発行年月:2015年1月
あなたも歩いてみませんか。
小さな奇跡の森を。
いじめ、就職、恋愛、不治の病……さまざまな思いを抱えた人々の運命を変える言葉とは? 静かな感動を呼ぶ「森」のミステリー。
僕は死に場所を探しに、この森に入った――
登校拒否の息子を持つ母親、自分に合った仕事が得られず世間に不満を抱く女、余命間近である瞬間を見たいと思い続けている青年、リストラされた中年男……希望を失い、森に迷い込んだ人々に森番の青年は語り掛ける。「ここはとても気持ちのよい森なんです。どうか歩いてみてくださいませんか?」そして、最後に明かされる、森と森番に秘められたミステリーとは?
森にも、人にも、新たなる季節がやってくる――『あの日にかえりたい』『メグル』の著者が贈る希望のストーリー。
(実業之日本社HPより)
切羽詰まった心理状態で、森に来る人たち。
偶然、みつけたり、子どもの頃遊んで知っていたり・・・。
そして、それぞれが出会う、森を守る森番の青年。
青年の優しい言葉が沁みる。
自分のことを気にしてくれて、優しく接してくれる人の存在が人を救う。
どれも良いお話でした。
<色づく木------------鏡の森>
不登校になった15歳の少年。
部屋に閉じこもっていたけれど、ある日を境に何処かに出かけるのを不審に
思う母親。悪い仲間と関わっているのでは?と心配するが、行き先は森だった。
心優しい少年が、段々とまた明るさを取り戻してくれそうで、ホッとした。
<春めく木---------------我は地に伏し>
有名企業の内定をもらったが、配属場所が不服で内定辞退する。
何処にも就職しないまま、自分の能力を認めてくれて、自分の能力が
発揮できる場所を求めるが・・・。
自身過剰の人ってこういう躓きに弱いんだろうなぁ~。
<雪まつ木----------------インディアンサマー>
余命わずかな自分なら美しい景色が見られるはずと森に通う青年
切ない話だったけれど、こういう最期の過ごし方は理想的かも。
<病の木---------------夏の名残のバラ>
田舎では天才と言われたが都会の中高一貫校に編入したら下から数えた方が早い
成績。自信を無くし学校には仮病を使い通学路そばの森で一日を過ごす日々。
森番の青年が与えた病気のバラの世話。
少年に敢えて厳しく意見する森番の姿に感動。
<育ちゆく木-------------52歳の秘密基地>
名ばかりの係長。38歳から昇進せず、責任ある仕事は自分には廻って来ない。
子どもの頃、遊んだ実家そばの森に会社の帰り寄ってみる。
そして森番の青年に会い、子どもの頃会った森番の消息を聞く。
森番から聞いた話で、ちょっと元気が出て、家に帰って奥さんの言葉で救われた男。
奥さんが良い人でよかった!
<とらわれの木-------------揚げヒバリ>
退職した元正社員の男のことが許せない40歳の女性。
自分が退職したのもあの男のせい。
不審な中傷ハガキを送ったのもきっとあの男。
イライラする気持ちを癒して貰おうと、森番に会いに行くが会ったのは
見知らぬ中年の外人女性・メアリ。
「あなたは不幸な人」と辛らつな批判をする。
森番の青年とメアリの関係は?と気になる。
女同士の言い合い、それがストレスを和らげた。
<新たなる木----------------光差す場所>
不登校の15歳少年。
とても気が合う友達を失ったのは自分のせいと責めるあまり喋られなくなった。
森のなかで眠り一晩過ごしたところを森番の青年とメアリに見つけられて
介抱される。
少年が新たな気持ちでこれから生きて行けるようになって良かった!
メアリの祖母と青年の前の森番との話が素敵だったなぁ~。
★★★★★
発行年月:2014年6月
ブスでも鼻つまみでも超魅力的&パワフル!
三十二年前の七月九日に曾祖母・匹田サダは亡くなり、その翌日に私が生まれた。なんだか私は曾祖母の生まれ変わりみたいだ--。
サダは昭和二年、大分の片田舎に嫁いできて、村初めての精米所をつくり、大きな富を得た。さらに男の子を九人も産んだ。
家族を飢えさせることもなくよく働いたが、歯に衣着せぬ物言いのせいか、誰にも好かれなかった。息子たちにまでくそババアとののしられたが、それでも彼女は日本一の女太閤様だった。
「私にはな、金剛様がついちょるんじゃ。じゃあけん、精米所をやれば成功するし、子どもを産めば、みな男の子じゃ。金剛様にかぎらず神様も仏様も、自分の足でしっかり立っちょる者の味方じゃけんな」
- ●家族も隣人も卒倒! 歯に衣着せぬサダ語録
「そしたらお義母さん、体には気をつけんと。私は自分を悪く言う人の面倒は見られんけん、お義母さんは起きられんようになったら、それきりじゃと思ってください」
「私は二人産んでできやすくなっちょるけんな。一、二度ちゃっちゃとやりゃあ、すぐに腹が膨らむじゃろう」
(小学館HPより)
サダという女性の一生を描いた物語。
33回忌の法要に参加する菜穂子は、曾祖母の一生を寺の住職から数日前に
聞く。
器量が悪く、見た目は猿のよう。
実家は商家だが、田舎の農家に嫁いだサダ。
そこで9男を産み、畑仕事に精をだし、やがて精米所を作る。
なんともパワフルなサダさん。
言葉はきつく融通も利かないけれど、信念を突き通す、男気溢れる女性。
そんなサダの良き理解者は、精米所を作るとき手助けした富松。
機械の搬入などから、後の精米所の盛況ぶりを支援した男。
サダも唯一、本音で話せる相手と、富松に話している。
8人の男子を出産し、9人目の出産時、家に人が居ず、産気づき
なんとか富松が駆け付けたが、生まれたのは女の子。
「捨てて来て」と言われた富松は、赤児を抱いたまま行方知れずに・・・・。
月日が流れ子どもたちが成長。
戦争で周りの男たちがどんどん戦地に行ってしまう時代、サダは国に子どもは渡さないと
あれこれ知恵をだし、抵抗するが、村人たちからは忌み嫌われ、子どもたちも
肩身が狭い思いをする。
今の時代で考えたら、サダの考え方の方が、絶対正しいのに、この時代では
そうはいかなかったのだと思うと、戦争とは、恐ろしいものだと改めて思う。
そして、長男の取った行動は、哀しいけれど、心優しく賢い長男らしい決断。
戦後、富松がサダを訪ねて来て話した9番目の子どものこと。
やはり、富松らしい対処の仕方だったと感動した。
サダのそばに良き理解者となる女の子が1人居たらサダの人生も
もう少し明るいものだったのかも。。。
親戚一同から嫌われ者扱いのサダさんが、菜穂子が住職から聞いた話を聞き、
少し考えを変えてくれたらいいのになぁ~。
読み応え十分の物語でした!
作者は大分出身。
もしかして、ご自身の曾祖母さんの話だったりするのかな?
と考えるのはちょっと行きすぎか?^^;
著者の年齢と合わないしね^m^
他の書も是非、読んでみたいと思える作家さんです!
★★★★★
発行年月:2015年2月
“稀代の悪女”=蒲生美智留(がもう・みちる)。
天賦の美貌と巧みな話術で、人々の人生を狂わせる――
野々宮恭子のクラスに、従姉妹の蒲生美智留が転校してきたのは中一の秋だった。美智留によって、イジメと再生不良性貧血という難病から救われた恭子は、美智留の美貌や明晰さに憧れ、心酔していく。やがてある出来事をきっかけに、二人は大きな秘密を共有するに至った。
時を経て、27歳になった美智留は「生活プランナー」を名乗り、経済的不安を抱える顧客へのコンサルタント業を行なっていた。アシスタントは恭子だ。ストレス解消の散財によって借金を抱える銀行員の紗代、就職活動に失敗して家業を手伝う弘樹、働かない夫と育ちざかりの娘を抱え家計に困窮する佳恵……美智留は「あなたは悪くない」と解決法を示唆するが……。人々はどのようにして美智留の罠に堕ちてゆくのか。美智留とは何者なのか!? 奇才が描くノンストップ・ダークヒロイン・ミステリー。
(実業之日本社HPより)
美貌の悪女・蒲生美智留によって人生を狂わされた人たちの物語。
最後の法廷の場面前までが面白かった!
法廷内で明かされたどんでん返しには唖然。
ちょっと無理あるんじゃないかなぁ~?^^;
でも、まあまあ楽しめて読めました。
<野々宮恭子>
美智留の従姉妹。
中学で凄惨な虐めに遭っていた恭子だが、転校してきた美智留に救われる。
そして、やがて美智留のずっと思い描いてきた復讐に手を貸すことになる。
それはずっと美智留に家庭内で暴力をふるってきた父親を殺すこと。
<鷺沼紗子>
短大卒業後、大手銀行に入行。
仕事のストレスを、ブランド物を買うことで発散し、何とか日々を送っていた。
そんな紗子が高校の同窓会で会った恭子から従姉妹と生活コンサルタントの
仕事をしていると聞き、莫大に膨らんだ借金返済の知恵をアドバイスして貰う。
そして、銀行のお金を横領。
<野々宮弘樹>
恭子の弟(24歳)。
家業の産廃処理業を手伝っている。
幼い頃会って以来の美智留が、2か月ほど居候することになり
成長した美智留の美貌にときめく。
美智留から恭子に束縛されていると聞いた弘樹は、姉が許せず恭子を殺害する。
それを知った父親も同じく殺害。
<古巻佳恵>
夫が2年前にリストラされ、以後仕事にも就こうとせず小説家を目指すと
自室にこもる日々。
まだ中学生の娘たちを育てるためにパートで懸命に働く。
ある日、パート仲間から生活プランナーの蒲生美智留を紹介してもらい相談に
乗って貰う。
夫の生命保険の額を引き上げ、夫殺害を計画、実行。
<蒲生美智留>
複数の事件に関与しているとして、容疑者として法廷に立つ美智留。
そこで明かされたことは、衝撃的!
最後の<蒲生美智留>の章は、ちょっと「えぇ~!?そりゃないよ」と
突っ込みしながら読みました。
その前までは面白かった。
恐ろしい女・蒲生美智留。
こんな人とは関わりたくないわ~。
★★★
発行年月:2015年4月
『つむじ風食堂の夜』に連なる月舟町三部作の完結篇が開幕!
舞台は、小さな映画館〈月舟シネマ〉。
語りだすのは、ほら、いつもロビーにいる、彼。
BGMは優しい雨だれの音……。
(中央公論新社HPより)
月舟町のお話、完結編?
え~っ!
もっともっと読みたい月舟町の出来事あれこれ。
今回は、月舟シネマのご主人・直さんの飼っている犬・ジャンゴが語り。
犬目線の月舟町の面々のお話。
ジャンゴは呼び名がそれぞれ人によって変わる。
古本屋のご主人には、アンゴと呼ばれ・・・・
コンビニエンスストア勤務のタモツさんには、犬と呼ばれ・・・
シネマロビーの片隅で手作りパンを販売している初美さんには、ゴンと呼ばれる。
でも、みんなから愛されている、ジャンゴ。
ジャンゴには行ってみたい所が三か所ある。
・銭湯<月の湯>
・図書館
・喫茶店
表題のレインコートを着た犬の話は、元々はタモツさんが少しの雨なら濡れる方が
気持ちいいから傘はささないという話から、最近はレインコートを着た犬を見かける
けど、そんな犬になるなよとジャンゴに話す。
しかし、後日、タモツさんは入院したお姉さんの犬・メスの黒柴を預かったと
雨の日に黄色いレインコートを着せてくる。
ジャンゴはそれを見て・・・「言ってたことと違うんじゃないか?」と抗議の
意味を込めて興奮したら、「おまえもレインコートが欲しいのか?」と勘違いされて
水色のレインコートを買って貰うことに。
でも似合ってる・・・^m^
月舟町に行ってみたい!!
また、月舟町のみんなの様子が知りたい!
また何かの話のワンシーンでもいいから月舟町を書いて欲しいなぁ~。
★★★★★
発行年月:2014年7月
「結婚おめでとう」虚ろな一言をなんとか書き終える。
サークルの同期が結婚するたびに行われるメッセージアルバム作りだ。
けれどカフェの店内に陣取る華やかな衣装に身を包んだ一団の中で、私は落ち着かない。だって、私は彩音から招待状をもらっていない。
他のみんなは式に呼ばれているのに、どうして私だけ……。
もうすぐ始まる、招かれていない結婚式に出席して、一体何をしようとしているのだろう――。(『届かない招待状』)
OL、ママ友、中高生……。さまざまな年代、立場の女性の友情に隠された想いを情感あふれる筆致で描ききる!
注目度ナンバーワンの新鋭が贈る連作ミステリ。
(東京創元社HPより)
短編集なのに、どれも内容が濃い!
凄いなぁ~、この作家さん!
<届かない招待状>
大学時代のサークルの親友の結婚式に自分だけ招待状が届かない。
悩みながら、招待状がないまま式に出席。
そして、その理由を知る。
<帰らない理由>
中学の同級生・くるみが交通事故死。
親友だった瑛子と、彼女の幼馴染で最近付き合い始めた僕が彼女の部屋に居る。
お互いがお互いを早く帰ればいいのに・・・・と思いながら。
<答えない子ども>
4歳の娘が描く絵を毎日、誉め写真に撮るのが日課。
ある日、アトリエ教室で知り合った、そうくんママの家を娘と訪ねる。
常々、そうくんママのガサツさが苦手だった。
家に帰ってきて娘の描いた絵がないことに気づき・・・
<願わない少女>
中学入学後に知り合った悠子は漫画家志望。
自分もそれに合わせるように漫画家志望と言ってしまうが、悠子は相談なく
漫画家の夢を捨てた。
<正しくない言葉>
老人ホームに夫婦で入居した澄江。
ある日、同じホームの親しい孝子の息子夫婦が何やら孝子のことを話しているのを
聞いてしまう。
どれも登場人物たちの心情が巧く表現されていて、ちょっと重苦しい状況も
最後は、丸く納まるという話たち。
特に最後の話は、これから迎える老年期を考えさせられたなぁ~。
ある程度、元気なうちに澄江夫婦のような選択をするのもいいか?とか
思ってしまった^^;
そこで、孝子みたいな友人が出来たら最高!
子どもに親として「年を取るのも悪くないわよ~」と示すことが出来る
親でずっと居られたら素敵だなとこの話を読んで思った。
★★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;