忍者ブログ
読んだ本の感想あれこれ。
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6



発行年月:2024年8月


「愛の行方」を書きながら、そもそも「愛」ってなんなのだろうとずっと考えていました。 自分にとって大切な小説になりました。                               井上荒野 「姦通」していた男女が熊に殺された—。 閑静な別荘地で起きた事件は、愛に傷ついた管理人の男女と、6組の夫婦に何をもたらしたのか。 愛の行方の複雑さを描く傑作長編! 運命の人からきらわれたり捨てられたりすることもある。 「このふたりは姦通していた」何度読んでも笑ってしまう。まるで私宛の手紙みたいだ。                               —小林七帆 伽倻子と七帆はひと続きなのか? 結局俺は、伽倻子を愛したときから、ずっと同じことをしているだけなのか?                               —小松原慎一 そりゃあそうよね。男と女のことなんて、全部間違いみたいなものよね。                               —柊レイカ ふたりはとんでもなくうまくいっている、幸せな夫婦なのだから、相手の挙動の変化には敏感なのだ。みどりはアトリエに忍び込むことになった。そして知った。                               —神戸みどり テントの外には熊が、人食い熊がいるのだ。だが純一は、再び愛の体に没頭する。そう、愛に没頭するのだ。                                                             —野々山純一 装丁 大久保伸子 装画 杉本さなえ



                   (発行/春陽堂書)


別荘地でクマに殺された男女は、互いに既婚者で不倫関係にあったらしい。

衝撃的な事件があったけれど、その後は、穏やかな日常が続く。

別荘地に暮らしている人たちは、他からの移住者たち。


そこの管理会社の社員として
小松原慎一(28歳)独身。
そして熊騒動のさなか、東京から新たに赴任してきた小林七帆(25歳)。

二人の関係が、段々と近づいていく様子もよかった。
ちょっと似た者同士のかんじ。


住人たち
柊恭一&レイカ夫婦(70歳前後?)・・・・以前は二人で鍼灸院をやっていたが、ここで鍼灸師として働いているのはレイカのみ。
実は夫婦仲は最悪なのに、周りにはおしどり夫婦と思わせている。


扇田充琉&圭夫婦・・・東京から移住したばかりの新婚1年3か月。妻は妊娠中。
夫は広告代理店勤務。妻は<ワンダホー田舎暮らし>というYouTubeチャンネルをもつ。


井口文平&萌子夫婦・・・妻は東雲萌子として名が知られた作家。夫も元は作家だが最近は全く売れていないし執筆活動もしていない。


小副川孝太郎&小百合夫婦・・・夫婦で散歩が日課。仲がいい老夫婦。
夫は、すい臓癌で余命は短い。


野々山純一&愛夫婦・・・夫50歳、妻48歳。ペンション「愛と山」を経営。愛犬、レノン。
息子が大学進学と共に家を出て夫婦二人。妻は夫のギラギラし始めることが
嫌でスマホゲーム・テトリスに逃げる


神戸武生&みどり夫婦・・・60代半ば。週2~3回、ペンションのカフェコーナーに
訪れる。二人とも元は教師で夫は油絵、妻は染色を教えていた。



五味・・・熊に妻を殺された夫。トルコ料理店<kokkai>店主。




仲良し夫婦に見えても、離婚寸前の夫婦だったり、夫には言えない気持ちを抱えていたり・・
人には色々な事情があるものだな。
色々な人のいろいろな心のなかのことが巧く表現されていて面白い。

ちょっとしたいたずら心でクマに襲われた二人をのぞき見していた小副川夫妻が
可笑しい。
癌末期なのに、悲壮感がないのがいい。
病院で入院して迎える最期より、きっと幸せだろう。


突然、亡くなってしまったレイカには、びっくり。
人はいつ何が起きるかわからない。
日々を大切に生きなきゃな・・・と思う。



なかなか面白かった。
本の装丁も素敵!



                         ★★★★
PR



発行年月:2024年1月


ひとは、「独り」から逃れられない。
著者史上最もグロテスクで怖い10の物語から成る、最高精度の小説集。
バイト先のコンビニに現れた女から、青年は「ある頼みごと」をされて──「ぴぴぴーズ」
男を溺れさせる、そんな自分の体にすがって生きるしかない女は──「みみず」
刺繍作家の女は、20年以上ともに暮らした夫の黒い過去を知ってしまい──「刺繍の本棚」
女たちは連れ立って、「ドクターF」と名乗る男との待ち合わせに向かうが──「錠剤F」
……ほか、あなたの孤独を掘り起こす短編10作を収録


                   (集英社HPより)


どの話も、嫌なかんじ。

ちょっと笑えたのが<あたらしい日よけ>
定職屋を営む夫婦。
台風で二階の日よけが飛ばされ、それによって隠れていたシミが
「おんなのあそこにみえるから、なんとかしてほしい」と言われる。
新しい日よけをAmazonで注文するが数日、経っても届かず、手違いで
少し遅れると。
結局、妻がペンキを塗るというはなし。

なんじゃそりゃ??という話なんだけど、妙に可笑しかった^m^


あとは、なんだか読んでいて気持ちがゾワゾワ。

<みみず>の最後は、もう悲鳴上げそうだったわ(^^ゞ


表題の<錠剤F>の結末は・・・「え?」と驚いたけれど、
こういうわけがわからないものに、近づかない方がいいと思うな。


しかし、井上荒野さん、すごい思考だなと感心。
60歳過ぎて、こんなの書くって・・・・。




                        ★★★



発行年月:2024年2月


「ホットプレートほしい人いませんか?」――或る日、或る食卓、9つの物語。
女も男も、子どもも大人も。誰にでも、感情を呼び起こす“食と道具”がある。
数々の「おいしい小説」を手掛けてきた著者が贈る――“食にまつわる道具”を通して揺れ動く老若男女を描いた短編集。「今年のゼリーモールド」「ピザカッターは笑う」「コーヒーサーバーの冒険」「あのときの鉄鍋」「水餃子の机」「錆び釘探し」「ホットプレートと震度四」「さよなら、アクリルたわし」「焚いてるんだよ、薪ストーブ」の9篇を収録。

                   (淡交社HPより)


ほんわかした短編集。

<今年のゼリーモールド>
庭にあるプラムの実をバケツで収穫し、半分はそのまま。
残りは煮て・・・ゼリーも作ろう!東京の大学に春から行った娘も
帰省してくるだろうし・・・・けれど型がみつからない。
そして娘からは帰省しないと連絡あり、がっくり。
そして、再び娘から本を送ってほしいと。
娘の部屋に入り、本はすぐ見つかるが、ゼリー型も見つかる。
小物いれとして娘が使っていたのだ。


ああ、こういう母の気持ち、わかるぅ~!!


次の話<ピザカッターは笑う>は、父親の心境。
洋食屋を営む夫婦の息子が高校生6人でクリスマスパーティを
貸し切りですることに。
みな、顔なじみの子達。
息子は、そのなかの一人と最近、付き合い始めたらしい。

父親目線で、息子たちの様子を観察する姿が微笑ましいけれど・・・

来週は、自分たち大人のパーティの予定。
プレゼント交換のときに、もし、そのなかの一人の彼女の手に渡ったら
いいな。それを見た彼女の反応も期待しつつ・・・・と思って
買った、ピザカッター(猿が一輪車に乗っている、その車輪がカッターに
なっている)
けれど、それは、息子たちに出すピザに添えてだす。

うんうん、それは、大人のパーティで出さない方がいいに決まっている!

他も全部、いい話。
ちょっと切ない部分もあったけれど、前を向いて進む話になっているし
読んでいて、すっきり。


                    ★★★★




発行年月:2023年2月


大丈夫、会いたいと強く願えば、きっと会える――。黒いコートを着た背の高い彼は、大事な人を探しにここへ来ていた。海辺で、ピアノのそばで、病院で、列車の中で、湖のほとりで、彼は私たちをそっと守り、救ってくれた。大ヒットドラマ「愛の不時着」に心奪われた著者による熱いオマージュの込められたラブストーリー9篇。

                    (新潮社HPより)


愛の不時着は見ていないけれど、読み終えて検索したら
その主人公の男性俳優の名前がこの本で出てくるリ・ジョンヒョンだった。

なるほど・・・清潔感があって、なかなか格好いい。

この本は短編だけど、どの話にもリ・ジョンヒョンと名乗る男性が出て来て
話のなかでちょっとした危機に直面している人たちを助け癒し、気持ちを前向きに
していく。
スーパーマンみたいな人。

そして彼は、ある女性を探しているという。

最後は、その女性に会えたということかな~?
こんな素敵な人に愛される女性は幸せだなぁ~。


最初、この本の表紙を見たとき、ちょっと不気味だった(^^ゞ

でも読み終えた後は、この男性が恰好よく見えた・・・不思議だ(笑)


井上さんの作風とはちょっと違うけれど、こういうハーピーな
結末ばかりのもいいな。
読んでいて楽しかった。

愛の不時着・・・いつか見てみようかな?^m^



                   ★★★



発行年月:2021年4月


二十五年前に家族を捨てて出ていった父親が突然戻ってきた。妻と娘夫婦が経営する八ヶ岳の麓の園芸店へ。
二十歳下のイタリア人女性と恋仲になり一緒に暮らしていたが、彼女が一人で帰国してしまったというのだ。
しかし娘たちはとっくに大人になり、妻にはすでに恋人がいた。
次女の遥は叫ぶ。「許さないから。絶対に。出てってよ。早く出てって!」
長女の真希は苛立つ。「大恋愛して出ていったのなら、二度と戻ってこないのが筋ではないのか」
妻の恋人・蓬田は夜ごと彼女からの電話を待つ。「俺はまるで女子高生みたいだな」
そして妻の歌子は思い出す。夫との出会いの場所に咲き乱れていた花のことを。
家族とは。夫婦とは。七人の男女の目線から愛を問い直す意欲作

                       (集英社HPより)




表題がインパクトあるけれど、話としては、ある園芸店を営む家族の物語で
あれやこれや問題はあるけれど、そんなに深刻ぶった風もなく
悲劇のような喜劇のようなお話だった。


ちょっと気の毒なのは、夫がイタリア女の元に行ってしまった後も
公私ともに、妻・歌子に寄り添ってきた園芸店従業員の蓬田。
恋人関係にあったのに、25年ぶりに飄々と戻ってきた夫の存在を一番
邪魔に感じていたのは彼でしょう。

最初こそ、今更戻ってきて!と怒っていた娘たち2人だったけど、
母親と一緒にいるところを見ても黙認。

次女の遥は、家を出ているけれど、不倫中。
でも相手の男の方から別れ話が出たり・・・。
父親のことを非難しながらも自身も似たようなことしてるわけで。。。



誰にも共感できないけれど、案外、同じ状況になったら、同じようなこと
しちゃうのが人間かもしれないなぁ~などと思ったりする。



表題の「百合中毒」は、園芸店に猫が百合の葉を齧って大変なことになったと
クレームを突きつけにきた夫婦に、夫婦の前で
その注意喚起をするポスターを皆で作成し店内何か所かに貼る。
夫婦が帰った後、ポスターは剥がすが、歌子の描いた百合中毒と書かれた
ドクロの絵のあるポスターのみレジそばに貼ったままにする。

家族の皆が、このポスターを日々眺めることに。。。


お客の子、ゆりちゃんがこのポスターの存在でちょっと気の毒だったな。



最後は、苦笑だったけどまあまあ面白かった。



                     ★★★
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 3 4
6 7 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
メ-タ-
kyokoさんの読書メーター
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[09/20 kyoko]
[05/23 のぶ]
[09/15 kyoko]
[09/14 ひろ]
[03/06 kyoko]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
kyoko
HP:
性別:
女性
自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;

バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
フリーエリア

Copyright (c)本を片手に・・・ All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  image by Night on the Planet  Template by tsukika

忍者ブログ [PR]