発行年月:2019年9月
ミモザの父・閑に一通の封筒が届いた。白い線で描かれた薔薇の絵のモノクロ写真が一枚入っていて、裏には「四月二十日。零時。王国にて。」とあった。病床の父は写真に激しく動揺し、捨てろと彼に命じる。その姿を見たミモザは春の夜、余命短い父のために指定された明石ビルに向かう。廃墟と化したビルの最上階には三人の男たちが待っていた。男たちは過去を語りはじめる。白墨の王国だったこのビルの哀しく凄まじい物語を──。
(光文社HPより)
哀しい物語。
明石ビルで起きた50年前のこと。
そこで暮らしていたのは、最上階にビルのオーナー明石とその娘(白墨)。
そして、山崎、源田、鵜川、和久井。
物語の冒頭で登場のミモザは、このビルで暮らしていた和久井閑の息子。
ビルで起きたことは衝撃的だった!
でもその真相を知ったときは・・・ショック。
鵜川が許せないと怒りが沸いた。
でも罪の意識を抱いて苦悩していたのは想像出来る。
最後にとった行動も納得。
ミモザは、この後、幸せになって欲しい。
妻と子どもと再び暮らせるように・・・。
始終、つらい物語だったけれど、最後にわずかな希望があって良かった。
★★★
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発行年月:2019年6月
あの人にいま会えたら、何を伝えますか?
子育て、離婚、定年、介護、家族、友達。
人生には、どしゃぶりもあれば晴れ間もある。
重松清が届ける5つのサプリメント。
年を重ねると増えていく「再会」の機会。
再会は、別れがあるから存在します。
どう別れたかで、再会の仕方も変わってくる。
会いたい人、会いたくない人、忘れていた人。
《結婚もして、子どもをつくり、そして、いま、家族をなくした。》
あなたならどんな再会を望み、何を伝えますか。
泣きたいときに、泣けないあなたへ。
(講談社HPより)
5つの短編の主人公は50台半ばの男性たち。
結婚し、子どもたちは手がかからなくなったけれど、老いた親の今後のことが
色々と心配な年代。
昔のことはすごく細かいことも覚えていたりするのに、自分の現在の状況が
急にわからなくなったりする親。
哀しいなぁ~。
でも、哀しがってばかりじゃなく昔の思い出を一緒に楽しむことが出来たら
素敵かも。
そんな風に思った最初の話<あの年の秋>はお話としては
一番好きかも。
表題作の<旧友再会>は、タクシー運転手をしている青田が偶然、同級生の
川村を客として乗せる。
川村は住んでいる東京から老人ホームに入所している母親を見舞うために
タクシーに乗った。
実家には父親が独りで暮らしているという。
学生時代は自分より勉強もスポーツもはるかに出来てリーダー的存在だった
川村だけど、今の暮らしは大変そう。
あの時はどちらかといえば苦手だった川村と今、普通に話しをしている自分。
川村の家で飲んだ「薄いカルピス」の話で笑い合ったり・・・・
微笑ましいような哀しいような、不思議な感情が起きる話だったなぁ~。
他の作品も、なんとなく切ない気持ちになる。
主人公たちと同年代だから、気持ちがわかりすぎて・・・
<ホームにて>は、唯一、ちょっと元気になれた。
定年退職したあと、駅の立ち食い蕎麦屋で働くことに決めた男性の話。
まだまだ新しいことに挑戦できる年でもあるんだなぁ~(^^)
★★★
発行年月:2019年9月
湊かなえの新たなる代表作、今年最高の衝撃&感動作。重い十字架を背負って生きる人々の心の叫びと希望の灯。“落日”の向こうに見える未来とは!?入魂の書き下ろしミステリー長篇。新人脚本家の甲斐千尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から、新作の相談を受けた。『笹塚町一家殺害事件』引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた。15年前に起きた、判決も確定しているこの事件を手がけたいという。笹塚町は千尋の生まれ故郷だった。この事件を、香は何故撮りたいのか。千尋はどう向き合うのか。“真実”とは、“救い”とは、そして、“表現する”ということは。絶望の深淵を見た人々の祈りと再生の物語。
(角川春樹事務所HPより)
いや~やはり面白いな。湊作品。
話は、15年前に起きた一家殺害事件が元になっているので、やはり重苦しいものだけど・・。
その事件を映画化しようとしている女性監督・長谷部香と
脚本家の甲斐真尋。
二人は、その事件のあった、町の出身者であり、香は幼い時、アパートで両親と生活して
いたとき、立石家とは隣人だった。
そして、真尋の姉・千穂と立石力輝人にも接点があったとわかる。
話は、過去と現在を交錯しながら進み、終盤、いろいろあった過去の事柄の真実が
明かされていく。
重く辛い話のなかに、少し、希望もありそう。
この先、二人が力輝人に会って「あの時は・・・・・」と語り合う場面が
沢山、あればいいのにと思う。
表紙の絵は、物語を凄くうまく表現していて哀しく美しい。
★★★★
発行年月:2019年8月
この国の岐路を、異国にゆだねてはならぬ
開国から4年、攘夷の嵐が吹き荒れるなか、幕府に外交を司る新たな部局が設けられた。実力本位で任ぜられた奉行は破格の穎才ぞろい。そこに、鼻っ柱の強い江戸っ子の若者が出仕した。
先が見えねぇものほど、面白ぇことはねぇのだ――
安政5年(1858年)幕府は外国局を新設した。しかし、朝廷が反対する日米修好通商条約を勅許を待たず締結したため、おさまりを知らぬ攘夷熱と老獪な欧米列強の開港圧力という、かつてない内憂外患を前に、国を開く交渉では幕閣の腰が定まらない。切れ者が登庸された外国奉行も持てる力を発揮できず、薩長の不穏な動きにも翻弄されて……
お城に上がるや、前例のないお役目に東奔西走する田辺太一の成長を通して、日本の外交の曙を躍動感あふれる文章で、爽やかに描ききった傑作長編!
維新前夜、近代外交の礎を築いた幕臣たちの物語。勝海舟、水野忠徳、岩瀬忠震、小栗忠順から、渋沢栄一まで異能の幕臣たちが、海の向こうと対峙する。
2017年~18年の日経夕刊連載が、遂に単行本化!
(日本経済新聞出版HPより)
主人公の田辺太一のことは、本書で初めて知った。
幕末の外交に関わった人物のひとり。
凄く魅力的な人物だなぁ~と思いながら、読んだ。
異国との取り決め事は何から何まで初めてのこと。
幕府が右往左往する様子も今の時代から見たら滑稽だけど
大変な苦労があったんでしょうね~。
父親を早くに亡くし。家督を継いだ兄の元、居候的な存在だった
太一が、兄を亡くし、兄嫁やその息子。
また結婚して妻となった己巳子との家族の柱となっていく成長も
頼もしかった。
家族間でのやり取りも微笑ましい。
太一は外交の仕事から一時は離れるが、再び、声をかけて貰い、
再び新たな気持ちで外交に関わろうと決めるとことで終わる。
この先の活躍も気になるなぁ~。
後で調べるとしよう。
歴史上の人物は調べられるのがいい^m^
太一が提出した指南書、巻末の参考文献にもある
『幕末外交談』もちょっと気になる。実際、どんなことが書かれているのか?
あまり知らなかった人物だけど、面白く読めた。
★★★★
発行年月:2019年3月
血はつながってる。だけど家族じゃない。
「はじめまして」から始まった親子の同居生活。近くて遠い二人の物語の行方は――?
優しい涙が止まらない最高のハートフルストーリー。
そこそこ売れている引きこもりの作家・加賀野の元へ、生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子・智が突然訪ねてきた。父は月10万の養育費を振込み、息子は写真を一枚送る、それが唯一の関わりだった二人。真意を測りかね戸惑う加賀野だが、「しばらく住ませて」と言う智に押し切られ、初対面の息子と同居生活を送ることに――。孤独に慣れ切った世間知らずな父と、近所付き合いも完璧にこなす健やかすぎる息子、血のつながりしかない二人は家族になれるのか?
その「答え」を知るとき、温かく優しい涙が溢れ出す。笑って泣ける父と子の再生の物語。
(ソニーミュージックエンターテイメント/発行)
面白い話になりそうと最初から期待できる設定。
25歳になった息子・智が突然、訪ねて来て、少しの期間、ここに
住まわせてほしいと。
混乱する作家の父親50歳、佐賀野正吉。
智のサバサバした性格が気持ちいい。
オロオロするばかりの父親をリードして
世間とかかわりを持たない生活をしてきた正吉を外に連れ出したり
自治会行事に関わらせたり・・・。
正吉の生活に他人との関わりが生まれてくる。
そして、智はあっさり去ることに・・・。
でも、そこからが新たな始まりという感じ。
ちょっと特殊な家族形態だけど、良い感じ。
正吉は好きでもない美月と関係を持って智が生まれたと言っていたけれど
美月も智も魅力的。
これからは、家族としてもっと関わりを持って行くんだろうなぁ~。
能天気な性格だと思った智も、傷ついて辛い時期があったとは。
彼もまた元の仕事に復帰できる日が来るといいなぁ。
正吉の作家活動も順調に続いて、傑作が生まれそう!
良い物語だった!
★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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