発行年月:2014年11月
二人は運命を共にし、男を一人殺すことにした。
「わたしたちは親友で、共犯者」
復讐か、サバイバルか、自己実現か——。
前代未聞の殺人劇が、今、動き始める。
望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美。
夫の酷い暴力に耐える専業主婦の加奈子。
三十歳を目前にして、受け入れがたい現実に
追いつめられた二人が下した究極の選択……。
「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」
すべては、泥沼の日常を抜け出して、人生を取り戻すため。
わたしたちは、絶対に捕まらない——。
ナオミとカナコの祈りにも似た決断に、やがて読者も二人の〈共犯者〉になる。
比類なき“奥田ワールド
(幻冬舎HPより)
ナオミの章とカナコの章に分かれていますが
二人とも最初から登場します。
二人は大学時代からの親友で、最初のナオミの章では主にナオミの仕事の話。
現在の「葵百貨店」に勤務して7年のもうすぐ29歳。
百貨店の仕事上知り合った中国人の李朱美は、見た目はケバケバしい品のない
女性で最初は嫌悪感すら抱いていた相手だが、会社経営している金持ちで性格も
思ったことはズバズバ言うが親身になって何かと助けてくれる相手になっていく。
一方のカナコは銀行員の夫と二人暮らしの専業主婦。
しかし、夫の暴力に悩んでいた。
そんな二人が夫を殺害する。
計画を練って・・・。
ここでナオミが利用するのが、李社長絡みの中国人。
カナコの章では、実際、計画通り殺害したその後の二人のことが書かれていて
ハラハラドキドキが止まらない。
最後の最後までその緊張感を持続させてくれた。
殺人はいけないことと誰も思いながら、きっと誰でも二人を応援しちゃうと
思うなぁ~。
「どうか捕まらないで!!」と願いながら読みました。
が・・・強敵だったのは、殺害した夫の実の妹・陽子。
彼女にとっては大切な兄なわけだから、陽子も必死に真相究明を図るんだけど
陽子が邪魔な存在に思えてくるからね・・^^;
ホント、読者も共犯者にされちゃう作品だった!
でも面白かったなぁ~。
★★★★
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発行年月:2014年11月
生まれ変わっても、もう一度あなたと 同僚に誘われ、
初めてライブに参加したその日 から「伶也」が彼女の全てだった。
人気バンドのボーカルを愛し、支え続けた女性の半生 。
(文藝春秋HPより)
物語の最初はショッキング。
アパートの一室で男女が遺体で見つかったという新聞記事(?)。
黒沢伶也64歳・・・元人気ロックバンドのボーカル
龍羽直子70歳・・・彼を支え続けた女性。
そして物語は、二人が出会った40年前に遡って始まる。
大学院卒で理系女子の直子は、大学院卒業後、大手電気メーカーの研究室に勤務していたが
31歳で転職。
新しい職場で知り合った同僚の由佳に誘われて、今まで何の興味もなかった
ロックバンドのライブに参加し、ボーカルの伶也に魅入ってしまう。
その後、兄の伝手で彼らが利用する店の会員になり伶也と個人的に親しくなり
マネージャーの女性にも信頼を得て事務所に出入り出来る人物となる。
このあたりまでは、憧れの人に段々近づいていくので、読みながら応援しワクワク感も
ありました。
が・・・いつまでも売れ続けるものでもなく
伶也の人間的弱さもあってか、女性問題、覚せい剤使用、アルコール依存と
多くの問題を起こす。
恋人でもなく、ただの一ファンというだけで、何の関係もないような直子ですが
ただ一生懸命支えて尽くす姿は、読んでいて辛くなってきました。
伶也にそこまで尽くす理由が正直、理解出来ないのです。
が・・・直子にとっては、誰にも代えがたい存在だったんでしょうね。
直子の気持ちには、全く共感は出来ませんでしたが
直子はこれで幸せだったんだと思う事で、なんとなく納得するしかないな^^;
★★★
発行年月:2014年11月
疑心の闇、緊迫する心理戦、知られざる真実をえぐり出す戦争小説!
ペスト収束に奔走する敗戦間近の英国領ビルマ・メダンサ部落。
武装強盗団に上官を誘拐され懊悩する軍曹――
否応なく膨らむ疑心の闇、緊迫する心理戦、知られざる真実。
人間の剥き出しの心に寄り添う戦争小説の白眉。
(角川書店HPより)
主人公は軍医の伊与田中尉。
ビルマの一部落のペスト収束にあたる医師。
その医師がある夜、武装強盗団(ダコイ)に拉致され、行方がわからないままとなる。
一緒に連れ去られた衛生兵二名はやがて見つかるのだけど・・・・
語りは、中尉を護衛する立場にあった尾能軍曹。
尾能は中尉を弱弱しい容姿と軍人らしからぬ部落住民と親しげに接する様子から
軽蔑の目で見ていた。
けれど、彼が自分の任務である部落に広がるペスト収束には立派にそれを果たしたと
評価している。
行方不明になってから、そうなるまでの様子を回想して語る。
派手さはないけれど、良い作品でした。
中尉の本当の行方は想像するしかないけれど、たぶん、ビルマ住民の一人として
残ることを選んだんじゃないかな?
婚約者も居たけれど、自分が戻らないことの方が、彼女の今後には良いのでは?と
思う気持ちは切ない。
中尉の優しい人柄ゆえの決意か?
切ない話だな。
映画「ビルマのたて琴」の映像が頭に浮かんで来ました。
著者の古処さんって高齢の方かと勝手に思っていましたが・・・
プロフィールをみたら、自分よりずっと若い!
戦争によって引き起こされるどうしようもない無念さみたいなにが伝わってきました。
★★★★
発行年月:2014年11月
話したかったことと、話せなかったこと──。心の底の思いを物語にした珠玉の作品集。
ことばは、こばとになって飛んでゆき、またことばになる──。少年のはじめての秘密。自分の行く末が不安でたまらなかった頃の夢。少女のゆれ惑う性の兆し。つないだ手の先の安堵と信頼。限りなく近くまで来て、再び遠ざかってゆく死。記憶の底にしまってあった繊細な情感を丁寧に掬って描く『夏の庭』の著者による胸に沁み入る小説集。
(新潮社HPより)
6つの短編、どれも良かった。
少し暗く重たい話が多いのですが、文章が綺麗で惹きこまれるかんじ。
いろいろな記憶の物語。
<緑の洞窟>
生まれつき病弱だった双子の弟・ヒロオとの思い出
<焼却炉>
ミッション系の女子高時代、掃除のあと、使用済み生理用品を焼却炉に運ぶ
役目を自分から仕方なく買って出た。
手伝ってくれたカナちゃんとの会話の思い出。
<私のサドル>
母が使っていた自転車を使っていた高校時代の思い出。
好意を持っていた男子が女性教師との噂で退学騒ぎ。
自転車のサドルが慰めてくれた。
<リターン・マッチ>
虐められっこのあいつは虐めている全員にケットウ状を送り一人ずつ
校舎の屋上に呼び出す。
俺は、あいつを巴投げで投げつけ失神させてしまう。
が、それが機になりあいつと親しくなる。
<マジック・フルート>
小学6年から2年ほど、母方の祖父の元で暮らしていた。
祖父のピアノを弾き、ピアノの先生の元にも通わせて貰ったが、先生の姉の
ちょっと変わった網枝さんとの関わりの方が深かった。
<夜の木の下で>
両親が早くになくなり、弟の面倒を見ながら二人で生きてきた。
その弟が今28歳。今は自転車に乗って居たときタクシーと接触し頭を強く打ち
人工呼吸器で静かに眠っている。
どれも主人公にしかわからない心の深いところの記憶を語ったもの。
切なく少し重い話もあったのですが、<焼却炉>は、女性ならではの
体験が綴られていて、なんだか似たようなシチュエーションを体験しているので
懐かしくその時の情景が浮かんで来ました。
表題作は、一番最後。
哀しい結末は嫌だな・・・とドキドキしながら読んでいたけれど
希望が見えるラストでホッとしました!!
文章がとても繊細で美しいと思う作家さん。
ほかの作品も読みたいなと思いました。
★★★★★
発行年月:2014年11月
「本間は、作中で少年の死体が発見された今日この日まで、少年が死を選ぶなど、露ほども
考えてはいなかった。」
大学院を目指すという名目のもと、亡き祖父の家で一人暮らしをしながら小説を書いている
本間。ある日、その主人公であるモイパラシアが砂漠で死んだ――彼の意図しないところで。
原稿用紙の上に無造作に投げ出された少年の左腕。途方にくれながらも本間が、黒インクが
血のように滴る左腕を原稿用紙に包み庭に埋めようとした時、そこから現れたのは少年が飼
育していたトカゲの「アルタッド」だった……。
幻想的かつ圧倒的にリアルな手触りを持つシームレスな小説世界と、その独自の世界観を支
える完成された文体、そして「書くこと」の根源に挑んだ蛮勇に選考委員が驚愕した「青春
小説」の傑作誕生! 第51 回文藝賞受賞作。
(河出書房新社HPより)
最初にモイパライア少年が死んだ話には、???でした。
主人公・本間が書いている作中の人物の死が現実の世界で本間が予期せぬ死と
言われて混乱。
でも、その後の展開は、なかなかユニークで独特な世界観に引きこまれて読みました。
モンパライアは電車に轢かれて、その切断された左腕を本間は持ち帰り、原稿用紙に
包んで庭に埋めようとする。
するとその中から現れるアルタッド。
少年が可愛がっていたトカゲ。
夢のなかでアルタッドを頼むと言われた本間はその通り、アルタッドを毎日
世話する。
爬虫類は好きじゃないので、エサを食べる様子には、ちょっと抵抗ありました^^;
でも、昆虫などのほかにはコーンが好きらしいと気づき、それをあげるシーンは
なんだか和みました。
読んでいるうちにアルタッドも段々、愛おしく思えて来たし・・・・
アルタッドと本間の生活が淡々と語られるほかに特に面白いことが
起きるわけではないんだけれど、最後まで楽しんで読めました。
デビュー後2作目も期待したい作家さんです!
★★★
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女性
自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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