発行年月:2016年6月
川越の街の片隅に佇む印刷所・三日月堂。店主が亡くなり、長らく空き家になっていた三日月堂だが、店主の孫娘・弓子が川越に帰ってきたことで営業を再開する。
三日月堂が営むのは昔ながらの活版印刷。活字を拾い、依頼に応じて一枚一枚手作業で言葉を印刷する。そんな三日月堂には色んな悩みを抱えたお客が訪れ、活字と言葉の温かみによって心が解きほぐされていくのだが、弓子もどうやら事情を抱えているようで――。
(ポプラ文庫HPより)
短編連作でしたが、ひとつのお話と言ってもいいかも。
とても素敵な心温まる物語でした!!
<世界は森>
大学進学が決まり、北海道に行ってしまう息子・森太郎に贈る物に悩むハル。
自分が子どもの頃、両親に貰って宝物にしていた三日月堂のレターセットを
息子にも贈ろうと決める。
<八月のコースター>
伯父の経営していた珈琲店<桐一葉>を受け継いでいる岡野。
何か自分の店らしさを出すものを、お客さんに提供できないか?と考え
ショップカードを作ったら?とハルの提案に乗る。
自分が以前、好きだだった俳句の句入りコースターも一緒に作ろうと決める。
<星たちの栞>
高校の国語教師の真帆。
文芸部の顧問でもあり、学校祭で何をするのがいいか考えている。
珈琲店<桐一葉>に久しぶりに入店し、俳句入りコースターに感動。
印刷所・三日月堂を案内してもらい、店主の弓子の提案もあり
活版ワークショップを開くことに。
<ひとつだけの活字>
結婚を控えている雪乃。
曾祖父が活字屋を営んでいたと祖母から聞き、活字セットを祖母から受け継いで持っている。
結婚式の招待状を活字セットで作りたいと考えている。
大学時代のゼミの先輩から印刷所・三日月堂を教えて貰い訪ねる。
人と人が繋がっていく様子も楽しかったし、活版印刷についても色々知ることが
出来た。
弓子の過去のことも分かった。
弓子にも幸せな未来があるといいな。
★★★★★
PR
発行年月:2016年2月
故郷仙台を激震と大津波が襲った。
東京の「私」はその時、テレビを見ながら携帯電話を握りしめていた――。
宮城県出身の気鋭作家・穂高明が、5年間迷い苦しみながら書き上げた魂の物語。
(中央公論新社HPより)
3.11の物語。
第1章から第7章まで、語り手が代わりながらですが、登場人物たちは
ひとつの家族。
それぞれの視点で語られる3.11。
第1章、第4章、第7章は、小説家として東京で暮らしている宮川悠子の語り。
その日、東京もかなりの揺れで、ニュースで故郷の映像を見て愕然とする。
すぐに両親、祖母、妹家族の安否を確認しようと携帯から連絡を試みるが
返信なく、不安なまま過ごす時間が、こちらにも伝わってきた。
第2章、第5章は、悠子の母親・都の語り。
家族は無事で、娘の夏子家族の家に居候させて貰う。
妹の由美子が津波の犠牲になったと知り、由美子の生前のことをあれこれ思い出す。
第3章、第6章は悠子の妹・夏子の語り。
親戚の葬儀を合同で行うという日に仕事で来られない姉に違和感を抱く。
姉から以前教えて貰った青と白の横断幕のことを思い出す。
それは浅葱幕と言い、土地によっては、100歳を越して亡くなった人の葬儀に
おめでたいという意味でそれを使う風習があると。
色々な人の視点で語られる3.11。
命が助かった人たちも、親戚や知り合いを誰かしら亡くし哀しんでいる。
これからの生活のことなど不安がいっぱい。
ニュースで復興の兆しなどと言われても、自分たちは何もあの日から変わっていない
という言葉が胸に刺さった。
今も尚、色々な苦労があるんだな。
宮城出身の著者だから書けた物語ですね。
辛い話ですが、読み応えありました。
他の作品も今後、読んでみたい。
★★★★
発行年月:2011年3月
記念の品を残そう。最後の小学校生活、わたしがここにいた証として。
1年間限定で山奥の学校に引っ越してきた少女と木の触れ合いを叙情豊かに綴る、坪田譲治文学賞作家の新作!
鮮やかな手つきに目を見張った。木片は、あっという間に女の子の形に変わり、それをわたしに差し出す。ありふれた形だけどすぐにわかった。ボブヘアにスカート。太めの脚に大きな足。「これ、あたしだ……」――<本文より>
(講談社HPより)
12歳の小学生立石美楽が主人公。
父親が山奥にある高校の英語教師として赴任したので東京から引っ越して来た美楽たち。
生徒たちは、日本全国から集まっていて、地元の生徒以外は寮に住む。
美楽たちは特別に学校内の敷地に暮らし、美楽はそこから地元の小学校へ。
最初は、東京と大違いの暮らしに不満だらけで、すぐにでも東京に帰りたいと
思う美楽。
でも、明野工房を知り、そこで木工工芸家の伝さんに出会い、木工にはまる美楽。
父親の教え子たちや、小学校の子たちとも徐々に人間関係を築いていくなかで
山の暮らしに馴染んでいく様子が楽しい。
特にクラスのお嬢様・優美や父親の教え子・山田との関係が今後も続きそうな予感。
東京で再開編なんて続編、出ないかな?
★★★★
発行年月:2015年8月
第153回芥川賞受賞作
「早う死にたか」
毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、
ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。
日々の筋トレ、転職活動。
肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して……。
閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!
(文藝春秋HPより)
健斗は、新卒で5年間勤めた会社を辞め、就活中。
独学で資格試験にも挑みながら前向きに頑張る青年。
自宅には母とその父親である祖父(87歳)が居て、母と健斗は祖父の介護をしながらの
日常。
ディサービスやショートステイを利用し、家庭内では杖があれば自力歩行が可能な
祖父の入浴時の介助は健斗がすることが多い。
祖父の口癖は「早う死にたか」
そんな望みを叶えてあげたいと思う健斗。
良い孫だなぁ~。
祖父の気持ちを理解してあげている。
祖父が倒れて入院した際、見舞いに行き、感じたことは、同感。
チューブだらけで延命を施されているだけの生なら、自分なら要らないな。
そういう意思をちゃんと老いたら家族に伝えておくことが必要かもね。
物語は淡々と深刻にならず今の社会問題なども踏まえて描かれていた。
楽しい話じゃなかったけれど、ただ暗いだけじゃない家族の在り方を
考えさせられたりと、なかなか読みごたえがあった。
文章もとてもわかりやすい。
他の作品も読んでみたくなった。
同時に芥川賞受賞の「火花」より、こちらが断然、好き。
★★★★
発行年月:2016年2月
仙台にある「本当寺」というお寺の墓地には、振袖姿のかわいい幽霊がでます。名前は「お鈴」。そう、お鈴さんは江戸時代の呉服屋の娘さん。とある事情で平成の世になっても、いまだに成仏できずにいるんです……。
(角川書店HPより)
お鈴さんは、幽霊でした。
呉服屋末広屋の娘で17歳で亡くなっている。
力弥という男が好きだったのに、彼はおナミさんと駆け落ちしてしまった。
お鈴は、そんな二人の末裔を探しているという。
村田カエデ(27歳)は、信用金庫勤務で母と二人暮らし。
カエデが2歳の時に両親は離婚し、父親とは全く会っていない。
が・・・そんな父親が亡くなり、娘あての手紙があると病院で父を看取った
看護師がカエデの元にそれを送ってきた。
そのなかに八木山の本当寺にお参りに来てほしいと。
そして、そのお寺に行った際、出会ったのがまるで舞妓さん姿のお鈴さんと
そのそばにいた呉服屋の番頭だった重兵衛さん。
カエデには二人の姿が見えたけれど、他の者には見えない。
以来、カエデの前に突如現れる。
力弥とおナミを探して欲しいと頼まれて・・・・
で、現在の世で夫婦の佐藤奈美とその夫・力弥に出会う。
二人はお鈴の探している者たち?復讐するの?と思いきや
二人の危機を救う。
なんとも心優しい幽霊です(^^)
他にも困っている人の手助けをして、おせっかいというより
困っている人を見過ごせない性格なんでしょう。
カエデの父親の事も詳しくわかり、母親にナイショにしていた手紙の
ことも実は全部、知っていたとは。
表紙の絵の通り、可愛い幽霊とそれに助けられる人たちの楽しいお話でした♪
ところで、お鈴さんは成仏したのかな?
★★★
カレンダー
12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 3 | 4 | ||||
6 | 7 | 9 | 10 | 11 | ||
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
カテゴリー
フリーエリア
最新記事
(01/08)
(01/05)
(01/02)
(12/28)
(12/26)
最新トラックバック
プロフィール
HN:
kyoko
HP:
性別:
女性
自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
ブログ内検索
P R
カウンター
フリーエリア