早くに両親を亡くし十六歳で奉公に出た菜々だったが、主人の風早市之進が無実の罪を着せられてしまう。驚くことに市之進を嵌めたのは、無念の死を遂げた父の仇敵その男だった。風早家の幼き二人の子を守るため菜々は孤軍奮闘し、そして一世一代の勝負に出る---軽妙洒脱にして痛快な時代エンターテインメント
(双葉社HPより)
主人公・菜々の奉公先の家族が素晴らしい。
主人の風早市之進とその妻・佐知は、奉公人である菜々を大事に家族同然のように接してくれる。
その優しさに報いようと菜々も家族のために奮闘する。
菜々は武士の子であり、父親・安坂長七郎が切腹を強いられたのは、轟平次郎という男の策略によるものだったと知りいつか仇討ちをと密かに思っていた。
菜々の周りには心強い味方がどんどん増えていく。
最初は嫌なかんじの人だな~と思っても菜々の真っ直ぐな毅然とした態度に感心し、出会う人たちを惹きつけてしまう。
誰からも愛される性格の菜々。
思うわぬかたちで仇討ちを果たす機会を得て、見事に自分の思いを遂げる。
が・・・・命を奪うことはしない。
う~ん、これも良かった!
物語に出てくる蛍草は、露草の別名なんですね~。
表紙の花の絵も素敵です。
今回もジ~ンと胸に響く良い作品でした。
ひたすらに"母"をさすらう女の物語…。
母のない子持ちやもめの家庭を転々と渡り歩く広美。
短いときは数か月、長くとも数年、トラック運転手や遠洋漁業、
家を長く空ける父子家庭の母親役をして、
家庭が軌道にのると人知れず去っていく。
それは、母性が有り余っているのか、母性がぶっ壊れているのか、
子供にとっては女神でもあり、突然姿を消す残酷な悪魔でもある。
すばる文学賞受賞作家が挑む、初の長編エンターテインメント!
(光文社HPより)
なかなか面白い物語でした!
各地を転々としながら、子持ちの男やもめの家に自然な形で転がり込む広美。
食堂の店員、飲み屋のママなど職業も変えながら、そこで知り合った男性の家に自然と馴染んでいく。
どの男性も妻に先立たれたり、出奔したりと子どもを抱えた生活に、やや疲れが出ている。
そんなとき、自分のためというより、子どもの為に何かと世話を焼いてくれる女性の出現は嬉しい。
広美は、子どもにもすぐに懐かれ、母親が恋しい子どもには、なくてはならない存在になっていく。
でも、ある日、突然、姿を消す。
そしてまた違う土地で別の父子に遭遇し・・・・・の繰り返し。
そんな暮らしを続ける広美の正体は?
物語は、そんな広美と幼い頃、一緒に暮らした青年・祐理が再び広美に出会った話を挟みながら進む。
祐理のほかにも、広美に幼い時、面倒を見てもらった若者たち、美奈子と秋夫も現れ、みなで広美に会いにいく。
誰が尋ねて来ても、大げさに歓迎することはないけれど、食事を一緒にしたり、普通に招き入れてくれる広美。
不思議な人。
ラストは、広美は、再び青年たちの前から姿を消し、最初の話の土地に現れ、そこで共に暮らした男性と再会する。
そのとき、世話をした幼かった子どもたちは成人し、家庭を持ち独立したらしい。
ずっと気になっていた広美の過去も少しわかった。
辛い経験があったんだなぁ~と思うと、なんだか切なくなって、もう転々とせずに
一箇所で幸せに暮らして欲しいなぁ~なんて思った。
表題のウエスタンって、なんだろ?と考えたけど
西部劇のさすらいのガンマンみたいなかんじかな?
目的が達成されたら、去っていくかんじのイメ-ジ?
不思議な物語だけど、何となくじ~んとした。
★★★★
想いを貫いた江戸の人々の生きざま。<ハヤカワ・ミステルワ-ルド>からの入魂の歴史小説。
江戸参府のオランダ使節団が、自分たちの宿「長崎屋」に泊まるのを、るんと美鶴は誇りにしていた。文政五年、二人は碧眼の若者、丈吉と出逢い、両国の血をひき彼と交流を深めてゆく。まもなく、病人のために秘薬を探していたるんは、薬の納入先を聞きつけた丈吉と回船問屋を訪れる。が、店に赴いた彼らが発見したのは男の死体だった。さらに、数年後シ-ボルトをめぐる大事件が起こり、姉妹はその渦中に。
(早川書房HPより)
少し前に、朝井まてかさんの「先生のお庭番」を読んでいたので、その同じ時代の話ということで
興味深く最初から最後まで読みました。
オランダからの商館長が代々、泊まる「長崎屋」という宿屋。
そこの姉妹・るんと美鶴。
器量よしの二人は世間でも評判。
そして、成長した二人の前に現れたのは、碧い眼の若者・丈吉と親しくなる。
丈吉は先のオランダ商館長・ヘンドリック・ドゥ-フと日本人の母(長崎の遊女だった)との子。
シ-ボルトにも日本人の女性との間に娘・イネがいるのを知っていますが、
この時代、そういう子どもは他にも居たんですね~。
丈吉は、その後、不幸な目に遭うのが切なかったなぁ~。
史実を交えての物語なので、教科書で見た名前が結構出てきます。
怪しい武士が間宮林蔵だったり・・・・。
シ-ボルトが来日し、やがて起きたシ-ボルト事件に、るんや美鶴の愛する人たちも巻き込まれていきます。
シ-ボルト事件でそれに関与した者の厳しい取調べがあったのは、「先生のお庭番」やほかのもので読んで知っていましたが、こうして物語のなかの人物の身近な人が苦しめられるのは、辛かった。
多くの人が犠牲になったシ-ボルト事件は暗い事件だけれど、たシ-ボルトは
日本で過ごした貴重な体験を大事に思い、自分を拘束することになった事件の密告者(間宮林蔵)の功績を称え世界に林蔵の名を広げたことは嬉しい。
密告者としての汚名がついた林蔵も格好よかった。
皆、それぞれ自分の信じる思いを貫いただけ。
シ-ボルトの娘・イネのその後のことがちょっと興味あるな・・・。
調べてみようかな?
どんどん、新刊を出される葉室さんですが、少し前の作品も良いです(^^)
人生のピークを過ぎてしまった女優とデイトレーダー。
ふたりはやがて恋に落ちる。
ひとがひとと出会い、生きていくことのすべてを描いた、
真心の物語。
(ポプラ社HPより)
かつては可愛い女優として評判だった野滝繭美(芸名:滝沢マユ)と
かつてはディ・トレ-ダ-として巨万の富を得た松田健作。
二人の男女があるパ-ティで知り合い、やがて恋人同士に。
出会ったときには、仕事は過去の栄光。
そんなときに惹かれあったのが良かったのかも。
二人で古い洋館を買い、その庭にバラの苗を植えていく。
色とりどりのバラは、綺麗で逞しい。
そんな植物の生命力を見ながら、これからの人生も二人で生きていこう!と
心に決める。
松田が一文無しに近い状態に陥るのは、波乱に満ちた状況なんだろうけど、あまり危機感がない。
ホントの一文無しとは違うからか??
結局、過去の功績を買われて証券会社で、働いているから、二人の経済的な危機はない様子。
健作が夢で見るサラリ-マンの話とか、花の言葉を聞けるイヤフォンの話が、もっと
広がっていくのかと期待したけど、その辺はそのままで、なんだかよくわからなかったなぁ~。
二人の関係は、セレブぶってないかんじで好感が持てたけど
正直、あまり面白みを感じない小説だったな・・・・・^^;
いまは恋愛よりも、部活が楽しい-----
すべての世代の胸を打つ、2012年最高の青春小説!
私たちは、演じつづけて何になるのだろう。
本当の喜びも、悲しみも、彼女たちはまだ知らない-----
北関東の高校に通うさおりは、演劇部最後の一年を迎えようとしていた。姫キャラのユッコ、黙っていれば可愛いガルル、天才・わび助らと共に、年にたった一度の大会に挑む。目指すは地区大会突破。そんな時、学校に新しい先生がやって来た。東京の大学で演劇をやっていたというスッゴイ美人。「何だ、小っちゃいな、目標。行こうよ、全国!」。え? すべてはその一言から始まった。
高校演劇は負けたら終わり。男子よりも、勉強よりも大切な日々が幕を開ける。
地方の高校演劇部を舞台に、少年少女たちの一途な思いがぶつかり、交差し、きらめく。
劇作家・平田オリザが満を持して送り出す初めての小説は、誰もが待っていた文化系青春小説の金字塔!
(講談社HPより)
高校の演劇部の話。
演劇のことは、さっぱりわからないけれど、なるほど~劇ってこうして作られるんだぁ~と
勉強になりました。
主人公は演劇部では、演出を手掛ける高橋さおり。
先輩が引退し、部長として部内のまとめ役でもある。
3年生になったばかりのときは、5人しか居なかった部員が、1年生部員が増え12名に。
その後、演劇の強豪校から転校してきた中西悦子も加わる。
大学で演劇をしていて一時は女優の道も考えた吉岡先生も副顧問になり、演劇部の活動がドンドン
活気溢れる部活になっていく。
劇中劇の『銀河鉄道の夜』の雰囲気も楽しめて、良かった。
原作をすぐにまた読みたくなる。
夢中になれるものがあって、一緒にそれを楽しめる仲間が居て・・・・
素晴らしい高校生活だなぁ~。
こんな風に毎日を充実して送れるってうらやましい。
爽やかな青春小説でした!
著者の平田オリザさんは、実際に劇作家として有名な方なんですね。
その世界のことに疎くてお名前すら知りませんでしたが・・・・
機会があれば、実際に平田さんが演出した劇を見てみたいなぁ~。
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;