発行年月:2015年1月
悲しみしかないと、思っていた。でも。死は悲しむべきものじゃない――南の島の、その人は言った。
心を取り戻すために、約束を果たすために、逃げ出すために。忘れられないあの日のために。別れを受け止めるために――。「死」に打ちのめされ、自分を見失いかけていた。そんな彼女たちが秘密を抱えたまま辿りついた場所は、太平洋に浮かぶ島。そこで生まれたそれぞれの「希望」のかたちとは? “喪失”から、物語は生まれる――。
(新潮社HPより)
4つの章からなる物語で、章ごとに主人公が変わる。
いずれも阪神淡路大震災を経験し、大事な人を亡くしている。
それぞれの章に共通して登場は、トンガ王国でゲストハウスを経営する日本人
尚美。
<楽園>
濱野毬絵は、震災で双子の姉妹を亡くしている。
当時5歳。
亡くなったのは、雪絵だが、母親は毬絵を亡くしたものとして毬絵の墓を建てた。
毬絵は雪絵として生きることを強いられる。
20歳の毬絵は、一人ある決心をしてトンガ王国のトンガタブ島に来た。
毬絵として生き返るために。
<約束>
松本理恵子は、トンガの中高一貫の女子校に赴任して2か月。
婚約者だった柏木宗一と距離をおくために日本を離れてきた。
それなのに、宗一はトンガまで理恵子に会いに来る。
戸惑う理恵子だったが、それは、震災で亡くなった友と交わした約束を
果たすためという。
<太陽>
杏子は5歳の娘を連れてトンガ王国に来た。
大学2年のときに妊娠し、一人で娘の花恋(かれん)を産んだ。
子どもの頃、震災で父親を亡くし、慣れない避難所生活は苦痛でしか
なかったが、そこでボランティアのトンガ人・セシミさんに出会い
救われた。トンガでセシミさんに会えたらいいなと思い・・・。
<絶唱>
土居千晴は、大学4年のときに震災を体験した。
その日は、前の日からまだ卒論が完成しない同じアパートの友人の部屋で
パソコンに向かっていた。
自分たちは怪我もせず無事だったが、別のマンションに住んでいた友人・静香は
建物の下敷きになり圧死したと後から知りショックを受ける。
震災後わりとすぐに電車が復旧し、安全な場所に避難したが、後に静香の
葬儀の場でほかの友人からそのことを非難され傷つく。
あれから20年経ったんだなぁ~。
その年に長女が生まれて、長女も20歳になっているから・・・
離れた場所で、住んでいるところでは少し揺れを感じた程度だったけど
あのニュースを見たときは被害の大きさに唖然とした。
そんな当事者たちの物語。
大変な体験をして、その後も重いものを抱えて生きることになった人たちだけど
そんな気持ちを軽くしてくれる人との出会いがあってホッとする。
特に最後の<絶唱>は、自然と涙が溢れて来た。
亡くなった人との思い出を胸に秘めながら、前を向いて明るい方へ
進んで行ってほしい。
良い物語でした。
★★★★★
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