発行年月:2014年4月
昭和の初め,南九州の離島(遅島)に,人文地理学の研究者,秋野が調査にやって来た.かつて修験道の霊山があった,山がちで,雪すら降るその島は,自然が豊かで変化に富み,彼は惹きつけられて行く.50年後,不思議な縁に導かれ,秋野は再び島を訪れる──.歩き続けること,見つめ続けることによってしか,姿を現さない真実がある.著者渾身の書き下ろし小説.
(岩波書店HPより)
ロマン溢れる物語でした。
南九州の離島・遅島に調査のため滞在している秋野。
亡くなった主任教授がやり残した調査を引き継ぐため。
ウネ婆さんと嘉助爺さん宅に居候させて貰い、生活を共にする。
なんとも情緒たっぷりの暮らしぶり。
船を漕いで湯治場に仲良く向かう二人を見送る秋野の場面は幻想的なかんじだった。
居候させて貰っている地域は龍目蓋(たつのまぶた)という場所。
そこから、毎日調査に出かける秋野。
影吹で、西洋館を見つける。ウネ婆さんの話では山根さんという人が住むという。
後日、山根さんを訪ね、話が弾み、いつでも泊まって良いと言う言葉に甘え
そこから出かけた方が近い場所の調査にはそこを拠点とさせてもらう。
島の歴史をあれこれ知る。
かつては、寺院があり、修験道の島でもあったという。
しかし、明治の政府の神仏分離宣言を機に寺院は一瞬で壊されてしまった。
神道を国体の基盤とするため神と仏が融合したものは引き離すこととなり
長年、仏教より下に見られていた神道の関係者がここぞとばかりに暴走し潰したとか。
また当時は民間宗教=モノミミも島に広がっていて、それらも排除の対象にされた。
西洋館に住む山根さんの父親は寺院で修業する僧侶だった為、その混乱時島を脱出したという。
そして父親が持っていたという寺院の見取り図を見せてもらう。
昔そこで暮らしていた人たちの生活の様子を、人や残されたものから探るって面白そう。
人文地理学って興味あるなぁ~。
ウネ婆さんが語る雨坊主の話もちょっと怖いけれど面白かったし。
波音(はと)に出かけそこに住む梶井さんと知り合ったことも調査をしていく上で
とても大事な出会いだった。
梶井さんと共に歩き、語らう場面も素敵だった。
そんな素晴らしい夢のようだった隠島での生活から50年後に終盤切り替わる。
秋野が島を訪れたのは昭和初期。
その50年の間には、戦争があって、多くのものをなくす。
なんとも辛い。戦争はやっぱり得るものがない。
秋野はその間、結婚し、子どもが出来た。
そして息子が偶然、隠島の開発事業に関わっていると知り、島を50年ぶりに訪ねる。
自然を壊し近代化していくのはある程度必要なことかもしれないけれど
なんだか空しい。
壊すのなら、そこがどんな土地だったのか、残すものが必要かも。
読みながら、いろいろ考えさせられた。
梨木さんの物語には、植物や生物が多く登場する。
それを後で調べるのも楽しい。
今回気になってどんな植物か調べたのが以下の2つ。
ミツガクワク・・・氷河期の生き残りかと言われる植物だとか。
ハマカンゾウ・・・ヤギが食べつくしてしまったと書かれていた植物。
そんなに美味しいんだろか??
ああ、美しく儚い夢のようなお話でした。
★★★★★
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★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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