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読んだ本の感想あれこれ。
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41gw2x4rH8L__SL500_AA300_.jpg発行年月:2010年10月


元数学科教諭オリーヴの不器用な生き方は、周囲を少しだけ変えていく──。ごく普通の人々がかかえる後悔、苦しみ、喜び、希望。かけがえのない人生を静かな筆致で描く、ピュリッツァー賞受賞作


                     (早川書房HPより)




13の話から成る短編連作集。
主人公は、表題通り<オリ-ヴ・キタリッジ>。

最初の話「薬局」では、まだオリ-ヴがというよりも、オリ-ヴの夫・ヘンリ-・キタリッジの営む薬局を中心に、そこに行き来する人々のことが書かれている。
ヘンリ-が知り合った若い夫婦を自宅の夕飯に招待したり・・・・。

そして次の話からは、キタリッジ夫妻の近隣に住む人々が主人公になっている話が多い。
何らかの関わりが夫妻(特にオリ-ヴ)にあるのだけど・・・。

そして、オリ-ヴという女性のいろいろな性格がそれぞれの話のなかで明らかにされていくのが面白い。

自殺を考えて昔住んでいた場所を訪れた元教え子と再会する場面では、教師らしい優しい言葉をかける。
一方、息子の嫁のことは気に入らず口論になったりする「あんな女、死んじゃえばいいのに」なんて口にしたりもする・・・でも口論の翌日にはアップルソ-スを持っていく。
夫が介護施設に入所すれば、毎日通い、道に倒れている人がいれば、心配で近づき、病院まで付き添ったり・・・・

あ~この女性、いいなぁ~。
目の前で起こっていることに関わらずにいられない人なんだろうなぁ~。

そしてオリ-ヴの冷静な考え方が好き。

最後の話の方では70代になったオリ-ヴ。
夫のヘンリ-は、介護施設で亡くなってしまった。
クリストファ-は再婚し、今度の嫁・アンもちょっと変わってるけど、なかなか愉快でオリ-ヴとも良い関係が築けるかも?

そして、道で倒れているところを助けてあげたジャック・ケニソンとは、なかなか良いかんじ?

オリ-ヴの生活を年を追って描いただけの作品だけど、読む終えると、自分のこれからの人生も淡々としてはいるけど、そこにちょっとした喜びやら驚きやら哀しみやらあるんだろうな・・・・・。
なんて思って、しみじみしてしまった。


この年になって読むから感じるものがいろいろあったなぁ~。
若い人には、もしかしたら退屈な本かもしれないけれど・・・・。



★★★★
 
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51UQ4swgEGL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2011年8月


狡猾で好色なノーベル賞受賞科学者ビアードは、同僚の発明を横取りしてひと儲けを狙っている。彼を取り巻く、優しくも打算的な女たち。残酷で移り気なマスメディア。欺瞞に満ちた科学界とエネルギー業界。ひとりの男の人生の悲哀とともに、現代社会の矛盾と滑稽さを容赦なく描き切る、イギリスの名匠による痛快でやがて悲しい最新長篇。



                                             (新潮社HPより)


いろいろな物語を書く作家だなぁ~。
今回のお話の主人公は、ノ-ベル賞科学者・ビア-ド。
ノ-ベル賞受賞後は、各地の講演など出向くものの、その後の研究成果はいまひとつ。
でも、ノ-ベル賞を受賞した事実があるだけで凄いと尊敬する!
普通ならば・・・・。

この主人公、私生活では全く尊敬出来ない。
5度目の結婚も破綻寸前。
今までの妻たちは、ビア-ドの女性関係のだらしなさに嫌気がさして別れているのだけど、懲りない人。
各地に講演に行ってはその地で女性に声をかける。
どうしたら、ベッドまで連れ込めるか?なんて妄想してる嫌なオヤジ^^;

ついには5番目の妻は反撃に出た。
自分も浮気をしたわけだけど、これがある事件を引き起こす。

自分の浮気は棚にあげ、妻の浮気相手には腹を立てるビア-ド。
まるでお子ちゃまですね・・・。

物語は3部構成で
1部は、ビア-ドの妻の浮気発覚に伴うある事件までの話。

2部は、5度目の結婚もついに終わり、独身の身になったビア-ドのその後。
そして、6番目の妻になる?メリッサとのこと。
仕事の方では同僚の研究成果を盗み、それをなんとか利益の出るものにしようと目論む。
あ~どこまで最低な男なんだろ?

3部では、ビア-ドの両親の話からビア-ドの子ども時代~青年時代の話が書かれ、なるほど~ビア-ゾの血は母親譲りであったのか?と納得。

最低な男だけど、運は良いみたい。
根っからの悪党というわけでもないから、どこか憎めないかんじもあるし・・・・

6番目の妻(?)との間に出来た娘・カトリオナがなにやらビア-ドの生き方を変えてくれそうなかんじだし、5番目の妻の浮気相手が尋ねて来て、告白されたことも、ビア-ドに何かを感じさせたかも?

最後に、ビア-ドのノ-ベル賞受賞時のスピ-チが載っていた。
これだけの言葉をしゃべった人の私生活が今まで読んでいたことなのか?と思うと、なんだか空しいかんじになったけど、案外、世の中、こういう矛盾だらけなのかもしれないなぁ~。

マキュ-アンのブラックなセンス炸裂なかんじの物語でした(^^)


★★★★★
5105AK3P4NL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2001年9月


『朗読者』の深い感動をもう一度。

ベルンハルト・シュリンクが「愛のかたち」を
描いた最新傑作短編集


                     (本の帯文より)



7つの短編からなる本。
どれも深い物があり、さすがシュリンク!!


「もう一人の男」
最愛の妻が病死した。バイオリニストだった妻。
その妻に届く、ある男からの手紙。
そして、その手紙に妻に成りすまし返事を書き、どんな男なのかを探る

「脱線」
ベルリンの壁崩壊後、知り合った東西の男達。
友情を感じ、親交を深めるが段々とある疑惑が浮かび上がる。

「少女とトカゲ」
幼い頃から家の壁に飾られていた少女とトカゲが描かれた絵。
その絵を父親は、ある経緯で家に持ち帰った。
その絵のことは他の人には知られない方が良いと言っていた意味を知る僕。

「甘豌豆」
妻子ある身ながら、別の女性に恋をしその女性との間にも子どもを儲ける男。
それぞれの家を行き来することに疲れた男は、更に別の女性に安らぎを求める。
だけど、いつの間にか女性達が結託して・・・・

「割礼」
ドイツ人の男性がユダヤ人の恋人との関係に行き詰まりを感じ、悩んだ末の決断は
割礼を受けることだった。

「息子」
戦地で、あれこれかつての結婚生活、息子との関係に思いをめぐらす男。

「ガソリンスタンドの女」
以前から見る同じような夢。
ガソリンスタンドにいる女性の夢。
妻とは銀婚式を迎える準備をしていたが、祝うことなど何もないことに気づき
いつのまにか愛は消えて逃げていったと感じる。



どの作品もこうして振り返ると男性目線で書かれた物語だと気づいた。
そして、ドイツ人作家らしいドイツという国が歩んできた歴史のなかにある様々な問題も含まれている。
ユダヤ人とドイツ人。
東西ドイツだった時代を生きた者達。

逃げてゆく愛という表題どおり、あまりハッピ-な内容のものはないけど、何故か読んでいて安らぐという不思議な感覚。
シュリンクのワザなのか?訳者のワザなのか?

読んではずれのない作家さんには間違いないとまだ数冊しか読んでないけど思った!
まだ読んでない作品も読ませてもらおう。


★★★★★
 
 
51ba9r2cFsL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2011年2月


オタク青年オスカーの悲恋と、カリブ海の呪い。ピュリツァー賞・全米批評家協会賞W受賞!

心優しいオタク青年オスカーの最大の悩みは、女の子にまったくモテないこと。どうやら彼の恋の行く手を阻んでいるのは、かつて祖父や母を苦しめたのと同じ、ドミニカの呪いらしい――。英語とスペイン語、マジックリアリズムとオタク文化が激突する、全く新しいアメリカ文学の声。英米で100万部のベストセラー、日本上陸。


                                          (新潮社HPより)

なかなか面白かった!
読むににすっごい時間がかかったけど・・・。

物語はドミニカ系アメリカ人のオスカ-・ワオの青春小説です。
140kgの巨漢でオタクのワオは、女の子に振られてばかり。
でもめげずに好きな子が出来ればアタックする、憎めないけど、ちょっと哀しい。

そんなワオは、母親と姉と住んでいて、ワオの行く末を心配した母親は、自身の故郷であるドミニカに送る。
姉のロラは母親と折り合いが悪かったので先にドミニカに渡っていた。
そこにはワオの母親・ベリを育てたラ・インカが住んでいてワオはラ・インカの元で暮らすようになる。
そして、自身のル-ツ、一族のル-ツを知る。

ドミニカは1930円から31年間、独裁者・トルヒ-ヨによって統治されていたそうで、トルヒ-ヨの残虐性に苦しんだ人々も多かったらしい。
そういう事実をしらなかったので、この書を読んで勉強させてもらった部分が多かった。

そして、ワオの出生に、この独裁者の存在が大きく関わっていたという設定。
女好きで残酷な独裁者・トルヒ-ヨの呪いのようなものを受け継いでしまったかのような、ワオの最期は哀しいけれど、それでもワオは、きっと幸せなときを過ごしたんじゃないかな?と想像できる事実が後からわかり、ちょっと救われた。


物語の途中、かなり膨大な注釈が度々出てくる。
その注釈を読むと、なるほど物語がよりよく判る!
なので、必死に読んだ・・・・・ゆえに一生懸命、読んでもなかなかペ-ジが進まず読了までに時間がかかってしまった^^;

でも読み終えたときは、すごい充実感!

日本の文学にはない面白さがあった!


★★★★
51XgukOf2jL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2011年6月


かつてテロリストだった男が、二十年ぶりに出所した週末。

赤軍派テロを首謀した男が、恩赦を受けて出所した。旧友たちの胸に甦る、失われた恋、裏切り、自殺した家族の記憶。あのとき彼らが正しいと信じた闘争は、いくつもの人生を決定的に損なった。明らかになる苦い真実と、やがて静かに湧き上がる未来への祈り----。
世界的ベストセラー『朗読者』の著者が描く、「もう一つの戦争」の物語。


                                           (新潮社HPより)



映画化された「朗読者」に続き読んだシュリンクの新作。
今度も時代は1940年代かな?
ドイツの赤軍派でテロ活動をしていた男・イェルクが恩赦により刑務所を出てきたところから物語は始まる。

イェルクに親代わりでもある姉のクリスティア-ネが郊外の自宅にイェルクを知る十数人を招いて週末(金曜日~日曜日)をともに過ごす企画をした。

招かれた者の職業はばらばら。
ジャ-ナリスト、牧師、実業家、教師、弁護士、翻訳家などなど。
それぞれの社会的立場からだったり、むかしのイェルクに抱いていた感情からだったり、イェルクにいろいろな意見を述べる。
イェルクのテロ行為自体を直接、言葉で攻める者は殆ど居ない中、
唯一、彼の息子・フェルナンディナンドが厳しく父親を批判する場面が終盤あり、それに対して何ら反論出来ないイェルクの姿が痛々しい。

自分なりの思想を正当化していた彼だったが、息子の言葉は胸に突き刺さるものがあったのか?

赤軍派の事件は日本にもあったけどよくわからない。
なんでそこまでのことをしようとしたのか?

週末の滞在期間を終え、イェルクの元を去って自分達の生活に戻る知人たちをどういう気持ちでイェルクが送ったか?
これから社会に出て生きていかなければならない元テロリスト。
でも最後、息子との関係に少し和解の兆しが見えた部分は希望かな?


シュリンクの書く物語は重たいものが題材だけど、読み応えあり!
まだ読んでない作品も近いうちに読もうと思う。


★★★★
 
 
 
 
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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