人と犬の絆、人間の原罪、
驚異のデビュー作
スティーヴン・キング絶賛、発売忽ち140万部突破の全米大ベストセラー小説。動物文学の新たなる金字塔。
ウィスコンシンの静かな農場で犬のブリーダー業を営むソーテル家の一大サーガ。思いがけない父の死とその真相、母と叔父の接近。居場所を失った息子エドガーは、3匹の犬とともに森に姿を消す──。人と犬との絆、人間の原罪、少年の成長を魔術的に、寓話的に描き、物語の醍醐味に正面から挑んだデビュー作。
(NHK出版HPより)
素晴らしい物語でした!!
700頁を超える長編作品ですが、全く飽きませんでした!
むしろ残りの頁がなくなってくるのが寂しくなったほど!
犬好きの人ならすごく楽しめると思うけど、犬より猫派のわたしでさえ、犬って素晴らしい生き物だな・・・と思った。
主人公は、表題通り、生まれつき言葉を発することが出来ない少年・エドガ-・ソ-テル。
祖父がこの土地を買い取り、犬の飼育や繁殖を行い、それによって生まれたソ-テル犬は誇り高い賢い犬として、世に知られることにまでなった。
エドガ-の父・ジョンがその後を引き継ぎ、母と結婚し、流産を2度繰り返した後、生まれたのがエドガ-であった。
エドガ-は、言葉は喋れないけれど2歳から手話をはじめ、犬とも手話で接し、エドガ-が生まれたときから居た犬のア-モンディンとはいつも一緒に行動し、まるでエドガ-の二番目の母親のよう。
信頼関係で繋がっていた。
平和だったソ-テル家だったのに、少しずつその様子が変わってくる。
そのキッカケになったのは、ジョンの弟・クロ-ドが農場に戻って来たこと。
ジョンとは意見が対立し、口論が耐えない。
そして、突然の父の死。
その死の瞬間、居合わせたエドガ-は、後に、自分が言葉を話せていたら、父親を助けられたのではないか?と自責の念にかられ苦しむ。
母親も父の死を哀しんでいるが、クロ-ドが家のなかに入り込むことを容易に受け入れ、クロ-ド自身をも受け入れているかんじがエドガ-を一層、苦しめる。
そして、父の幽霊と接する。
精神状態がアンバランスになっていくエドガ-。
そして起こしてしまう惨事。
その後、3匹の犬と一緒に家出して森のなかで生活する。
この場面は、哀しく過酷なんだけど、自然を相手に生きるエドガ-と犬たちの様子が生き生きしている。
最初は空腹に苦しむが、その問題も解消し、親切なヘンリ-という男性の元で暫く生活をする。
ヘンリ-とエドガ-たちのやり取りの場面はホッとするものだった。
しかし、再び、家に帰らなければとヘンリ-に別れを告げて家に帰る。
ハッピ-エンドでなかったラストの成り行きにはビックリだった!
いつまでも余韻が残る。
これは、またぜひ時間のあるときに時間をかけて再読したい。
★★★★★
逝ってしまったきみへの追想と祈り----。少年と教師、ひと夏の恋。
追悼式の日、合唱隊が歌い、彼は目を閉じる。夏休みの小さな港町で、少年は美しい教師に恋をした。海辺の出会い、ヨットレース、ビーチドレスと短い黒髪、そしてホテルの夜……織りなす記憶の重なりは、やがて沈黙に満たされる――妻を亡くした巨匠レンツが祈りを紡いだ物語、ドイツでベストセラーとなった清冽な恋愛小説。
(新潮社HPより)
物語は、学校の講堂での追悼式の場面で始まる。
その学校で英語を教えていた教師・シュテラ・べ-タ-ゼンの追悼式。
彼女は、生徒たちに人気があり同僚からも高く評価されていた。
そして、その追悼式のなか、一人の青年・クリスティアンは特別な想いでそこに居た。
先生と過ごした時間を思い出しながら・・・・
一言で言うと高校生と女教師の恋物語を描いたもので、そういう話は結構、過去にも読んだし、物語としてはありがちな設定です。
でも、物語のうしろにある背景が頭に浮かび、それがとても美しい。
海辺が近い場所が舞台で、そこで過ごす二人の姿はロマンチック。
状況として、よくわからない部分もあるのだけど・・・・
例えば・・・シュテラはクリスティアンになぜ、そしてどこに惹かれたのか?
事故の起きたときの状況もちょっとよく分からなかった。
それは、まあ置いておいて
80歳を過ぎてもこういう恋愛話を書けるレンツって、素敵だな。
ほかの物語も読んでみたくなった。
こういう雰囲気のある小説って好き。
海外の作品ぽくて・・・。
1616年、北極海。
たったひとりの越冬。
明けない夜。荒れ狂う吹雪。愛した女の幻影。
一冊の日誌-----。
底知れない悲しみを抱えた男の極北での越冬と魂の救済。
400年前の航海日誌から紡ぎだされた、壮大なデビュ-長編。
(本の帯文より)
この寒い時期に読むと、一段とこの本の世界の冷たく凍えるようなかんじがリアルに伝わって来ました。
物語の主人公は、トマス・ケイヴ。
北極海への捕鯨船に乗り組む。
そして、漁を終え、故郷イングランドに戻るというときに、乗り組み員同士の口論に口出ししたことが元で北極海に一人残ることになる。
そんな成り行きで一人置いていく方もひどいと思ったけれど・・・
ケイヴは、淡々としている。
そして、極寒の地での孤独な1年の暮らしが始まる。
物語の語り部は、寡黙でほかの乗り組み員たちと馴染もうとしなかったケイヴが唯一、打ち解けて話をした乗り組み員のなかでは年少のトマス・グ-ドラ-ド。
名前がおなじというところからもお互いに親近感を覚え近づく二人。
グ-ドラ-ド目線で書かれている部分が多いけど、やはりケイヴが一人で過ごしている場面は壮絶で哀しい。
ケイヴの人物像が段々と明かされ、船に乗り組む前に妻と子どもを一度に失っていたのだとわかる。
そして妻・ヨハンネの幻影が時々、目の前に現れる。
かつて妻と会話した場面が蘇る。
そして自分が彼女に寂しい思いをさせていたことに悔いるケイヴ。
現実に戻れば、厳しい自然のなか。孤独。
普通の精神状態を保つだけでも大変な日々を、なんとか耐える。
元々几帳面なケイヴは、いろいろなことを書き留める。
日誌を書くことで精神の平静を保つ。
なんとか1年を一人で生き、再び仲間が船で迎えに来たが、喜びを顔に出すことはなかったケイヴ。
それから年月が経ち、グ-ドラ-ドも成人し結婚し、ケイヴのことを再び探し再会したいと思いその再会は叶うのだけど、そこで彼が言う言葉
「・・・・あそこへは行くべきじゃなかった」
「神が人間を行かせるおつもりのなかったところへ、俺たちは行ってしまったんだ。俺たちは神を超えてしまったんだよ」
自然の脅威を肌で感じたケイヴの言葉が、とても威厳に満ちている。
何か人間離れしたかんじの人だな。
これがデビュ-作らしいけど、今後の作品も是非、読みたい作家さんだ!
思い出せない、最愛の人の言葉。脳裏から離れない、ある夜の景色。
記憶を保存する装置を手に入れた認知症の老女。ダムに沈む中国の村の人々。赴任先の朝鮮半島で傷ついたタンチョウヅルに出会う米兵。ナチス政権下の孤児院からアメリカに逃れた少女――。異なる場所や時代に生きる人々と、彼らを世界に繋ぎとめる「記憶」をめぐる六つの物語。英米で絶賛される若手作家による、静謐で雄大な最新短篇集。
(新潮社HPより)
6つのお話から成る短編集。
「メモリ-・ウォ-ル」
認知症と診断された74歳のアルマ。
使用人のフェコに連れられて、アムネスティ医師の元に通っている。
壁には沢山の沢山の紙片と数百のプラスチック製カ-トリッジ。
それらはアルマの記憶の断片を蘇らせるものたち。
亡くなった夫・ハロルドとの思い出。
表題作の作品は、一番最初。
認知症を患う女性が、医師によってされる治療がなんとも不思議なもの。
頭に埋め込まれたものから記憶を回収されそれはカートリッジに収められる。
そして自宅で遠隔記憶刺激装置により、カ-トリッジを頭にはめ込み映像をみるように記憶が再生される。
ちょっとSFの要素のある物語。
次の「生殖せよ、発生せよ」は不妊治療を受ける夫婦の物語。
自然に妊娠するって、凄い神秘的なことなんだなぁ~と改めて思った。
わかったつもりでいたけれど・・・・。
「非武装地帯」は戦地から手紙を送り続ける息子のはなし。
かもめの群れの話やら鳥をみて思うことなどを綴られている。
そして、あるひ、傷ついたツルを見つけ地雷の恐怖に怯えならがもなんとか助けた話なども綴る。
すごく短い話だけれど、なんだか胸に響くものがあった。
「一一三号村」は、ダムが出来ることで、水に沈むことが決まっている中国の村人たちの様子を描いたもの。
村の自然の美しい情景が目に浮かぶような箇所で村一番の長老の言う言葉が印象的。
<これが見納めだと分かっていると、その場所は違って見えるのだよ・・・・二度と人目に触れることがないと分かっていることが、その場所を変えるのかもしれん>
「ネムナス川」両親を15歳で相次いで亡くした少女・アリソンは、リストニアのおじいちゃんの元で暮らすことになる。
家のそばには、ナムナス川が流れていて、昔はチョウザメがよく釣れたと聞く。
チョウザメ釣りに挑戦するアリソンとおじいちゃん。なんだかほのぼの。
隣(?)に住んでるサボおばあちゃんも可愛い。
彼女がずっと幸せでありますように・・・・
「来世」は、ちょっと重い物語の背景。
ナチスドイツが占領下にあった時代を生き延びたユダヤ人のはなし。
そこからなんとか逃れアメリカに来た少女がやがて、孫に囲まれて暮らしている。
過去の思い出と現在を交互に語りながら進む。
暗く苦しい過去も、子どもたちが新しい世界につくりかえてくれたら、嬉しい。
全然、違う雰囲気のお話ですが、そこにあるのは、「記憶」の物語。
数々の賞をもらっているのも納得!!
訳者のあとがきに、著者は長編作品にとりかっかっているとあった。
早く、完成して翻訳されたものが読みたいな~。
歴史的な悲劇から、
希望に溢れる神話が生まれた─
全米ベストセラー、人気若手作家による9・11文学の金字塔、ついに邦訳。9歳の少年オスカーは、ある鍵にぴったり合う錠前を見つけるために、ママには内緒でニューヨークじゅうを探しまわっている。その謎の鍵は、あの日に死んだパパのものだった……。全米が笑い、感動して、心の奥深くから癒された、時代の悲劇と再生の物語。ヴィジュアル・ライティングの手法で編まれる新しい読書体験も話題に。
(NHK出版HPより)
雑誌にあった本の紹介で知り、気になって図書館で借りました。
かなり厚い本です。
主人公のオスカ-少年が9.11で亡くなった父親の遺品のなかから見つけたもの。
鍵と赤いペンで書いた「ブラック」の文字。
この鍵は何の鍵?
ブラックとは?
9歳にしては、しっかりしてるというか、賢いしマセテいるオスカ-。
いろいろなブラックさんを尋ね歩き、父親を知っているか?聞いて行く。
それと鍵が合う鍵穴も捜し回る。
時には笑える。でも何ら手がかりがつかめず・・・
それでもまた探し続けるオスカ-の姿がいじらしい。
そして、物語は、オスカ-の祖父母の若い頃の話にも広がる。
アメリカがかつてしてきた戦争のこと。
そのなかには、広島の原子爆弾投下のことも出てきて、ドキッとした。
父親を亡くしたオスカ-の物語であると同時に、世界中のある日、突然、命を奪われた人やその人を大切だと思っている人たちの物語でもある。
読者が自分の立場に置き換えて読み進めていける。
文章のなかにも今までなかったような手法が使われていたり、写真も豊富で視覚的にも刺激的。
ラストのイラストたち(写真)にも魅せられた!
あとがきを読んで、これ今年映画公開されるとか?
トムハンクスとサンドラブロックがオスカ-少年の両親役!?
わ~絶対に見たい!!!
12 | 2025/01 | 02 |
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;