「博士の愛した数式」「猫を抱いて象と泳ぐ」など、その美しく詩的な小説世界に絶大なファンの多い小川さんの小説の中の言葉たちを“標本にする”というユニークな試み。電子書籍の波が押し寄せる今、失われつつある「紙の本」の中から言葉を取り出し、紙の上の博物館のように、分類、保管、展示する。小川洋子作品の小宇宙を存分に楽しめる、ビジュアルなガイドブックであり小川洋子論。
(文藝春秋HPより)
小川さんの遊び心がいいなぁ~。
小説のなかの言葉にも、センスの良さが窺える小川さんの作品ですが、この本には、そういう言葉がいっぱい詰まっている。
まさに言葉の博物館!
本をめくると・・・博物館館長からのご挨拶があり、小川さんの挨拶が綴られている。
そのなかに、小川さんの幼少期のことが書かれていて、なんとも微笑ましい。
生まれて初めて作ったクッキ-缶のなかの標本・・・あ~なんだかワクワクするなぁ~。
自分も似たようなことはやっていたっけ。
過去作品を紹介しながら、その作品のなかに出てくる言葉も披露していて、
まだ未読の作品もここで内容が少し知れたのは嬉しかった!
そんな未読作品のなかでは官能小説をというリクエストの元に書いたという「海」のなかの「バタフライ和文タイプ事務所」が一番、気になった!
物語の場面がタイプ事務所のなかというのもなんだか異質だし、新人タイピストと活字管理人との会話がユニ-ク。
こういう官能小説もありか?とこのセンスに脱帽!!
博物館内を巡りながらという進み方も面白く、よく考えたなぁ~、さすが!
写真も綺麗で幻想的で良かった。
ファンには嬉しい一冊でした(^^)
遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた----
慎み深い拍手で始まる朗読会。
祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは……。
しみじみと深く胸を打つ小川洋子ならではの小説世界。
(中央公論新社HPより)
タイトルを見たときから「どんな話なんだろ?」と読む前から興味が沸きました。
そして、最初に語られるショッキングな事件の様子。
とある旅行会社の企画したツア-に参加した8人が反政府ゲリラに拉致・監禁されたすえ命を落としたというニュ-ス。
そして、後から見つかった人質たちがそこで語っていたであろう物語。
8人の綴った物語が順番に語られる。
そこには、日常のふとした瞬間やら遠い過去の思い出だったりがあり、どれも心がちょっと温かくなるようなお話。
お話の最後には、その人の年齢と職業、そのツア-に参加することになった経緯のようなものが記されている。
それを読むと・・・お話の主人公がそのお話の後、どういう風に生きて来たのかが、想像出来て、まだまだこの先、やりたいこともあったでしょうに・・・・と途端に何とも切なく哀しい気持ちにさせられた。
自分もいつどんな場所で最期を迎えることになるのか、予測出来ないんだなぁ~なんてことまで考えてしまった。
何かを記しておくことは、自分が生きていたという証を遺すことになるのか!
ならば、こうして今、書いていることもずっと後で、家族とかがみて何か感じるだろうか?
などなど・・・・・。
8人の人質たちの物語とともに9番目の話では
事件現場で人質になっていた8人が語る言葉をヘッドフォンを通して聞いていた特殊部隊隊員の物語。
「ハキリアリ」というアリについて語ったもので、事件には一見なんら関係ないようだけど、ハキリアリを通じて知り合った日本人との思い出話であり、彼が感じた人質たちの様子が語られたときには泣けた。
人質たちが語ったお話のなかで特に好きなのは「やまびこビスケット」。
★★★★★
日常の中にある異界への隙間……
すこしばかり耳を澄まし、目を凝らすと日常の中にある不思議世界への隙間が見えてくる。そこから異界を覗くとき、物語が生まれる。
著者の学生時代からを綴ったエッセイを収録。
(集英社HPより)
小川さんの日常には興味がありました。
倉敷にお住まいで、ご主人と中学生の息子さんと犬と暮らしている様子。
第一章 想い出の地から
第二章 創作の小部屋
第三章 出会いの人、出会いの先に
第四章 日々のなかで
第五章 書かれたもの、書かれなかったもの
各章には、短い話が沢山。
小川さんってこういう人?って今まで読んだ文章と、少しギャップがあって面白い部分が多かった。
なかでもかなりの方向音痴には、わたしも同じ経験、多々あるので、すごくよくわかった!
知りつくしている場所にも、目に見えない空気のゆがみがあって、その奥には秘密の世界が隠れている。そこに迷い込むことができるのは、方向音痴の人だけだ。
なるほど、巧いことを言うなぁ~さすが!!と思わず唸ってしまった(笑)
映画の話も興味深かった。
タイタニックを最近見たけど、最後、ロ-ズがジャックの死を認めた後、彼を海に押しやり、ボ-トに救助を求める場面がショックで泣けなかったと。
なるほど、言われてみればそういうふうにも感じる。
わたしは泣いたけど・・・・^^;
そして映画で一番好きなのは、「ギルバ-ト・グレイプ」だとか。
1993年のアメリカ映画で、主役はジョニ-・デップで、その弟役がディカプリオ。
観た事ない!
これは早々に見てみたい!!
第五章では、今まで書いた作品を年代順に並べ、その作品に纏わる話をしていて、面白かった。
こうしてみると、読んでない本の方が断然、多い!
一つ残らず読んでみたくなった!
楽しいエッセイであるとともにファンとして多くの情報を得たような本でした♪
ある作家の奇妙でいとしい日常。日記体小説
原稿が進まない作家の私。
苔むす宿での奇妙な体験、盗作のニュースに心騒ぎ、
子泣き相撲に出かけていく。
ある作家の奇想天外な日々を通じ、
人間の営みの美しさと面白さが浮かび上がる新境地長編。
(集英社HPより)
主人公の「私」は、小説家。
原稿用紙に向かうけど、全然物語は進まない。
そんな「私」の日記で綴られた本書。
「私」は、小川さん自身なのか?
日記の最後に<原稿零枚>と書かれる日が続くけど、たまに<原稿4枚>などの日もある。
が・・・そんな日も次の日、再び零枚に戻り・・・・気に入らず破り捨てたのかな?なんて想像して楽しんだ。
「私」は、いろいろな所にも出かけてゆく。
その場所で、「私」が起す行動が、ユ-モラスで好き。
小学校の運動会をあちこち覗いて廻るとかは、案外楽しそうなんて思ってしまった。
原稿用紙では筆が進まずだったので、小学生が使う1ペ-ジに84文字書けるマス目が書いてあるノ-トに小説を書き筆が進むと喜ぶ・・・・・なんていう箇所もチャ-ミング!
結局、そんな物に書いたものはダメと没収されてしまうのですが・・・。
日記なので、事柄が切れ切れなのですが、それもまた楽しい。
その先、どうなった?なんていちいち考えないで次のことに向かえる気楽さもいい。
日記だけど、ありきたりな日常をつらつらと綴っただけとは違う。
小川さんらしい、どこか不思議などこか妄想っぽい雰囲気が漂っていて、
気持ちよく文章を追うことが出来ました。
世界がいとおしく見えてくる繊細なエッセイ。
数々の文学賞を受賞し、映画化された『博士の愛した数式』でも知られる作家・小川洋子さんの最新エッセイ集です。女性誌『Domani』に2年間に渡り連載されたものに書き下ろし5編を加えた29のエッセイには、スポットライトが当たる主人公だけでなく、その周縁で密かに、でもしっかりと生きる人々への感謝の気持ち、そしてしみじみとした愛情もいっぱい詰まっています。ポップでありながら懐かしい雰囲気をたたえるイラストによる装丁は、『ミ-ナの行進』も手がけた寺田順三さんによるもの。仕事や生活にちょっと疲れたとき、ふと手にとって読み返したくなる----そんな、宝物にしたくなるような1冊です。
日々の何気ない瞬間に目にしたり遭遇した事柄、そこに居た人たちに対して、なんて優しい気持ちを抱く人なんでしょう!と感激しました。
幼い頃の出来事、青春時代の思い出、結婚後の様子・・・ぜんぶ読みながら、思わず微笑んでしまうエピソ-ドばかり。
失礼ながら・・・「君、明治生まれ?」と付き合っていた彼に言われちゃった話には笑っちゃいました。
そして、「・・・亡くなった祖母に、とてもよく似てらっしゃるものだから・・・」と涙ぐむファンの方。
小川さんのお顔・・・・文芸誌でちょっと拝見したことあるので、なるほど~なんて^^;
兎に角、楽しいエッセイでした。
まだ小川さんの作品を読んだことない方がこれ読んだら、絶対、作品も読みたくなること間違いなし!
素敵な素敵なエッセイでした(^^)
表紙の絵と中を開けたら一面に描かれたコ-ヒ-豆が可愛くて、装丁デザインも◎
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;