発行年月:2019年9月
平凡なサラリーマン家庭に育った、ヤヨイ。いいところのお嬢様、ユリコ。体が大きく、心も広く優しい、マスコ。お調子者でおっちょこちょいな大工の息子、カツオ。ヤヨイの隣家の息子、タカオ。同じ小学校で学んだ5人は、大人になりそれぞれの道を歩んで一度はバラバラになったが、還暦近くなって再会した。会わない間に、それぞれ大人になったところもあり、変わらないところもあり……。
昭和30年代〜平成の終わりまで、ささやかなようでいて、いろいろあった人生を生きてきた5人の物語。
誰もが自分の半生を投影できる、「普通の人」を描き続けてきた群ようこ、真骨頂の感動長篇。
(幻冬舎HPより)
昭和29年~30年生まれのヤヨイ、タカユキ、ユリコ、マスコ、カツオ。
5人の小学校時代から還暦までの人生を連作形式で描く物語。
生涯独身なのは、ヤヨイのみ。
性格良いし、容姿も悪くなさそうなのに、縁がなかったんだなぁ~。
母親が突然、出奔しちゃったり、一番、波乱万丈な人生というかんじ。
父親が亡くなり、実家で一人暮らしを始めたら、隣家に同級生のタカユキが
やはり一人で住んでいる。
彼は離婚してるんだけど。
気楽に付き合える隣人同士という間柄は、なんだかいいな。
困ったときには、お互い頼れる関係になれそうだし、理想的な関係。
共通の話題で盛り上がれる同級生っていい。
あだ名で呼び合って面倒くさい気遣いもなし。
5人はは、ずっとこのままいい関係で年を重ねていくんだろうな~
群さんの新しいシリーズにはならないかな?
この先の5人の物語も読みたい気分。
★★★★
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発行年月:2020年3月
詩帆17歳の誕生日デートは岡山の「大原美術館」、ピカソ〈鳥籠〉のまえ。
それからふたりはいつも一緒だった。けれど、彼は今日旅立つ。
(「窓辺の小鳥たち」)
ある少女に導かれるように会社と逆方向の電車に飛び乗った私。
箱根「ポーラ美術館」のセザンヌ〈砂糖壺、梨とテーブルクロス〉のまえで
夢を諦めた記憶が蘇りーー。(「檸檬」)
日常の中の小さな幸せに寄り添う、珠玉の6篇。
(幻冬舎HPより)
6篇それぞれ良かった!
それぞれの主人公たちには、思い入れのある絵、美術館があって
そんな人々の物語。
<ハッピー・バースディ>
ひろしま美術館・・・・ドボーニの庭/ゴッホ
<窓辺の小鳥たち>
大原美術館・・・・・鳥籠/ピカソ
<檸檬>
ポーラ美術館・・・・・砂糖壺、梨とテーブルクロス/セザンヌ
<豊饒>
豐田市美術館・・・・・オイゲニア・プリマフェージの肖像/クルムト
<聖夜>
長野県美術館・・・・・白馬の森/東山魁夷
<さざなみ>
地中美術館・・・・・睡蓮/モネ
お話として好きなのは<豊饒>と<さざなみ>。
豊饒は、作家志望の女性だが、仕事としては、見たことも聞いたことも試したこともないものを
高評価のレビューをつけるというもの。
そんな彼女の隣に引っ越してきたスガワラさん(70歳)と親しくなる、
彼女は美術館で働いているという、いつでも待っているからと言ったスガワラさんが
息子家族の元に引っ越すという最後の勤務日に彼女に会うため美術館へ行く。
このお話の豊田市美術館は、好きな美術館のひとつで家族とちょくちょく訪れる。
クルムト展も見たので、なんだか嬉しかった(^^)
<さざなみ>は子宮筋腫の術後、入院している病院のテレビで見た
地中美術館。モネの絵が展示されていると知り、退院したら即、行こうと決める主人公。
そして、睡蓮の絵のまえで吸い込まれるように見入る。
絵から風が吹いてくる。さざなみが立っている。
風景が浮かんできそうな描写。
ああ、わたしもそこに立ってみたいなぁ~。
出来たらこの主人公のように、あまり人が居ないときがいいな。
こういう短編もいい。
絵は物語のわき役というかんじだけれど、存在感大のわき役。
★★★★★
発行年月:2020年4月
大阪万博に沸く日本。絵描きの父と料理上手の母と暮らしていた銀花は、父親の実家に一家で移り住むことになる。そこは、座敷童が出るという言い伝えの残る由緒ある醬油蔵の家だった。家族を襲う数々の苦難と一族の秘められた過去に対峙しながら、少女は大人になっていく――。圧倒的筆力で描き出す、感動の大河小説。
(新潮社HPより)
主人公・銀花の波乱万丈の人生。
父親の継ぐはずだった老舗の醤油蔵を継ぐことに決めた銀花。
次々の起きる、厄介な出来事。
それに耐えて、自身は常に前向きに気持ちを切り替えて生きる
銀花を「がんばれ~」と思いながら、読み続けた。
蔵に現れると伝えられてきた座敷童の正体がわかり
そのことが家族間の事態を一層、こじらせてしまったと悔やむ者あり。
蔵を継いだ、父の母・多鶴子や、杜氏の息子・剛。
それぞれが心の中に抱えてきた思い。
銀花はそれらに対しても向き合い、優しい言葉をかける。
銀花の人間性が素晴らしい。
波乱続きの醤油蔵にも未来は明るそうな終盤の展開は嬉しかった。
ドラマになりそうな話だなぁ~。
時代背景が、自分の子ども時代と被るので、懐かしい歌が出てきたり
してそれも面白かった。
★★★★★
発行年月:2020年1月
「分かり合えない母と娘」
壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるか?
羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。
いじめが原因で学校に行けなくなった高校生・美緒の唯一の心のよりどころは、祖父母がくれた赤いホームスパンのショールだった。
ところが、このショールをめぐって、母と口論になり、少女は岩手県盛岡市の祖父の元へ家出をしてしまう。
美緒は、ホームスパンの職人である祖父とともに働くことで、職人たちの思いの尊さを知る。
一方、美緒が不在となった東京では、父と母の間にも離婚話が持ち上がり……。
実は、とてもみじかい「家族の時間」が終わろうとしていた――。
(文藝春秋HPより)
岩手県盛岡市にある祖父の工房を高校生の美緒が訪ねて
そこで糸を紡ぐことを学んでいく。
美緒は両親と3人暮らし。
母は都内私立中の英語教師。
父は電気メーカーの研究所勤務。
美緒は、母親の真紀と何かにつけて衝突し、衝動的に家を出て
父方の祖父のいる、盛岡市へ。
ホームスパンって初めて知った。
手で糸を紡いだものは、軽くて暖かいという。
父の従姉にあたる裕子が、ホームスパンに興味を持った美緒の
指導者としてあたる。
裕子の息子・太一(教育学部の大学生)も工房を手伝い、美緒の良い
話し相手となる。
美緒が祖父の元に来たのは大正解!
引きこもり学校にも行けなくなった美緒が明るく前向きに
なっていく姿が読んでいて嬉しい。
美緒の両親のぎくしゃくした関係の行く末も気になったが
こちらも丸く収まりホッ。
離れて暮らすことになっても家族であることは変わらない。
美緒のおじいちゃん、鉱治郎さんが素敵だった!
岩手県、一度行ってみたいな~。
★★★★
発行年月:2020年4月
専業主婦の美佳は、夫の大介がいまだにかつての友人たちと遊んでいることに不満を募らせていた。特にその中にいる吾妻智子の存在は、美佳の心をよけい不安にしていた……。「マドンナのテーブル」。
円満離婚が成立し、実家に戻った亜希子。ある日、同居中の母親の様子がおかしいことに気付き、病院へ連れて行くと、医者から告げられたのは母の「認知症」だった……「夜の森の騎士」。
日常の中にある、男と女の微妙な関係性を描いた5編の短編集。
(光文社HPより)
5編のうち最初の2つは繋がっている。
市民吹奏楽団のメンバー内の人間模様。
なかでも、津田孝正が2つの話の中心人物。
端正な容姿で能力もあり、社会的にも大学教授という地位にあるが、
本人は、世事に疎く、およそ悪気がないが空気がよめないばかりに誤解を与えてしまう。
憎めない男なんだけどなぁ~。
最初の話では、ストーカー扱いされちゃって・・・・(/_;)
でも2つ目の話では、遭難した真美の救世主になる。
幸せになってほしいなぁ~。
3つ目の<マドンナのテーブル>は、美佳みたいな女性に共感できず
夫が職場の仲間たちと飲みに行ったり、遊びにいくのが気に入らない。
そのなかに一人いる女性の存在も気になるとか。
そんな場に自分も参加して楽しいはずがないじゃん!と思った。
面白かったのは次の<六時間四十六分>
アメリカ在住の娘に会いにいく。一人は不安なので、友人の女性と、知り合いの男性医師も
同行することになり、楽しい旅になるはずと思っていたら・・・
同行した二人は実はお互い家庭があるのに、不倫関係にあって・・・
それで単独行動した先で、知り合ったハーフの中村。
娘にとって仕事上、実は大事な人とわかる。
このあとの展開もちょっと知りたかったなぁ~。
最後の<夜の森の騎士>は、離婚して実家で母親と暮らすことになった亜希子。
母の認知症が進み、MRIで能に血種が見つかり、手術。
入院中、ほかの人が触れると暴れ拒否するということで泊まり込みになる亜希子。
母はレントゲン技師には抵抗しない。
そして自分も彼の言葉に救われる。
暗い重たい話だけれど、最後は救われた亜希子に良かったなぁ~と思った。
それぞれ、読み応えのある作品でした!
★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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