発行年月:2014年10月
ケースワーカーはなぜ殺されたのか
優秀な先輩の素顔を追って、
女性ワーカーが生活保護の闇を炙り出す!
結局、堕落者はいなくならないってことだ──
念願の市役所に就職がかなった牧野聡美は、生活保護受給者のケアを担当することになった。敬遠されがちなケースワーカーという職務に不安を抱く聡美。先輩の山川は「やりがいのある仕事だ」と励ましてくれた。その山川が受給者たちが住むアパートで撲殺された。受給者からの信頼も篤く、仕事熱心な先輩を誰が、なぜ? 聡美は山川の後を引き継いだが、次々に疑惑が浮上する。山川の知られざる一面が見えてきたとき、新たな惨劇が……
受給者、ケースワーカー、役人……
それぞれの思惑が交錯する渾身の社会派サスペンス!
(祥伝社HPより)
読み応えありの社会派ミステリーだったと思います。
巷でも問題の「生活保護不正受給」の実態が描かれていました。
主人公の牧野聡美は、市役所に就職1年目の新人。
福祉保健部社会福祉課で、生活保護受給者に接する。
最初は、仕事にやりがいを見いだせなかった聡美。
尊敬する上司の山川から「いつかこの仕事をしていてよかったと思えるときがくるよ」と言われたが全くピンと来なかった。
が・・・その尊敬していた山川が他殺焼死体となって発見される。
発見されたのは、山川が担当していた生活保護受給者たちが暮らすアパートの空き室。
山川が担当していた生活保護受給者たちを先輩の小野寺と二人で担当することに
なった聡美は、小野寺とともに何故山川が殺されたのか?が気になり
独自に調べはじめる。
そしてわかってくる真相。
生活保護受給者とヤクザとの関係。
本当にそんな実態があるのかな?
役所の仕事も複雑な対応を迫られることになって大変だ!
人間関係が上手く絡み合って、事件の真相に辿り着くまでハラハラドキドキしながら
楽しめました。
表題の「パレートの誤算」の意味は、ラストに明かされて、なるほど・・・・と。
生活保護受給者というと怠け者というレッテル視しがちな風潮があるけれど
本当に困って受給し出来るだけのことをしながら頑張っている人も多いということを
忘れたらいけないなと思った。
聡美が最後は、山川から言われた言葉の意味を理解できたことが良かった。
★★★★
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発行年月:2014年8月
クラス替えは、新しい人間関係の始まり。絵の好きな中学3年生のヒロシは、背が高くいつも一人でいる矢澤、ソフトボール部の野末と大土居の女子2人組、決して顔を上げないが抜群に絵のうまい増田らと、少しずつ仲良くなっていく。母親に反発し、学校と塾を往復する毎日にうんざりしながら、将来の夢もおぼろげなままに迫りくる受験。そして、ある時ついに事件が…。
大阪を舞台に、人生の入り口に立った少年少女のたゆたい、揺れる心を、繊細な筆致で描いた青春群像小説。
(文藝春秋HPより)
中学3年生の山田ヒロシ。
両親が離婚してから母親と祖父母と暮らす。
母親のお喋りが鬱陶しい。
本当は美術をやりたいけれど、進路として選ぶのはまだ早いか?
心のなかで、自問しながら悩み続ける姿がリアル。
クラス替えを機に仲良くなっていく矢澤徹也。
自分と同じく父親が居ない家庭。
クラスの中ではなぜか疎まれる存在。
女子とも次第に親しくなる。
ソフト部の野末と大土居。
自分のなかで絵についてライバル視している増田。
中学受験で私立の中高一貫校に進学した古野弥生とのやりとりも、なんだかほのぼの
していて良かったなぁ~。
淡々と過ぎる日常のなかで、起きる事件。
ヤザワが誤解によって皆から責められていること。
大土居の家庭内での問題。
ヒロシは、なんとか解決しようと奔走する。
優しい子だなぁ~。
こんな風に絆を強めても、それぞれ違った進路に旅立つ彼らたち。
それぞれの向かった先でまた同じように出会った友と絆を深められると
いいなぁ~。
この時期独特の心理描写が巧く描かれていて、読んでいて楽しかった。
みんな良い大人になってね~という思いで本を閉じました(^^)
★★★★
発行年月:2014年7月
俺はもう、誰かの脇役ではない。
砂漠の中、悟浄は隊列の一番後ろを歩いていた。どうして俺はいつも、他の奴らの活躍を横目で見ているだけなんだ? でもある出来事をきっかけに、彼の心がほんの少し動き始める――。西遊記の沙悟浄、三国志の趙雲、司馬遷に見向きもされないその娘。中国の古典に現れる脇役たちに焦点を当て、人生の見方まで変えてしまう連作集。
(新潮社HPより)
中国の古典のなかで脇役の人物を主役にした物語を書いたというが・・・
中国古典に全く詳しくないので、少々難儀しました^^;
名前が読みにくいです(;O;)
でも、面白いと感じました。
もとの古典文学をちゃんと読んでみたいとも思いました。
<悟浄出立>
これはさすがに知っている。
西遊記の沙悟浄を主役にした話ですね。
でも、読んでいると、語り手が悟浄だけれど、猪八戒の方が目立ってました!
いまの姿になる前の八戒は、今とは真逆の戦上手で賢い名将だったという話は
本当か?と八戒に問う。
<趙雲西航>
長江を下り、蜀の地を目指す船。
そのなかに劉備傘下の名勝・張飛と趙雲。
二人の会話。
趙雲は、実は船に弱く、船酔いに悩まされていた。
そんなとき、諸葛亮から食事に誘われ、普段なら避けている諸葛亮の誘いをつい
早く船から降りたい気持ちもあり承諾する。
50歳になる趙雲から見るまだ若い諸葛亮。
蜀に自分の国を作りたいと言う。
自分の船酔いもお見通しだった。
自分が張飛と諸葛亮に対してなぜ疎ましい気持ちを抱くのか合点がいく趙雲。
<虞姫寂静>
漢軍に包囲された項羽の軍。
咸陽の都から連れて来た女にかつて失った虞姫の名前を名乗るように
言い寵愛してきた。
女は虞姫に生き写しだったから。
が、最後の時を迎え、女を解放しようと虞姫の形見の簪と耳飾りを奪い
「汝は虞ではない」と別れを言い渡す。
しかし、女はそれを聞き入れず、虞として最後を迎えることを望む。
<法家狐憤>
陛下を襲った賊の名は荊軻(けいか)。
そして自分は京科(けいか)。
一時、顔を合わせ会話したあの荊軻なのか?
官吏採用の試験で同じようにその場にいた男。
20人のなかからたった一人採用になった自分だが、
あの時、採用になるはずだったのは自分ではなく荊軻だったんだと思う。
<父司馬遷>
父は帝の前で逆鱗にふれる発言をしたことが機で死罪とされるが、
死は免れ宮刑に処される。
宮刑とは男が男でなくなる刑。
母は、父と離縁し親族の勧めで別の男の妻となる。
息子たちも司馬の姓を捨てて生きる。
が娘の栄は父の元を訪ねる。
父は昔の姿と違って見えたが、書に対する気持ちは変わっていないと
知る栄。
そして父が命よりも大事にした記録を書き続けることを願う。
特に後ろ二つの話が良かった。
少しリンクしている部分もあって。
中国古典、敬遠していたけれど、面白いかも・・・と万城目さんの書を
読んで少し興味が沸いて来ました!
★★★★
発行年月:2014年9月
「好色一代男」「世間胸算用」などの浮世草子で知られる井原西鶴は寛永19年(1642)生まれで、松尾芭蕉や近松門左衛門と同時代を生きた俳諧師でもあり浄瑠璃作者でもあった。俳諧師としては、一昼夜に多数の句を吟ずる矢数俳諧を創始し、2万3500句を休みなく発する興行を打ったこともあるが、その異端ぶりから、「阿蘭陀流」とも呼ばれた。
若くして妻を亡くし、盲目の娘と大坂に暮らしながら、全身全霊をこめて創作に打ち込んだ西鶴。人間大好き、世間に興味津々、数多の騒動を引き起こしつつ、新しいジャンルの作品を次々と発表して300年前のベストセラー作家となった阿蘭陀西鶴の姿を描く、書き下ろし長編時代小説。
芭蕉との確執、近松との交流。娘と二人の奇妙な暮らし。
創作に一切妥協なし。傍迷惑な天才作家・井原西鶴とは何者か?
(講談社HPより)
物語の主役は西鶴の娘・おあいかな?
9歳で母は病死。
幼い2人の弟たちはほかの家へ養子に出され、おあいは父親と奉公人と暮らす日々。
おあいは盲目だが、母親が生活に必要なことは教えてくれていたので、
料理や裁縫もこなすことが出来る。
見えない代わりに、嗅覚、聴覚など、ほかの感覚が研ぎ澄まされ家のなかでの生活に
不自由することは殆どない様子。
ここまでに育て上げた母親が素晴らしいなぁ~。
西鶴は、俳諧師としては、なかなか才能を認められず、それならばと考えたのが
一昼夜に2万3500句を詠むという興行。
居直りとも思えるその行い、己こそ新風、一流だと自讃し「阿蘭陀西鶴」を自称。
貧乏なのに貧乏くさいことは嫌いで気位ばかり高い父・西鶴を半ば呆れながらも
見守る娘・おあい。
やがて、浄瑠璃や浮世草子も手掛けるようになり、こちらでの人気が出てくる。
そして、おあいが知る破天荒な父親の本当の気持ち。
下戸だと思っていたけれど、母が亡くなってから暫くして酒を断っていた。
弟たちを外に出したのに自分だけをそばにおいたわけ。
父親の深い愛情を知るおあい。
家族愛溢れる人だったと知り、感動しました。
晩年の二人の生活も穏やかで幸せそうでした。
いまの時代なら、早すぎる一生だけれど・・・。
同じ時代の松尾芭蕉や近松門左衛門も登場して、そういう交流関係だったんだと
知れたのも面白かった。
朝井さんの作品は、読み応えあります!
他の作品も読んでいきたいな。
★★★★★
発行年月:2014年7月
第151回芥川賞受賞作。
行定勲監督によって映画化された『きょうのできごと』をはじめ、なにげない日常生活の中に、同時代の気分をあざやかに切り取ってきた、実力派・柴崎友香がさらにその手法を深化させた最新作。
離婚したばかりの元美容師・太郎は、世田谷にある取り壊し寸前の古いアパートに引っ越してきた。あるとき、同じアパートに住む女が、塀を乗り越え、隣の家の敷地に侵入しようとしているのを目撃する。注意しようと呼び止めたところ、太郎は女から意外な動機を聞かされる……
「街、路地、そして人々の暮らしが匂いをもって立体的に浮かび上がってくる」(宮本輝氏)など、選考委員の絶賛を浴びたみずみずしい感覚をお楽しみください。
(文藝春秋HPより)
芥川賞受賞作品って、よくわからないものが多いけれど、
これは意外とすんなりこの世界観に入りこめて、なかなか面白かった。
表題の「春の庭」ってなんだろ?と途中まで思いながら読んでいたら、
なるほど主人公の太郎が暮らすアパートの隣に建つ家のことだったんですね。
同じアパートの住人・西さんが最初、その家に興味があるといい
その理由を聞く。
その家が載っている写真集の名前が「春の庭」。
その家は水色の洋館で、20年ほどまえに住んでいた夫婦が日々の暮らしを
撮って写真集にしたもの。
夫はCMディデクター。妻は劇団女優。
離婚歴ありの太郎が、段々とアパートのほかの住人と顔見知りになり交流を持ち
やがて、空き家だった洋館に越してきた森尾ファミリーとも親しくなる様子が
楽しかった。
でもラストはちょっと「え?」という事件めいたものが出てきて驚いたけれど
事実じゃなかったのね?
でもそういう事があっても不思議じゃない前振りがあったので
ちょっと真相は・・・・・。
ササッと読み終えたけれど、なかなか面白かった。
こういう雰囲気好きだな。
★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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