12年ぶり、待望の書き下ろし長編小説。親や他人とは会話ができないけれど、小鳥のさえずりはよく理解する兄、そして彼の言葉をただ一人世の中でわかるのは弟だけだ。小鳥たちは兄弟の前で、競って歌を披露し、息継ぎを惜しむくらいに、一所懸命歌った。兄はあらゆる医療的な試みにもかかわらず、人間の言葉を話せない。青空薬局で棒つきキャンディーを買って、その包み紙で小鳥ブローチをつくって過ごす。
やがて両親は死に、兄は幼稚園の鳥小屋を見学しながら、そのさえずりを聴く。弟は働きながら、夜はラジオに耳を傾ける。静かで、温かな二人の生活が続いた。小さな、ひたむきな幸せ……。そして時は過ぎゆき、兄は亡くなり、弟は図書館司書との淡い恋、鈴虫を小箱に入れて持ち歩く老人、文鳥の耳飾りの少女と出会いながら、「小鳥の小父さん」になってゆく。世の片隅で、小鳥たちの声だけに耳を澄ます兄弟のつつしみ深い一生が、やさしくせつない会心作
(朝日新聞社出版HPより)
小鳥を愛する小父さんの物語。
物語の冒頭、小父さんが亡くなっている場面から始まる。
おじさんは鳥かごを抱え、そのなかには一羽のメジロがいた。
そして小父さんの物語が始まる。
小父さんの7歳年上のお兄さんとの暮らしの様子。
小父さんに小鳥を引き合わせたのはお兄さんだったんですね。
お兄さんは独自の言葉を話すため周囲とのコミュニケ-ションは上手くとれない。
理解できるのは小父さんと小鳥だけ。
二人であちこちを旅行する話も素敵だった。
そしてお兄さんが52歳で亡くなったあとは小父さんの一人暮らし。
綺麗なバラ園を持つゲストハウスの管理人として働きながら、休みの日は図書館に通い、毎日、近くの幼稚園の小鳥の小屋の掃除を続ける。
園児たちからは「小鳥のおじさん」と呼ばれ、周囲の人たちもおじさんを同じように呼ぶ。
静かだけれど、ささやかな交流があり、そこに幸せも感じていた小父さんなのに
あるとき、身近に幼児連れ去り事件が起き、小父さんの暮らしも様変わりしてしまったのが
辛かった。
ナンにでも警戒しなきゃならない時代になったから仕方ないのかなぁ~?
それでも傷ついたメジロを介抱しながら、過ごした時間が小父さんの最期を少し明るいものに
していったのだと知ってホッとした。
さすが、小川さんの文章はスラスラと気持ちよく最後の一字まで読めました。
★★★★★
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