発行年月:2008年12月
38歳で国家公務員エリ-トの道を捨てた男・鈴木正彦。
妻からは離婚を言い渡される。
そして、女性関係で人生をしくじった男・矢口とともに宗教を立ち上げた。
金儲けのために立ち上げた宗教だが、彼らの予想を越え、信者が集まり、やがて、二人の手を離れてそのなかの信者たちが暴走を始める。
上巻、469ペ-ジ。
下巻、445ペ-ジと、長いです。
が、長さを感じさせない、飽きさせない話の展開でした。
大学の法学部出の主人公・正彦が何故、エリ-トの道を約束されたも同然の人事内示を機に辞職するのかは、本を読めば、わかりますが、これでは、妻から離婚を言い渡されても当然でしょう。
そして、アメリカの貿易センタ-ビルに飛行機が2機突っ込む事件をみて「実業の象徴が宗教によって壊された」と呟き、事業としての宗教を営もうとする・・・・
頭の良い人の考える事はよくわからんわ~というイヤな印象からスタ-ト。
実際に「聖泉真法会」という似非宗教を立ち上げるのだが、予想を超えて、信者がどんどん集まって来ちゃう。
正彦は教祖様として、説法を述べ、それがまた人々の心に響き、世間の評価も上がってくる。
上巻はそんな、トントン拍子に良い方向に向かう教団の様を描いていました。
そして、上巻の最後あたりから、やや不穏な空気がジワジワ。
評判の良い宗教には、自然と名のある事業家、政治家などが絡んで来るのです。
正彦たちの知らないところで、知らないお金が動いたり・・・・
同じような宗教団体が、脱税疑惑で逮捕者を出す、その流れで正彦たちも容疑を掛けられたり・・・
世間にも宗教団体は星の数ほどあるでしょうけど、その中の教祖と呼ばれる人たちは、多かれ少なかれこういう苦労を抱えているんだなぁ~なんて読みながら勉強になりました。
信者が多くなれば、いろいろな人も居て・・・そのなかの信者が暴走。
彼らに罪の意識がないのは、自分たちは良いことをしているのだと信じているから。
正彦は、教祖と言っても、普通の人。一般の常識人。
最初は、詐欺まがいの事を始める変な人の印象が、段々と周りの信者たちが普通でない感覚で行動しようとするなかで自分の常識で、なんとか暴走する信者たちを抑えようとする姿は好感が持てました。
そして、ついに、自分が作った宗教に自身が追い込まれるのですが、その時も逃げずに立ち向かう姿は、なかなか格好良かった!
しかし、宗教に本当にのめり込んだ人たちって恐ろしい。
そうなってしまうまでの背景には同情するべきものが多いのですが、救いを宗教に求める現代社会の闇の部分も感じ、なかなか深い話でした。
篠田さんの作品、久しぶりでしたが、面白かった!
★★★★
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
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★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;