発行年月:2019年5月
深遠でコミカル、重くて軽快。
著者五年ぶりの傑作長編小説。
自然、人間の体、こころの入り組んだ痛みは
家の治水、三十肩、鬱と絡み合い、主人公を彷徨えるツボ・椿宿へと導く。
皮膚科学研究員の佐田山幸彦は三十肩と鬱で、従妹の海子は階段から落ち、ともに痛みで難儀している。なぜ自分たちだけこんな目に遭うのか。
外祖母・早百合の夢枕に立った祖父から、「稲荷に油揚げを・・・・・・」の伝言を託され、山幸彦は、鍼灸師のふたごの片われを伴い、祖先の地である椿宿へと向かう。
屋敷の中庭には稲荷の祠、屋根裏には曽祖父の書きつけ「f植物園の巣穴に入りて」、
明治以来四世代にわたって佐田家が住まいした屋敷には、かつて藩主の兄弟葛藤による惨劇もあった。
『古事記』の海幸山幸物語に3人目の宙幸彦が加わり、事態は神話の深層へと展開していく。
歯痛から始まった『f植物園の巣穴』の姉妹編。
(朝日新聞出版HPより)
痛みに苦しむ佐田山幸彦(通称・山彦)。
化粧品会社でメイクアップ部門に所属し、化粧品の研究をしている。
肩の強烈な痛みに苦しみ、それゆえ、鬱状態へ。肩から痛みは首にまで・・・・
従妹の海幸比子(通称・海子)も膝痛から股関節痛と激痛に苦しむ日々。
自分たちのこの痛みには、なにか共通のものがあるのでは?と。
海子が最初に世話になった仮縫鍼灸院を訪ねる山彦。
院長の仮縫氏から「この痛みは、カメシに・・・」と院長の双子の妹・亀子(カメシ)
の診察を受ける
するとこの痛みの除去を助けたいと言う神がいるという。
それは実家にある小さな稲荷。そして亡くなった祖父が油揚げをお供えするようにと。
そんなわけで痛みに堪えながら生まれて初めて郷里の実家のあった地を訪ねる山彦。
亀子も同伴。
亀子と一緒に入った喫茶店。
そこは鮫島家の関わる場所だった。
店主は、今は行くえ知れずの宙幸彦(そらゆきひこ)の妻・泰子(タイコ)。
宙彦の母・竜子も以前、住んでいた家に行きたいということで3人で
実家(椿宿)に向かう。
そこで知る、佐田家と鮫島家のルーツ。
痛みは、その後、消えた山彦。
海子の痛みも、また消える。
<f植物園の巣穴>の続編と知っていただが、これが?とずっと疑問に
感じながら読んだ。
でも終盤になって、ああ、そういう繋がりだったんだ!と。
ああ、<f植物園の巣穴>もまた読み返したくなってきた!
古事記の海幸山幸の話は、今回初めて知ったけれど、現代とこんな風に
繋がっていくのも面白い。
先祖が、子孫に気づいて欲しくてサインを送ることってあるのかな?
それが今回のように痛みということもあるのか?
自身が肩痛でこの主人公の山彦のように苦しんだ経験があるので
ふと考えてしまった。
表紙の絵もステキ。
今回も読み応え十分でした!!
★★★★★
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発行年月:2019年3月
一番近くにいるのに
誰よりも遠い。
海釣りに出たまま、二度と帰らなかった夫。
8年後、その姿が目撃される。そして、無言電話。
夫は生きていたのか。
塩崎早樹は、相模湾を望む超高級分譲地「母衣山庭園住宅」の
瀟洒な邸宅で、歳の離れた資産家の夫と暮らす。前妻を突然の病気で、
前夫を海難事故で、互いに配偶者を亡くした者同士の再婚生活には、
悔恨と愛情が入り混じる。そんなある日、早樹の携帯が鳴った。
もう縁遠くなったはずの、前夫の母親からだった。
自分がやったことは
ブーメランのように自分に返ってくる。
(幻冬舎HPより)
不穏な雰囲気の表紙絵に反して、意外と明るいかんじで始まるので
いつそういう雰囲気になるのやら・・・と思いながら読み進める。
主人公の塩崎早樹は41歳で72歳の資産家と再婚して経済的には
不自由のない生活を送っているけれど、自由さが制限されることを
少し憂いてもいる。
ま、結婚したら資産家の嫁でなくても感じることでしょうが・・・・。
そんな早樹のもとに海で遭難した元夫の加野庸介の母・菊美から
「庸介らしき人物を見た」やら「無言電話があるけれどきっと庸介だ」と
いう電話。
それに加えて、実家でも庸介に似た人物と遭遇したという話。
夫の生死が気になり、自分なりに真相を探る早樹。
もし生きて居たら、どうするのかな?と気になり読み続ける。
けれど、庸介の交友関係から知らされる情報は、自分が全く知らなかった
過去のこと。
知りなくないと思いつつ、気になって追求しちゃう気持ちも分からないでは
ないけど、これは最後、結構、ショックを受ける事態が待っていそうだなと
予測がつく。
で、結果的に傷つく早樹。
とんでもない男だった庸介。
釣りを教えた幹太は気の毒だった。
でもかえって今の生活を大切に自分は生きて行こうと踏ん切りがついて
良かった!
とめどなく聞こえる囁きも、この先は聞こえず済むといい。
★★★
発行年月:2019年3月
どんなに強欲と謗(そし)られようと、三つとも手に入れたかった――。50年前、出版社で出会った三人の女たちが半生をかけ、何を代償にしても手に入れようとした〈トリニティ=かけがえのない三つのもの〉とは? かつてなく深くまで抉り出した、現代日本を生き抜く女たちの夢と祈り――。平成の掉尾を飾る傑作!
(新潮社HPより)
1960年代に出会った3人の女性の物語。
早川朔(藤田妙子)・・・・イラストレーターとして活躍する
登紀子・・・フリーライターの先駆け的存在
鈴子・・・妙子と登紀子が関わっていた出版社の雑用係で入社。
3人の女性のそれぞれの生い立ちなども語りながら
3人が一挙に距離を縮めたのは、学生運動が盛んで大規模なデモが行われる
という新宿へ見物に行ったとき。
女性差別的なうっぷんとか、デモ隊に混じって投石するシーンは
良かったなぁ~。
それは後で会社から大目玉を喰らうことになるのだけど、この夜がなかったら
後々まで3人の絆が繋がっていなかっただろう。
イラストレーターの妙子は、大橋歩さんがモデルだろうなぁ~と読みながら
想像。
平凡パンチの表紙を描いていたのは知らなかった!
どんな表紙か興味があって調べたら・・・ヤフオフに出てた^^;
ライターの方は誰だろう?
参考文献にある三宅艶子さん、菊子さんがそうなんだろうな~。
激動の昭和の時代、頑張って出版業界で働いていた女性たちのドラマ。
凄く読み応えありました!
表紙の宇野亜喜良氏の絵も、昭和を感じるものでいい。
内容に凄く合っていて、素敵!
★★★★
発行年月:2019年3月
いつも、誰かに見られている……。最初は他愛のない都市伝説の筈だった。しかし、イジメに遭う中学生、周囲から認知症を疑われる老人、ホスピスに入った患者、殺人を犯そうとする中年女性など、人生の危機に面した彼らの前に、突然現れた「それ」が語ったことは。いま最注目の作家が描いた、ささやかな「罪」と「赦し」をめぐる傑作。
(新潮社HPより)
短篇連作集。
でも、少しリンクしていた。
タイトル通り、ロボットが出て来る。
人の姿をしていたり、猫だったり金魚だったり・・・。
学校の虐め問題に関わってしまう生徒たち。
自殺した生徒を巡っていろいろな憶測が飛び交う。
一人の生徒が「カゲロボ」じゃないかと噂され、その生徒は、それを否定せず
皆の様子を冷静に観察。
大人になったその後の生徒の様子も。
虐めのようなものに加担してしまった側も辛かった。
それをちゃんと見ていてくれた存在がいたことは救い。
ロボットが色々な姿で人々を監視していると考えるとちょっと嫌だけど、
こんな風に辛い自分を見守っていてくれた存在があるって気づけたら
少し気持ちが楽になりそう。
一番好きだったのは二人のミカが出て来た「カオ」。
表紙の絵は、二人を想像させて、読んだあと見ると、なんだか切ない気持ち。
木皿さんの物語は、切なくて温かい。
こんなロボットたち、実際に居てもいいかもと思った。
★★★★
発行年月:2019年4月
奇跡が起きなくても、人生は続いていくから。
『大人は泣かないと思っていた』で話題沸騰の著者が贈る感動作!
大阪市近郊にある暁町。閉店が決まった「あかつきマーケット」のマスコット・あかつきんが突然失踪した。かと思いきや、町のあちこちに出没し、人助けをしているという。いったいなぜ――? さまざまな葛藤を抱えながら今日も頑張る人たちに寄りそう、心にやさしい明かりをともす13の物語。
(ポプラ社HPより)
あかつきマーケット付近に暮らす人々の色々な日常。
色々な重たいものを心の中に抱えている人たちに、ふとした言葉が今までと違った
考え方に導いてくれる瞬間があり、そのことからその後のその人の生き方まで
変えてくれる。
そんな瞬間を幾つか違う場面で読ませてくれる。
ひとつのお話のなかで、「ああ、この人、この先良い方向にいくといいな」と
思って読み終えると、別の話で、その後の様子が垣間見えたりしてホッと
したりした。
そんな話の一コマで、あかつきんが出現する。
そして最後にわかった、あかつきんの中に入っていた人のこと。
中に入っていた人も、あかつきんになって感じたことや見たことで今までの
物の見方や考え方が変わったんだなぁ~。
温かい気持ちになれるお話だった。
★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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