発行年月:2018年3月
文藝編集者として出版社に勤務し、定年を迎えたあとはカルチャースクールで小説を教えていた澤登志男。女性問題で離婚後は独り暮らしを続けているが、腎臓癌に侵され余命いくばくもないことを知る。
人生の終幕について準備を始める中、講師として彼を崇拝する若い女・樹里は自分の抱える闇を澤に伝えにきたが-―
激情に没入した恋愛、胸をえぐるような痛恨の思いを秘めて皮肉に笑い続けた日々。エネルギーにあふれた時代を過ぎて、独りで暮らし、独りで死ぬという生き方は、テレビで繰り返し言われるような「痛ましく、さびしい」ことなのか。
ろくでもない家族でも、いさえすれば、病院の付き添いや事務処理上の頼みごとができて便利なのだろうか。生きているうちから、人様に迷惑をかけないで孤独でない死を迎えるために必死に手を打ち備えることは、残り少ない時間を使ってするようなことだろうか。
プライド高く、理性的なひとりの男が、自分らしい「死」の道を選び取るまでの内面が、率直にリアルに描きつくされる。
人生の幕引きをどうするか。深い問いかけと衝撃を与えてくれる小池真理子の真骨頂。『沈黙のひと』と並ぶ感動作。
(文藝春秋HPより)
末期がんで余命短い、澤 登志夫(69歳)。
小説講座の講師を引退。
講座を受けていた宮島樹里(26歳)。
若い頃は、女性問題などあった澤だけど、樹里に対しては始終、理性的。
特殊な過去の体験を持つ樹里。
以前、提出し、澤から褒められた作品は、実話だという。
2人は変に親密になったら興ざめしたけど、良い感じの距離感を保ったままで
終わって、良かった。
澤が選んだ最期は、皆が出来る物じゃないから、これを読んでもすぐ真似する
人は居ないと思うけれど、自死はやはり誰かしらに迷惑かけるからなぁ~。
でも、こんな風に苦労して自分の望む死に方を演出しなくてもいいような
終わり方が誰にでも選べるようになったらいいのにな。
物語のなかで出て来る アルノルト・ベックリンの「死の島」。
検索して観てみた。
なるほど・・・暗くて寂しい絵だけど、ずっと見ていても飽きない
不思議な魅力のある絵だった。
この表紙の絵も、雰囲気あって悪くないけれど。
人の死を扱う物語だけれど、澤の淡々と自分の最期を演出していく姿は
なんだか哀しいけれど、心に響いた。
★★★★
発行年月:2018年1月
「大切な人の死」で知る悲しみとその悲しみの先にある未来
誰もが自分の人生を生きている
益田ミリ、新たな代表作! 珠玉のエッセイ20編を収録。
(毎日新聞出版HPより)
叔父さんの死と父親の死についてのエッセイ。
亡くなることを永遠のおでかけと例えたのは、巧いなぁ~と感心。
哀しみも少し和らぐ気がする。
親しくしていた人が亡くなったら哀しいのは当たり前だけど
ミリさんのご家族は、それを受け止めて明るく前を向いている。
哀しみの日々のなかにも、ちょっとしたことで笑ったり出来るのは
いいことだと思う。
亡くなったすぐ後でも明るい雰囲気で、亡くなった人の思い出話とかしたら、
きっと亡くなった人も嬉しいんじゃないかなぁ~。
なんだか、温かい気持ちになれる1冊だった。
★★★★
発行年月:2017年10月
著者の新境地を開く七編
別れた不倫相手の左腕と暮す「くちなし」、
運命で結ばれた恋人に会うと体に花が咲く「花虫」など
繊細に紡がれる傑作短編集。
(文藝春秋HPより)
直木賞候補だったんだぁ~と読んでから気づく。
独特な妖しい世界観で統一された短編集。
SF?ホラー?
今まで読んだ彩瀬さんと少し雰囲気違って、これはこれで面白かった。
最初からインパクト大の表在作<くちなし>
別れを告げられ、何か贈らせてほしいという恋人に左腕が欲しいと頼み
その希望を叶えられる。
腕は十分に私を褒め、いたわり、甘やかせてくれた。
<花虫>
お互いの体の一部に咲く花を見つけ結婚した男女。
体のなかに侵入した羽虫によりコントロールされる一生。
<愛のスカート>
学生時代好きだった恋人と偶然、再会。
元恋人が今、好きなのは普通の主婦。
デザイナーの彼にスカートをプレゼントしてあげたらどうかと提案し
彼もその提案に乗る。
<薄布>
家庭を顧みない夫を憎む。
ママ友の集まりで知った:人形遊び:。
北から来た綺麗な少年との逢瀬を楽しむ。
<茄子とゴーヤ>
3か月前に夫が不倫相手と一緒に交通事故死。
髪を切って、カラーをしようとお店を探し、近所の床屋に入ってみる。
禿げ頭の無愛想な男に相談。
カラーは取り寄せるから先ずはカットだけと。
その後、茄子色に髪を染めて貰い、なかなかの出来映え。
禿げ頭の男が育てているゴーヤを食べないからと店に行くたび貰う。
男と普通に会話するほどの仲になる。
<山の同窓会>
3回目の産卵を果たした女は大抵、力尽きて死んでしまう。
3回目の妊娠をしている彼女たちに会うのは、最後のお別れのチャンス。
人ではない異形なものの話が多かった。
ちょっと不気味だけど、先が気になるのでスラスラ。
そんななか、<愛のスカート>と<茄子とゴーヤ>は
ちょっと微笑ましい人と人のやり取りなので、楽しく読んだ。
こういう話の方が、わたしは好きだな。
表題作の<くちなし>は、妖しく怖かった。
やはり一番、印象に残る話だった。
★★★★
発行年月:2018年1月
たとえ世界中が敵にまわっても、僕だけは味方だ。 公衆浴場で赤ん坊を預かるのが仕事の小母さん、 死んだ息子と劇場で再会した母親、 敬愛する作家の本を方々に置いて歩く受付嬢、 ひ孫とスパイ大作戦を立てる曽祖父——。 取り繕うことができない人々の、ひたむきな歩みが深く胸を打つ。 あなただけの〈友〉が必ず見つかる。静謐で美しい傑作短編集!
(幻冬舎HPより)
7つの短編。
どれも良かった。
優しい流れるような日本語・・・小川さんらしい。
<先回りローバ>
吃音のあるボクの前に現れた老婆(ローバ)。
両親は本当の誕生日を6日経った日に届をだした。
だからボクの声はその空白の6日間に取り込まれる。
8歳の本当の誕生日をローバは祝ってくれた。
<亡き王女のための刺繍>
出産祝いのよだれかけを、りこさんのお店で注文。
りこさんの刺繍の腕はピカイチ。
頼んだ刺繍は、ツルボラン。冥界の地面に咲く花。
<かわいそうなこと>
かわいそうなことリストをつけている。
社会科見学で行った自然史博物館に骨が宙に展示されている
シロナガスクジラ。地球上で一番大きな動物。食べ物は小さなオキアミ。
皆に大きいと言われ、展示されている心臓の模型は子どもたちの遊び場。
ママの雑誌にあった集合写真に名前が記載されていない人。
・・・・ひとりおいて・・・・。
そのひとりおいておかれた人。
かわいそうなことはどこにも潜んでいる。
<一つの歌を分け合う>
幼い頃から兄弟のようにしていた従兄が大学の寮のベッドで死んでいるのを
友人により発見される。
伯母は納骨が済んでしばらくすると、「あの子がミュージカルで主演を
つとめているから見に行かなきゃ」と。
高校生の僕は一緒にミュージカル「レ・ミゼラブル」を観に行く。
<乳歯>
少年は1歳に満たないときから歩きまわり、迷子になり両親の
心配のたねになる。
迷子になるのは、活発だからではなく、何か一つに心を奪われ、
そこに視点が定まり、どこまでも追っていくから。
そして海外旅行先でも少年はひとり歩き廻り、聖堂内へ。
そこで色々なものを見て、廻る。
解説してくれた見知らぬ男。
父親に発見されたときには、その男は何処にもいなかった。
その夜、乳歯が抜けた。
<仮名の作家>
作家M・Mをこよなく愛す。
新刊が出ればあちらこちらで買い求め40~50冊になったら
それを気付かれないように町のあちらこちらに置いて廻る。
M・Mの書いたものは全部、暗記している。
M・Mと会える読者の会に出席する。
そのたびに彼に質問し、彼が答える。
無言の合図を送り合い、愛を確かめ合う。
<盲腸線の秘密>
廃線の危機にある盲腸線を救おうとボクと曾祖父は毎日、電車に乗る。
乗るときは、ストーリーをつくる。
あるときはスパイ、あるときは政治家、元囚人、
それからただの幼子と、その子守りをしているだけの隠居老人として。
<口笛の上手な白雪姫>
小母さんは公衆浴場の一部分だった。
浴場の裏庭の小さな小屋に住み、子どもたちは
白雪姫が小人と暮らしていた小屋を連想した。
小母さんは、公衆浴場営業しているときは、女性がゆっくり入浴できるように
幼い子どもの世話をしていた。無愛想で華奢だけど
鳴いている彼らを落ち着かせることができた。
その武器は口笛。けれど大人たちの耳には届かない。
表題作もいいけれど、一番気に入ったのは
<かわいそうなこと>。
少年の考えるかわいそうなこと・・・・なるほどね~と思った。
小川さんの言葉遣いが好き。
★★★★
発行年月:2017年6月
ちょっぴり怖い、だからおもしろい。
これぞエンタメ!!
前代未聞の「ミステリー短編バトンつなぎ」
「宮辻薬東宮」(みやつじやくとうぐう)
宮部みゆきさんお書き下ろし短編を辻村深月さんが読み、短編を書き下ろす。その辻村さんの短編を薬丸岳さんが読み、書き下ろし……今をときめく超人気作家たちが2年の歳月をかけて“つないだ”ミステリーアンソロジー。
(講談社HPより)
豪華な作家陣!
ホラーテイストのアンソロジーだけど、夜、寝る前に読んでも平気だった^m^
<人・で・なし 宮部みゆき>
中学生の時に体験した不思議なこと。
新居に引っ越した先で不可解な現象が・・・。
新居の前で家族写真を撮る。家のなかの写真を撮る。
するとあるものが上手く写らない代わりにない物がそこに写る。
それから家族全員がノイズが聞こえるようになり体調を崩したりと不幸がつづく
<ママ・はは>
親友の母親の話を聞く。
自分の思い通りにさせる母親が疎ましく、決定的に我慢できなかったことは
成人式の着物を買ってくれるというので選んだ着物を購入後、クーリングオフした
こと。
しかし、友人が見せてくれた成人式の写真は、友人が気に入って買って貰った
という色の着物。その隣の母親とは、仲良さそうに写っている。
<わたし・わたし 薬丸 岳>
16歳で家出して東京に出た由香里。
お金もなく困っていたところを助けてくれた怜治。
だが、怜治は詐欺師だった。そして危く殺されそうになった。
怜治は逮捕され、由香里は保護され家出人と言う事で父親が身元引き取りに
来る。
が・・・・父親が警察に来て、娘の家出は12年前のことと。
<スマホが・ほ・し・い 東山彰良>
スマホがほしいと母親に頼むがムリそう。
でも壊れたスマホを手にいれた春陽。
そのスマホは、人が死ぬ時間と場所を教えてくれるスマホだった。
<夢・を・殺す 宮内悠介>
子どものころからコンピューターのプログラミングが趣味。
従兄弟と趣味でゲームソフトを作っていた。
成人して入った会社も最初はゲーム開発の会社だったが、今はパチンコ台の
ソフト開発をしている。開発中のプログラムに幽霊パグが頻繁に発生し
その処理に追われる日々。
やはり、読みやすく面白かったのは前3人。
残り2つは、悪くないけど、ちょっと読みにくかったかな?
特に宮部さんと辻村さんの作品は、リンクしている感じで面白かった!
写真が共通の題材。
写真ってホラー話には、よくあるし、ぞわぞわした。
因みに皆さんの記念撮影が講談社HPにありました。
こういうアンソロジー楽しいな。
★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
