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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2002年4月


お母さん、わたしは生きていていいの?


 家族をすべて失ってひとり残された12歳の少女、エレン。
30年近い時を経て彼女が見たあまりにも残酷な家族の謎----
それでもエレンは生きる。
運命がどんなに容赦ないものであっても。

             (本の帯文より/新潮社)



重たい話。
辛い話。

物語は、ふつうの明るい一家の様子が先ずはつづく。
物語の語り部は一家の5人いる子どもの真ん中の子・エレン。

一家には、ビリー(女の子)、ケスター(男の子)、エレン、カルロス(男の子)が
居て、5番目の子どもが生まれる直前から物語が始まる。
何処にでもいる家族の風景。
時には喧嘩したり、男の子は女の子をからかったり、やんちゃな末っ子君に
皆が手を焼いたり・・・・
そんな一家に新しい命が誕生する。
喜ばしいことなのだが、それが一家の崩壊の始まり。


子ども達の父親・フリッツと母親・マルヒェの関係が微妙に変化する。
産後、マルヒェの様子がどこか不自然になっていく。
洞察力に優れるエレンは両親のそんな関係をなんとなく感じて不安になる。
けれど、まだ12歳のエレンにはどうしようもない。

大人になってから、母親は産後鬱病だったのだと理解するのだけど・・・・


物語は、過去と現在が入り交じり、読んでいると少々、混乱する。
エレン自身が、あの時の母親と同じように妊娠中という状況にあり
あの時、母親のおなかにいた子を呼んでいたように、自分のおなかの子を
呼んだりすることも混乱の要因になった^^;
ま、読んでいる途中で、「ああ、これは母親のことだったのか?」とか
逆に「ああ、エレンのことね」と気づくのだけど。


辛く重苦しい過去を抱えながら、なんとか当時の母親や父親の気持ちを
理解しようとするエレン。
そのために、一家が暮らしていた家を購入という行動までとる。
そして、ずっとエレンのことを心配し続けてくれた近所のバスの存在が
エレンには大きかった。
全てを知っていて、温かく接してくれるバスの優しさは救いでしょう。

いろいろなことが時間が経った今、わかってきて、それによって
自分は前を向いて歩いて行こうと思えたラストは感動的だった。

出来事とししては哀しいけれど、ある意味、仕方なかったんだと
割り切れたのかな?


最初から最後まで引き込まれるように読んだ。


著者はオランダの作家さん。
ほかの書も読んでみたいけれど、翻訳されている作品があるかな?



                         ★★★★
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発行年月:2014年1月

総統、ついに芸人になる! 奇想天外な設定で描かれた空前絶後の爆笑風刺小説。
危険な笑いに満ちた本書の評価をめぐりドイツでは賛否両論の物議になった衝撃の問題作

                  (河出書房新社HPより)



上巻に引き続き、一気読みの面白さ。

あの残酷なユダヤ人迫害を指揮した総統のイメージはほとんどないので
なんだか、好感すら覚えてしまう。

現代に蘇ったヒトラー、周囲の勘違いにより、今や人気のヒトラーネタを喋る
芸人として受け入れられる。
が・・・逆にネオナチからドイツを侮辱していると受傷を負わされ入院する羽目に。


ヒトラーの演説の原稿を清書するのを手伝ったりしたクレマイヤー嬢は
祖母の一家がユダヤ人だった為、ガス室で亡くなった。
それに対してのヒトラーの気持ちは、あまり語られてなかったのが
ちょっと残念だけど、後に再会したクレマイヤー嬢が結婚したのを知り
喜ぶ場面はちょっと良いシーン。


物語は、どういう結末?と気になったけれど、そうか、そうくるか。
その後、どうなっていくのかも気になるけど

ドイツの今の政治家たちも登場したりして、ドイツの人たちは率直に
この小説をどう感じているのかな?
なんて事もきになった。

最初は、相手かまわず、自分の主張は曲げず言いたいことをズバリ言い、
世間の注目を集め、やがて、政治の世界で
リーダーシップを発揮して・・・その挙句が、悲劇となっていくとしたら・・・
蘇らせるのは危険だなぁ~やっぱり。


あ、なんか今の日本の総理もそれに近い?とふと思ってちょっとゾッとしてきた。

 
 
                         ★★★★




発行年月:2014年1月


 世界的ベストセラー! ついに日本上陸。現代に突如よみがえったヒトラーが巻き起こす爆笑騒動の連続。ドイツで130万部、世界38ヶ国に翻訳された話題の風刺小説!

                    (河出書房新社HPより)



ヒトラーが2011年8月、とある広場に突如蘇る。

そんな奇想天外な設定で、描かれる物語。
ヒトラーは、自身が自殺したことを覚えていない。
自分と同じように側近たちも近くに居ると最初は考えるが、どうやら此処は
自分が居た場所とは違うんじゃないか?と思い始める。
でも、本人はヒトラー。

周りの人々は、ヒトラーの真似を忠実にしている芸人だと思う。
そしてテレビ番組に出演。
本人は大真面目に演説をしているつもりだが、視聴者の反応は賛否両論。
面白い!と思うものあれば、けしからんと怒る者あり。


ヒトラーに対してのイメージがちょっと変わる。
何故か、愛嬌があるかんじもする。
あんな大虐殺を指示した者とは思えない人間味ある一人の男というかんじ。


さて、下巻ではどういう展開になるのやら??

しかし、こういう物語を書いているのが、ドイツ人とは、驚き。


                             ★★★★




発行年月:2014年1月


 失われた時間は、かつての自分は、莫大な金で取り戻すことができるのか? 熱い論争を巻き起こした痛快なイギリス小説。

昏睡状態から目覚めた「僕」は、自分が事故で記憶の大半を失ったことを知る。「事故について何も語らないこと」を条件に巨額の示談金を得た彼は、広大な土地を買い上げ、大勢の役者を雇い、執拗に練習を繰り返して、おぼろげな過去を忠実に再現しようと試みる――。滑稽、不可解、それでいて切ない。異色の話題作、遂に邦訳。

                    (新潮社HPより



事故に遭い記憶を亡くした男。
昏睡状態から覚めリハビリにより肉体的には回復したが記憶は戻らない。
事故については何も語らないことを約束に手にした示談金850万ポンド。

ある日、男はバスルームのひび割れた壁を見つめているうちに既視感を覚える。
何かが思い出せそうで、でも思い出せない。

そのもどかしさを埋めるため、巨額の金を投じての一大プロジェクトを開始する。


自分のイメージ通りの建物を見つけそれを買収し、そこに自分の思い描く人物たちを配置し
演じて貰う。
その人物選考はオーデションで。

バイク狂いの男役からレバーを焼くおばあさん役、退屈なカップル役、ピアニスト・・・

そして建物を更に自分のイメージ通りに内装を変え選び抜いた小道具を配置し・・・・


ここまでは、まあお金もあるわけだし・・・と愉快に読んでいました。
が・・・近くで起きた事件を再演したいと言いだし、お金でそれを実行しようとする姿は狂人というか怖かった。

最後はもう無茶苦茶です・・・苦笑。

でも、ここまでやると笑えてきた。


映画化も考えられているとか。
これは映像で見るとどんなかんじになるのか、凄く興味があります。


                             ★★★



発行年月:2007年8月


 海に消えた少女の記憶が、今もわたしを翻弄する――。2005年ブッカー賞受賞作。

最愛の妻を失った老美術史家が、遠い日の記憶に引き寄せられるように、海辺の町へと向かう。あの夏の日、双子の弟とともに海に消えた少女。謎めいた死の記憶は、亡き妻の思い出と重なり合って彼を翻弄する。荒々しく美しい、海のように――。カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』をおさえてブッカー賞を受賞した傑作長篇。

                     (新潮社HPより)


ちょっと前の作品。
カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』をおさえて?
そちらも未読ですが、ちょっと興味を覚えて読んでみました。
表紙の絵も好みだったので・・・。


主人公は、マックス・モーデン。
最愛の妻を病気で亡くし、独身で結婚する気があるのかないのか?の娘・クレアと
ともに遠い昔、少年時代を過ごした思い出の海辺の町へと向かう。

そして、少年時代の海辺の町でのことが語られる。
都会から来た一家の双子の姉弟と仲良くなり、グレース家に頻繁に出入りするマックス。
双子は、クロエとマイルス。
マイルスは生まれた時から喋らない。
双子の母親・ミス・グレースに最初は惹かれたマックスは、グレースに近づくために双子と
仲良くなる作戦を立てていたのだ。

この時期の少年が思うこと。性のめざめ。

海辺の町の様子を語る描写が美しい。

少年時代の話に突然、病気療養していた妻・アンアのことが全く別の話のように
語られる。


思い出に残っている景色を鮮明に思い出すって誰にでもあるんじゃないかな?
マックスの場合、そこに強烈な印象を残した双子の存在があるから尚更。
ちょっとしたミステリーも絡んでいたりして・・・。

読みやすく、なかなか面白かった。

カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』も読んでみたい。


                            ★★★
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