発行年月:2014年11月
「本間は、作中で少年の死体が発見された今日この日まで、少年が死を選ぶなど、露ほども
考えてはいなかった。」
大学院を目指すという名目のもと、亡き祖父の家で一人暮らしをしながら小説を書いている
本間。ある日、その主人公であるモイパラシアが砂漠で死んだ――彼の意図しないところで。
原稿用紙の上に無造作に投げ出された少年の左腕。途方にくれながらも本間が、黒インクが
血のように滴る左腕を原稿用紙に包み庭に埋めようとした時、そこから現れたのは少年が飼
育していたトカゲの「アルタッド」だった……。
幻想的かつ圧倒的にリアルな手触りを持つシームレスな小説世界と、その独自の世界観を支
える完成された文体、そして「書くこと」の根源に挑んだ蛮勇に選考委員が驚愕した「青春
小説」の傑作誕生! 第51 回文藝賞受賞作。
(河出書房新社HPより)
最初にモイパライア少年が死んだ話には、???でした。
主人公・本間が書いている作中の人物の死が現実の世界で本間が予期せぬ死と
言われて混乱。
でも、その後の展開は、なかなかユニークで独特な世界観に引きこまれて読みました。
モンパライアは電車に轢かれて、その切断された左腕を本間は持ち帰り、原稿用紙に
包んで庭に埋めようとする。
するとその中から現れるアルタッド。
少年が可愛がっていたトカゲ。
夢のなかでアルタッドを頼むと言われた本間はその通り、アルタッドを毎日
世話する。
爬虫類は好きじゃないので、エサを食べる様子には、ちょっと抵抗ありました^^;
でも、昆虫などのほかにはコーンが好きらしいと気づき、それをあげるシーンは
なんだか和みました。
読んでいるうちにアルタッドも段々、愛おしく思えて来たし・・・・
アルタッドと本間の生活が淡々と語られるほかに特に面白いことが
起きるわけではないんだけれど、最後まで楽しんで読めました。
デビュー後2作目も期待したい作家さんです!
★★★
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発行年月:2014年5月
生きづらい世の中を生きる全ての人たちにエールを送る山女子小説!
40歳目前、文芸誌の副編集長をしているわたし。仕事は充実しているが忙しさに心擦り減る事も多く、私生活も不調気味。そんな時に出逢った山の魅力にわたしの心は救われていき……。じんわりと心ほぐれる連作長編。
(角川書店HPより)
山登りのお話。
主人公の女性は、職場の同僚に最初は誘われて山登りをし、その後、訓練しやや難度の
高い山登りを体験していく。
山登りは、今、ブームだけれど、危険と隣り合わせなんだなぁ~。
彼女は、一人で行動する。
確かに登るペースとか、それぞれ違うから単独行動がベストなんだろうけど、
広い自然のなかで自分しか居ない空間って、想像しただけでちょっと恐怖で
自分には無理だな~。
単独で上っていても、人と会い、そこで生まれる交流の場面は、温かいかんじで
いいな。
物語は月日が経過しながら、いろいろな季節に山登りをする様子を描いている。
普段は文芸誌の編集をして、山に入れば、目的地を目指しひたすら進む。
過酷な状況を、自分自身の体調の変化を気にしながら続けるのか断念するのかの
判断も大事。
登山後の食事の風景が、美味しそう♪
山登りをする人には共感する部分も多いんでしょうね~。
★★★
発行年月:2014年3月
「作家は不安でしょうがないんだ」
作家という業、女という性を抱える樺山ひろ江。
全身全霊で作品に挑む、彼女の心の叫びは、
哀しい、苦しい、そんな平凡な言葉では足りない。
「誰からも称賛されなくても、貧乏で終わっても、他人から見たら可哀相な一生であったとしても、業のままに生きたなら、それは素晴らしい人生なんだよ」
不器用に生きる女の人生の浮き沈みを描く、桂望実の最新作!
(光文社HPより)
巷で売れている作家さんというのは、凄い成功者なんだなぁ~と
この物語を読んで思った。
主人公は、作家の樺山ひろ江。
そして、自身も作家を目指すが、叔母である、ひろ江に作品を評価してもらえず
作家の夢をあきらめ、叔母のひろ江をサポートする役目を担う、明子。
売れるまでの苦労。
売れてからの周りの豹変。
そして、また売れなくなっての周囲の反応。
シビアな世界だなぁ~。
どんな時でも、ひろ江の作品を愛し味方であり続けた明子の存在は、言葉にしなくても
ひろ江にとってあり難い存在だったんでしょうね。
変わり者のひろ江の発言や行動にフォローをして、周囲の人への誤解を最小限にしながら・・・
そんな明子を裏切った夫の敦には、腹が立った!
でも、静かな復讐・・・いいね!
ひろ江もそんな明子を「よくやった!」と誉めたときは、にんまり(^^)
同じように、ひろ江がイケメン俳優の、みのるに復讐した時も爽快!!
ひろ江が書く、作中作も面白かった。
我慢ならない女という表題ですが、我慢しなくて当然!
ひろ江は正しい人でした!!
★★★★
発行年月:2012年10月
今日もし突然、チョコレートが消えたなら
電話が消えたなら 映画が消えたなら 時計が消えたなら
猫が消えたら そして 僕が消えたなら
世界はどう変化し、人は何を得て、何を失うのか
30歳郵便配達員。余命あとわずか。
陽気な悪魔が僕の周りにあるものと引き換えに1日の命を与える。
僕と猫と陽気な悪魔の摩訶不思議な7日間がはじまった-----。
消してみることで、価値が生まれる。
失うことで、大切さが分かる。
感動的、人生哲学エンターテイメント。
(マガジンハウスHPより)
表紙の絵の可愛らしさと表題から猫好きなら読みたくなる1冊!
内容も素晴らしかった!
30歳の青年がある日突然、余命わずかの宣告を受ける。
ショックを受けるが、彼の前に現れた 悪魔の提案で、この世界から何か1つを
消すごとに寿命が1日伸びるという契約を交わす。
この世から消すものは悪魔が決める。
それに従わなければ、寿命は延びない。
悪魔と主人公の会話も思わず笑っちゃう。
主人公に全く悲壮感が感じられないのは、この場合置いといて・・・^^;
ユニークな哲学書というかんじで、なかなか面白かった!
主人公の愛猫・キャベツが可愛い(=^・^=)。
この世から1つずつ消されるものたち。
消される前に一度をれを使うことが出来る。
あたりまえにあると思うものがなくなってしまうと思うと、それがとても大事なもの
だったと気づく。
特に時計が消える話では、ああ、なくなったら本当に困っちゃうなぁ~と思った。
そして、その章の中の言葉に「なるほど~」と感心!
人間は不自由さと引き換えに決まり事があるという安心感を得たのだ
ほかにも心に響く言葉が出てきて、さすが数々のヒットした映画製作に関わってきた
著者らしい感動のツボを心得ている!と感じた。
「死」を描いているのに、主人公と同じようにすんなり受け入れられる。
考えたら、「死」はなくなってしまうことだけれど、誰にも訪れる日常のなかの
出来事。大げさに考えてジタバタしても仕方ないのかもね。
猫好きの次女も読んで「なかなか面白かったね♪」と好評価でした!
★★★★
発行年月:2014年3月
「おい鈴木、米原正和を捜しに行くぞ」とその米原正和が言った──。失踪した米原正和の行方を、当の米原とともに追う鈴木。会社を休んで、米原の自宅、立ち寄り先を米原をともに捜す。果たして、米原は見つかるのか?
(講談社HPより)
インパクトある表題に惹かれ読んでみました。
表題作を含む3編。
<IT業界 心の闇>
社長から頼まれて不倫相手として妻に一緒に会って欲しいと頼まれるA子。
浮気がばれたのは妻がITに精通していたからだとか。
社長の妻と会ったA子は、何故か奥さんと仲良くカフェへ。
そして、その後事件に巻き込まれることに・・・
え?こんな結末!?
<Tシャツ>
アメリカから日本に来たハワード。
亡くなった妻の両親(鈴木夫妻)に会い、暫く近所の清水夫妻の家に居候することに。
最初には、家の近所でウロウロするハワードを見つけたのは、長岡夫人。
鈴木夫妻、清水夫妻、長岡夫妻の日常のやり取りが可笑しい。
ハワードは、その後あまり出てこないな~と思ったら・・・突如、アメリカへ帰国?
その理由が、パチンコ中毒になったからって・・・^^;
<金を払うから素手で殴らせてくれないか?>
仕事熱心で真面目な米原正和が失踪?
しかしその米原を探そうと言ったのは、米原正和。
声を掛けられた鈴木と共に部長の平石も同行することに。
スーパー銭湯、自宅、ショッピングセンターへ。
米原は途中、大道芸の二人組に声を掛けられる。
「ストレス発散にワンコインで殴らせてあげる」とグローブを示されるが
1万円を渡し「素手で殴らせてくれないか?」と頼む。
あまり深刻じゃない失踪者探し。
可笑しい会話。
それゆえ、最後のシーンが強烈過ぎる!
初めて知った作家さんだったけれど、よくわからないけれど、凄いなと思った。
どういう思考回路持ってるんだろ?
実に個性的。
個人的にはあまり好きじゃないけど、きっとこういうの大好きな人は
多いかもしれない。
★★★
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自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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