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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2024年7月


舞台は帝国ホテル。じんわり心が温まる、42編のショートストーリー
母に教わった「バーの味」、夫婦で訪れた憧れの上高地……。
全国3か所の帝国ホテルを舞台に織りなす、めくるめく部屋の物語。
帝国ホテル発行の会報誌「IMPERIAL」で11年間にわたって連載した、42編のショートショートを一冊にまとめました。
幻想的な夢の世界を描くものもあれば、現実の夫婦を描いたものもあり、また過去と現在を行き来して語るものも。42編すべて趣向の違う、角田光代さんの幅の広さを思い知る短編集です。
1話5ページで読める短い文章量ながら、じんわりと心が温まり、時には泣け、時には笑えるストーリーが詰まっています。
(収録作)
クロークに預けたままの、亡夫の荷物。夫の秘密がそこにあるのか――開いた鍵の先に、妻が見たものは(秘密を解く鍵)
半年に一度しか会えない小学校6年生の娘。連れだってブフェに行くも、娘はなかなかマスクを外さない(父と娘の小旅行)
窓から射しこむ朝の光、錆びた流し台にしたたる水滴の音――ホテルで眠る夜、どこかで出会った部屋たちの夢をみる(表題作・あなたを待ついくつもの部屋) 
他、全42編

                  (文藝春秋HPより)





ひとつひとつの話は短いけれど、ちゃんと物語があって、それは素敵なものばかり。

ホテルは3か所?
上高地と東京はわかったのだけど・・・・(^^ゞ

ホテル利用することが滅多になくなってしまったけれど、若い頃はランチで
利用したりしたなぁ~。

あとは、結婚式を挙げたり、友達の結婚式に呼ばれたり。
もう考えたら10年以上、ホテルには足を運んでいないかも・・・。

でも、きっと利用したことのあるホテルに行けば、そこでの思い出が
この物語の主人公たちのように蘇ってくるだろう。


亡くなったひとを偲んだりする話も結構、あったな。
全体的に温かい気持ちになれる話が多く、楽しい1冊だった。



                  ★★★
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発行年月:2024年2月


口さけ女はいなかった。恐怖の大王は来なかった。噂はぜんぶデマだった。一方で大災害が町を破壊し、疫病が流行し、今も戦争が起き続けている。何でもいいから何かを信じないと、今日をやり過ごすことが出来ないよ――。飛馬と不三子、縁もゆかりもなかった二人の昭和平成コロナ禍を描き、「信じる」ことの意味を問いかける傑作長篇。

                   (新潮社HPより)



1967年~2022年までのことを二人の男女の日常の様子から語る。


柳原飛馬は、1967年に生まれた。
両親と兄との家族。しかし、小学6年のときに母親が亡くなる。


もう一人は、望月不三子(旧制・谷部)1967年当時は高校生。
父親が急死し、大学進学をあきらめ製菓会社に就職。
上司の勧めで見合いし結婚。


二人の生活が交互に語られるが、望月不三子の方が衝撃的。
無頓着な母親に育てられ、自分はしっかりと家事もしたいと
仕事を辞め、専業主婦になり、夫の健康も考えて玄米食や野菜中心の食事を
作るが、義母からは「白米を食べさせてあげて」と言われてしまう。
子どもが生まれると、その子の食事作りに集中し、夫の食事とは別メニューに。
子どもが小学校に上がると、食物アレルギーがあると虚偽の申告をして
給食ではなくお弁当持参に。
最初は、従っていた娘も成長するに従って反抗し、家に帰らなくなる。


一方の飛馬は、大学卒業後は、区の職員になり結婚。
が・・・3.11後に仕事で復興支援に赴き、そこで出会った以前少し興味が
あった無線が災害対策の本部で役立っていることが嬉しく、ボランティア活動に
はまり、そのことで妻と口論。
妻はツイッターでみる嘘の情報を鵜呑みして、それを指摘してまた口論。
二人の関係がぎくしゃくし、離婚。



小学生の頃の最大の噂は1999年のノストラダムスの大予言。
ここに出てくる、コックリさんや口裂け女。
自分は、全く信じてなかったし、1999年の予言も、みんなで死んじゃうなら
それも仕方ないな・・・くらいにしか考えてなかった(笑)
物語のなかで、不三子の妹。仁美だったかな?
「ノアの方舟に乗って助かってもみんなが居なくなっちゃう世界で
生きていていくほうがいやだ」みたいな発言。
そうそう!とその考え方に共感した。

何かを信じてすがっているのが方舟だとすると、それに乗り続けていくことが
果たして幸せなんだろうか?と考えてみることも大切なのかも。


2020年にはコロナが大流行して、ワクチンを接種するか否かがまた問題に。
これは、まだ正解がわからない。
何十年後に正解がわかるのかな?


不三子と飛馬が終盤、「子ども食堂」に関わるスタッフとして出会う。
二人とも人間としては、基本は優しくて良い人。
二人がそれぞれ、これから先の人生、穏やかに過ごせるといいな。


結構、読むのに時間がかかった。
二人の日常が交互に語られていくだけなので、少々退屈だったし。
それでも何となく、角田さんのメッセージは伝わってきたかな?



                     ★★★



発行年月:2022年2月


あきらめた人生の、その先へ――片足の祖父、学校に行けなくなった甥、〝正義感〟で過ちを犯したみのり。小さな手にも使命が灯る、慟哭の長篇小説。「今、だれもがスタートを待っている」周囲の人々が〝意義ある仕事〟に邁進する中、心に深傷を負い、無気力な中年になったみのり。実家に届く不審な手紙、不登校になった甥の手で、祖父の過去が紐解かれるとき、みのりの心は、予想外の道へと走りはじめる。

                    (中央公論新社HPより)


時代や語り手が変わりながら進むので、少し戸惑うけれど、段々慣れて
読み応えもあり、面白かった。

主には38歳で2つ年上の夫・寿士と東京で暮らす山辺みのりと
香川県で暮らしているみのりの祖父・多田清美(90歳代)の過去と現在を
それぞれの語りで。


みのりの大学生時代の話や、清美の戦地での体験談、
段々、わかる清美のこと。
戦争がなかったら・・・

そして現代では、コロナが世界的に蔓延。
コロナさえなければ・・・ということも色々。


清美の青春時代の話がもっと深く知りたかったなぁ~。
戦地で体験したことは、惨い。
片足をなくして戦地から帰って、誰も知る人がいないところで、救いの手を
差し伸べてくれる人に出会えて本当に良かった。
その出会いがなければ、みのりも存在していないということ。


そして、ボランティアってやはり難しいものがあるな~と感じた。
何かを求めてやるものではないと頭ではわかっていても拒絶される言葉を
面と向かって言われることもあるんだと覚悟していくことも必要なんだな。


みのりと寿士の出会い方はなんだかいいなと思った。
2人の会話のかんじもいい。



角田さんの長編は久しぶりだったけど、よかった!




                        ★★★★




発行年月:2020年11月


イラストレーター井出ちづる。夫は若い女と浮気をしている。嫉妬はまるで感じないがそんな自分に戸惑っている。早くに結婚して母となった岡野麻友美。自分ができなかったことを幼い娘に託し、人生を生き直そうとする。帰国子女で独身の草部伊都子。著名翻訳家の母のように非凡に生きたいと必死になるが、何ひとつうまくいかない。三人は女子高時代に少女バンドを組んでメジャーデビューをした。人生のピークは十代だったと懐かしむ。三十代となったこれからの人生に、あれ以上興奮することはあるのだろうか……。
「これは、私たちにとってやり遂げなくてはならない何かなのだ」

                       (光文社HPより)



高校時代、バンドを組んでメジャーデビューまでした経験を持つ3人が
35歳になっての話。


結婚している者、既婚だけど子どもを持たない者、独身者。

たまにあっても環境が違っていると共通の話題がないというのはよくわかる。
なぜ、それでも時々、会うのか?
本音を出したくてもつい見栄を張ったりして。


終盤、独身で母親にずっと支配されてきたと思っている伊都子の母親が
病に倒れ、余命が短いという状況で、結束する彼女たち。
伊都子の母・芙巳子の言葉をそれぞれが、自分の言葉として受け入れ
前に進むラストは、良かった。


3人の女性たちが、凄く魅力的に感じられた。
この先は、そんなに会う機会が減るのかもしれない3人だけれど
それはそれで。
今は連絡の取り方はいろいろあるしね。


久しぶりに読んだ角田さんの作品だったけど、やはり読みやすい。
新刊も読みたいな。


                      ★★★



発行年月:2018年3月


角田ワールド全開!心震える待望の小説集
《「さがさないで。私はあなたの記憶のなかに消えます。夜行列車の窓の向こうに、墓地の桜の木の彼方に、夏の海のきらめく波間に、レストランの格子窓の向こうに。おはよう、そしてさようなら。」――姿を消した妻をさがして僕は記憶をさかのぼる旅に出た。》(表題作)のほか、《初子さんは扉のような人だった。小学生だった私に、扉の向こうの世界を教えてくれた。》(「父とガムと彼女」)、《K和田くんは消しゴムのような男の子だった。他人の弱さに共振して自分をすり減らす。》(「猫男」)、《イワナさんは母の恋人だった。私は、母にふられた彼と遊んであげることにした。》(「水曜日の恋人」)、《大学生・人妻・夫・元恋人。さまざまな男女の過去と現在が織りなす携帯メールの物語。》(「地上発、宇宙経由」)など八つの名短篇を初集成。
少女、大学生、青年、夫婦の目を通して、愛と記憶、過去と現在が交錯する多彩で技巧をこらした物語が始まる。角田光代の魅力があふれる魅惑の短篇小説集。

                  (小学館HPより)


短編集とは知らずに図書館から借りました。
やはり表題作は良かった。

前日まで仲良く連休中の計画なんかを話していたのに、翌日、置手紙を残して

消えた妻。
戸惑いながらも、置手紙をヒントに妻は探してごらんと言っているのかもと
置手紙にあった2人の思い出の場所を旅する夫。

妻の本心はわからない。
でも良い夫みたいだし、ふらりと戻って来るんじゃないかな?


最初の話<父とガムと彼女>も好きだった。
父の葬儀に参列してくれた初子さん。
子どもの頃、子守り役として家に来てくれた人。
脚本家だった父のことを尊敬していると言っていた。

本当は父の恋人だったんじゃないか?と大人になって思っていたけど
実際はどうだったんだろ?



バラバラの話だけど、この表題に合う内容の話が集まっているかんじ。
人の記憶のなかのこと。
時間が経っても、ふと鮮明に蘇る記憶って誰にもあるよね~。


感動するとかいう話じゃないけど、どの話も楽しめた。
やはり角田さんの文章はスッと入ってくる。

今度は長編が読みたいな。

                          ★★★
 
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