発行年月:2024年3月
離婚して一年。幸彦は一念発起して、ある「学校」に通い始める。
そこには様々な事情を抱える生徒たちが通っていた――。
忙しすぎて“生活”が後回しになっている、大人たちへの応援歌!
(中央公論新社HPより)
妹の勧めで通い始めた山之上家事学校(男性のみ)で、色々な家事を学び
今までの自分の行動や考え方を反省し、変化していく姿は
応援したくなるものだった。
離婚した妻と娘(もうすぐ小学生)が実家のある大阪にいるので転勤願いで
大阪の支社に願い出て移動。
新聞記者の政治部から新聞の家庭面担当に。
家事学校では宿泊しながら授業を受けることも可能。
転勤に伴い、2週間のリフレッシュ休暇を使って家事学校へ泊りながら
通う仲上幸彦(43歳)。
途中、元妻がコロナ感染し、娘の理央を預かることを申し出て
5日間預かる。
それで結構、元妻・鈴菜の気持ちも軟化したかんじ。
感染は嫌なことだけれど、この場合はいいキッカケだったと思う。
家事に対する考え方は、大抵、ここに登場する男性たちの通りでしょう。
男性がやれば「協力的」だと褒められるのに、女性が少し手を抜けば叩かれる。
共働きの夫婦なら、こんな考え方では、もう女性はやってられないって
なって当然。
以前の女性は、そういうことをずっと仕方ないと我慢してきたけれど・・・・
これは男性全員が読むべきだと思うなぁ~。
★★★★
発行年月:2024年3月
働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編!
(集英社HPより)
主人公・小松茉子(27歳)。
前の会社で同僚に対してのわだかまりを抱えつつ、新たな職場で奮闘。
古い会社のルールに疑問を感じる。
・昼休みは電話番をしながら食事。
・就業時間後の残業は、タイムカードを押してから
これは、まずい。
ブラック過ぎる。
こういう会社、今も実際にありそう。
異を唱える人もいない・・・ずっとそれでやってきたから・・・と。
職場の人間関係にも戸惑いつつ・・・
それでも、根っからの悪い性格の人がいないのは救いかな?
無口で最低限のことしか話さない女性パート職員の亀田もいいと思う。
その息子・善哉は、陽気でいい感じ。
茉子とも親しくなっていく。
父親から後を継いだ吉成伸吾は、頼りないかんじだけれど、彼なりに
頑張っているのがいい。
頑張りすぎて倒れても、結局、続ける決断をしたのは、良かった。
社長一人が頑張らなくても、皆で頑張ればいいんじゃない?という雰囲気に
なっていったのは茉子の存在が大きかったと思う。
前の会社できまずい関係になった同僚とも再会し、関係が修復されたのも
良かった。
大丈夫そうじゃないひとに「大丈夫?」と聞いて「大丈夫です」と言われたとき
安心してしまうのは、本当に危険なこと。
うんうん、わかる。
違う聞き方で何度も本当に大丈夫なのかを確かめないと。
でも、つい言っちゃう「だいじょうぶ?」
逆に聞かれることもある。
本当に大丈夫な時以外「大丈夫です」は、言わないこと・・・再確認した。
表紙の絵は可愛らしいけれど、内容は結構、シビアで考えさせられた。
寺地さんらしい本。
★★★
発行年月:2004年12月
「死」を想ったこと、ありますか?目の前に現れた、黄泉の国への使者。
死と向き合ったとき、生きることの実感と歓びを知るのかもしれない。
おとぎばなしをモチーフに描く寓話的ミステリー
(発行/双葉社)
死神・島野が関わる二人の女性との話。
一人目は佐野原多美。会社内の思いを寄せる男性の婚約者・相馬絵里を羨ましく
思い、つい絵里が死ぬという想像を頭のなかで、してしまう。
多美はダイエットのため。昼は塩むすび1つのみというのを続けている。
ある日、同じ職場に転勤してきたという島野から
「からだに栄養が足りなくなると存在も栄養不足になりますよ」と言われ
その後、一緒に公園でコンビニで買ったものを食べながら会話。
なんと島野は死神だという。
死神が見えるひとはそんなにいないけれど、それが見えると、その近くの誰かが
近いうちに亡くなるのだと。
そして、それは、多美が思いを寄せる男性だという。
話の展開が面白かった。
人が亡くなるのは変わらないんだけど、そこにいくまでに温かい物語も
あり、主人公の多美は、死神にあったことで生き方を変えることが出来て
よかった。
もう一人は、OLとして働きながら小説家になることを目標にしている西城麦穂。
同じ職場内に麦穂と同じように小説家志望の片野京美がいて、そのキッカケは
多美だと3日前から出向してきた島野に言われる。
片野京美が先に小説家デビュー。
ショックで退職し、洋風ビストロ店でバイトを始める。
片野京美が多美の勤めるビストロにランチに来て、話がしたいと。
片野の小説家になるまでは会社で陰湿ないじめを上司から受けていて
周りも同調していたと。
そして、自分が新人賞をとったけれど、採点の紙と候補者の原稿が離れて
しまった可能性があったらしいと聞く。
運命のいたづら?
多美がその高評価の作品を書いた人だと判明して、その後、念願の小説家に。
死神に会えた二人は、結果、生き方が良い方向に向かうというのが
面白い。
先の話の方がすきだけど、どちらも面白かった。
★★★★
発行年月:2021年4月
小さな幸せが暮らしの糧になる──当代一の売れっ子作家・曲亭(滝沢)馬琴の息子に嫁いだお路。横暴で理不尽な舅、病持ち、癇癪持ちの夫とそんな息子を溺愛する姑。日々の憤懣と心労が積もりに積もって家を飛び出たお路は、迎えに来た夫に「今後は文句があればはっきりと口にします。それでも良いというなら帰ります」と宣言するが……。修羅の家で、子どもを抱えながら懸命に見つけたお路の居場所とは? 直木賞作家の真骨頂、感動の傑作長編。
(角川春樹事務所HPより)
少し前に読んだ、朝井まかてさんの「秘密の花園」で、曲亭馬琴の長男の嫁として
馬琴のいる家に入った、路のことがとても印象に残ったので、こちらを読んだ。
いやはや・・・・凄い。
雇った女中もすぐに辞めてしまうような家に嫁として立派に立ち振る舞い
この家が成り立っていたのは、路さんのおかげじゃないか?と思うほど。
馬琴もその息子・宗伯も気に入らないことがあると癇癪を起こす。
一度は、宗伯に乱暴されお腹の子が流れてしまうという悲劇も。
普通ならそこで離縁となるのだけど、さすがにこの時は宗伯も謝り
馬琴も床に就いたお路の代わりに働く。
根は悪い人たちではないのだと思うけれど。。。。
馬琴の妻・百もいい加減な人で気分屋。
そして馬琴の目が片方、見えなくなり、幼いときより病弱の宗伯も度々、床に就き
百もまた年を取ったら体が弱り、それらの世話にも明け暮れる路。
夫の宗伯が39歳で亡くなり、百も亡くなったあとは、馬琴と子どもとの暮らし。
そして、馬琴のもう片方の視力も殆どなくなり、八犬伝を代わりに書いて欲しいと
頼まれ、何度も断るが結局、渋々、承知。
お願いしている立場なのに、相変わらずの上から目線で罵倒。
路もたまらず言い返し、口喧嘩。
それでも、気持ちを整え、再び代筆を続ける路・・・・・ああ泣ける(/_;)
馬琴ももう少し、ねぎらいの言葉をかけてあげるべきだったよなぁ~。
それでも、夫の宗伯も姑の百も馬琴も、最期のときには、路に感謝のことばを
かえていて、それだけはよかった。
しかし、本当に、路さん、すごい人だな。
偉人の陰には、こういう支える人が必ずいるものだな。
★★★★
発行年月:2024年2月
口さけ女はいなかった。恐怖の大王は来なかった。噂はぜんぶデマだった。一方で大災害が町を破壊し、疫病が流行し、今も戦争が起き続けている。何でもいいから何かを信じないと、今日をやり過ごすことが出来ないよ――。飛馬と不三子、縁もゆかりもなかった二人の昭和平成コロナ禍を描き、「信じる」ことの意味を問いかける傑作長篇。
(新潮社HPより)
1967年~2022年までのことを二人の男女の日常の様子から語る。
柳原飛馬は、1967年に生まれた。
両親と兄との家族。しかし、小学6年のときに母親が亡くなる。
もう一人は、望月不三子(旧制・谷部)1967年当時は高校生。
父親が急死し、大学進学をあきらめ製菓会社に就職。
上司の勧めで見合いし結婚。
二人の生活が交互に語られるが、望月不三子の方が衝撃的。
無頓着な母親に育てられ、自分はしっかりと家事もしたいと
仕事を辞め、専業主婦になり、夫の健康も考えて玄米食や野菜中心の食事を
作るが、義母からは「白米を食べさせてあげて」と言われてしまう。
子どもが生まれると、その子の食事作りに集中し、夫の食事とは別メニューに。
子どもが小学校に上がると、食物アレルギーがあると虚偽の申告をして
給食ではなくお弁当持参に。
最初は、従っていた娘も成長するに従って反抗し、家に帰らなくなる。
一方の飛馬は、大学卒業後は、区の職員になり結婚。
が・・・3.11後に仕事で復興支援に赴き、そこで出会った以前少し興味が
あった無線が災害対策の本部で役立っていることが嬉しく、ボランティア活動に
はまり、そのことで妻と口論。
妻はツイッターでみる嘘の情報を鵜呑みして、それを指摘してまた口論。
二人の関係がぎくしゃくし、離婚。
小学生の頃の最大の噂は1999年のノストラダムスの大予言。
ここに出てくる、コックリさんや口裂け女。
自分は、全く信じてなかったし、1999年の予言も、みんなで死んじゃうなら
それも仕方ないな・・・くらいにしか考えてなかった(笑)
物語のなかで、不三子の妹。仁美だったかな?
「ノアの方舟に乗って助かってもみんなが居なくなっちゃう世界で
生きていていくほうがいやだ」みたいな発言。
そうそう!とその考え方に共感した。
何かを信じてすがっているのが方舟だとすると、それに乗り続けていくことが
果たして幸せなんだろうか?と考えてみることも大切なのかも。
2020年にはコロナが大流行して、ワクチンを接種するか否かがまた問題に。
これは、まだ正解がわからない。
何十年後に正解がわかるのかな?
不三子と飛馬が終盤、「子ども食堂」に関わるスタッフとして出会う。
二人とも人間としては、基本は優しくて良い人。
二人がそれぞれ、これから先の人生、穏やかに過ごせるといいな。
結構、読むのに時間がかかった。
二人の日常が交互に語られていくだけなので、少々退屈だったし。
それでも何となく、角田さんのメッセージは伝わってきたかな?
★★★
12 | 2025/01 | 02 |
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;