発行年月:2014年1月
家庭に恵まれなかった里里は、シングルマザーとなって娘と暮らす。
過去に囚われる晴美は、女性の自立を援助する団体の代表を務める。
母親から棄てられた朋子は、かたくなに家族を否定しながら生きる。
戦地から戻った夫とすれ違う加寿は、大切なものを信じて家を出る。
すべては彼女が必死に生きてくれたおかげなのだ。
あたしもまた、誰かにつながるような生き方をしたい。
女がひとり、必死に生きてきたその証
その家に遺されていたのは、日々の暮らしが記された家計簿。
そこには「男と駆け落ちして心中した女」の秘密が隠されていた。
「母親ウエスタン」で注目の作家が放つ、世代を超えた女たちの物語
(光文社HPより)
主人公・瀧本里里(32歳)の元にある日、家計簿が送られてくる。
昭和17年から昭和24年までの家計簿のなかには、日々の出来事と共に
書いた人の思いが綴られていた。
その家計簿の持ち主は、五十鈴加寿。
母から聞いていた、その人は、祖父・善吉の妻であった女性。
つまり里里にとっては祖母に当たる人。
しかし、祖母は、母がまだ幼いときにほかの男の人と心中したと聞かされていた人。
里里の両親は中学生の時に離婚し、母親・朋子と二人暮らしをしてきた。
しかし、里里は、昔から朋子のことがよくわからない。
父は母と別れたあと、他の人と再婚し、子どもも出来たが、里里が大学生の時に
亡くなった。
祖母の家計簿を手にし、中に書かれている日記のようなものを読む里里。
母親から聞かされていたイメージとは少し違うことに気付く。
そして、祖母のことを知るNPO活動をしている女性・三浦晴美と知り合い
加寿がどんな人だったのか、だんだんとわかってくる。
母は祖母を誤解していた。
その真実を伝える終盤は、複雑な心境になりました。
真実をもっと早く何らかの方法で知っていたら、もしかしたら朋子の生き方も
変わっていたかもしれない。
なんて考えたら切なくなった。
それでも知らずにいるよりは、良いことだと思うけれど・・・・
なんとなくギクシャクしていた、里里との関係も少しずつ和やかなものに
なるといいなぁ~。
そういえば、わたしの母も生命保険会社が毎年くれた家計簿の上段に
日記のようなメモ書きをいたなあ~。
ちょっと前の家庭の主婦は、みんな同じようなことしていたのかも。
彼女の家計簿=彼女の生きざま。
読み応えあり面白かった!
★★★★★
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発行年月:2014年1月
武将の妻たちの凛とした姿
徳川頼宣に嫁いだ加藤清正の娘八十姫の秘話、鍋島直茂の妻と姑の間のふとした会話、伊達家から立花へ嫁に来た母の実家への想いなど。
(文藝春秋HPより)
今回は、短編集。
豊臣時代の末期から江戸時代(島原の乱あたり)までに生きた武将の妻たちの物語を
7編。
時代の波に翻弄されながらも、そのなかで強く自分の信念を持って
策略的に嫁ぐ場合も多かった女性たちが秘めていた思いや、嫁いだ先で
感じることを史実に基づきながら、淡々と綴っていた。
淡々と語るなかに、女性たちの思いが強く伝わり、
過酷な状況でも常に凛として生きた女性たちの生き方がとても美しかった。
<汐の恋人>
戦地の朝鮮に居る夫に文を出した瀬川采女の妻・菊子。
その文が、秀吉の目にふれ、それが元で、菊子と会うことにする秀吉。
采女も戦地から秀吉の元に戻り、切腹か?という事態に・・・
<氷雨降る>
京の公家の娘でキリシタンのジュスタ(洗礼名)が島原半島に4万石を領する
有馬晴信の元に嫁する。
関ヶ原の合戦後、晴信は領土問題に巻き込まれ罪を問われるが、キリシタンは自死は
禁じられていると斬首を望みその通りになる。
ジュスタは二人の娘とともに実家に戻り、幕府がキリシタンへの迫害を強める中でも
宣教師たちに潜伏場所を与える。
<花の陰>
細川忠隆と千世の話。
忠隆は、忠興、ガラシャ夫人(玉子)を両親に持ち、千世は前田利家の末の娘。
ガラシャ夫人が石田三成の命を拒み自害した折、一緒に居た千世は前田家に逃れた
ことで細川家の非難を買い、忠興の手前、妻とは離れたままとなった忠隆だが
自身の気持ちは千世を責めていなかった。
二人は再び、ともに暮らすことを選ぶが、忠興の怒りをかうことになる。
<ぎんぎんじょ>
肥前の大名鍋島直茂の継母・慶銀誾如(けいぎんに)が亡くなる。
93歳の大往生であった。
その最期を看取った直茂の正室・彦鶴。
姑の顔をしみじみ見入っている彦鶴に侍女が草花の蒔絵を施した黒漆塗りの文箱を
提げてくる。そのなかには一通の書状。
<くいのないように>
加藤清正の娘・八十姫が徳川頼宜の元に嫁すことになる。
父・清正の当然の死を徳川家康の謀ではないか?と疑っている八十姫だったが
父が嫁入りのときに待たせよと用意してあった清正愛用の片鎌槍の意味と
自分のなまえの由来を知る。
<牡丹の咲くころ>
伊達正宗を祖父にもつ鍋姫が立花忠成の元に嫁ぐ。
当時の立花家は、伊達家にとっては格下。
忠成自身も身分が合わないと戸惑っていた婚儀ではあったが、二人は仲睦まじく暮らす。
その後、起きた伊達騒動。
<天草の賦>
1637年島原の乱。
肥後前島原と肥後天草の農民およそ2万8千人が蜂起した。
総大将は16歳の益田四郎時貞(通称:天草四郎)。
その天草四郎の命を救おうと奮起する万という女性。
時代の波に翻弄されながらも、どの女性たちも己の信念は強く持ち、
言いなりになるのではなく、自らが生きる道を切り開くのだというような
力強さも感じた。
本当に凛としていて美しい武将の妻たちの物語でした!!
表紙の絵が、いつもの葉室さんの書とは、違う雰囲気なのも好みです。
★★★★★
発行年月:2013年11月
雪踏文彦。
ひとは、みな、彼のことを親しみを込めて「せった君」と呼ぶ。語り手である作家・島崎哲も、親友である彼をそう呼んだ。小学校ではじめて出会い、いつもどこかぼんやりしているようだったせった君は、幼少期から音楽の英才教育を受けていた島崎が嫉妬してしまうほどの才能を持っていた。
中学、高校と違う学校に通ったふたりは、あまり頻繁に会うこともなくなったが、大きな挫折をしたばかりの島崎を、ある日、偶然、目の前に現れたせった君のことばが救ってくれる。やがて、再び意気投合したふたりは、彼がピアノを弾いている一風変わったバーで行動をともにするようになった。
音楽のことしか、ほとんど考えていないせった君だったが、やがて恋をして、彼がつくる音楽にも変化が見られ始めた。そんなある日、彼らの前に、妙な男がちらつくようになった。彼は、せった君の彼女・小海が以前、付き合っていた男だった。そして、事件は起こった。
(小学館HPより)
音楽を通じて仲良くなった少年たちが、大人に成長するまでの物語かと思いきや・・・
いやはや、とんでもない結末で、ビックリ!
音楽以外のことには、まったく無関心な雪駄くん。
そんな雪駄君とのことを小説家になった島崎哲が綴る。
最初の出会いは小学校2年生。
幼いころからピアノを習っていた島崎哲は、ピアノを習ったこともないのに自分が弾くピアノ曲を3回聞いた後に、完璧に弾いてみせたことに驚く。
雪駄くんと哲は、一緒に音楽を演奏する日々。
2人が同じ学校に通っていたのは小学校まで。
その後、それぞれ別々の友達ができたりするけれど、連絡を取ったりしながら交流は続く。
ああ、このまま二人が音楽に関わりながら成長するのかな?と思っていたが
哲は音楽は好きでもそれを仕事にすることは諦め、別の仕事に就く。
一方の雪駄くんはピアノを弾き続け、作曲も手がけるようになっていく。
このまま雪駄くんが音楽を作って世間に認められるようになっていって欲しいな
と思っていたのに、後半、登場した津々見勘太郎。
何者?と思っていたら・・・・
えぇ~っ!?
こんな風に雪駄くんに関わって来たのか?
なんだか嫌な結末になっちゃってガックリ(ノД`)・゜・。
途中まで面白かったのにな・・・。
なんだか一気に冷めちゃったな。
雪駄くんが可哀想過ぎる。
最期に何を思ったんだろうな~。
★★★
発行年月:2013年11月
「あの日、ちょっとだけ意地悪をしたんだよね、朝。春さんに。ごめんね、こっそり食卓にうなぎを出して、仲直りをすることもできない――」「大切なのは仕事ではなくて家族、とりわけ妻の久里子なのだと思い知らされることになった。何回生まれ変わっても、俺、また久里子と結婚する。決めた。約束する」――〈妻を失った夫〉と〈夫を失った妻〉の、それぞれの世界から、ふたりのかけがえのない大切な瞬間を紡ぐ究極の夫婦愛。大切なひとをなくした人に、そして、今、大切なひとがいる人にぜひ読んで頂きたい、人生の愛しさを描き切った書き下ろし長篇。
(角川春樹事務所HPより)
一組の夫婦・春生と久里子。
最初の章は、妻の久里子の一周忌の場面から。
そして亡くなったときのこと。
妻は、病に倒れたあと、あっという間に亡くなったという。
そして、次の章では、夫の春生が亡くなった設定。
春生は帰宅途中の駅で倒れ、搬送先の病院で息をひきとった。
夫婦それぞれが、お互いを喪って思うこと、その後の生活を交互に描く物語。
両者ともそれぞれを思う気持ちは変わらない。
そばに居ないことが寂しく、思い出して、あのときこうしていれば・・・なんて考えたりしている日々。
でも、やはり女性の方が前向きなかんじかな?
同じように喪失感は抱えているのだろうけど、妻の方が明るい。
夫はメソメソしてる。
でも、やはり死は誰にでも訪れるものだし、ある日、突然かもしれない。
毎日を丁寧に生きたいなと思わせてくれる作品だった。
★★★
発行年月:2013年11月
豊後(ぶんご)・羽根藩を舞台に”再起”を描く入魂作!
どん底を、なお生きてこそ--------
落ちた花を再び咲かすことはできるのか?
襤褸蔵(ぼろぞう)と呼ばれるまでに堕ちた男の不屈の生き様。
生きることが、それがしの覚悟でござる-----
俊英と謳われた豊後・羽根藩の伊吹櫂蔵は、狷介さゆえに役目をしくじり
お役御免、今や”襤褸蔵”と呼ばれる無頼暮らし。
ある日、家督を譲った弟が切腹。
遺書から借銀を巡る藩の裏切りが原因と知る。
前日、何事かを伝えにきた弟を無下に追い返していた櫂蔵は、死の
際まで己を苛む。直後、なぜか藩から弟と同じ新田開発奉行並として出仕を
促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がる決意を固めるが・・・。
(祥伝社HPより)
才能がありながら、ちょっとした不運でどん底生活をすることになった
伊吹櫂蔵26歳。
家族もやや複雑で、継母・染子とはそりが合わず、弟・新五郎に家督を譲っての
浮浪者生活。
隙間風が入りこむ廃屋での怠惰な生活を送り、唯一の癒しは、飲み屋でお芳の
料理をつまみながら酒を飲み、ときにはお芳を金で買う。
読みながら。。。。ああ、早くまともになって!と思うのですが、そのきっかけに
なることは、辛いこと。
家督を譲った弟が切腹したという知らせ。
腹違いの弟・新五郎がその前日、訪ねてきて、櫂蔵に告げたことばがじ~んと
蘇ってきて泣けました(/_;)。
新五郎は、櫂蔵のことを尊敬していたと。
弟の切腹には藩の裏切りがあったと知る櫂蔵。
飲み屋のお芳の店で知り合ったもと大店の大番頭・咲庵を家士に、お芳を
妻として屋敷に戻る。
が・・・最初は継母・染子は、お芳を妻とは認めず、女中として屋敷に留まる。
お芳の優しい気遣いに心を開き始めた染子だったけれど・・・・
ああ、またまた事件!!
辛いなぁ~。
井形清左エ門、なんて悪い奴!(怒)。
染子も事件後、動く。
井形の悪事を公にするために・・・。
おぉ~そんな繋がりを持っていたのか!?とややびっくりでしたが・・・^^;
最後は、事の真相が明るみに出て、めでたしめでたし。
けれど、お芳さんは生きていて欲しかったなぁ~。
やはり葉室さんは、実在の人物の伝記がらみのものより、こういう話の方が
いいな。個人的な好みですが・・・。
★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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