発行年月:2020年4月
誰かに食べさせたい。願いがかなって杉の木に転生した亜沙は、わりばしになって若者と出会う(「木になった亜沙」)。どんぐりも、ドッジボールも、なぜだか七未には当たらない。「ナナちゃんがんばれ、あたればおわる」と、みなは応援してくれるのだが(「的になった七未」)。夜の商店街で出会った男が連れていってくれたのは、お母さんの家だった。でも、どうやら「本当のお母さん」ではないようで…(「ある夜の思い出」)。『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞した気鋭の作家による、奇妙で不穏で純粋な三つの愛の物語。
(文藝春秋HPより)
不思議なお話3つ。
<木になった亜沙>
自分の触れるものには、誰も食べてくれない。
どうすれば、食べてくれるのか?
その願いが木になることで叶うという話。
<的になった七未>
どんな物にも当たらない七未。
当てられることから逃げていては終わらないと気づき、当たりたいと
思うのに・・・
ついには自分で自分を殴り始め、病院に。
2つの話の主人公の数奇な生き様には切なさと哀しみがある。
本人が望んだことではないのに・・・
最後の話<ある夜の思い出>は、前の2つとはちょっと違う。
主人公の自堕落な生活ぶりには、嫌悪感を抱く。
ある夜、いつものように説教する父親から逃げて夜の街に出て
這いつくばったまま、食料をあさっていると、自分と同じような
行動をする男に会い、彼の家に誘われてついていく。
なんだこりゃ?と思っていたら、どうやら、彼は猫で、雌猫として
彼の家に入った様子。
そこの人間の家族が、「ジャックがお嫁さんを連れてきた」と
喜んでいる。
が・・・彼女は、一度家に戻る。
二度とジャックの元に戻れなかったが・・・
結局、自堕落な生活をしていた最後の主人公だけ、普通に結婚して
子供もいる幸せな生活を送っている。
なんだか不条理なかんじ。
でも面白かった。
不思議な物語を書く作家さんだ。
しかし、嫌いじゃない。
★★★
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