発行年月:2012年7月
そしてぼくは、何も何もできない。頑張ってモールス信号を覚えたって、まだ、空は燃えている――。
終戦のまさにその日の朝、焼け野原の東京から故郷広島に汽車で向かった「ぼく」。悲惨で過酷な戦争の現実から断絶された通信兵としての任務は、「ぼく」に虚無と絶望を与えるばかりだった――滅亡の淵で19歳の兵士が眺めたこの国とは。広島出身の著者が伯父の体験をもとに挑んだ、「あの戦争」。鬼気迫る中編小説。
(新潮社HPより)
著者が伯父の手記を元に書かれた物語だとか。
あとがきを読んで、著者がこの物語を書こうと思った気持ちが
よ~くわかりました。
戦争体験をした方の手記にしては、淡々としていて、残酷な場面とか
殆どない。
身長が152cmと小柄だったことで、戦地ではなく通信兵としての任務を
与えられ、日々通信機に向き合っていた。
そしてある日、ドイツのポツダムで連合軍が日本の無条件降伏を要求することに
合意したとする放送を受信。
その後、すぐに通信隊は解散。
通信機器などは壊して火の中に葬り、上官からそれぞれ故郷に帰れとの命を受ける。
そして、東京駅から始発(5時25分発)の汽車に乗り、故郷の広島まで
向かう著者の伯父。
汽車のなかで見た景色、汽車のなかで会話した母と子。
汽車を降りてみた故郷、そこで出会った家財道具らしきものを運ぶ姉妹。
戦争を終えて初めてこの国に起きたことが大変なことだと知ったかんじ。
今までの戦争体験記とは異なるものでしたが、読んでいるとやはり
尋常じゃない不安な気持ちが沸き起こって来て
こんな気持ちに実生活のなかでなることがないように・・・と祈りたくなります。
この作品を執筆中に3.11が起きたことも、何か不思議な巡り会わせの
ような気がします。
短い話ではありますが、やはり西川さんの書くものには
メッセージ性が強いように思います。
★★★★★
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発行年月:2013年7月
一九八八年、恋人を長崎に残し、ケニアの戦傷病院で働く日本人医師・航一郎。「オッケー、ダイジョブ」が口癖の彼のもとへ、少年兵・ンドゥングが担ぎ込まれた。二人は特別な絆で結ばれるが、ある日、航一郎は……。二〇一一年三月、成長したンドゥングは航一郎から渡された「心」のバトンを手に被災地石巻に立つ。名曲をモチーフに綴る感涙長篇。
(幻冬舎HPより)
さださんと親交のある柴田紘一郎医師がモデルの物語だそうです。
さださんは、文章巧いなぁ~。
物語では日本からケニアの名クールにある長崎大学熱帯医学研究所に出向した
島田航一郎医師が主人公。
なかなかユニークな人物で、この辺は実在のモデルを知っている、さださんの
印象で描かれたのかな?
ケニアの過酷な環境のなかで、生きて居る人たちのことも知り
そんな場所での医療もまた過酷なもの。
運ばれる人たちは、内戦で心も体も傷ついた人たち。
治療した少年兵・ンドゥグとの出会いが物語を広げていく。
航一郎と接するうちに自分が生きる道を見つけたンドゥグ少年。
彼が成長して医師となり、東日本大震災で滅茶苦茶になった地にケニアからの医師として
赴任し、そこで航一郎と同じように人々と接し、その姿を見た少年・あつおが
今度はンドッグと同じように志を高く持つ。
感動の物語でした。
映画化されたものを観たくなりました!
★★★★★
発行年月:2015年9月
作品の幅を広げ進化し続ける作家の最新作は大切な人との絆を感じる傑作短篇
どうか女の子の霊が現れますように。おばさんとその子が、会えますように。交通事故で亡くした子を待ちわびる母の願いは祈りになった――。辻村深月が”怖くて好きなものを全部入れて書いた”という本格怪談集。
(角川書店HPより)
怪談が13編。
夜読んだら怖かったのもありましたが・・・
大抵の話はソフトで良かった。
<十円参り>
<手紙の主>
<丘の上>
<殺したもの>
<スイッチ>
<私の町の占い師>
<やみあかご>
<だまだまマーク>
<マルとバツ>
<ナマハゲと私>
<タイムリミット>
<噂地図>
<七つのカップ>
一番怖かったのは・・・<やみあかご>
その場面を想像しながら怖すぎる。
夜泣きした赤ちゃんを他の部屋に連れて行き、一緒に遊んで
満足したであろう頃に元の部屋に戻ると・・・・
キャ~~思い出しても怖い!!
<ナマハゲと私>も怖かった。
元々、ナマハゲって怖いと思っていたので、この話はホラーです!!
なんでこんな風習あるんだろ?
絶対、実際には見たくない!
トラウマになっちゃう子どももいるんじゃないのかなぁ~?
最後の話<七つのカップ>は、目の前で小学生だった娘の事故を目撃した女性が
その事故現場の交差点付近にいつも立っている話。
この女性のことを気にかけた少女たちの優しさに感動した。
七つのカップがもたらした奇跡も感動的で
切ないけれど、良い話でした!
★★★★
発行年月:2015年2月
「愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない」
長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。
悲しさを“演じる”ことしかできなかった津村は、
同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが…。
突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。
人間の関係の幸福と不確かさを描いた感動の物語。
(文藝春秋HPより)
作家の衣笠幸男(さちお)・・・作家名は津村啓。
妻・夏子は友人の大宮ゆきと毎年恒例の旅行に出かけ、その先でバスが崖下に
転落の事故で亡くなった。
大宮ゆきも亡くなり、その家族(夫の陽一、小6の息子真平、4歳の灯)との
交流により、夏子の死を少しずつ受け入れて行く。
幸男は、妻との間に子どもはなく、夫婦の関係も冷めていた。
事故後、妻の携帯を開き、送信されずに残っていた自分宛てと思われる
メッセージにショックを受ける。
<もう愛していない。ひとかけらも。>
妻の死は哀しいけれど、泣いたことはなく日々が過ぎる。
そして、妻とともに亡くなった大宮ゆきの夫・陽一から連絡を貰い会う。
やがて、幸男は大宮家に出入りし、陽一の留守中の家の手伝いを買って出る。
子どもにどう接していいのか戸惑いながら、4歳の灯と過ごす場面は
微笑ましかった。
家族を亡くした者同士が支え合っているかんじだったけれど、やがて気持ちの
すれ違いが起きて、一旦は家族から離れる幸男。
幸男の気持ちの移り変わる様子が、見事に表現されていた。
妻が亡くなったことで、気づくこと。
これから自分がどう生きるか?
妻を亡くして、いろいろな人との接触があって、改めて妻のことを考えて
初めて涙する場面はジ~ンと来ました(/_;)。
よくある、立ち直り前を向いて歩きはじめましたという感じではない
もっと複雑な想いがあって、ああ、やっぱり巧いなぁ~と思いました。
大宮家も良い家族でした!
真平も灯も素直で可愛かったなぁ~。
感動の物語でした!
★★★★★
発行年月:2014年10月
大災厄に見舞われた後、外来語も自動車もインターネットも無くなった鎖国状態の日本で、死を奪われた世代の老人義郎には、体が弱く美しい曾孫、無名をめぐる心配事が尽きない。やがて少年となった無名は「献灯使」として海外へ旅立つ運命に……。 原発事故後のいつかの「日本」を描いたデストピア文学の傑作!未曾有の“超現実”近未来小説集
(講談社HPより)
表題作が一番長い話ですが、5つの話が収録。
違う話ですが、全部、同じ世界観を色々な主人公たちで書いたかんじ。
恐ろしかったです。
原発事故後の日本がこんな風になったら・・・・と思うと。
表題作の<献灯使>は、100歳を優に超えた老人と暮らす曾孫の無名の話。
無名の母は、彼を産んだ3日後に息をひきとり、父親はそのショックからか
逃げだすように姿を消し行方知れず。
無名は優秀な子ども。
彼の能力を国際医学研究が分析し世界中の人々に役立てるため献灯使となることを
受け入れる。
彼のその後が気になるのだけど・・・その後の短編にその答えはあったのか???
その他の話
<韋駄天どこまでも>
<不死の鳥>
<彼岸>
<動物たちのバベル>
平成の時代がとっくに終わった時代の日本が描かれている。
それを読んでも不安になる。
著者は、ベルリン在住だとか。
なるほど・・・。
他所から見た今の日本の現状を憂い警告を示したものなのか?
★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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