発行年月:2020年6月
オベリベリ――和人たちによって「帯広」とされた新天地
明治の先進教育を受けた彼女は、いかに生き抜こうとしたのか
開拓に身を投じた実在の若者たちを基にした、著者が初めて挑む長篇リアル・フィクション
〈明治維新という大きな時代の変わり目を体験した上に、それまでとまったく異なる世界に身を投じる若者たちの姿は、今、世界的な新型コロナウイルスの流行により、またもや大きな時代の変わり目を経験しなければならない私たちに何を思わせ、感じさせることだろうか〉――乃南アサ
文明開化の横浜で時代の最先端にいた女性は“その地”でいかに生きたか
私たちの代が、捨て石になるつもりでやっていかなければ
この土地は、私たちを容易に受け入れてはくれない
宣教師たちが開いた横浜の共立女学校に学ぶ鈴木カネは、父や兄にならって聖書の教えを受け、勉学に励んでいた。兄の銃太郎は、神学校で一緒だった渡辺勝、依田勉三と北海道開拓について考え始めている。彼らは勉三を中心に「晩成社」を興し、新天地へ向かう準備を進める。明治15(1882)年、23歳になったカネは女学校を卒業し、渡辺勝と結婚、そしてオベリベリとよばれた帯広へ行くことを決意する。
(講談社HPより)
帯広を開拓するために向かった鈴木カネの視点から当時の開拓の様子を知る物語。
カネは、横浜共立女学校英文科の第一回卒業生。
卒業後は、学校に残り教鞭も取っていたが、兄が仲間と共に未開の地へ向かうと
聞き、自分も興味を持つ。
信頼している父までが開拓の仲間に加わると。
そして兄・銃太郎から一緒に開拓に向かう親友・渡辺勝の妻として一緒に行かないか?と
話を持ち掛けられ、承諾。
夫となる渡辺勝にも会い、惹かれる。
教師として働きながら、一緒に開拓地に向かう者を集めているという。
カネの決断力には、びっくり!
教養を身に着けての先が未開の地の開拓に関わるって・・・凄いな。
開拓の地でも子どもたちに教育の場を設けていたのも凄い。
北海道・帯広。
どんな場所か、行ったことないのでわからないけど、何もないところから
住むところを造り、田畑を耕し、作物を育て食べていくだけでも大変そう。
アイヌたちの助けを借りながら、皆で協力し合いその日、その日を懸命に
生きる。
逞しい。
やっと育った作物をバッタの大群にやられたり、自然災害にやられたり
それでも何度も挑戦する彼らの根性がすごい。
何もかもうまくいかないときは、愚痴も出るし、お互いの意見のぶつけ合いも
あるけれど、依田、勝、銃太郎は、終生良いチームだったんだろうな。
兎に角、凄い人たちの物語だった。
巻末の補遺で、彼らが実在していた人物で、その後の様子も書かれていた。
660頁の長編物語、楽しく最後まで読めた!
★★★★★
発行年月:2018年5月
祖母の故郷、台南への旅が私の人生を変えた
派遣で働く杉山未來は祖母を元気づけるため台南へと旅立つ。
将来の夢破れ、祖母の認知症に悩む未來が台湾で見つけた貴重な宝物とは。
(文藝春秋HPより)
台湾の歴史が学べる。
親日派が多い所以もわかった。
未来は祖母・朋子が幼い時の思い出がいっぱい詰まった台湾(台南)へ一人
向かう。
通訳やガイドとして関わってくれる人たち。
・季怡華(リイカ)・・・表情が読めないのでやや冷たいかんじ
未来の父(大学教授)の元教え子。
・洪春霞(コウシュンカ)・・・明るくお茶目。食べる事が大好き。
日本でキャバクラで働いていた経験あり。
日本語は上手だけど、ちょっと乱暴な言葉遣い。
李の教え子。
・楊建知・・・春霞の友達。大学で建築を学んでいる。
・林賢成・・・楊の高校時代の歴史の先生。
色々な人に助けられて、祖母の思い出の地を巡る。
ついに祖母が住んでいたであろう場所も見つける。
そこに住んでいた劉慧雯。
彼女が言った「自分には愛される資格がない」という言葉が哀しい。
日本での留学経験もあり賢い人なのに、家族のトラブルにいつも翻弄されていて
なんとか、彼女がこの先、幸せになって欲しいと思った。
表題の<六月の雪>は、花の事だった。
ごく限られた海の近くで見られる小さな白い花。
桜のように大きな木にそれが咲くとまるで雪のようだという。
無表情の怡華との帰国前の空港での会話も良かった。
台湾の歴史が怡華の無表情と繋がっていたのか?
そう考えると切ない。
帰国した未来にも、慧雯に似たようなトラブルが・・・
隣家に住む、父の妹・真純の存在が厄介。
でも祖母はちゃんと対策してくれていた。
認知症が進む前に未来にそれが伝わって良かった!
最後、台湾からの報せにはビックリ。
哀しい(/_;)。
また、きっと近いうちに再会できると思っていたのに・・・・・
長い物語だったけど、長さを感じさせず夢中で読んだ。
良い物語でした。
★★★★★
発行年月:2016年3月
かつての恋人の故郷でその不在を想うキャリア・ウーマン。寒い土地への転居を境に狂い出す「じゃぱゆきさん」。整形して若い男と結婚し、離別した娘を従妹として引き取ろうとする母。夫の子を産むと決めた女のもとを訪ねる妻。次々と夫が死ぬ魔性の女。彼女たちはさまざまに熟れていく。女性の心理描写が際立つ短編を精選し、単行本未収録作品を追加したベスト・オブ・ベスト第二弾。
(新潮文庫HPより)
さすが乃南さんの短編傑作選!
前回読んだ「最後の花束」も良かったけど、こちらもまた面白かった。
ちょっと怖い話も多かったなぁ~。
表題作は一番最初で、後からの短編に比べたらロマンチックなかんじ。
かつての恋人の出身地を仕事で訪れて、偶然、見かける。
ちゃんと会わないところがミソ!
お互い「あれ?あの人は・・・」と思ったままというのが、なんとも良い!
女って怖い!と思ったのは
<今夜も笑ってる>と<はびこる思い出><愛情弁当>。
自分の思いを遂げるためには手段を択ばない女たち。
特に<愛情弁当>は、衝撃的な真実がわかったとき、ゾ~ッ。
静岡県民として嬉しい気持ちになったのは<悪魔の羽根>。
フィリピン人の奥さんが旦那さんの転勤先の新潟で雪に悩まされ
陽気な性格が一変、家から一歩も出たくないとふさぎ込む。
そして勤務地が静岡に変わり、その移動中、雪がない地面と青空をみて
気分がそれだけで明るくなっていくという話。
東北地方の人には失礼な話だけど、温暖な地域で暮らす人には
やはり雪国の冬は尋常じゃない辛い毎日なんだな・・・・・。
短編傑作選、今後も読みたい!
ひとつひとつの話が短いけれど、ちゃんと完結する小気味よさは流石です!
★★★★★
発行年月:2015年10月
色恋をめぐる狂気は、その女たちを少しずつ蝕み、少しずつ壊していった……。ある女は大阪に引っ越してまで愛人を追いかけ、またある女は親友の婚約者を欲しがる。職人の夫の浮気を疑った妻は夫の作る提灯に火を仕込み、OLは見る間に垢抜けた同僚への嫉妬に狂う……。サスペンス・ミステリーの名手による短編を、単行本未収録作品を加えて精選したベスト・オブ・ベスト第一弾!
(新潮文庫HPより)
乃南さんの短編傑作集が3冊出ているのを知り、先ずは1冊目を読んでみた。
恐ろしい、女の恨み、嫉妬のオンパレード。
どれも結末が最悪で、事件だ!
最初の<くらわんか」からビビった!
疎遠になったキャバクラの客を追いかけて来ての復讐劇。
そのやり方が恐ろしい。
次の<祝辞>も。
親友だと思って居た女友だちが披露宴の場でまさかの花嫁の暴露話。
ほかの話も全て女性の話。
表題作<最後の花束>は一番最後の話。
先ずは16歳~17歳の家で少年と少女が夜の世界で働いていて、知り合い
仲良くなった後、悪い先輩によって事件が起きる。
その後、話が変わって、お花屋さんを営む女性の結婚式が近いという話になり・・・
全く別の話かと思ったら、先の話のその後の話で、当時の少女が復讐に及ぶ話。
ああ、嫌な話ばっかりで恐ろしい。
唯一、<はなの便り>は、微笑ましかった。
この流れだったので、途中まで、どんな展開になるのやら?とドキドキして
いましたが、ああ良かった♪
短編なので1つの話がサクサク読めていい。
2冊目、3冊目も読んでみよう♪
★★★
発行年月:2014年8月
心理描写の名人上手が、小説技法と男女観察の粋を尽くした、きらめく宝石のような小説たち!
罠と浮気。カネとライバル。煩悶と純心。明けない夜と、白茶けた朝。いつまでも瑞々しい老婆、フェティシズムに目覚めた小学生男子、結婚できないカップル、闇の中で胸をときめかせる政治家――。〈恋ごころ〉という厄介きわまるものを抱えた男たち女たちのミステリアスな心情と希望を描く、作者会心の珠玉短篇集。
(新潮社HPより)
ササッと読めて、まあまあ面白かった短編集かな?
<ハズバンズ>
元妻と彼女が再婚した男とそれぞれ親しくしている男の話。
<ピンポン>
一緒に暮らしたいと言われたので「無理」と答えて大ゲンカ。
彼が翌日、突然訪ねて来た。
<僕が受験に成功したわけ>
中学受験を考えている真吾は、転校生の奈月につきまとわれる。
彼女のマンションに呼ばれて行き、そこで彼女の母親の脚に釘付け。
<内緒>
孫娘が電車内で男の子とキスするのを目撃した。
その後の孫娘と祖母の会話。
<アンバランス>
33歳の瞳子は同棲中の彼とすれ違いの生活が続き、潮時かな?と思う。
一方の彼は、彼女にナイショで新居購入、その後の二人の生活を考えている。
<早朝の散歩>
白い杖を握る男性が電車に乗るのを助け、電車内で会話。
<キープ>
15歳の初恋のとき、神様に「もう二度と誰かを好きになったりしない」と
誓ったばかりにその後の結婚も5年で破たん。
夫の事は好きじゃなかったんだと気づく。
<三年目>
共働きなのに自分だけ家事に追われ不公平だと思って居る妻。
<それは秘密の>
暴風雨のなか車を運転中、トンネル内で土砂災害のため取り残された
全く他人の男女。
一番最後の表題作は面白かった。
状況としては大変な目に遭っているわけですが・・・
「それは秘密の」が、ひみつのアッコちゃんだったのは愉快♪
話としてとても良かったのは、超短編の
「早朝の散歩」。
こんな何気ないひと時の男女の関わりいいな。
短編集と知らずに読みましたが、やはり長編作が次は読みたいなぁ~。
表紙の絵は、個人的にあまり好きじゃないわ~^^;
★★★
12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 3 | 4 | ||||
6 | 7 | 9 | 10 | 11 | ||
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;