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読んだ本の感想あれこれ。
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68885499.jpg発行年月:2009年9月


神の手を持つ医者はいなくても
この病院では奇跡が起きる。

夏目漱石を敬愛し、ハルさんを愛する青年は、
信州にある「24時間、365日対応」の病院で、今日も勤務中!


                
(本の帯文より)

著者もこの物語の主人公・栗原一止と同じく、信州の一地方都市の病院で働く現役の医師。

物語は、著者の経験した事を基に、地域医療に携わることの必要性など、自身の置かれた立場からの考えなどを記しているのかな?

堅苦しくなく、病院の患者さんと接する場面を見てもとても温かいものを感じました。
最先端技術を駆使した医療機械を使い、高度医療を日々行う医師も勿論、必要ですが、ここではちょっと違う。

病気を治すのは勿論ですが、病気そのもの以上に患者さんを一人の人間として診ている医師の姿がありました。

末期癌の安曇清子さん(78歳)との関係は、ホント、医師と患者の理想の姿でした!
泣けます!
ここまで医師を信頼する患者さんと、ここまでその人の一番望むものは何か?と考えての治療をする医師の姿。
読む人に、「あ~こんなお医者さんに自分も最期を診て欲しい!」と思わせます。


主人公の医師の病院を離れた場所での人間関係も素敵で、可愛い奥さんと、同じアパ-ト内の住人たちとの関わりがユ-モラスで温かいのです。
ちょっと変なんだけど・・・それも含めていいかんじ♪

夏目漱石を敬愛する主人公の為、物語の文はクラッシック。
きっと著者本人がそうなのでしょう。
著者の名前からしてね・・・・(^^)

初投稿の本作品で第10回小学館文庫小説賞を受賞だそうです。


続編もありそうということで、今後が楽しみな、お医者さまの作家さんがもう一人誕生しました!


★★★★

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251a2bf5.jpg発行年月:2004年7月


追い詰められた者たちが見つけ出した答え。
善意に満ちた悪

驚愕の心理サスペンス長編


                   (講談社HPより)

文庫化されたものが2009年4月に発行されているそうで、主人が「本屋の店員のPOPに10年に一度の傑作ってあったから読んだけど、なかなか面白かったよ」というので、わたしも読んでみました。

なるほど!これは面白い!

物語は3つの章に分かれています。
Ⅰ 教唆
Ⅱ 隠匿
Ⅲ 転落

Ⅰでは、あるホ-ムレスの語りで、食べる物を探すことが生きる為には必須の毎日の中で、偶然、出会った小学5年生の少女から食べものを貰い、そのお返しに彼女の下僕となった「ボク」
Ⅱでは、ボクを周囲には内緒で匿う女性との関係
Ⅲでは、ボクと匿った女性とが、関わった共通のある事件についての真相

こんなかんじかな?

これは、あまり説明するとこれから読む人の楽しみ(恐怖)を奪うことになるので、あまり書かないけど、兎に角、予想を覆す事がどんどん出てきて、読み進めるのが楽しみだった。

職場や、親戚や、近所、周りの人間たちの言葉や態度で追いつけられていく果てに起こすことって、恐ろしい。
誰の身近にもありそうな事だけに、背筋がゾクゾクした。

読みながら感じた「?」の幾つかは、段々に明かされるが、全ての「?」が明かされずに終わるため、読後もモヤモヤした違和感が残るのだけど、それも含めて面白かった!

この著者のほかの作品も読んでみようかな?

★★★★
8e70fb30.jpg発行年月:2009年2月


山荘での退屈な時間を過ごすために発明(?)された、独創的な「遊び」の数々・・・・・ケイバ、顔、それはなんでしょう、軍人将棋。魅惑的な日々の「遊び」が、ひと夏の時間を彩ってゆく。小説家「コモロ-」一家の別荘に集う、個性的な(実在する!?)友人たちとの夏の出来事をつづる、大人の青春小説。第一回大江健三郎賞受賞作家による朝日新聞夕刊連載の単行本化。

                         (朝日新聞出版HPより)

著者の私小説でしょうか?

夏になると作家の「コロモ-」氏の別荘に集まる人たちの、可笑しな遊びの数々が披露されます。
とくにそこに珍しい出来事が起こるわけでなし、延々と大人同士が山荘の中で遊ぶ様子が書かれているのです。

最初は「なんじゃこりゃ?」なのですが、読んでいくと、なんだか、そんな世界に自分も浸かっているかんじ。
登場人物たちの普通の会話のやりとりが、妙に可笑しい。

遊びは、全部、家の中で出来る物。
麻雀パイを使った「ケイバ」という遊びやら、軍人将棋にも特別な役割の駒を増やした遊び。

物を全く使わない遊びも可笑しかった。

「それはなんでしょう」と「ダジャレしりとり」最高!
わたしも遊びたい!
一緒にやってくれる人、居るかが問題だけど・・・・^^;


こんな小説、初めて。
意外性のある小説。

読み始めて、暫くで「あ、つまんない」と思った人は、最後までつまんないかもしれないけど、読み始めて「へ~おもしろそう」と思ったら、最後まで、そのかんじは持続します(笑)

わたしは、後者だったので、最後まで面白く読めました。

そういえば、中学生の頃、軍人将棋、よく弟と二人でやったなぁ~。
すっかりル-ルは忘れたけど、また遊びたくなった!

★★★
69969bd9.jpg発行年月:2008年10月


有栖川有栖氏や山田正紀氏をはじめ、選考委員の圧倒的支持を得て、日本推理作家協会賞短編部門を受賞。

巧妙な伏線に緊迫の展開、そして意外な真相。
ラストは切なく温かな想いが待ち受ける。
珠玉のミステリ-短編集

                    (
双葉社HPより)


初めて読む作家さん。
読み終わったら、ファンになりました!!

4つの短編が収められています。

「迷い箱」・・・更正保護施設の所長、結子とそこで暮らしていた入所者の話
「899」・・・消防署勤務の諸上とそこで同じく仕事をする隊員と、ある火災事故での話
「傍聞き」・・・刑事課主任の啓子が関わる通り魔殺人事件と自宅近辺で起こった盗みに関わる話
「迷走」・・・救急隊員が要請で駆けつけた相手は隊長と、その娘の婚約者である隊員に関わりのある人物だった。


どの話も短かい話のなかに引き込まれるものを感じました。
それぞれ、人に密接に関わる職業のなかで、懸命に仕事に臨む人たち。
読んでいて、その真摯な姿には胸が熱くなりました。

「迷い箱」は、切なかったなぁ~。
更正保護施設:刑務所を出たあと、身寄りのない人に食事と住む場所を与え、社会復帰を手助けする施設。
そこで施設長として働く結子は60歳を迎え、そろそろこの仕事から引こうかとも考えている。
入所者のためにした事が徒労に過ぎないのでは?と思って。
しかし、一人の男の社会復帰に関わり、思い直す。
ラストは、泣けました。

「899」(要救助者)は、消防署のレスキュ-隊員の話。
ある火災現場で、目撃した事実を隠蔽する話なのですが・・・その理由が他人のことを思いやっての事。
この行為については、賛否が分かれそう。
幾ら考えても、これが正しかった行為か否か判断がつきませんでした。

「傍聞き」は、勉強になりました!
この言葉、初めての言葉。字から想像すると、傍らで聞く・・・聞き耳を立てて聞くことかな?なんて思ったら、違いました^^;
刑事さんではよく使うのかな?
漏れ聞き効果を狙って、どうしても信じさせたい情報を別の人に喋って、それを信じさせたい本人に聞かせることだとか。
これが物語のなかに活きている話。
最後になるほど!!と思いました。
さすが、表題作!傑作です!!

「迷走」は、救急車の要請があり、駆け付けた先には、何者かに刺された男。
意識はあるが、早く処置をしなくては!
あれこれ会話するうちに、隊長と、その娘の婚約者である隊員に関わりがある人物でありことが判明。
どうするの?どうなるの?とハラハラドキドキしながら読みました。
そして、これも、最後は、なるほどそういう事ね!と納得。

でも少し冷静に考えると隊員たちに話さず事を進めようとする隊長・・・・格好良いけど、チ-ムで動く仕事なので全てナイショじゃこの場合、かえって危険です。
実際には、ありえない事でしょう。

ま、そうしないとこの話は面白くないので、それは考えちゃダメな事かもしれませんが・・・^^;


初めて読んだ作家さんでしたが、わたしの中ではかなり良かった!

次は長編を読みたいな。
他にも短編はあるみたいですが、これだけ面白い短編が書けるのなら・・・と期待しちゃいます。


★★★★
cc9ce729.jpg発行年月:2008年5月


スポ-ツインストラクタ-の克己と弁護士の彩は、血の繋がりのない義理の姉弟。成人した今、克己の彩に対する感情は、姉以上のものになっていた。そんな中、彩の不倫相手が彼女の職場で急死する。助けを求められた克己は、彼女を守るため遺体の処理をするのだが・・・・・。


                           (本の帯文より)



最初にこの表紙から想像される(どんな?^^;)ような義理の姉と弟の関係は、なかった事に少しホッとしました。
もっと二人の濃厚な何かがあるのかと勝手に想像しちゃっいました。

彩の母親と克己の父親が再婚したのは、彩16歳。克己9歳の時。

その頃から彩は成績優秀でハイレベルの高校でも常に学年5番を下らない成績。
父親は度々、「彩に出来ておまえに出来ないはずはない」と克己に勉強しろと強いる。
なんとか、彩と同じ高校に合格したら、彩は弁護士を目指しているから、おまえは医者になれと。

なんていう身勝手な親でしょう・・・・・^^;
呆れちゃう。子どもの気持ちを全く考えず、自分の考えを押し通す親。
克己が抑圧されて、起こす行動もムリはないななんて思ってしまいました。
でもそれは、大事に至る前に偶然、実家に来た彩によって阻止されるのですが。

大人になった彩は、弁護士の道を歩み、テレビのコメンテ-タ-として出演するほど。

そして、彩の身にある不運が起こり(帯文に書いてあること)、それを助ける克己。

それから二人は同じ秘密(罪)を抱えながら、頻繁な連絡を取り合うように。

成績優秀で何も問題がないように見えた彩にも苦しい悩みを抱えていた。
だから、不倫相手に島岡のような男を選んだというのも哀しい。


怖かったのは、島岡の妻。
彩にとっては、会いたくない人。
でも、かつて、夫が法律相談で彩に世話になった事があるのを知っていて、訪ねて来る。
そして、夫が亡くなったことで心細い自分の助けになってほしいという態度で近づいてくる。
こういう女性、こわ~い。

登場してくる全部の人の考え方、行動には、全く共感出来るものはないけれど、物語としては結構おもしろかったかな?

ラストは、もうちょいその先を教えて欲しいなぁ~みたいな終わりでしたが、想像して楽しむのもいいか?


★★★
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