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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2013年3月

小さな嘘が照らし出す、かけがえのない人への秘められた思い。十年ぶりの短篇集。

避暑地で出会った男女。疎遠だった父と息子。癌を患う元大学教授。人気女性作家とその夫。老女とかつての恋人。機内で隣り合わせ、奇妙な身の上を語り続ける男――。ふとしたはずみに小さな嘘が明らかになるとき、秘められた思いがあふれ出し、人と人との関係が姿を変える。ベストセラー『朗読者』の著者による、七つの物語

                    (新潮社HPより)




7つの短編集。
それぞれ、読んだあと余韻を残すような物語でさすがシュリンク!と思った。


<シ-ズン・オフ>
オ-ケストラでフル-トを演奏しているリチャ-ドは、シ-ズンオフの
海辺のペンションに宿泊する。
そこでスーザンに会う。
彼女は、そのペンション近くの屋敷に滞在中という。
2人は恋に落ちるが、ペンション経営の夫妻からス-ザンは自分とは違う
裕福な暮らしをしている人で、安アパ-トで暮らす自分とは雲泥の差の
環境にいる人だと知る。


<バ-デン・バ-デンの夜>
恋人のアンには内緒で、女友達・テレ-ゼと自分の書いた戯曲の初演を見に行き、
共にホテルで一夜を過ごす。が・・・2人の間にはその夜、何もなかった。
しかし、アンにそのことがバレ、何もなかったことを告げるが「嘘つき」と
言われてしまう。やけになり、別の女性一夜を共にし、関係を持ち
テレ-ゼとは一緒に寝たと嘘をつく。するとアンは、テレ-ゼに確認して
嘘じゃなかったことがわかったと言う。


<森のなかの家>
作家夫婦は半年前に森のなかの家に引っ越してきた。
今は、妻の作家としてのキャリアは上がり、夫の方は下り坂。
もうすぐ妻の書いた作品が全米図書賞を受賞しそうだというとき
夫は家の全ての通信手段を意図的に絶つ。



<真夜中の他人>
飛行機で隣になった男性から話しかけられる。
夜だから、寝たい気持ちもあったが、なんとなく話に付き合うが
男の話は次々に「え?ほんと?」という内容に。


<最後の夏>
末期癌を患っている男。
もういっその事、楽に死のうと安楽死の準備をしながら
一族と親友を別荘に集め、最後にみなと楽しい時間を過ごし死のうと
お膳たてをするけれど・・・・


<リュ-ゲン島のヨハン・セバスチャン・バッハ>
父親とバッハの音楽フェスティバルに出かける息子。
父親とは一度も話しあったことがなく、父親のことが全く理解できない。
この機会に父親と話し彼を理解しようと思うのだが・・・
会話も途切れ途切れ。
大好きなバッハのことはよく語る父。
しかし、やはり父の心のうちはよくわからない。
けれど・・・初めて父の涙をみる。


<南への旅>
施設で暮らす年老いた女性。
子ども4人と孫たちは、みなそれぞれ立派に成長しているけれど
あるときから、愛情を感じることが出来なくなっていた。
誕生日には皆が集まり祝ってくれた。
そこでふと孫が口にした別れた夫の、後の妻のこと。
その場が嫌な雰囲気になり誕生会は終わる。
翌日、熱を出すと孫のエミリア(大学生)が見舞いに来てくれる。
そして、エミリアに一緒に南への旅をしてほしいと頼み
2人は南へ。
かつての恋人との思い出の地。
そのことを話すとエミリアはそのかつての恋人と再会の機会を作る。
捨てられたと言って来たけれど、本当は自分が捨てたんだと
そのときの気持ちを思い出す。


どの話も、主人公たちの気持ちが痛いほど伝わって来て、切ないような
寂しいような複雑な気持ちを共感しました。
本当に心理描写に長けた作家さんだと思います。

嘘と言っても、いろいろ。
自分を守るためにそう信じ込んでいるものもあったし・・・・


映画化されるという「週末」、楽しみです!
近くの映画館で観られるかなぁ~?


                          ★★★★★

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51eqkiPzO2L__SL500_AA300_.jpg発行年月:2012年10月


きっと大丈夫。運命は私たちを脅かすことはあっても本当の不幸からは守ってくれるはずだから。

ワロージャは戦地から、サーシャはモスクワから、初めて結ばれた夏の日の思い出、戦場の過酷な日常、愛しているのに分かりあえない家族について綴った。ワロージャの戦死の知らせを受け取った後も、時代も場所も超えて手紙は続く。二人はそれぞれ別の時代を生きている、再び出会う日まで。ロシア・ブッカー賞作家の最新長編。


                                         (新潮社HPより)



不思議な文通形式の物語。

ワロ-ジャは、1900年の中国でロシア兵として義和団事件の鎮圧に参加している。
サ-シャは、現在のモスクワに住んでいる。

しかし、2人はかつて恋人だった。
手紙にもそれぞれの2人で過ごした思い出の出来事を書いている。

ワロ-ジャは戦地で、毎日仲間が死んだり、怪我をしたり自分もいつおなじ様な目に
遭うかわからない状態で必死に生きている。
生きていることを確認するためにもサ-シャへの手紙を書き続ける。
戦地の惨いことも沢山書かれるけれど、生きたい!
再びサ-シャに会うために・・・。


一方のサ-シャは、平和なモスクワで暮らしていて日常のあれこれを書く。
そして、妻と離婚した男と結婚。
その男の元妻や娘のことも手紙に書かれる。
サ-シャはやがて妊娠するが、流産してしまう。



2人の手紙は交互に出てくるけれど、途中から、相手の手紙はちゃんとお互いが読んでいるのだろうか??
と疑問が生じてくる。

恋人同士なのに、サ-シャが結婚したり、流産したりしたあとのワロ-ジャの手紙には
それに関することは出てこないし・・・・

サ-シャの手紙にもワロ-ジャの安否を気にかけるような内容は出てこない。


????疑問がいっぱいの2人の手紙。

でも、それぞれの手紙の内容には、惹き付けられる。
戦地にいるワロ-ジャの方が生きることに向けての発言が多いように感じた。


それに反してサ-シャの方は日常のあれこれを書いているけれど、
流産したり、両親の死など常に何か心を痛めて疲れている。



2人に共通するのは、空想好きだということかな?
ワロ-ジャは本当の父親がいつか自分の前に現れることを思い、あれこれその場面を思い描く。

サ-シャは、自分にはもう一人の自分そっくりの双子の姉がいて、その子は意地悪で
時々現れるのだと言う。

お互いが幼いときの思い出話を語る部分が面白かった。


不思議な物語で、感想を書きにくい。
けれど、日本の作家にはない雰囲気の物語。
読んでいる最中、浸れる感覚がいい。

やはりたまには外国の作家の物語を読みたい。


                                          ★★★★



51FzGMSRNRL__SL500_AA300_.jpg 発行年月:2011年3月

2011年アストリッド・リンドグレーン記念文学賞受賞、朝日、読売、日経、毎日 /全国学校図書館協議会選定図書


                
(河出書房新社HPより)




文字がひとつもありません。
読み手の想像力で物語を頭のなかで作りながら頁をめくる本です。

けれど・・・・おおよそのことはわかります。
ちょっとSFっぽいかんじですが、見知らぬ土地に開拓者として家族を残し、
一人で赴く男性。
見慣れない奇妙なことばかりで戸惑いつつも、
身振りで手振りで何とか意思疎通が出来、
新しい土地でなんとかやってけそうだと判断した男は、
残した家族を呼び寄せる。
そんなかんじかな?

見たこともない景色がたくさん。
文字もないのですが、色調がセピア色なのも、なんだかとても幻想的。

そして、絵のひとつひとつがとても丁寧な線で書き込まれているので、
サッと最後まで見た後はゆっくり1頁ずつ観察するように眺め、
そうすると先に気づかなかった物に気づいたりする楽しみもありました。

なにやら変わった動物(?)も出てきて、男の元に寄り添うように行動する
犬のような白い生き物(表紙絵にもありますが)がすごく可愛らしく思えました。

大型の本なので、見ごたえもあります。

ほかの作品もあれば、見たくなりました!

素晴らしい本だと思います!!


★★★★★
 
51ZV8SGZS5L__SX230_.jpg    発行年月:2001年10月


   ぼく、夢をみているんだろうか、それとも……。
   空想少年ピーターのスリリングでちょっぴりせつない秘密の冒険。
   ブッカー賞作家が贈るとっておきの物語。


                         (中央公論新社HPより)




マキュ-アンの作品は幾つか読んでどれもかなり好みです。
ちょっと重苦しいかんじの物語でしたが、児童書を書いていると知り、興味があって
図書館で検索し借りて来た次第。

主人公は10歳の少年・ピ-タ-。
両親と7歳の妹・ケイトと、母親が高校生の頃から可愛がって飼っている
猫のウィリアムと暮らしている。

ここでは7つの冒険の話が短編連作の形で進行。
ピ-タ-は、感性が豊かで、目の前の情景からふと何かを思いつき、そうすると自分の世界のなかでの冒険が始まってしまう。
授業中であったり、動かないで座っていてと頼まれているときであっても・・・・・。
なので、他人からは「何を考えているのかわからない」と言われてしまうのだけれど・・・。

どのお話も良かったけれど、二番目の<ネコ>が一番好きだな。
ちょっと切ないかんじもするけれど、ネコのウィリアムと体が入れ替わってしまうお話。
ウィリアムが亡くなったとき、家族が哀しむなかで「新しい冒険に出発したんだよ」と言ったピ-タ-。
そしてウィリアムに感謝する。
優しい男の子だなぁ~。

ほかの話にも違うものに変身するお話がありますが、そういえば子どもの頃は
「もしも自分が〇〇だったら・・・」と想像して楽しむことがあったなぁ~なんて思ったりして
ちょっと懐かしい気持ちにもなれた。


著者のあとがきもよかった!
著者が言うとおり、子どもにもわかる文章で大人が楽しめる物語でした!

ますますマキュ-アンが好きになれた気がします。


★★★★★
51da0g--m4L__SL500_AA300_.jpg 発行年月:2012年5月


彼女の波瀾万丈の人生が、全くの嘘だったとしたら!

ジェーニャの家に毎晩やってきては、ポートワインを飲みながら辛い人生を涙ながらに語るアイリーン。ところがその話はほとんど嘘。彼女は結婚したことも子供を亡くしたこともない。真実を知り打ちのめされるジェーニャ。だが嘘にも効用があって……。もう一人の自分の物語を生きる女たちの、面白く哀しくときに微笑ましい人生。


                                         (新潮社HPより)


主人公・ジャ-ニャの関わる女性たちのお話6つ。
最後の話は、ジャ-ニャ自身のこと。
女たちはいろいろな話をジャ-ニャに聞かせてくれるが、後々わかるのはその話には嘘が多いということ。

<ディアナ>
4人の子どもを産んだけど皆亡くなってしまったと語ったアイリ-ン。

<ユ-ラ兄さん>
綺麗で可愛い女の子ナ-ジャはいろいろな話をしてくれるけれど、その大半は嘘だと周りの大人たちは気づいている。
一番よくお話に登場するのは、ユ-ラ兄さんのこと

<筋書きの終わり>
いとこの子どものリャ-リャは13歳でジャ-ニャの息子と同い年だけど、妻子あり画家と恋愛関係にあるという。

<自然現象>
高齢の女性・アンナはジャ-ニャが大学院生のときの先生。
ある日、高校生のマ-シャは公園のベンチでたまたま隣に座っていたアンナと知り合う。
聡明そうなその老婦人から詩の話を聞き、自身の詩だと幾つかを朗読してもらう。
感心しきりのマ-シャだったが、アンナが亡くなったあと、それは既に発表されている著名な詩人たちの
作品だったと知る。

<幸せなケ-ス>
ジャ-ニャが学問に見切りをつけテレビ界で仕事をしていたときのはなし。
ドキュメンタリ-映画のシナリオを手掛けた経験を買われて出稼ぎのロシア人娼婦の私生活を
ドキュメンタリ-として放送するという企画に雇われる。
そして娼婦たちのいろいろな話を聞く。

<生きる術>
ジャ-ニャ自身の物語。


5つの話はジャ-ニャが聞き役という感じで出て来る女性たちのいろいろな嘘の話が語られる。
そして最後は、ジャ-ニャ自身が物語の中心。
学生時代は勉学に励み、かなり成績もよかったようだけど、あることをキッカケに学問の世界から身を引く。
このあたりは、なんだか著者自身の経歴に被る。
自分が接した女性たちの話には嘘が多かったけれど、そこには誰かを貶めるような悪意はない。
自分の生きるため、前に進むためについている嘘が多いかんじで、ジャ-ニャ自身も嘘をつかれたことを特に気にしてはいない。
そして、最後の<生きる術>では、ジャ-ニャ自身がいとこの子どもリャ-リャが語る悲劇の主人公に酔ってるようなお喋りに救われて自分自身も強く生きていこうと思う。

物語は、時代を追って流れていて最初の話のころは、まだジャ-ニャも35歳と若く息子のサ-シャは3歳で癇癪持ちで苦労していたのに最後の話では、優しい大人に成長した様子が読み取れた。

物語は20年間くらいの時間の流れ。
舞台のロシアもチェチェン紛争などがあったりと激動の時代だった。
そういう時代背景もよく現している物語でもあったと思う。

海外の物語は、その時代のその国を知ることが出来るのも興味深いところだな・・・。


                                       ★★★★


 
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
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