発行年月:2014年6月
あのひとがほしい、どんなことをしても――。
今最も注目される女性作家・窪美澄、千早茜、彩瀬まる、花房観音、宮木あや子の5人が「略奪愛」をテーマに紡いだ、書き下ろし恋愛官能小説集。
(河出書房新社HPより)
<朧月夜のスーヴェニア 窪 美澄>
家族から認知症と思われている老女。
孫娘に乱暴な介護を受けながら、冷静に孫娘の行く末を案じながら
かつて自分が愛した男のことを思い出す。
<夏のうらはら 千早 茜>
バイトに来ている人妻・明菜と関係を持つ恭一。
高校時代、密かに思いを寄せた絹子が地元に帰って来たと明菜から聞く。
傷ついている絹子に近づく恭一。
<かわいごっこ 彩瀬まる>
姉の家で飼っていた文鳥を代わりに飼うことにした弘樹。
同棲中の若菜は、弘樹が文鳥に「かわいいな~」と言いながら戯れる様子を
冷ややかに見ている。
<それからのこと 花房観音>
兄の親友だった平丘と大輔。
兄が大学卒業前に事故で亡くなり、気落ちした自分を兄に代わって慰め勇気づけて
そばにいてくれた平丘と結婚。
大輔もその結婚を薦めてくれた。
が・・・平丘との生活にやや不満のような気持ちを抱き前から自分も好意を
持っていたと言う大輔に気持ちが傾く。
<蛇瓜とルチル 宮木あや子>
芸能界で衣装を提供する仕事をしている真崎。
学園ドラマの生徒役の久永正樹15歳にときめく。
どれも官能的で女の怖さを感じさせる話でした。
狡猾な女のしたたかさみたいなものを感じた。
ああ、男に生まれなくて良かった。
こんな女たちに関わりたくないわ~^^;
面白かったけれど、感動は全くなしでした。
★★★
発行年月:2014年9月
生命の「離陸」を描いた新境地長篇
謎の暗号文書に導かれて「女優」を探すうち、主人公は幾つもの大切な命を失っていく。
透徹した目で寄る辺なき生を見つめた感動作。
(文藝春秋HPより)
主人公は、佐藤 弘(ひろむ)。
大学で土木工学を学び国交省入りした若きキャリア官僚。
物語の最初は、群馬県の八木沢ダム。
そこに突如現れた黒人。フランス人のイルベール。
「女優」を探しているという。
「女優」とは、弘の昔の恋人・乃緒のことだった。
乃緒からは一方的に別れを告げられ、その後音信不通のままだった。
そして、弘はパリのユネスコ本部に2年の任期で赴任。
そこから物語が面白くなりました。
再び、イルベールに会い、彼が一緒に暮らす乃緒の息子・ブツゾウとも会い
親しくなる。
ブツゾウの父親は後にわかるのだけど、乃緒という所在不明の女性は
いったい何者??と考えながら読むことになる。
謎の暗号文に秘められた東洋人の女性=乃緒??
暗号文が記された謎の女性は1930年代にいた人物なのに・・・。
乃緒については、謎多きで、よくわからないことだらけでしたが、
弘がフランスで知り合った恋人・リュシーと幸せそうな日々を送る場面は
楽しかった。
けれど・・・・。
表題の「離陸」の言葉を借りるなら、登場人物たちが次々、離陸してしまい
それを見送る形の弘同様、読み手の気分も落ち込みました(/_;)。
幼い子どもだったブツゾウが立派に成長した姿が終わりで読めて良かった。
彼の未来が明るいものでありますように。。。
あとがきで、「自分はやはり短編書きだなあ」と思うと書かれていましたが
またこのような長編も読ませていただきたいです。
不可解な部分も残る物語でしたが、読み応え十分で楽しませて貰いました!
★★★★★
発行年月:2014年11月
七つの哀しみや諦め、その果てに……。
遠く遠くなのかもしれない明日を信じて
私はもう、可哀想なんかじゃない――「哀しいよ」
自分の心は放り出されたまま――「あの海の前で」
待つだけじゃ、何も守れない――「ストーブ」
あと一言が、どうしても言えない。
いつもの電車は、とっくに行ってしまった――「巣箱」
この水を涸らしてはいけない――「Fountain」
待っているのは客などではない――「ボルケイノ・ホテル」
誕生日の給油、6888円。ちょっと、ぞろ目。
給油する場所なら、決めてあった――「六本木給油所」
(光文社HPより)
既に発表された過去作品を集めた短編集でした。
全部、読んだことなかったので、十分楽しみましたが・・・。
そろそろ大人の恋の長編作品をまた読みたいな~。
7つのお話は、叶わなかった恋の話が多かった。
切ないかんじ。
最初の<哀しいよ>は、すごく心情がよくわかった。
うんうん、哀しいでしょう・・・と思った。
表題作の<ボルケイノ・ホテル>は、ひなびた旅館を父親に代わって
ひとりで営む女性の話。
田舎の旅館に訪れる支局勤務の新聞記者たちとの付き合いをあれこれ回想。
一番、思い出に残る柳田の訃報を新聞で知る。
見つけたのは東京から帰省中の弟。
こんな状況に置かれたら主人公の茉祐子みたいになるのもわかる。
でも、前を向いて歩いて行けそうかな?
がんばれ~と言いたくなった。
面白かったのは、<あの海の前で>。
音楽業界人の夫が恒例にしている仲間たちとの旅に今年も同行した玲子。
6歳の息子も一緒。夫は、気が利かず息子の世話もそっちのけなのに、
代わりに斎藤が息子の父親代わりのように接してくれるのに好感を抱く。
斎藤は業界から離れ、海辺に暮らし漁師の手伝いなどをして細々と生活している。
斎藤とどうにかなるのか?と半ば期待しましたが・・・・^^;
アハハ・・・そういう結末でしたか!
★★★
発行年月:2014年11月
あなた、どこかへ
辿りつけるでしょうか。
「webちくま」の人気連載を単行本化!
太宰治、吉川英治、ケストナー、ドイル、アンデルセン……。
あの話この話が鮮やかに変身するパスティーシュ小説集。
思わずにやりとする、文芸の醍醐味がたっぷり!
(筑摩書房HPより)
有名な文豪の作品を基に書かれた短編集。
「パスティス」とはの説明が最初にありました。
アブサン(リキュール酒の一種。ニガヨモギを主成分とした, アルコール分70パーセント前後の緑色の洋酒)の製造が禁じられた時代、代用品として作られたお酒が「パスティス」。
その意味を辿ると「ごたまぜ」という意味だとか。
この短編集は、模倣、パロディ、珍解釈とごたまぜの世界の作品たち
と著者の解説。
基になった、お話
<満願>・・・太宰治「満願」
<Mとマットと幼なじみのトゥー>・・・吉川英治「宮本武蔵」
<夢一夜>・・・夏目漱石「夢十夜」
<腐心中>・・・森鴎外「普請中」
<カレー失踪事件>・・・コナン・ドイル「シャーロック・ホームズシリーズ」
<ムービースター>・・・映画「キングコング」
<毒蛾>・・・宮澤賢治「毒蛾」
<青海流水泳教室>・・・岡本かの子「渾沌未分」
<王様の世界一美しい服>・・・アンデルセン「裸の王様」
<親指姫>・・・アンデルセン「親指姫」
<伏魔殿>・・・施耐庵「水滸伝」
<新しい桃太郎のはなし>・・・作者不詳「桃太郎」
<国際動物作家会議>・・・ケストナー「動物会議」
<寒山拾得>・・・芥川龍之介「寒山拾得」
<富嶽百景>・・・太宰治「富嶽百景」
<ドゴーを持たっしゃれ>・・・ペコット「ドゴーを持ちながら」
坪内逍遥「ロミオとヂュリエット」
面白く読んだのは、<カレー失踪事件>ミステリーも食べ物が主だと面白い!
あとは、<親指姫>政治家のセクハラ発言と童話が混ざったブラックユーモア的話で
男は勝手だ!と憤りが・・・。
<富嶽百景>は愉快だったフランス人の義兄に一度本物の富士山を見せてあげたくて
奮闘する話。やっと見られたと思ったのに・・・なるほど思い込んだイメージ通りじゃないと
認めないのね^^;
基になっているお話、読んでない作品が多いので、著者の意図する面白さが
わたしには伝わり難いのが残念でした。
読み手の勉強不足が試される作品でした^m^
★★★
発行年月:2014年9月
二人の詩人の冒険に立ちはだかる
謎につぐ謎、奇人また奇人!
停電調査の旅に出た詩人・オルドバと猿のチューヤー。
この世の二階から魔都・東京の夜景を見おろす詩人・シャバダ。
忽如として行方不明になった十数名の「児島」と、
その謎を追う探偵・中田と相棒の探偵犬・終列車。
物語の行方は、この世の二階にあるといわれる、
幻の〈電氣ホテル〉へ――。
奇怪にして愉快な活劇小説!
(文藝春秋HPより)
二人の詩人・オルドバとシャバダのそれぞれの冒険物語と思いきや・・・
彼らは別々に、不思議な旅に出る。
オルドバは、賢い猿のチューヤと共に。
シャバダは、謎の女・黒子のキャシャと共に・・・。
そして登場する可笑しな人やら動物やら、何者か得体のしれないものたち多数。
頭の中が混乱するけれど、もう途中から理解不能で、ただただ文章を追うのみ。
それでも十分、可笑しくて楽しい。
不思議な物語。
吉田氏の頭のなかは、どうなってるんでしょ?
こんな話、どうして書けるのかしら?
本の装幀がまたまた凝っていて、これもまた芸術作品ですね!!
理解不能でも予告にあった第二幕編も読むのが楽しみです♪
★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;