発行年月:2013年8月
第45回メフィスト賞受賞作
本を愛し、言葉の力を信じるすべての人に!
ファンタジー界を革新する大作、ついに登場!
剣でも、魔法でもない、少女は“言葉”で世界を拓く。
鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女(ソルシエール)」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声をもたないうら若き少女だった――。
(講談社HPより)
上下巻で1冊が650頁という長編中の長編!
先に読んだ主人が「凄い!」「面白かった!」と言うので・・・
じゃあためしに最初だけでも読もうかなぁ~と読み始めた次第。
そしたら・・・・朝から夕方まで読み続けてしまった^^;
面白い!!
あまりパッとしない風貌の少年・キリヒトがどんどん凄い力を見せてくれる。
図書館の魔女を災いから守るために、いろいろな力を受け継いだキリヒト。
ただし、文字を読むことは出来なかった。
最初は、文字を教えられなかったのは何故だろ?
と思ったのですが・・・なるほど。
文字を学ぶよりも大切なことが、あったからですね。
図書館の魔女・マツリカは言葉を発することが出来ない少女。
キリヒトに会った瞬間、その内に秘めた力に興味を持ち、最初から名前を与えた。
ただし、名前はマツリカが指を鳴らすその音。
二人が次第に意思疎通を図り、行動を共にしていく様子が微笑ましい。
ただし、少年と少女と言っても、マツリカの話すことはとっても高尚。
本から得た知識が半端ないから・・・。
上巻の終盤では、キリヒトの力が大いに発揮された場面があり、
勝手に自分の頭のなかで映像化しながらワクワクしながら読みました。
下巻では更に秘めた力をマツリカを守るために発揮するのかな?
物語の行方が気になるので、今すぐ下巻を読み始めます!!
★★★★★
発行年月:2010年8月
本当に幸せなのは誰か? 現代のおとぎ話7篇
シンデレラ、白雪姫、みにくいアヒルの子など代表的西洋童話を現代日本に置き換えた短篇集。童話の結末に疑問を抱く著者が見つけた、それぞれのハッピーエンドとは? 泉鏡花文学賞受賞後第一作。
(集英社HPより)
初読みの作家さん。
西洋童話のなかでも馴染みの深いものを日本版にした物語たち。
こうして考えると童話のなかの主人公たちって、みんな理不尽な目に遇っている
んですね。
<迷子のきまり ヘンゼルとグレーテル>
母子家庭の兄と妹。
母親は酒びたりで子どもたちに暴力をふるう。
家に帰りたくない二人は家出する。
「こどもにひどいことをする奴は殺しちゃってもいい」
<鵺の森 みにくいアヒルの子>
小学校時代の同級生に偶然、出会う。
彼は同級生にいじめられていた。自分もいじめる側だった。
そして、当時の鵺の森の伝説を思い出す。
<カドミウムレッド 白雪姫>
以前美大生だったわたしは、今はその学校の事務をしている。
叔父が画家でその妻・美智子は、わたしの絵の先生だった。
美智子先生の嫉妬心が怖い。
<金の指輪 シンデレラ>
親の莫大な財産を分けて貰い、働かなくても悠々自適な生活が出来るが
金持ちであることは知られないように生活をしている。
子どもの頃に習ったピアノ教室で出会った女の子のことが記憶に強く残っている。
父親が亡くなった後、一度家を訪ねてきてくれたそうだけど、会えず。
そのとき、彼女のものらしい金の指輪が落ちていた。
それを大事に持っている。
その指輪はとても小さいサイズ。
そして、ある日、伯母の家に介護ヘルパーで来ている女性と知り合う。
唯一、この短編集のなかで、温かい気持ちになれたお話。
<凍りついた眼 マッチ売りの少女>
売春宿で働かされている少女。
箱のマッチをお客を取るたびに燃やし、全部のマッチを燃やし尽くしたら
自由にしてあげると雇い主の老婆から言われている。
う~嫌な話でした。
<白梅虫 ハーメルンの笛吹き>
梅についた虫を退治する鈴を借りる。
恋人とふたりで育てている梅に鈴の効果で虫が居なくなる。
鈴を貸してくれた女性に嘘をついて、鈴を返さずにおくと恋人の体に湿疹が広がってきた。
<アマリリス いばら姫>
83歳の祖母は認知症。
さやちゃんと呼ばないと巧く会話が成立しない。
20歳以上年上の妻子持ちの男性と不倫をしている、わたし。
祖母の姿を見ながら、自分のこれからを考えるわたし。
この話もまあまあ良かった。
後味悪い話も多かったけれどなかなか面白い短編集でした。
★★★
何があっても、愛妻家を貫こう──波瀾万丈の国際結婚を描く、傑作長編!
イタリア人のファブリは、大阪生まれの和泉と出会い、恋に落ち結婚する。せっかちでドライな和泉と、どことなく要領が悪く、ロマンチストなファブリ。「大阪人vsイタリア人」とも言える二人は、惹かれ合ったり反発し合ったりしながら、日々を送り、やがて子供も生れる。爆笑の中で、夫婦、家族、日本を問う、新鮮な、書き下ろし長編。
(新潮社HPより)
著者はスイス生まれ。
日本の大学に編入学して、卒業後はテレビ朝日初の外国籍社員となり記者兼ディデクタ-として働いた経歴の持ち主。
1996年に、すばる文学賞受賞、芥川賞候補になった「いちげんさん」は読みましたが、外国の方が書いた文章とは思えない素晴らしい作品だった!
それは、純文学の雰囲気だったのですが、こちらはそれに比べると軽いかんじで
なかなか面白かった。
イタリア人のファブリと日本人の和泉の物語。
二人は結婚前に偶然、飛行機のなかで出会っていて・・・・
その後、ファブリがロ-マ大学を卒業し、日本の大学に編入して経済を学び、大手飲料メ-カ-に就職後、うっかりビザの期限が切れていることに気づき、慌てて入国管理局に飛び込むところで二人は再会。
和泉は法務省 入国管理事務所で働いていた。
5日間の不法滞在のわけを説明するファブリとその面接相手の和泉の会話が面白い。
お役所仕事を淡々とこなす和泉の言葉は冷たい。
けれど、お互い一度、会っているとうことで何か通じるものをかんじ・・・
ファブリが和泉の仕事が終わるのを待ち伏せして、食事に誘う。
そのときの和泉の返事が可笑しかった!
「公務員を接待するということですか?収賄罪すれすれの危険なお誘いですよ」。
それでもめげないファブリが可愛い(^^)
なかば諦めていたところに和泉から連絡があり二人の初デイト♪
その後、結婚しするのだけど、二人の関係は和泉が主導権を握ってるかんじ。
ちょっと妻が強すぎるかんじなんだけど、まあ、なんとかうまくいく夫婦。
子どもも次々生まれて・・・・
ちょっとした危機も訪れるけれど、二人は乗り越えていく。
イタリア人と日本人カップルだけど、日本人同士のカップルと何ら変わらないかんじの日々。
内容としては、まあまあでした。
でも、前にも書いたけど、外国の人が日本語でこれを書いたというのは凄いなと思う。
「いちげんさん」後の著者のほかの作品も読んでみよう。
★★★
キュートな「京都の恋」を描く青春恋愛長編
「たっくんて呼んでいい?」京都での学生生活も4年目を迎えた七夕の夜、主人公の花は友人のアリサから合コンに誘われ、たっくんと出会う。三条木屋町の店にひとり遅れてあらわれた彼は、その場にはそぐわない一風変わった雰囲気の持ち主だった。文系の学生で数学嫌いの花にとって、理学部数学科のたっくんは謎に満ちていて、彼の暮らす学生寮の友人たちもかなりキテレツな理系男子ばかり。食べ物にうるさい巨漢アンドウくんの研究対象はミクロの遺伝子、おかっぱ頭のヤマネくんは工業化学科で専攻テーマは爆薬。ゆかいな仲間たちに囲まれ、花はこれまで経験しなかった不可思議でにぎやかなキャンパスライフに巻き込まれていくが、いまどき携帯電話も持たないたっくんとの距離はゆるやかにしか縮まらない。バイト先の古着屋の店長・陽子さんらの助言を受けつつ、やがて花は恋のライバルが「数学」であることを知る――。寮でのたこ焼きパーティー、鴨川デルタでの花火、自転車デート、学園祭、卒業旅行……学生の街・京都を舞台に、かけがえのない時間と仲間たち、ほっこりと育まれる等身大の恋を描く。甘酸っぱい記憶を呼びさますたまらなくキュートな青春恋愛小説。
(小学館HPより)
先日、この姉妹版に当たる「左京区恋月橋渡ル」を読んで、こちらをまだ読んでなかったかも?と
読んでみました。
長女が図書館から借りて読んで「おもしろかった」と前に言っていたのに、わたしは読みそびれて
そのまま返却した様子^^;
こちらのお話は「左京区恋月橋・・・」では、東京と京都の遠距離恋愛続行中の花と龍彦のまだ出会う前からの付き合い始め花が大学卒業し、実家のある東京に戻りそちらで就職のため京都を離れるまでの物語でした。
数学科の龍彦と文学部の花。
最初の話、ブル-ベリ-がキッカケで知り合う。
あのとき、・・・・・してなかったら会えなかった人と考えると人との出会いって本当に不思議な偶然だなぁ~。
学生寮で暮らす龍彦の仲間、山根くんと安藤くんも登場。
「恋月橋・・・・」では主人公の山根くん。爆発担当だけれど、平和のために役立つ爆発を開発することを目指している。
安藤くんは、バイオ野菜の研究。
ここに登場の学生たちは、やはり頭の良い子たちなんだなぁ~。
そして、みんな優しい気持ちを持っている。
龍彦は時間を忘れて研究にのめり込み栄養失調になって病院に運ばれたり・・・・・
こういう人を好きになったら、ある程度の覚悟が必要だろうな。
そして、花は覚悟をする。
友達の山根くんと安藤くんが、花の恋を応援する様子も微笑ましかった。
著者の学生生活の思い出話も混ざってるのかな?
京都大学卒業だから、ここに書いてあることはリアルな京大生の姿かな?
花ちゃんと龍彦くんの恋が長く続きますように・・・・
さて、安藤くんの恋バナもあるのかな?
読んでみたいなぁ~。
書いてくれないかなぁ~。
★★★★
新聞記者の千晶は父が遺した取材ノートから、
名画『マルセル』盗難の謎にのめりこみ・・・・
実在の未解決事件をモチーフにした芳醇かつ極上の絵画ミステリ!!
(毎日新聞社HPより)
実際にあった事件をモチ-フに描かれた物語。
1968年12月、京都国立近代美術館から何者かにより、ロ-トレックの描いた「マルセル」が盗まれた。
そして、7年後の時効成立後に名画は戻ってくる。
実際の事件では、犯人はわからず迷宮入り。
しかし、この物語では、その謎の事件の背景にあったことを物語として描いている。
主人公の瀬川千晶(36歳)は、父親と同じ新聞記者として働いている。
父が病で亡くなった後、遺品のなかにノ-トを発見。
過去の事件に取材メモ?
ロ-トレックの「マルセル」盗難事件についても記事を書いていた父。
そして、謎の絵はがき。
父親のことをデュ-クと呼びかける人物。
その絵はがきの届いた住所に何かヒントがありそうと訪ねていく千晶。
父が昔、住んでいたアパ-トは既になかったが、そこの所有者である人物と会う。
所有者は画廊経営者・真丘永。妻の葉子は喫茶店経営。
画廊に出入りする画家の佐木オリオと親しくなった千晶は、オリオと共に父の遺したノ-トを元に、事件の謎に迫っていく。
そして、盗難事件に父親が関わっていたこと。
物心ついたころから居なかった母親の存在も明かされていく。
謎の解明は、千晶の両親の実像を知ることにも繋がっていく。
謎がどんどん、深まりながら、最後にはいろいろなことがすっきり解明されて
なかなか面白い物語でした。
物語中に書かれていた、マルセルを描いたロ-トレックの生涯を描いた映画「赤い風車」も観てみたくなった。
ひとつの事件から、いろいろ構想を練って読み応え十分の物語を完成させた著者の努力に拍手!!
12 | 2025/01 | 02 |
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;