「これが書けたら、作家を辞めてもいい。そう思いながら書いた小説です」著者入魂の、書き下ろし長編。
持つものと持たないもの。欲するものと欲さないもの。二種類の女性、母と娘。高台にある美しい家。暗闇の中で求めていた無償の愛、温もり。ないけれどある、あるけれどない。私は母の分身なのだから。母の願いだったから。心を込めて。私は愛能う限り、娘を大切に育ててきました――。それをめぐる記録と記憶、そして探索の物語。
(新潮社HPより)
新潮社のHPみて「これが書けたら、作家を辞めてもいい」と思ったとか。
湊さんの自身作ということかな?
湊さんお得意の主人公達がそれぞれの立場で語る手法。
今回は、母親とその娘。
母親はルミ子。
自身は母親が大好きで、その母親から愛情をいっぱい貰ったと思っている。
実際、ルミ子の母親は素晴らしい人だったと思う。
けれど・・・ルミ子が成人しても第一に考えるのは母親のこと。
自分の娘・清佳(さやか)が生まれれもそれは変わらない。
清佳が気の毒でならなかった。
そして、起きる事故。それによりルミ子は母親を失う。
そのことが更に娘を心の中で憎むことに繋がってしまう。
清佳は、母親から愛されないことを辛く思う。
う~ん。嫌な話だった。
辛すぎる・・・(/_;)
自分が娘であり、娘を持つ母親だから、余計にこんなことありえないでしょ!?と
ルミ子の考え方に腹立たしさを覚えた・・・というよりはゾッとした。
でも、こういう人、居るのかな?
全くの悪人という風でもないから他人からは見えにくい。
本人も自分は子どもをちゃんと愛していると思い込んでいるし。
最後は一応、丸く納まるかんじだったけれど、この先はどうなんだろ?
なんて要らぬ想像をしてしまった。
清佳が幸せにこの先は暮らせますように・・・・。
でも、ふと自分自身のことを考えて不安になった。
わたしの娘たちは、自分は愛されていると思ってくれているだろうか???
好きな話じゃなかったけど、先へ先へと読み進めさせる文章はさすが。
★★★
疑惑の女性の周囲をとりまく、「噂話」の嵐
「あの事件の犯人、隣の課の城野さんらしいよ…」美女OLが惨殺された不可解な事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まった。噂が噂を増幅する。
果たして彼女は残忍な魔女なのか、それとも-----。
(集英社HPより)
しぐれ谷で起きた美人OL殺人事件。
事件の真相を追うフリ-ライタ-の赤星は、被害者の女性が働いていた職場の同僚たちから話を聞く。
そして、その話の流れで一番怪しい女性が浮かび上がってくる。
その怪しい人物とは、殺された三木典子の同僚・城野美姫。
殺された典子とは同期で、学生時代からの友人関係でもあった。
周囲の話では、典子は誰もが認める美人で人柄もよい。
そんな典子を妬んでいたのでは?という意見。
しかし、二人のことをよく知る学生時代の同級生の証言では、二人は仲良しであり、容疑者扱いされている美姫も優しい性格で、天然気質ゆえテンちゃんとあだ名で呼んでいたくらい。
妬んで殺害なんてありえないという。
他にも地元住民や美姫の両親へのインタビュ-の様子などが挙げられ
はて、美姫は果たして本当に犯人だろうか???とわからなくなる。
そして、事件の真相は突然、明かされ・・・・・・・え?そういうことだったの?
事実がわかれば、まあよくありがちなこと。
でも、人から語られる情報って当てにならないなぁ~。
取材を受けるとややオ-バ-に憶測の範疇のことでも実際に見たなんて
言っちゃう人が居たり・・・・。
週刊誌とかあまり読まないけど、マスコミの話は、まともに信じたらいかんなと思った。
新聞からの事件に関する記事を載せたり、事件を追っていた赤星氏のツイッタ-を載せたりと
なかなか面白い方法で楽しませてもらった。
やはり人の心理を描くのが巧い!!
市議会議員の選挙アルバイトを始めたことがきっかけで、議員の妻となった私は、幸せな日々を送っていた。激務にもかかわらず夫は優しく、子宝にも恵まれ、誰もが羨む結婚生活だった。だが、人生の落とし穴は突然やってきた。所属する党から県議会議員への立候補を余儀なくされた夫は、僅差で落選し、失職。そこから何かが狂いはじめた。あれだけ優しかった夫が豹変し、暴力を振るうようになってしまった。思いあまった私は……。絶望の淵にいた私の前に現れた一人の女性――有名な弁護士だという。彼女は忘れるはずもない、私のかけがえのない同級生だった……。(「ムーンストーン」より)7つの宝石が織りなす物語。湊かなえ新境地がここに。
(角川春樹事務所HPより)
宝石に纏わるお話7つ。
短編集だけど、最後の2つは連作。
「真珠」
厳格な母親に甘いものを食べることを禁じられてきた真砂子にとって、ム-ンラビットイチゴ味の歯磨き粉は救世主のような存在だった。
けれど、その会社は買収され大好きだった歯磨き粉は販売中止。
復刻を願うばかりに・・・・
真砂子の正体がわかったときには驚いた。
なるほど・・・湊さんらしいオチだな。
「ルビ-」
3年半ぶりに帰省したら、両親と妹は、実家の窓から見える老人福祉施設に住む老人・おいちゃんと交流を深めていた。
ちょっと何者か不審に思っていた、おいちゃんだけど・・・すごいお金持ちだったってことですね?
なかなか面白い展開でした。
「ダイヤモンド」
プロポ-ズをするため訪れたレストラン。
彼女に無事、プロポ-ズを済ませてお店を出たとき・・・・ドアにぶつかり倒れたらしい雀を見つけ助ける古谷治。
後日、治のまえに見知らぬ女性が訪ねて来て、助けてもらった雀だと言う。
あ~面白かった!!
この話、好き!
雀の恩返しなんて、昔話のパロディみたいでした♪
そして、雀が健気で可愛いかった。
最後はちょっと切なかったけど・・・・
「猫目石」
飼い猫の「エリ」を探している阪口夫人。
一緒に探し始める大槻家(夫婦と娘)の3人。
そして木の上にいるエリを見つけ救出。
感謝した阪口夫人は、翌日から大槻家のそれぞれに自分が見た家族の秘密を告げにくる。
あ~阪口さん、嫌なおばさんでした~^^;
何でも教えるのが親切って勘違いしてる。
そして最後は・・・・・これまた湊さんらしいラストでした。
「ム-ンスト-ン」
夫からDVを受けていて、娘にも危険が及んだため守るために夫を殺害してしまった小百合。
弁護士として小百合の前に現われたのは、中学時代の友・久実だった。
中学時代に育まれる友情が素敵だった。
ム-ンスト-ンは2人の大切な思い出だったんですね~。
「サファイア」 「ガ-ネット」
紺野真美は、大学1年のときに中瀬修一と出会い付き合っていた。
が・・・ある日、修一は電車がホ-ムに入る寸前にホ-ムに転落しそのまま亡くなった。
事故なのか?他殺なのか?
失意の真美だったが2人の共通の友人・タナカに「生きろ」と励まされ、タナカから自分が誘い、宝石のアンケ-トをとるバイトを修一もやっていたと聞く。
そのアンケ-トは、悪質商法もどきの宝石を買わせるものだったらしい。
そして月日は経ち小説家になった真美。
作品がヒットして映画化が決定。
主演女優の麻生雪美との対談があり、彼女が以前、悪質商法で指輪を買わされたことがあると話す。
この話は、最後、どうなるのか?
暗く毒のある話になるのか?と予測していたら・・・予想に反して良い話に収まりました。
あ~予想外!
でも、こういう終わり方も良いです!!
小説家の真美と湊さんがダブります(笑)。
自分のことを客観的に書いてるかんじがちょっと面白かったなぁ~。
短編集ですが、ひとつひとつが完成されていて、凄く面白かった。
どれも良かった!!
やはり雀の恩返し「ダイヤモンド」が一番、好き♪
これからも、楽しませてくれる作品を書いてくれるでしょう(^^)
★★★★★
デビュー作の絵本がベストセラーとなった陽子と、新聞記者の晴美は親友同士。共に幼いころ親に捨てられた過去を持つ。ある日、「真実を公表しなければ、息子の命はない」という脅迫状とともに、陽子の息子が誘拐された。「真実」とは何か……。それに辿り着いたとき、ふたりの歩んできた境遇=人生が浮き彫りになっていく。人は生まれた環境で、その後の人生が決まるのではなく、自分で切り拓いていけるもの。人と人との”絆”や”繋がり”を考えさせられるヒューマンミステリー。今冬放送予定の、ABC創立60周年記念スペシャルドラマ原作。
(双葉社HPより)
ドラマのために書かれた作品だそうで、今までの湊さんの作品にあった、なんだかよくわからないけど何があったんだ?みたいな不穏なかんじがあまりなく、スラスラと人物背景などが理解できた。
そのため、途中から、事件の真相みたいなものが少し予測がついてしまう。
でも、面白かった。
絵本作家となった高村陽子と新聞記者の相田晴美。
二人は幼い頃、別の場所だが親の元から離されて施設で育っている。
似たような境遇だということもあり、親しく付き合い大人になっても交流がある。
二人はお互いを理解する大切な存在。
陽子は、県議会議員の息子であり自身もそのあとを継ぐ高村正紀と結婚し一人息子(5歳の裕太)と暮らしている。
晴美は、新聞記者として働き、不倫関係の恋人がいる。
そして、物語の冒頭で、裕太が行方不明。
何者かに連れ去られたらいいとわかる。
「真実を公表しないと息子の命はない」という脅迫状。
犯人が言う真実とは何を意味するのか?
タイトルの「境遇」が謎であり、事件の真相を知れば、それが元で起きたことだとわかる。
先月ドラマが既に放送されたけど、この本を読むためにドラマは見なかった!
読んだあとだから、ドラマが再放送されないかなぁ~と思うけど無理かな?
陽子の夫・正紀が凄く素晴らしい!!
ドラマでは誰が演じた?
と調べたら・・・・沢村一樹さんでした。
あ~ピッタリかも!
ちなみに陽子は松雪泰子さんで、晴美はりょうさん。
本の結末は、同じ境遇だからと親しくなった二人が、境遇なんて関係なくより強い絆で結ばれていくという終わりで、なかなか読後感が感動的だった。
うん、こういう話もいいんじゃないかな?
進化し続ける湊かなえの新たなる代表作!
元英語講師の梨花、結婚後、子供ができずに悩む美雪、
絵画講師の紗月。3人の女性の人生に影を落とす謎の男「K」。
感動のミステリ
(文藝春秋HPより)
帯文に「湊かなえのセカンドステ-ジ始動!」とあるように
今までの人間の醜い悪が渦巻くような重く暗い、なんともいえないイヤ~な雰囲気の話とは、ちょっと方向が違うようなお話でした。
今までのような作風も面白いけれど、物語としては、今回のようなものが個人的には良いな~。
三人の女性の話が最初はばらばらに語られる。
最初に登場の女性は梨花。
両親を亡くし、祖母と二人で暮らしていた。
しかし祖母が入院、講師として勤めていた英会話スク-ルは経営破綻であっけなく解雇。
経済的に不安な日々に追いやられる。
以前から「K」と名乗る人物から経済的援助を申し出されていたため、まだ見ぬ謎の人物だが、頼ってみようか?と考える。
二番目に登場の女性は美雪。
伯父の経営する建設会社に勤務し、伯父の勧めで同じ会社の営業担当の和弥と結婚。
和弥のことは前から好意を持っていいたので美雪にとっては幸せな結婚だった。
そして、伯父の息子・陽介と和弥は親友。
陽介の妻・夏美を含め4人は親しく交流を持つ。
三番目に登場の女性は沙月。
母親と二人暮らし。
学生時代は、友人の希美子に誘われて山岳同好会のメンバ-だった。
希美子は先輩の浩一に好意を抱いていた。
沙月は初対面の浩一に不思議な親近感を抱いていた。
最初の梨花の話で登場の謎の人物「K」とは誰なのか?
気になり、イニシャルが「K」の人物が出るたびに「この人?」と思ってしまった。
でもイニシャルは、苗字なのか?名前なのか?わからないので、最後の方まで確信は持てず、楽しみが先延ばしにされる仕掛けは、なかなか上手い!
三人の女性たちの関係も段々とわかっていき、
最初から登場人物をメモしながら読んでいたので、それらが見事に繋がっていく様子は楽しかった!
表題の意味も納得でした!!
ちょっと切ない話ではありますが、良いお話でした。
美雪、沙月の過去の思いを抱えて、
梨花がこれから幸せな人生を歩んで行ってくれたらいいなぁ~。
★★★★★
12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;