発行年月:2015年9月
殺人者は極刑に処すべきだ。親は子の罪の責任を負うべきだ。
周囲は変調に気づくべきだ。
自分の子供が人を殺してしまってもそう言えるのだろうか。
読み進めるのが怖い。だけど読まずにはいられない。
デビューから10年間、少年事件を描き続けてきた薬丸岳があなたの代わりに
悩み、苦しみ、書いた。この小説が、答えだ。
(講談社HPより)
仲が良かったと思っていた同級生を14歳の少年・翼は殺害した。
重苦しいテーマですが、少年犯罪について読みながら、いろいろと考えさせられた。
加害者少年・翼は、両親が離婚し、母親と二人暮らし。
母親は仕事で留守がちで夜の帰宅も遅く、放課後は友人たちが来る日が多かった。
被害者になった少年・優斗もその一人で、母親が4年前病死した後、弁護士の父親が
再婚した。
お互いの境遇に似たものを感じ、翼と優斗は親しくなったのだけど・・・・。
事件の真相をなかなか語らない翼。
でもその真相を語り始めると・・・
なんだか胸が痛くなって、本当に辛かった。
自分の子どもが翼だったら・・・と思うと堪らない。
親はどうするべきだったんだろう?
後悔だらけの日々になるでしょう。
また被害者の弁護士の父親の感情も納得。
皆の言葉がそれぞれ痛いほどよくわかる。
翼が父親に投げかける言葉が印象的
「心とからだとどっちを殺したほうが悪いの?」。
冷静に考えればからだを殺した方が悪いに決まっているけれど、父親が即答できなかった
気持ちも充分わかって辛い。
しかし、少年法はやはりちょっと甘くないかな?とも思ってしまった。
模範的態度で少年鑑別所で過ごしたからと言って数年で社会復帰できるのは・・・・。
本人の為にももう少し違う段階を踏んでからの方がいいんじゃないか?
難しい問題だ。
子どものSOSに敏感に反応できる親でありたいけど、それもまた難しいことかな?
親以外に身近な発信場所があること(福祉関係で)を学校教育のなかでも
子どもたちに頻繁に教えることも必要かも。
★★★★
発行年月:2016年6月
怪我で引退した元ストリッパーのノリカは故郷で、自分の店を持つことを決意する。
ダンサーを募集すると、二人の若い女性が現れて……。
師匠から弟子につなぐ踊り子の矜持を鮮やかに描いた傑作長編。
(集英社HPより)
桜木さんと言えば、北海道。
そして、ちょっと暗い境遇の女性。
今回の主人公は、怪我のため踊ることから離れたストリーパーノリカ。
東京を離れ、札幌に戻り、空き物件を自身の店に。
その物件を世話してくれた不動産会社の竜崎は、元バーテン。
ノリカがダンススアターを開業すると聞き、ダンサー2名を連れてくる。
瑞穂(23歳)とみのり(20歳)。
そして竜崎も店のバーテンダーとして働く。
巧いこと集まったメンバーだけど、皆良い感じで、店の繁栄間違いなしね~と
すぐ感じた。
そして、その通りになるのだけど、色々な事情が重なり1年後には閉店の運び。
ノリカが師匠・静香を訪ねる場面は感動的だった。
ノリカの元を訪ねて来た元の常連客でノリカのファンのおがちゃんとの
話も良かった。
そしてノリカ自身も怪我の回復もあって、再びストリッパーの世界に戻る。
ストリッパーってよく知らない世界だけれど、こういう物語読むと
ダンサーとしての意識は凄く強いプロなんだなと思う。
ちょっとした偏見が崩れました。
登場人物たちが、店の閉店後は、それぞれ別の場所で幸せになれるといいなぁ~。
いつもの桜木さんの作品に比べたら明るめでしたが、こういう感じも好き。
★★★
発行年月:2016年8月
この男、 前代未聞のトンデモ作家か。 はたまた推理冴え渡る名刑事か! ? 中山史上最毒・出版業界激震必至の本格ミステリ! 殺人事件解決のアドバイスを仰ごうと神保町の書斎を訪れた刑事・明日香を迎えたのは、流行作家の毒島。虫も殺さぬような温和な笑顔の持ち主は、性格の歪んだ皮肉屋だった。捜査過程で浮かび上がってきたのは、巨匠病にかかった新人作家、手段を選ばずヒット作を連発する編集者、ストーカーまがいの熱狂的な読者。
ついには毒島本人が容疑者に! ? 新・爆笑小説!
(幻冬舎HPより)
作家であり刑事の毒島・・・いいですね~。
柔和な表情で言うことは辛辣。
名前通りの毒気多い人です^^;
短編連作の形で次々起きる出版業界絡みの殺人事件。
出版業界の知らないことも色々学べて興味深く読めた。
<1 ワナビの心理試験>
新人作家の賞に応募してきた作品について、辛辣な評価を送る下読み担当の百目鬼が
殺害される。
<2 編集者は偏執者>
作家歴の浅い作家の編集担当だった編集者・斑目が殺害される。
<3 賞は獲ってはみたものの>
双龍社新人賞受賞式に選考委員の一人でもあった作家・桐原夢幻が出席。
式の後は恒例の説教部屋で、受賞者を含め、過去に新人賞を獲りながら
その後、目立った作品を書いていない後輩作家に説教。
その桐原が殺害される。
<4愛讀者>
作家・高森京平が自身のトークショー後に殺害された。
トークショーに行っていたのは、彼を崇拝する読者たちと辛口書評を自身のブログに
綴る主婦など。
<原作とドラマの間には深くて暗い川がある>
毒島の人気シリーズの小説がドラマ化されることになる。
毒島の編集担当、番組プロデューサー、シナリオライター、それぞれの
立場からの意見がかみ合わず・・・・
番組プロデューサーが殺害される。
最後の話は、一番あり得そうな話。
殺しまでにはいかなくても、それぞれの立場での意見相違によるギクシャクした
人間関係はあるだろうなぁ~。
それにしても毒島さんのセリフは、毒があって面白い。
表紙の絵は、雰囲気にピッタリ!
★★★★
発行年月:2016年1月
でも、僕らは探していたんだ。見えない未来を。この場所で――。
夢、進路に、恋……、真剣に向き合ったあの日々が、いまの僕を支えてくれているんだ。
1981年、札幌。喫茶店<D>でアルバイトをしている大学生・幸平のもとに、東京で働いているはずの姉が「しばらく泊めて」と突然、現れた。幸平は理由を聞き出せないまま、姉との暮らしを始める。
一方、<D>では、オーナーと店長が「金と女」のことで衝突してしまう。そんな二人を見て、幸平たちは“ある行動”に出る。それは一人の女性を守るためだったが、姉の心にも影響を与え……。
「東京バンドワゴン」シリーズで人気の著者による喫茶店に集う若者たちの苦悩と成長を描いた長編小説。
(PHP研究所HPより)
札幌で大学に通いながら喫茶店「D」でバイトしている幸平が主役。
バイト仲間の大学生たちが皆、いい。
人のことをちゃんと思い遣って行動できる人たちの集まりは和やかで・・・。
でもそんな和気藹々の状態から、店の常連客でもある高校生のヒロコちゃんのこと。
喫茶店経営の社長と店長の確執。
それから、東京の商社で働いている幸平の姉の突然の訪問などから
物語は、色々な方面でちょっとした問題が沸き起こる。
でも、バイトメンバーたちがそれらの問題に取り組み、なんとかいい方向に持って
行こうとする姿が微笑ましい。
こんな場所でバイトしたら、良い人生経験になるだろうなぁ~。
それぞれ社会人になった姿を知りたい。
ミュージシャンになったり、作家になったり・・・・・。
小路さんの物語は最後、なんとか丸く納まるので、安心して読めるなぁ~
★★★
発行年月:2016年7月
「直木賞の時に帰ってきます」
あの日、この場所で交わした約束があった。
渾身の感動長編、堂々の完結。
辻村深月が本当に書きたかった物語!
昭和46年、新館への建て替えを経た東京會舘。
緊張で肩を震わす舞台女優、東日本大震災の日、直木賞授賞を知らされた青年......
優しさと慈しみに満ちた物語は、ついに終章(フィナーレ)へ
(毎日新聞出版HPより)
上巻も良かったけれど、下巻がまたいい!
どの話も感動した!
<第6章 金環のお祝い 昭和51年(1976年)1月18日>
今年金婚式を迎えるはずだった夫は他界して2年。
建築士だった夫に初めて東京會舘に食事に連れて来て貰い緊張しながら
フルコースの仏蘭西料理を味わった思い出もある。
久しぶりに訪れ、新しくなった東京會舘内を見て廻るうち、旧館にあったものに
再び出会え、夫の姿も見える気がした。
<第7章 星と虎の夕べ 昭和52年(1977年)12月24日>
毎年恒例の越路吹雪のショーのある日。
営業事務所に配置換えになり2年目だが未だに接客に慣れない志塚(21歳)。
上司に頼まれ越路吹雪のマネージャー・岩谷時子を探して来るように言われる。
越路が「虎をかいてもらわなきゃ困る」と言っているという。
<第8章 あの日の一夜に寄せて 平成23年(2011年)3月11日>
久しぶりの友と再会するため東京に。
そして大きな地震に遭遇。地下鉄もJRも不通になり行き場に困る。
クッキングスクールで自分たちが最初に会った東京會舘ならば・・・と
4人で向かい、電車が動くまで居ても良いと快く滞在を許してくれる。
翌朝、電車が動き、それぞれ帰路に。
家では、東京會舘のクッキングスクールのシニアクラスに通う夫がカレーを
作って待っていてくれた。
<第9章 煉瓦の壁を背に 平成24年(2012年)7月17日>
5回目の正直で直木賞受賞した作家の小椋真護。
受賞が決まったら東京會舘。
その東京會舘に初めて行ったのは中学生のとき。
単身赴任中の父親が群馬に住む母と自分を食事に誘ってくれた。
高校合格のとき、大学入学前にも。
そして大学入学前の食事で進路のことで大ゲンカになり以来、疎遠に。
<第10章 また会う春まで 平成27年(2015年)1月31日>
大正11年創業にして93年目で2度目の建て替えが決まった東京會舘は
平成30年の春までの3年間休業する。
その最後の日、最後の結婚披露宴が行われる。
歴史ある東京會舘の物語。
そこで多くの物語が実際、生まれてきたんだなぁ~。
どの話に登場する従業員の心遣いが温かくて、接客のお手本というかんじ。
上巻で出て来た人が再び年を経て下巻で登場するのも嬉しかった。
皆が幸せになれる話は、読んでいて楽しかった!
まだ一度も行ったことがない場所ですが、いつか行ってみたいな~。
★★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;