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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2025年10月

長いスランプに陥った小説家はやけっぱちになり、唐津を旅することに。
陶芸体験をした窯元の夫婦から、水神にまつわる不思議な伝承を聞く。
今でいう「難民」であったという流浪の水神は、戦国時代、
いかにして秀吉の朝鮮出兵を止めようとしたのか……。
『かたづの!』の著者が、かつてないスケールで
歴史と現代を深く結びつける長篇小説。


                (新潮社HPより)




秀吉(猿)の朝鮮出兵をなんとかして止めようと奔走する水神たちの話を

小説家が旅した唐津で、とある陶芸家夫婦(ワサブローさんとナミエさん)から
聞く先祖から言い伝えらえてきたものだと聞く話。


秀吉が猿や家康を狸なのは、わかっているからすんなり理解したけれど。。。
肥後、宇土城城主・小西行長を魚屋(ととや)
加藤清正を虎之介として出て来るので、ちょっと「あれ?誰だっけ?」
と慣れるまで読むスピードが上がらず・・・。



水神(河童)たちも沢山でてきて・・・・
千利休と親しくなった、休利(キュウリ)、
小西行長と共に朝鮮に渡り、成り行きを見守る、ニタ
明の医師・許義徳と接触するカイ

戦の話と並行して、陶工の娘・銀非(ウンビ=キムヒともいう)と
親しくなった水神のスズの話も重要。
銀非はスズに別れのとき手渡した小ぶりの茶碗。
他にも銀非が焼いた茶碗は、茶人たちの間にも価値あるものとして茶室に
置かれていた。


秀吉が戦を朝鮮に向けているという時、銀非の器たちが一斉に揺れ始め
水神たちは、いち早く、その危機をしる。


水神たちのルーツである場が戦場になることは、今もその地にいる同胞たちの
危機。
どうしたら、戦を止めさせられるか?

水神会議が開かれ、水神たちは、それぞれ、あちらこちらで戦を止めるよう
働きかけてくれそうな人間と接触する。



史実でも朝鮮出兵は止められないことだと、わかっているのだけど
水神たちの必死さが健気で、本当に秀吉が大嫌いになる。
元々、好きじゃないのだけど・・・・(^^ゞ



表題の「水は動かず芹の中」は芥川龍之介の
「薄曇る水動かずよ芹の中」という文章からとっているらしい。

物語のなかで作家がサワタローさんに案内されて散歩に出て
芹が群生している場所に。
男性が芹を摘んでいて、少しわけてくれる。
芹を摘むは徒労といううたことばだとも教えてくれる。
身分の高い女性に片想いした下僕の実らぬ恋からの逸話から来たことばと。


小説家がサワタローさんたちと交流が続くが、2024年夫婦は朝鮮の白磁を勉強する
ため韓国に移住したとはがきが来る。
サワタローさんの居た場所に懐かしさもあり訪ねると、別の陶芸家が
新しい家で住んでいて、サワタローさん夫婦のことは全くしらないと。

記憶を頼りに芹の群生地に行くと、あのときの芹摘みの男性がいて
「河童はもういないんだよ」と。


最後に何か、不思議な余韻を残して終わる物語。


最近、なんだか河童絡みの物語が多いのは、偶然なのか???




                    ★★★★

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発行年月:2023年4月


雑誌「ゆうゆう」に5年間にわたり、現在も連載中の「羊のところへはもどれない」に加筆し、時系列に1冊にまとめる。執筆活動を続けるなか、著者自身が、50代になって変化した体調、かわらぬ旅やグルメへの好奇心、コロナ禍で変わった自宅での過ごし方、親との関係性など、小説では味わえない、作家の素顔が垣間見える本に。中島ファンだけでなく、ゆらぎやすい40代以上のこころを軽くしてくれる本。タイトルの「小日向(こひなた)」は、この連載中に、著者が住んでいた自宅があった文京区の地名。体やこころに不調があったとしても、「小さくとも、日向の明るいほうを向いて」生きるきっかけをくれる。帯コメントはかねてより親交のある俳優・室井滋さんにいただいた。


                     (主婦の友社HPより)


先日読んだ<坂の中のまち>で、出てきた<小日向>が表題になっているので
その界隈での話を集めたものかと思っていたら・・・ちがった。
もっと広く海外の話まであって、行動範囲が広いなぁ~と思う。

お姉さんはずっとフランス在住らしい。
そして姪っ子さんは日本の大学で学び、今はファッション関係のデザイナーとして
働いているとか。


中島さん、ずっと独身だと思っていたけれど、籍はいれたのかはわからないけれど
同じような文章を書く仕事をしている方と30歳過ぎから付き合い50歳くらいで
一緒に住んでいると。
夫婦別姓がOKになったら籍を入れようと書かれていたから、もう夫婦になったのかな?


物語も良いけれどエッセイも楽しかったなぁ~。


お薦めの台湾作家さんの本、読んでみたいな。
・歩道橋の魔術師
・自転車泥棒
著者は呉明益  訳者は天野健太郎

メモしておこう



                      ★★★



発行年月:2024年11月


「隣に座るって、運命よ」ずっとここにいたくなる、不思議系ラブストーリー
「隣に座るって、運命よ」
文豪ひしめく坂だらけの町の、不思議な恋の話。
大学進学を機に富山県から上京した、坂中真智は、おばあちゃんの親友・志桜里さんの家に居候することになった。
坂の中にある町――小日向に住み、あらゆる「坂」に精通する志桜里さん。書棚には「小日向コーナー」まであり、延々と坂について聞かされる日々が始まった。
ある日、同級生の誘いで文学サークルに顔を出すことになったが、集合先のアパートは無人で、ちょっと好みのルックスをした男の子が一人やってくる。
一緒に帰ることになった真智に、彼は横光利一の『機械・春は馬車に乗って』を「先生の本」といって渡して来、米川正夫、岸田國士、小林秀雄がいまも教鞭をとっているかのような口ぶりで……
ひょっとして、この人、昭和初期から来た幽霊なのでは?
江戸川乱歩『D坂の殺人事件』の別解(⁉)、
遠藤周作『沈黙』の切支丹屋敷に埋まる骨が語ること、
安部公房『鞄』を再現する男との邂逅、
夏目漱石『こころ』みたいな三角関係……
風変わりな人たちと、書物がいろどる
ガール・ミーツ・幽霊譚
目次
フェノロサの妻
隣に座るという運命について
月下氷人
切支丹屋敷から出た骨
シスターフッドと鼠坂
坂の中のまち


                     (文藝春秋HPより)


読みながら、「あれ?この話、読んだことある!」と気づく。
そうそう!前に読んだアンソロジー「いつかアジアの街角で」に登場した
真智の話なんだ!
もっと続きが読みたいと思っていたから嬉しかった♪

富山の実家から東京の大学進学のために上京し、祖母の親友だという
志桜里さん(72~73歳)の家に下宿する坂中真智。

大学の講義でとなりに座った「よしんば」と仲良くなり
誘われた文芸サークルの参加することになり、出かけた先で知り合った別の大学の
永福颯太。母親が台湾人で小学校までは台湾で暮らしていたという。

最初の出会いから、なんだか楽しいふたり。

二人の物語が続いていて嬉しい。

志桜里さんが実は本当の祖母だという事実。
真智の母親・珠緒は志桜里の親友・澄江に実の娘を育てて貰うことになった
のだけど、その経緯とか、なかなか凄い話だった。
でも、そうしたことが正解だったんだと感じた。

東京の下宿先は小日向。
周りには、坂が多く、文豪たちも沢山、住んでいたという。

颯太と一緒に謎のおじさんの行きたいという場所まで案内する場面は
ちょっと面白かった。
あのおじさんは、何処に何の目的で行きたかったのか?
謎のまま。


エピローグでは大学卒業後の真智と颯太。
友達のよしんばと金子泉。
それぞれ自分たちの進む道へ向かっていったんだな・・・・

真智と颯太のその後の話もまたいつか読めるといいな。


東京の地理に詳しかったら、もっと楽しめたんだろうな~。


中島さんの次の「小日向でお茶を」を図書館で予約中。
近いうちにそちらも読むのが楽しみ♪




                      ★★★★



発行年月:2024年3月


作者・編者ともに不詳、ミステリアスでユーモアに溢れる日本最古の短篇物語集『
堤中納言物語』。
中島京子による名訳により生き生きと蘇る「可笑しみ」を堪能できる10篇を収録。


                       (河出書房新社HPより)




堤中納言物語というので、紫式部の曾祖父の物語かと勘違いしていた(^^ゞ

巻末の解題で陣野英則さんが
10編の物語をひとつに包んだという意味で実在する堤中納言のなまえに
結び付けて、この短編集のタイトルにしたのではないかという推察を
支持したいとある。

なるほどね~これを10篇にまとめた編者はなかなか、ユーモアのある人だなと
感心。
それが誰なのか?は未だわからないそうだけど・・・・


10篇のお話、それぞれが面白かった。
貴族たちのことを書いているのだけど、色々な意味で人間味があって・・・・
優美な世界で品行方正というわけではないのがいい。
クスッと笑えたり、微笑ましく感じたりと
中島さんの訳もいいんだろうな~とても読みやすかった。

表紙は、<虫好きのお姫様  原題:虫めづる姫君>
蝶がすきというのは、理解できるけれど、その幼虫である毛虫にも愛情たっぷり
「毛虫が思慮深そうにしている姿って、心打たれるわね」と。
手の平に乗せて可愛がり飽きずに見守っている。と

変わったお姫さまだけど、その純真な様子が微笑ましい。


もうひとつ微笑ましいな~と思ったのが
<貝合  原題:貝合>
のちの時代の貝合わせは、左右の貝を伏せたまま合わせる遊びだけれど
この平安時代の貝合わせは、左右それぞれが美しいものや、変わった紋様の貝を
出し合って競う遊び。
姫君に仕える幼い童たちが姫様のために勝つための貝を必死に探している様子を
そっとみている蔵人少将。そして陰ながら応援する様子が書かれていて、
童たちの様子も可愛らしく、それを応援する蔵人少将の優しさも微笑ましく
感じるお話ですきだな~。


NHKの「光る君へ」を見ていたので、頭のなかで物語を映像化しながら楽しめた。



                      ★★★★★



発行年月:2024年3月


30年ぶりにアメリカから帰国し、武蔵野の一角・うらはぐさ地区の伯父の家にひとり住むことになった大学教員の沙希。
そこで出会ったのは、伯父の友人で庭仕事に詳しい秋葉原さんをはじめとする、一風変わった多様な人々だった。
コロナ下で紡がれる人と人とのゆるやかなつながり、町なかの四季やおいしいごはんを瑞々しく描く物語。

               (集英社HPより)




楽しかった!
大学で教える田ノ岡沙希(52歳)。
従弟の博満から勧められて空き家になっていた伯父の家に暮らすことに。
伯父は施設に入所していて、コロナ禍で面会は限られている。

伯父の友人だった秋葉原さんがちょこちょこ庭仕事に訪れるのだが
最初は不審者だと勘違いして警察に通報してしまう・・・^m^
一言、声を掛ければよかったのにね・・・笑



自分の研究室に訪ねてきた女子学生・亀田マサミに自分もこの大学に
通っていたから「先輩」と呼んでくれていいよと話し、その代わりに
「パーシー」と呼ばせてと・・・・ああ、最高~♪
後日パーシーが連れてきた友達・水原鳩は「パティ」と呼ぶことに・・・。


大学のコピー機で顔を合わせ親しくなった来栖は日本近現代史が専攻。
その連れ合いという猿渡くんとも友好関係を築き、人間関係が広がっていく
様子が楽しい。


伯父の家の庭で採れる野菜や植物の話も面白い。

秋葉原はあけびの商店街で親がやっていた足袋屋(丸秋足袋店)を
妻の真弓とやっている。
共に70代の夫婦だけど、3年前に結婚したからか仲良し。
秋葉原は父親が亡くなり寂しくて初めて結婚したとか。


終盤あたりでアメリカで結婚して別れた元夫・バートが沙希の前に現れ
どうなる?と思ったけれど、あっさり挨拶だけ(謝りたかったと)で
去ってしまうのは拍子抜け。
まあ、こじれるのも嫌だからこのくらいの関係がいいか?


東京の武蔵野辺りを知っていればもっと雰囲気がわかるんだろうな~。
商店街が近くにある暮らしは、憧れるけれど、この先、どうなっていくのかな?
続編あるかな?


マトリョーシカは日本がルーツだということは知らなかった!
うはらぐさも後で調べてみよう。



                    ★★★★★
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