発行年月:2014年8月
心理描写の名人上手が、小説技法と男女観察の粋を尽くした、きらめく宝石のような小説たち!
罠と浮気。カネとライバル。煩悶と純心。明けない夜と、白茶けた朝。いつまでも瑞々しい老婆、フェティシズムに目覚めた小学生男子、結婚できないカップル、闇の中で胸をときめかせる政治家――。〈恋ごころ〉という厄介きわまるものを抱えた男たち女たちのミステリアスな心情と希望を描く、作者会心の珠玉短篇集。
(新潮社HPより)
ササッと読めて、まあまあ面白かった短編集かな?
<ハズバンズ>
元妻と彼女が再婚した男とそれぞれ親しくしている男の話。
<ピンポン>
一緒に暮らしたいと言われたので「無理」と答えて大ゲンカ。
彼が翌日、突然訪ねて来た。
<僕が受験に成功したわけ>
中学受験を考えている真吾は、転校生の奈月につきまとわれる。
彼女のマンションに呼ばれて行き、そこで彼女の母親の脚に釘付け。
<内緒>
孫娘が電車内で男の子とキスするのを目撃した。
その後の孫娘と祖母の会話。
<アンバランス>
33歳の瞳子は同棲中の彼とすれ違いの生活が続き、潮時かな?と思う。
一方の彼は、彼女にナイショで新居購入、その後の二人の生活を考えている。
<早朝の散歩>
白い杖を握る男性が電車に乗るのを助け、電車内で会話。
<キープ>
15歳の初恋のとき、神様に「もう二度と誰かを好きになったりしない」と
誓ったばかりにその後の結婚も5年で破たん。
夫の事は好きじゃなかったんだと気づく。
<三年目>
共働きなのに自分だけ家事に追われ不公平だと思って居る妻。
<それは秘密の>
暴風雨のなか車を運転中、トンネル内で土砂災害のため取り残された
全く他人の男女。
一番最後の表題作は面白かった。
状況としては大変な目に遭っているわけですが・・・
「それは秘密の」が、ひみつのアッコちゃんだったのは愉快♪
話としてとても良かったのは、超短編の
「早朝の散歩」。
こんな何気ないひと時の男女の関わりいいな。
短編集と知らずに読みましたが、やはり長編作が次は読みたいなぁ~。
表紙の絵は、個人的にあまり好きじゃないわ~^^;
★★★
発行年月:2014年11月
「刺青のエンペラー」とよばれた男の一生!
1913年、ニューヨーク。ハドソン川で若い女性の死体が発見され、ニューヨーク市警は女の肩にヘビの絵柄とともに彫られていた「H・C」のイニシャルをもつ刺青家の捜索を開始する――
時は遡って1859年。駿河の下級武士の家に生まれた宮崎匡(のちの彫千代)は運命的に出会った刺青に心を奪われ、放浪の末、彫り師を志す。欧米人には「刺青のエンペラー」と称賛され世界にその名を轟かすまでになるが、遊女・お蓮との初恋は悲しく砕け散った。古風な実兄との確執、師匠からのいじめ、右目の失明……数々の苦難を乗り越えて、新しい時代の”美”を追求した彫千代を待ち受けていたのは、さらなる悲劇だった。
自由奔放でわがまま、しかし繊細で常に”小さき命”への慈しみを忘れなかった男、彫千代。かつてないほど人間臭い英雄が、守るべきもののために下した衝撃の決断とは――!?
いま最注目の実力派作家が実在の伝説的彫り師の生き様を描いた、感動の歴史エンタテインメント!!
(小学館HPより)
彫千代と言う刺青師の一生を描いた物語。
時代は明治~大正。
宮崎匡という男が駿河の地で下級武士の子どもとして生まれる。
父親からは学問を学ぶことの大切さを説かれるが、虫やカエルや鳥などの
絵を帳面に描く楽しみを覚え、絵を学ぶために塾に通いはじめる。
そして、刺青という人の肌に直接描く手法に魅せられ、自身もそんな技を身につけたいと
弟子入りの口実に、背中に鬼子母神の刺青を入れて貰い、彫った彫安の元で
修行を積む。
時系列がやや前後するので、少し戸惑いもありましたが、彫千代という名前で
名を馳せた男の一生を面白く読みました。
男女を問わず愛されるキャラクターだった。
最後の方の青池マツの回想で、彫千代の家族や弟子の清吉のその後が語られ
時代を物語った最期だったなとちょっと切なくなりました。
巻末の参考文献の多さにはビックリ!
実在するモデルも居たのかな?
なかなか読みごたえある作品でした♪
★★★★
発行年月:2014年9月
人を愛すること、想うことは、どこまで透明でありうるだろうか。
構想7年――志摩半島を舞台に、代表作『海猫』以来、海に生きる人たちに取材した傑作長編。
幼い頃に母を亡くし、大海女と呼ばれた祖母のもとで志摩の漁村に育った野井山孝子は、その地に生まれた女の宿命として、高校卒業後は海女となるはずだった。しかし、神主となるべく修行を積む白川武雄との邂逅によって、ふたりの透明な魂は響きあい、孝子は定められた生き方と、ひとりの女性としての目覚めの狭間で揺れうごく。
己の体ひとつで海の底から生きる糧を獲る少女と、伊勢神宮の伝統ある志摩の神社の跡取りの青年とが出会ったとき、運命はふたりを思いもかけぬ方向へと導いていく――。
志摩の美しい自然の中で紡がれる、あまりにも清らかで切ない恋愛小説。
(PHP研究所HPより)
切ない恋愛小説でした。
代々海女をしている家に生まれ、自身も海女になることを選んだ孝子。
最初に会った時から、惹かれるものがあった神主の修行中の武雄との恋が
成就しないんだろうな・・・・・と読みながら思いました。
本人同士の気持ちが優先出来ない事情あり・・・・切ない(/_;)。
武雄との恋は上手くいかなかったけれど、孝子のことをずっと想っていた
新助(いがぐり君)と幸せな家庭を築いて正解!と思っていたら・・・・
海女として生きる女性の強さと哀しさ。
生まれた美福ちゃんがどうか幸せでありますように・・・。
一気読みできる面白さだったけれど、なんとなく後味の悪さが残るのは
なんでだろ???
いそぶえとは、海女さんが漁の途中でする呼吸音らしい。
海面に顔をだし、素早く呼吸をしてまた潜る。
そんな呼吸の音だそうで、人それぞれ、音が違うのだとか。
海女さんの漁の様子見たことないので、機会があれば見てみたいな。
そしていそぶえも聞いてみたいと思いました。
★★★
発行年月:2014年11月
「死にたくなったら電話して下さい。いつでも。」
空っぽな日々を送る浪人生・徳山は、ある日バイトの同僚に連れられて十三のキャバクラを
訪れる。そこで出会ったナンバーワンキャバ嬢・初美から、携帯番号と謎のメッセージを渡
され、猛烈なアプローチを怪しむも、気がつけば、他のことは何もかもどうでもいいほど彼
女の虜に。殺人・残酷・猟奇・拷問・残虐……初美が膨大な知識量と記憶力で恍惚と語る「世
界の残虐史」を聞きながらの異様なセックスに溺れた徳山は、やがて厭世的な彼女の思考に
浸食され、次々と外部との関係を切断していき――。ひとりの男が、死神のような女から無
意識に引き出される、破滅への欲望。
全選考委員が絶賛した圧倒的な筆力で、文学と人類に激震をもたらす、現代の「心中もの」
登場! 第51回文藝賞受賞作。
(河出書房新社HPより)
インパクトある表題と表紙に負けない内容でした。
いや~面白かった!
主人公・徳山久志(21歳)は、三浪中。
居酒屋のバイトをしながら予備校に通わず独学して大学受験を控える身。
バイト仲間から誘われたキャバクラで、そこでナンバーワンのミミ(山仲初美)と
知り合う。
初美は何故か、久志に猛烈にアプローチ。
最初は、相手にする気がなかった久志だが、次第に初美に惹かれていく。
勉強とバイトの日々だった久志に刺激的な初美との関わりが生まれ
生活が一変していく。
初美は謎めいている。
その思考も独特で、久志に付き合いはじめの頃に「心中」を提案したりして。
危ないなぁ~こんな女から離れなきゃダメ!!と心の中で叫びながら読んでいました。
そんな状態でも、受験した大学すべてに合格。
喜ぶところですが・・・・なんだか嫌な予感・・・・そしてその予感的中!!(;O;)
これからの作家活動が楽しみです!
最初に発表の作品がコレって、凄い!!
読後感は決してよくないですが・・・^^;
次にどんな作品を書かれるのか、期待しちゃいます!
★★★★★
発行年月:2014年11月
「亡失」「等閑」「匿名」「紐帯」「雷同」「黙過」「増益」…
日常の、私たちの生活に地続きで潜む狂気。誰も逃れることはできない、
誰もが犯しうる現代版「七つの大罪」を描く短篇集。
(河出書房新社HPより)
なかなか面白い短編集でした。
特に最初の「亡失」は最高!
大学時代の友人から2年前まで付き合っていた桔梗さんの話が出されるが
桔梗さんって誰?状態の58歳の男の話。
特に目立った出来事もなく、ありきたりに生きてきた。
女性とは何人か付き合ったけれど、覚えているくらいの人数で、そんなに長く付き合った
人も居ない。
けれど、桔梗さんと言う人とは、2年前まで35年間も別れを繰り返しながらも
続いていた仲らしい。
実際に友人を介して、桔梗さんに再会する男。
桔梗さんと男の会話も笑えるし、本当にこんな風に完全に忘れてしまうことは
ないでしょうが、話としてはこの最初の話が一番良かった。
他の話もそれなりに面白かったのだけど・・・・
3番目の「匿名」の男は、本当に悪い奴!
大嫌いだ!こういう人!
何らかの罰を受けるべきだよ!と突っ込みを入れたくなりました。
名前が小泉太郎というのも許せない。
小泉孝太郎さんは好きな役者さんなので、なんでこんな嫌な奴の
名前をこう設定したんだ!!
と著者の藤谷氏にも悪を感じてしまった。
★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;