春の朝、土壌生物を調べに行った近所の公園で、
叔父のノボちゃんにばったり会った。
そこから思いもよらぬ一日がはじまり……。
少年の日の感情と思考を、清々しい空気の中に描く、新・青春小説。
(理論社HPより)
読むたびに思うけど・・・梨木さんって、やっぱり凄い!!
物語の主人公・コペル君は14歳。
日本人だけど、呼び名はコペル(名前は出てきたかなぁ~?)。
母親が大学で教鞭をとっていて、少し離れた地に転勤になってしまい、父親が母親の体調を心配しながら度々、その地を訪ねるいうち、いつしか母親の住む地に一緒に行ってしまった。
なので、一人暮らし。
とはいえ、すぐ近くに叔父が居て、度々様子を見に来てくれる。
叔父はノボちゃん。染織家。
そしてコペルには愛犬のブラキ氏がいる。
ブラキ氏はゴ-ルデンリトリバ-で本当の名前はブラキッシュだけどいつしか省略してブラキ氏となった。
梨木さんといえば、いままでの作品の多くに植物が出てきたけど、ここでも染織家のノボちゃんが草木から染料の素を採取する場面があるので、いろいろな植物、または生物が出て来る。
コペル君の考えることが実に哲学的。
そして会話するノボちゃんとの話のなかに、実に深いものが沢山。
人が生きていくなかで考えてみなくちゃいけないことをあれこれ提起してくれる。
コペルの友人、ユ-ジン君をノボちゃんと共に訪ねた先でも多くのことが問題提起される。
ユ-ジンは、暫く前から学校に来ていない。
その原因はなんだろ?そのわけは、ちゃんと説明されている。
なるほど・・・・・そういう辛いことがあったんだ。
ユ-ジンもまたコペルと同様一人暮らしという設定。
それだけ聞くと不自然だなと思うけど、ユ-ジンの家庭環境を考えたら、別に不自然ではない。
梨木さんの物語には、不自然さを感じない計算された設定がちゃんとされているのも凄いと思う。
ユ-ジンの亡くなった祖母の話も良かった。
表題の「僕は、そして僕たちはどう生きるか」の言葉は物語中に出てくる言葉だけど
それは、洞穴に潜んで住んでいた男性が言った言葉。
その人は、召集令状が来たが、それから逃れていた。
そして洞窟に一人潜んで何を考えていたか?というと「僕は、そして僕たちは・・・・・」ということをずっと考えていたと。
召集令状が来たら、国のため戦地に向かうことが当たり前だった時代、それをしながら生き延びたその男の人の気持ちをコペルたちが考える場面は、一緒に考えさせられた。
そして物語の全体を通して、この本で何を言いたかったのか?ということが最後にキチンと示されていた。
本文最後の方を抜粋しておこう。
・・・・・人間には、やっぱり群れが必要なんだって、僕はしみじみ思う。・・・・強制や糾弾のない、許し合える、ゆるやかで温かい絆の群れが。人が一人になることも了解してくれる、離れていくことも認めてくれる、けど、いつでも迎えてくれる、そんな「いい加減」な群れ・・・・・・・・・
そういう「群れの体温」みたいなものを必要としている人に、いざ、出会ったら、ときを逸せず、すぐさま、この言葉をいう力を、自分につけるために、僕は考え続け生きていく。
長女が先にこの本を読み
「すごい!すごく良かった!!」と言っていて
そりゃ、梨木さんの本だから良いでしょうと応えたけど・・・・
これは最高だと読んで思った。
★5つじゃ足りないくらいだけど・・・
★★★★★
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;