単行本は1999年7月発行
少年は永遠の命に閉じ込められた
少年は12歳にして「永遠の命」に閉じ込められた!?僕はなぜ大人にならないのだろう。心も躰も成長を止め、純粋な子供のまま生きていくことは果たして幸せなのだろうか。出生の秘密を自ら探る呼人が辿り着いた驚くべき真実とは。感動のラスト、権力者の理想が引き起こす現代の恐怖をリアルに描いた傑作長編。
(講談社HPより)
最初は、みんな12歳。
厚介、潤そして3人のマドンナ的存在の小春。
4人には夏休み最後に秘密の思い出が出来た。
そして・・・皆は成長していく。
呼人も高校進学、大学進学と進むけれど、体は12歳(身長145cm)のまま。
学校の先生になるため大学は教育学部に進み、教員免許も取得するけれど、教師として採用してくれる学校がなく、通信教育の添削指導員として働く。
大人になったほかのメンバ-は
厚介は、自衛隊員になるが、民間人が北朝鮮で人質になったのを救うため向かい、そこで地雷にやられて片足を失う。
潤は、高校卒業後、アメリカに留学し、アメリカの銀行で為替ディ-ラ-として働くが不正取引で逮捕される。
小春は、両親の離婚で父親について行くが、父の再婚を機に独り暮らしを始め、美容師見習いになるが、それだけでは生活できず、夜の仕事も始め、そこで知り合った男性と結婚。
みんな過酷な人生を生きる。
呼人は、それぞれと連絡を取り合い、近況を知りながら、彼らの苦悩に理解を示し、励まし続ける。
そして、終盤、呼人がなぜ12歳で成長が止まってしまっているかについても真相がわかる。
ラストは、ちょっとホッとする終わり方だったので良かった!
これは単行本で1999年に発行された本だけれど、10年以上前にこの話を書いたとしたら
北朝鮮っていう国は昔から何も変わっていない恐ろしい国なんだということがわかる。
ほかにも、ちょっと未来を予測してた?というような箇所があり、驚かされた。
なかなか面白かったなぁ~。
発行年月:2013年1月
手に汗にぎる迫真の裁判員ミステリー 新米裁判官の久保珠美は放火、DV事件の裁判を担当する。判決の責任はどこまで負うべきか。悩み議論する裁判員たちをリアルに描く。
3つの裁判員裁判を扱った短編集。
「孤独な放火魔」
アルツハイマ-の妻を自宅で介護する男性が放火事件の被告。
男性は罪を認めるが、そこには放火した家の持ち主である男との取引のようなものがあった。
「DVのゆくえ」
夫からDVを受けていた女性が、暴力を振るう夫に抵抗してアイロンで撲殺。
彼女の行為は正当防衛か?過剰防衛か?
「二人の母」
夫と不倫相手の子を不倫相手が健康を害したことで一時預かること承知し育てていた妻。
やがて子どもは不倫相手の元に返されるが、虐待されていると気づいた妻は、不倫相手の女性を絞殺。
事件に関わる裁判員たちの審議の模様が詳しく描かれる。
自分がこのなかの一人だったら・・・・とつい考えながら読んでしまった。
しかし、最初に頭で考えた被告人に対する気持ちが、裁判が進むにつれ揺れ動く。
小説のなかの裁判員たちも同様。
裁判ってこんな風に進行していくんだなぁ~とわかる本書。
でもやはり、一人のひとを裁くって難しい。
出来れば、やりたくないという気持ちが強くなってしまった^^;
★★★
発行年月:2012年5月
ある雨の日の夕方、ある同じ町を舞台に、誰かのたったひとことや、ほんの少しの思いやりが生むかもしれない光を描き出した連作短篇集。
(ポプラ社HPより)
虐待に纏わる5つのお話。
<サンタさんの来ない家>
ぼくは悪い子だからサンタさんが来ないという小学4年生男子・神田くん。
新米教師の岡野匡は、そんな神田くんの様子を注意深くみる。
「神田さんはいい子だよ」・・・・。
新任最初に受け持った1年生のクラスは学級崩壊させてしまったけれど、
岡野先生もいい先生だと思った!
<べっぴんさん>
毎日、娘を連れて公園に行く母親。
子どもを遊ばせながら、みな優しい母親を演じている。
<うそつき>
小学6年生のだいちゃんはうそつきだという息子。
そして、家に遊びに来るようになり、だいちゃんの言っていることは嘘ではないと気づく。
けれど、息子はあくまでもだいちゃんは嘘を言っていると信じている。
なぜなら、とうてい信じられないような哀しいことだから・・・。
<こんにちは、さようなら>
小学生の通学路に住んでいる老女。
子どもの可愛らしい様子を日々楽しみにしている。
特に気になるのは会うと必ず「こんにちは、さようなら」と挨拶してくれる男の子。
ある日、その子が家の鍵を無くして困っている様子を見かねて、自宅に招き
迎えに来た母親と話をするとその子は障害を持っているという。
男の子の良いところを褒め、一人で子どもを育てている母親に温かいことばを掛ける老女。
切ないけれど、ちょっと温かい気持ちになれる良いはなしだった。
<うばすて山>
40過ぎで独身のかよ。
子どもの頃は、母親かた冷たくされ傷ついた。
そんな母親が認知症のため、近いうちに施設入所すると、母親と一緒に住んでいた妹から聞き、
施設入所の準備中、2~3日、母親を預かることになる。
暫くぶりに会った母は自分のことを娘とは認識しない。
まるで子どもに戻ったような母親にはじめて「かよちゃん」と呼ばれる。
過去のことを忘れてしまった母親と向き合い、複雑な思いを抱くかよ。
虐待という重いテ-マで綴られる物語だけど、桜ヶ丘と同じ町に暮らす人たちの物語で、
最初に出てくる岡野先生が、4番目の障害を持った男の子の話にもちょこっと出てきたりする。
虐待の話だけれど、救いがないわけではない。
誰かがそこにちょこっと関わるだけで、抑えることが出来そう。
身の回りにそういう子は今のところ居ないけれど、こういう時代、気を配って周りの
子どもたちの様子をみることも必要なんだなぁ~なんて思った。
廃墟でおこるステキな奇跡
人生に疲れたら、うら寂しい場所に行ってみよう。何かが背中を押してくれる。閉じこもりOL、家出少年、行きづまった事業主――彼ら彼女らの今を劇的に変化させる6つの物語。
「誰かいるのか」
返事はない。見間違いや気のせいではなかった。確かに誰かがいた。スプレーの落書きをした連中の仲間か。それとも、最近増えているという廃墟巡りを趣味にしている物好きか。
「いるんだろう?」
背後にも注意しながら、一歩二歩と近づく。鉄骨階段の陰に誰かがしゃがみ込んでいる。手すり越しに覗くと、お下げ髪がふたつ、見えた。その手許にきらりと光る棒がある。魔法の杖みたいだ、と思う。ディズニーアニメのティンカー・ベルがちょうどあんな棒を持っていたっけ……。――<表題作より>
(講談社HPより)
6つの短編集。
「廃工場のティンカ-ベル」
廃工場に居た19歳の風俗嬢。
彼女はある揉め事に巻き込まれそれにより人を殺めてしまったと思い込んでいた。
たまたまそ仕事でそこを訪れた一級建築士の片平がその誤解を解いてあげる。
「廃線跡と眠る猫」
13年前に可愛がっていた半ノラの猫・フタバ。
フタバが好んでよく居た線路は今は廃線になっている。
そこに行方が分からなくなった日を命日に決めてお供えものをする美野里。
偶然にも職場でお人よしで有名な男性・野島からフタバのその後を聞く。
「廃校ラビリンス」
中学生の拓人は今は廃校になった校舎に忍び込み、警備員のヤマダに見つかる。
ヤマダは拓人の通っていた学校の卒業生だった。
「廃園に薔薇の花咲く」
今は廃園になった元遊園地。
そこに入る中学生の美緒と祥。
祥は家庭問題で悩んでいた。
「廃村の放課後」
以前住んでいた廃村となった村を訪れる。
妻となる人とその息子とともに・・・。
「廃道同窓会」
今は45歳の元山岳部だった3人は、仲間の遺灰を山頂から撒くため登山する。
元部長だった雅恵は術後のため、段取りだけを整えてくれた。
そして登山中、一人が怪我のためリタイア。
残る二人は共に家庭内に悩みを抱えていた。
それぞれの話のなかの人物たちは、何らかのことを思い悩んでいる状況。
そんな人たちが訪れた今は使われて居ない場所で、新しい気持ちを思い起こす話。
どの話も最後は、明るい気持ちで前を向いて頑張ろうというかんじなので
読後感が良かった!
猫好きとしては二番目の「廃線跡に眠る猫」がジ~ンときた。
姿を消したままの猫の最期が辛いものじゃなかったとわかって良かった。
職場でお人好しとしてしか見ていなかった野島の優しさが美野里にも伝わって
今後の、この二人の関係は・・・・?なんて想像もすると楽しかった。
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;