしているそう。
いろいろな縁を感じ、金閣寺を焼くというとんでもない行動を起こした
養賢のことを詳しく調べてみたくなるのも納得できた。


三島の『金閣寺』での犯人像に比べると、大人しく吃音により蔑みの言葉や態度を
受けたことはあったそうだが、攻撃的にそのことに向かうというより、争いを避け
目立たぬように居ることを選ぶような印象であった。

ごく普通の青年だったのに、やはり金閣寺に実際入ってから、様子が変わってくるのが
わかり、その理由も、なんとなく理解できた。


実際に火を放ち、自死を試みるが失敗し、投獄されるのだけど、
その後も苦しみだけの生。

なんとも哀しい一生。

今、美しい姿で存在する金閣寺・・・今度見る時は複雑な気持ちになりそう。
しかし、こちらも読んで良かった!



                          ★★★★★
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