発行年月:2002年3月
読者が待ち望んだ、初の書き下ろし短編小説集。凛々しくて、
切なくて、幸福な女たちが生きるとりどりの人生を、
著者独特の冴えた筆で切りとった、贅沢な珠玉の小説10編を収録。
第15回山本周五郎賞受賞作。
(発行/集英社)
10の短編。
大事なことは起きない。
色々な環境で生きている女性たちの日常の一コマ。
表題作は一番最初。
93歳の祖母が肺炎で入院したと知り、ある程度の覚悟をして駆けつけると
そこに妹と母もいて、祖母は、意外と元気そう。
酸素マスクも外していいでしょうと。
ホッととしながら3人で病院を後にする。
たった、それだけのことなのに、江國さんの文章では、その時の情景とか
それぞれの心の内の言葉なんかが、ス~ッと入ってくる。
他の9編も同様。
すごく幸せな環境というわけではないなかで、それなりに幸福を感じる瞬間が
あったり、ホッとする瞬間があったり。
表題のことばは、誰の人生にも意外と沿う言葉なのかも・・・・
と読み終えたら、あとがきで江國さん自身もそんなことを書いていて
ちょっと嬉しくなった。
一番気に入ったのは<動物園>かな?
息子が「しまうまをみたい」と言ったから小雨が降ったり止んだりする
なかを動物園に行き、偶然、そこの今は別に暮らす夫から連絡がきて
動物園のしろくまの前で1時間半ごに待ち合わせするという話。
どうして離れて暮らすことのなったのか、サラッとしか書かれていないけれど
この家族には、この状態がきっと心地いいんだろうな。
こういう家族の在り方もありかな?と思った。
江國さんは、短篇もいい。
まだ読んでいないものがあるので、また探して読もう!
★★★★
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