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読んだ本の感想あれこれ。
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515x4AspB5L__SS400_.jpg発行年月:2012年1月


女を殴る父と、同じ目をした、俺。
川辺の町で暮らす17歳の少年。セックスの時に暴力を振るうという父親の習性を受け継いでいることを自覚し、懼れ、おののく…。逃げ場のない、濃密な血と性の物語。

第146回芥川賞受賞作。

                                           (集英社HPより)

 

芥川賞受賞作品である表題作「共喰い」と、もう1編「第三記層の魚」が収められている。

「共喰い」は・・・・なんとも気持ち悪い話でありました^^;
17歳の遠馬は、父親と、父の再婚相手・琴子との3人暮らし。
実の母親・仁子は、すぐ側で魚屋を営んでいる。

父親がどうしようもなくイヤなかんじ。
そんな父親と琴子の関係を日々、眺めながら自分も父親とおなじ習性が千種との関係のなかで現われることを恐れている遠馬。

実の母や琴子に暴力を振るう父。
母・仁子は少し離れた場所で、琴子のことも気にかけている。

仁子の行ったことは、良いことではないんだけど、なんだかスッキリした!



そしてもうひとつの話「第三記層の魚」
こちらの方が読んでいて、すんなり感動できた。
話としても受け入れ易い。


こちらは、小学生かな?少年・信道の語りで進む。
前の話も、海辺の町が舞台の雰囲気だったけど、こちらもそんな風景がよく出てきた。
釣りで捕れた魚を祖母の住む家に運ぶ。
祖母は、父方の祖母で、そこには96歳の曽祖父も居て、祖母は會祖父の介護をしながら生活している。
信道の父は彼が4歳のときに病死。
母親と二人暮らしの信道。
そして、祖父は元警察官だったが、信道の父が病死する2年前に自殺している。

夫と息子を亡くしている祖母の哀しみを想像すると辛いけれど、祖母は優しく信道に接し、曽祖父に語りかける口調も柔らかで献身的に介護をしている様子は頭が下がる。

そんな様子をみている信道も、介護を手伝ったりと実に良い子。
寝たきりなのに、口は達者な曽祖父の話も気長に聞いてあげる。

やがて転機となる出来事が起き、新しい環境で信道は暮らすんだろうな・・・というラスト。


二つの話に出てきた、遠馬と信道が、この話のあと、優しくて強い大人に成長して行って欲しいな。

「共喰い」は、ちょっと気持ち悪かったけど、文章は読みやすく話としては面白いので
ほかの作品もこれから読んでみたいなと思った!



 
★★★★

 
 
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41vOkGcfd6L__SL500_AA300_.jpg発行年月:2011年9月

唯一の被爆国が、
なぜ原発大国に?

世界で唯一原爆を落とされた国が、なぜ原発大国になったのか? そのつながりを圧倒的な想像力で描き出す。歴史を振り返り、これからの「核」の話を始めるきっかけになる一冊。

                                           (筑摩書房HPより)


3.11後、いろいろなところで原発問題を耳にするようになったし、そんな書物も幾つか読んではみたけれど、
難しい話も多く、正直、よくわからなかった。

しかし、この本に書かれていることは全てスッと入ってくる。そして、胸に残る言葉が多かった。
何がわからないのかすらわからない原発の問題だったけど、なるほど!!と思うことばかりだったように思う。
田口さんの筋道立てた考え方に共感!


歴史的背景から考えた原発問題。
人間の心理から考えた原発に対するさまざまな意見。

副表題でもある「原始力を受け入れた日本」のことも、なるほど、そういう経緯があったからなのか?と納得。
勿論、これに対する反論を持っている識者もいるんだろうけど
わたしには、納得出来る言葉でした。


最後の章で書かれていた、今後の原発に対する日本の対応に感じる危惧。
原発反対と言うだけで、悪の象徴のように扱うだけではダメなんですね。
一度持ってしまったものは、簡単には無くせない。
それ相当の科学技術をもって管理し続ける体制がないと、再び危険なことが起きてしまう。
それに関わっていく人たちに対する我々、国民の意識も少し変えていかなくてはいけないのかも。


この書はわかりやすので、未来を担う子どもたちにも是非、読んでほしい。
中学生くらいならわかるだろうから・・・。

ランディさんの小説が好きだけど、ますます好きになれた。

★★★★★
 
 
51ZLXehalkL__SX230_.jpg   発行年月:2011年12月


   私たちは無力だけれど、傍らに立ち、そっと寄り添うことができる。



男の求愛に破滅していく0Lが語る衝撃の表題作。
しだれ桜の下に立つ白い男とは。教会に現れた野生児は神に選ばれし者なのか。
残された日々を生きるがんの父に寄りそう娘の決断は…? 
魂を揺さぶる四編の愛の物語。


                                            (角川書店HPより)


表題作「私の愛した男について」だけ書き下ろし作品で他の3編は、既に発表の作品に多少加筆して1冊の本にしたらしい。

表題作は、一番最初。
妻子がありながら、部下の私に接近し、関係を求める男性・高野。

セックス依存症とか。
う~ん、こういう病気本当にあるらしいけど、その標的にされたらイヤだな。
病気とはいえ、高野には嫌悪感を抱いてしまう。
しかし、それを淡々と受け入れていく主人公の女性の心理がわたしにはわからない。
奥さんからあの人は病気だから気をつけてと忠告されても、関係を続け妊娠。
う~ん。わからない。
好きになってきたということなら少しは理解出来るのだけど・・・・


「幻桜」
知的障害者のみっちゃんと脳性まひの女性の物語。
ともに障害を持ち、意思疎通が困難な二人だけど、気持ちは通じあっていた。
切ないけれど、温かいものも感じた。


「命のつけし名は」
ある日、教会に訪れた不思議な青年。
牧師さん夫婦は、その青年を預かることにする。
先天性の聴力障害を持つ青年は、その病気のため生きていく術を知らなかった。
牧師夫妻が温かい愛情を注ぎやがて、別の場所で暮らした青年の成長ぶりに
じ~んとした。


「森に還る人」
骨折のため入院した病院の医師により肺に癌があることが発見される。
余命わずかなステ-ジまで進行した癌のため、ホスピスに転院することになった父。
ホスピスに入るには、本人への病気の告知が前提。
告知のとき、泣いていた父だが、その後はそんなことを忘れたように明るい表情。

人が死ぬことは避けられないけれど、その最期のときに、自身も周りも納得した末の死が理想的と思う。そういう意味ではこの物語の父娘は、理想的な死を迎えたのかも。
そういう最期を迎えた人の死は哀しいけど、なんだか清清しいと思う。


どの話も読み応えがあり、良かった!


                                        ★★★★


 
f3a5415b.jpg   発行年月:2011年5月

  あなたの見ている現実は、本当にその通りのものですか?


  1987年10月。江上紗子はこの路地で消えた。
  あの日少女に何があったのか。
  拉致か、神隠しか、それともアブダクションか。
  UFO伝説の残る北陸の小さな町を舞台に過去と未来、
  現実と非現実が交錯する最高傑作長編!


                                        (角川書店HPより)


よくわからないものが続々登場で、なんだかすごく不安な気持ちになりながら読みました。
女子中学生の神隠し事件、UFO目撃、コックリさん、キツネ憑き、幽体離脱、宇宙人による連れ去り体験・・・・など自分が体験したことがないものがてんこ盛り。
この物語は、どこに向かっているのだろ???

でも、話の展開は面白い(笑えるものではないけれど・・・・)ので、惹き込まれて読みました。

舞台は能登半島のとある田舎町。
そこで、少女がある日、姿を消す。
両親は捜索願のビラをあちらこちらに貼り捜索もされるが、一向に手がかり無く年月が過ぎていく。

そこで育った高木は、「マアジナル社」で発行する月刊誌「マアジナル」の編集に関わる。

その会社は、まさにマ-ジナルな領域のテ-マを扱うオカルト系の出版社。

そういう類のものには、全く興味がなかった高木だが、地元で以前、女子中学生が失踪。
その少女とは、知り合いだった。
彼女を含めた近所の友達6人である日、UFOを見に行っている。
再び、過去のことになっていたことを編集者として調査し始める。

物語は17年前の過去に戻り、その日一緒に行動したメンバ-のことが綴られる。
そして、再び現在に・・・と話が交錯しながら進んでいく。

そういえば、自分が小中学生の頃にもUFOとか超能力とかよくわからない世界のことがテレビでも放送されていたなぁ~。
ホント?うそでしょ?と両方の気持ちが代わる代わる起きたりして・・・。


自分が体験しないことは簡単に信じられないけど、全部嘘とは言い切れない。
わけがわからないけれど、なんとなくそれを体験した人の言葉は信じられるかも?

物語の最後は、モヤモヤしていたいろいろなわからないことが、わからないなりに安心出来る結末になって、ホッとした。

これは好き嫌いが分かれるかも?
わたしは、結構、こういうの好きですが・・・。


                                        ★★★★


 
51-o9VRV37L__SX230_.jpg   発行年月:2010年3月


   創薬化学を専攻する大学院生・研人のもとに
   死んだ父からのメールが届く。
   傭兵・イエーガーは不治の病を患う息子のために、
   コンゴ潜入の任務を引き受ける。
   二人の人生が交錯するとき、驚愕の真実が明らかになる-----。


                             (角川書店HPより)


凄いスケ-ルの大きな物語だった!
ハリウッド映画の原作を読んでいるような気分にもなった。

日本の薬学を研究する大学院生の古賀健人の話とアフリカのコンゴでの極秘作戦に参加するジョナサン・イエ-ガ-との話が交互に語られながら話は進む。

健人は、突然亡くなった父から生前、送ったであろうメ-ルを受け取る。
それには、不治の病である肺胞上皮細胞硬化症の特効薬を作ることを引き受けて欲しいと。
研究者としての使命のようなものを感じ、それに没頭する健人。
しかし、背後にはそれを阻止しようとする大きな力もあり、自らも危険な状況に置かれる。

イエ-ガ-は、特殊部隊出身で難病に苦しむ息子のために膨大な治療費確保が目的で極秘任務に加わった。
当初目的がはっきりしなかった作戦だが、新種のウイルスに感染した少数民族集団とアメリカ人の人類学者、そして「ヌ-ス」と名づけられた3歳時の抹殺が課せられた目的だとわかる。


交互に語られる物語も面白いけど、それらが繋がっていく終盤も良かった。

自分たちと違うものは脅威だと徹底的に力で排除しようとする人間の恐ろしさも描いていた。
わたしがよく知らない残酷なことがそういった心理で沢山、起こっている事実にも気づかされた。
かなり残酷な描写も出てくるけど、事実、大量虐殺(ジェノサイド)はいろいろなところ(他国間での戦争だったり、同じ国内での内戦だったり)で行われていた。
まだ今もニュ-スで報道されないだけで実際に起きているんだろうか?


表題はジェノサイドだけど、人間の持つ、他者を理解しようとする心理の方が平和をもたらすという救いのある終わりになっていたのは良かった。

実際の社会でも、他者を理解しようと歩みよる知恵を全世界のリ-ダ-たちが率先して欲しい。
ここではアメリカのイラク侵攻とかを非難するような著者の考え方がチラチラ頭を掠めたけれど・・・・
それもちょっと引っかかってしまった。
確かにそう思うけど、なんだろう?このモヤモヤ感は?
アメリカ人の作家がこれを書いているのなら(ハリウッド映画とか)、おぉ~と感動するんだろうけど日本人が他国のことを批判するような考えの言葉には・・・・・・・。



でも、いろいろと考えさせられる物語だった。


それから・・・・理系の専門的用語の多い箇所は眠くなってしまった(汗)
これだけの専門的な用語やらを羅列されると、それを理解しようと文字を追うことに神経を遣い物語りの面白さが削がれてしまったのが残念。

主人は先に読んで「実に面白い!」と大絶賛でしたが
確かに凄い話であるけれど・・・・・人に薦めるほどの熱い感動はなかったのが事実。


高評価の作品であるということは読んで、なるほど!と納得は出来たけど・・・
この辺は個人の好みの問題かも?
よって★ちょいと少なめです・・・・・スミマセン



★★
 
 
 
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