発行年月:2014年10月
妊娠三ヶ月で癌が発覚した女性、父親の死を機にプロカメラマンになる夢をあきらめようとする男性……様々な人生の岐路に立たされた人々が北海道へひとり旅をするなかで受けとるのはひとつの紙の束。それは、「空の彼方」という結末の書かれていない物語だった。山間の田舎町にあるパン屋の娘、絵美は、学生時代から小説を書くのが好きで周りからも実力を認められていた。ある時、客としてきていた青年と付き合い婚約することになるのだが、憧れていた作家の元で修業をしないかと誘いを受ける。婚約を破棄して東京へ行くか、それとも作家の夢をあきらめるのか……ここで途切れている「空の彼方」という物語を受け取った人々は、その結末に思いを巡らせ、自分の人生の決断へと一歩を踏み出す。湊かなえが描く、人生の救い。
(朝日新聞出版HPより)
とても面白かった。
最初の話<空の彼方へ>は、中学の頃から小説を書いていた少女・絵美。
両親が営むパン屋の手伝いをしていて知り合った高校生の公一郎(通称:ハムさん)と
出会い、やがて結婚を前提とした両家公認の付き合いになる。
絵美が書いた作品が作家の目に留まり作家を目指して上京しないか?という話に
なり・・・・
そんな自分の話を小説にした「空の彼方」。
結末は書かれないままの物語。
その「空の彼方」が、いろいろな人の手に渡り、それを受け取った人は、それぞれ
その結末を想像する。
そして、自らが迷っているものに対して前を向いて行こうとするキッカケになっていく。
8つのお話から成りますが、最初の話と最後2つは絵美と公一郎の物語。
うしろ2つの物語は、最初の話からは数十年後。
終わりのなかった物語の終わりの方が見えてきて、とても温かい気持ちに
なれました。
話の展開の仕方が巧いなぁ~。
流石だなぁ~と思わせます。
今までの湊さんの作品のなかで、一番すきかも。
こういう毒気なしの温かい気持ちにさせてくれる物語もいいな。
★★★★★
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発行年月:2014年3月
行方不明になった姉。真偽の境界線から、逃れられない妹――。あなたの「価値観」を激しく揺さぶる、究極の謎(ミステリー)。
私だけが、間違っているの? 13年前に起こった姉の失踪事件。大学生になった今でも、妹の心には「違和感」が残り続けていた。押さえつけても亀裂から溢れ出てくる記憶。そして、訊ねられない問い――戻ってきてくれて、とてもうれしい。だけど――ねえ、お姉ちゃん。あなたは本当に、本物の、万佑子ちゃんですか? 待望の長編、刊行!
(新潮社HPより)
先に「山女日記」を読んで、湊さんには珍しいハートフルな短編集だったなぁ~と
思い、こちらを読んで、うんうん、これは湊さんらしいと思った。
2つ違いの姉妹の話。
今は大学生になった妹・結衣子の語りで、幼い頃の姉との思い出を交えながら語る。
結衣子には、ずっとある種の違和感を姉に持ち続けて来た。
それは、幼いころ、姉が失踪した事件に遡る。
放課後一緒に遊んでいたけれど、姉が先に帰宅したが、姉は帰って居なかった。
夜になっても・・・
そしていろいろな目撃情報はあっても、姉の行方は不明のまま
2年経ったある日、突然、保護されたと連絡が入る。
見つかった姉は、失踪当時の服のまま。
かなり痩せていた。事件の事は何も覚えていない。
喜ぶ両親とは、違う感情を抱く妹の結衣子。
本当に姉の万佑子ちゃんなの?の疑念を抱いたまま。
その疑念は誰にも言えずに来た。
失踪事件の背景にある真実がわかったとき、なるほど・・・そういうこと?と
納得した。
怖いなぁ~。
そんなことが家族に起きたら・・・・・。
よく考えられた湊さんらしいお話だったが正直、似たような話は
以前にも読んだような・・・^^;
幼いとき姉が読み聞かせてくれたというアンデルセン童話の『えんどう豆の上でねたおひめさま』は、知らなかったなぁ~。
今度、絵本借りてみようかな?
★★★
発行年月:2014年7月
このまま結婚していいのだろうかーーその答えを出すため、「妙高山」で初めての登山をする百貨店勤めの律子。一緒に登る同僚の由美は仲人である部長と不倫中だ。由美の言動が何もかも気に入らない律子は、つい彼女に厳しく当たってしまう。医者の妻である姉から「利尻山」に誘われた希美。翻訳家の仕事がうまくいかず、親の脛をかじる希美は、雨の登山中、ずっと姉から見下されているという思いが拭えない。「トンガリロ」トレッキングツアーに参加した帽子デザイナーの柚月。前にきたときは、吉田くんとの自由旅行だった。彼と結婚するつもりだったのに、どうして、今、私は一人なんだろうか……。真面目に、正直に、懸命に生きてきた。私の人生はこんなはずではなかったのに……。誰にも言えない「思い」を抱え、一歩一歩、山を登る女たちは、やがて自分なりの小さな光を見いだしていく。女性の心理を丁寧に描き込み、共感と感動を呼ぶ連作長篇。
(幻冬舎HPより)
長編かと思ったら、短編連作集でした^^;
登山する女性たちが自身が抱えた問題を前向きに捉えていく姿が、清々しい物語。
いつものちょっと毒気のある湊さんの物語とは、違った魅力があり
こういう物語もいいなぁ~と思った。
登場人物たちが少しずつリンクしているので、先に読んだ女性のその後が後の
物語でわかったりするのも面白い。
ああ、あの女性は、そういう決断をしたのね。なんて思って嬉しくなったり・・・。
本格的な山登りはしたことないし、あまり山登りする体力もないので
今後彼女たちの上った山に行く機会はないと思うけれど・・・
ハイキングくらいの軽い山登りならしてみたいなぁ~なんていう気持ちにもなった。
特に印象に残ったのは・・・
<火打山>の美津子と神崎の初々しいデート場面は、微笑ましかった♪
その後、ほかの話で夫婦として登場したのは嬉しかった。
また<利尻山>の姉妹がお互いの思いを打ち明け、その後の話で今度は姉が娘を連れて
3人で上った<白馬岳>に続く話も良かったなぁ~。
さてさて、次も湊さんの本を借りてあるので、読みますが、今度は
毒気あるのかなぁ~?
★★★★
発行年月:2013年6月
名門橘第一高校の入試前日、教室の黒板に「入試をぶっつぶす!」の貼り紙が見つかる。迎えた入試当日。振り回される学校側と、それぞれ思惑を抱えた受験生。謎に充ちた長い長い一日が始まった……。
(角川書店HPより)
「高校入試」が事件の現場になるという発想は凄いな。
大学受験でその後の人生が左右されるっていうのは、わかるけど
たかが高校入試で???なんて読み始めは思っていました。
「入試をぶっつぶす!」と書いたのは誰?
在校生?教師?受験生????
怪しいと思った人が犯人でした。
でも、そう思う気持ちは、なんとなく理解できました。
中学生から高校入試に向かう者にとっては、それで人生決まっちゃうくらいの
一大事なんだと、自分の過去を振り返って、当時の気持ちを思い出しました。
入試という制度が抱える問題も提起していたかな?
しかし、採点ミスはなくならないんじゃないかな?
人間の手で行われるものだし・・・・。
読んでいて、あまり面白い話じゃなかったな。
登場人物が多くて読むのに難儀したし・・・
次回作に期待します。
これドラマもやっていたんですね?
後から知りました。
ドラマを見ていたら、もうちょい楽に読めたんでしょうね。
★★
発行年月:2013年1月
日本推理作家協会賞受賞! 心に刺さる連作短篇集
島に生まれ育った人々の、
島を愛し島を憎む複雑な心模様が生み出すさまざまな事件。
推協賞短編部門受賞作「海の星」ほか傑作全6編。
瀬戸内海の白綱島を舞台にした短編6つ。
「みかんの花」
ミカン畑を管理している母は認知症で入院中。
姉は25年前、島に訪れた青年と駆け落ちし島から都会に出て行った。
そんな姉が作家になって、島に来る。
島から出た理由を初めて知るわたし。
「海の星」
父親がある日、失踪。
母親と貧しい暮らしをしていたが、ある日、漁師のおっさんに声を掛けられ
それからたびたび魚を届けてもらう。
妻と息子と暮らすわたしのもとに、おっさんの娘・美咲から葉書で
話したいことがあるからと連絡を貰い再会。
おっさんは、父親の失踪後のことを知っていた。
「夢の国」
子どもの頃、出来たばかりの東京ドリ-ムランドに行きたかった。
祖母に頭の上がらない両親は何度か行く機会があったのに、
連れて行ってくれなかった。
大人になり7歳の娘と夫とともに今、東京ドリ-ムランドにいる、わたし。
「雲の糸」
子どもの頃は、母親が父親を殺したことで、人殺しの子どもと虐められた。
先頭にたって、自分を貶めた同級生・的場。
今は歌手として成功している、わたし。
ある日、的場から会社の50周年記念パ-ティにゲストとして
参加してくれないかと打診があり渋々、受け入れる。
「石の十字架」
小5のとき、島に転校した。
事情がありそれまで一緒にいた両親とは離れ、祖母との2人暮らしが島で始まった。
クラスに馴染めないかんじの、めぐみと親しくなる、わたし。
島には2年間しか住まなかったけれど、小5の娘が不登校になり
島の学校に通わせたいと夫の許可を貰い、島に移り住む。
娘に話して聞かせるめぐみとのこと。
「光の航路」
10歳のときに教師だった父が亡くなった。
幼いころ、父に一度だけたたかれた。
わけも聞かずに・・・それがしこりになっているわたし。
自分も教師になり、故郷の島の小学校に赴任した。
いじめ問題に頭を悩ませている。
ある事故に遭い、入院中のわたしの元にたずねて来てくれたかつての父の教え子。
どの話も引き込まれるように読ませるのはさすが!
子どもの頃は、どの話でも嫌な思いをしている主人公たち。
読んでいるこちらまで、暗い気持ちになってきて、
子どもの頃って、外に逃げて行きたくても
自分の力だけで、その環境から逃げ出せない。
そんな、どうしようもない閉塞感がヒシヒシと伝わって来て辛くなった。
けれど、大人になり、外の世界を知ると、
当時、思っていたことも違う方面から見れば、また違う事実がわかったりする。
話としては「海の星」と最後の「光の航路」が、わたしは特に気に入った。
辛い気持ちを経験したけれど、大人になってわかった真実により、
希望をもって生きていくだろう主人公たちを愛おしくかんじた。
今回もダ-クな話が元の湊さんの作品ですが、
優しい気持ちにもなれるかんじで、ちょっと今までとは違ったかんじ.
でも、それがよかった。
どの話も、作品として面白かった。
★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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