発行年月:2021年11月
「年をとったおまえを見たかった。見られないとわかると残念だな」(「哀しみがたまる場所」)
作家夫婦は病と死に向きあい、どのように過ごしたのか。残された著者は過去の記憶の不意うちに苦しみ、その後を生き抜く。心の底から生きることを励ます喪失エッセイの傑作、52編。
◯本文より
あと何日生きられるんだろう、と夫がふいに沈黙を破って言った。/「……もう手だてがなくなっちゃったな」/私は黙っていた。黙ったまま、目をふせて、湯気のたつカップラーメンをすすり続けた。/この人はもうじき死ぬんだ、もう助からないんだ、と思うと、気が狂いそうだった。(「あの日のカップラーメン」)
*
余命を意識し始めた夫は、毎日、惜しむように外の風景を眺め、愛でていた。野鳥の鳴き声に耳をすませ、庭に咲く季節の山野草をスマートフォンのカメラで撮影し続けた。/彼は言った。こういうものとの別れが、一番つらい、と。(「バーチャルな死、現実の死」)
*
たかがパンツのゴム一本、どうしてすぐにつけ替えてやれなかったのだろう、と思う。どれほど煩わしくても、どんな忙しい時でも、三十分もあればできたはずだった。/家族や伴侶を失った世界中の誰もが、様々な小さなことで、例外なく悔やんでいる。同様に私も悔やむ。(「悔やむ」)
*
昨年の年明け、衰弱が始まった夫を前にした主治医から「残念ですが」と言われた。「桜の花の咲くころまで、でしょう」と。/以来、私は桜の花が嫌いになった。見るのが怖かった。(「桜の咲くころまで」)
元気だったころ、派手な喧嘩を繰り返した。別れよう、と本気で口にしたことは数知れない。でも別れなかった。たぶん、互いに別れられなかったのだ。/夫婦愛、相性の善し悪し、といったこととは無関係である。私たちは互いが互いの「かたわれ」だった。(「かたわれ」)
●近年、稀にみる圧倒的共感を得た朝日新聞連載の書籍化
(朝日新聞出版HPより)
ご主人の作家・藤田宜永さんは2020年1月30日に肺がんのため亡くなられた。
ニュースを知ったときは、びっくりした覚え。
まだ69歳だったんですね。
夫である藤田氏との出会いから結婚まで、結婚後の二人の生活の様子などが
窺えて嬉しかったけれど、そこには今はもう居ないという寂しさも
感じられた。
本当に良い夫婦関係だったんだなぁ~。
東京から長野の森のなかに居を移して自然を感じながらの日々の暮らしは
静かで居なくなった人のことを思い出しながらは、寂しく心細い
だろうな・・・。
特にコロナ禍でもあり、人にも容易に会えないし。
それでも執筆中に作品を完成させたのは、凄い!
最新刊「神よ憐みたまえ」も楽しみ。
美しい小池さんの言葉でいっぱいの1冊だった!
表紙の絵も凄くステキ!
この本を読んで同じ心境の人はきっと癒されると思う。
★★★★★
(朝日新聞出版HPより)
ご主人の作家・藤田宜永さんは2020年1月30日に肺がんのため亡くなられた。
ニュースを知ったときは、びっくりした覚え。
まだ69歳だったんですね。
夫である藤田氏との出会いから結婚まで、結婚後の二人の生活の様子などが
窺えて嬉しかったけれど、そこには今はもう居ないという寂しさも
感じられた。
本当に良い夫婦関係だったんだなぁ~。
東京から長野の森のなかに居を移して自然を感じながらの日々の暮らしは
静かで居なくなった人のことを思い出しながらは、寂しく心細い
だろうな・・・。
特にコロナ禍でもあり、人にも容易に会えないし。
それでも執筆中に作品を完成させたのは、凄い!
最新刊「神よ憐みたまえ」も楽しみ。
美しい小池さんの言葉でいっぱいの1冊だった!
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この本を読んで同じ心境の人はきっと癒されると思う。
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自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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