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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2024年11月


直木賞作家・千早茜が紡ぐ、10の夜の物語。
人気イラストレーター・西淑による美しい挿絵とともに味わう、「眠れない夜」をテーマにした短編集。
「眠らなくてはと、まぶたを閉じる。けれど、目の奥にすこんとした空洞がある」。家族が寝静まった深夜、ひとり台所に佇む時間──第一夜「空洞」
「夜にあるのは、見えない恐ろしさではなく、見ようとしてしまう恐ろしさ」。美しい刺繡を生業とする「わたし」の暮らす土地に、ある日旅人が訪れて──第八夜「繡(うつく)しい夜」
「夜の底の黄金よ、君の寝顔は本当に変わらないから、こんな静かな晩は永遠に続く夜に閉じ込められてしまったような心持ちになるのだ」。眠り続ける「君」の呼吸に、傍らで耳をすます──第九夜「寝息」
……ほか、夜の世界へと誘う10篇を所収。


                     (平凡社HPより)




短いお話が10編。
それぞれ「眠れない夜は・・・・」の文からはじまる。


第二夜の森をさまようは現代人ならではの話で印象に残った。
眠れない夜、ネットのなかのいろいろなひとたちが吐く呪詛のような言葉を読んで
自分もそんなばけものになると言っている。
そして、あたしはあたしより不幸なばけものを見つけたいのかもと。

便利な世の中になったけれど、知りたくないこともいっぱい知れてしまうことで
自分自身がばけものになってしまうのは哀しいことだと思う。


好きだったのは第六夜 木守柿
家庭の事情で幼い頃、一時期を祖父母の家で過ごした女性のはなし。
庭の柿の実が沢山なり、近所にもおすそ分けをしたりして楽しむが
幾つかは残しておく。
鳥たちのため。そしてそれでも残った実は木守柿として、遠くから我が家を
見つける目印ともなった。

女性の今が幸せそうでよかった。


全体的に暗いかんじが多かったかな?
静かな夜の雰囲気には合っている。
絵も繊細なかんじで美しい。




                      ★★★★


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発行年月:2024年8月


幼い頃海外で暮らしていたまどかは、
番犬用の仔犬としてローデシアン・リッジバックの「虎」と出会った。
唯一無二の相棒だったが、一家は帰国にあたり、
犬を連れて行かない決断をして――。


                (河出書房新社HPより)




これは著者の体験による物語のよう。

小学校1年生~4年生まで父親の仕事の関係でアフリカのザンビアで過ごした
そうで・・・・。

この物語の主人公・まどかは、両親と弟と治安の悪い地に暮らすことに。
治安の悪いこの地では番犬として犬を何匹か飼うのが普通で、
まどかはそのなかの「虎」と名付けた犬を特に可愛がる。
小さいときは臆病だったが成長するとともに逞しくなり
力も強く、本能を発揮したときには、まどかの力では制御できないほど。

その描写がリアルで日本で飼っている愛犬とは、別物なんだと感じる。
実際に強盗が入って来そうになったとき、相手に襲い掛かる様は
獣というかんじで怖かった。
治安の悪い地では、そういう犬でないと飼う意味がないんでしょうけれど・・・
帰国が決まったとき、「虎」を置き去りにしたことは仕方ないと思うし
「虎」にとってもよかったと思う。


物語は、まどかが32歳になり恋人・博人がいての今と子どもの頃、「虎」と
過ごした時間とが代わる代わる語られる。

博人とは、自然な成り行きで子どもが出来たら結婚しようと言っているのに
内緒でピルを飲み続け、それがある日、ばれて・・・・

子どもを育てる自信を失くしてしまっていた、まどかの気持ちは
わかるようなわからないような・・・。


表紙の犬はシベリアンハスキーっぽいけれど、「虎」はローデシアン・リッジバック
という種類らしい。
写真で見たけれど、筋肉だけというかんじの、ちょっと近づきにくいかんじの犬
だった。


ササッと読めたけれど、今までの千早さんの話とはちょっと違うかんじ。



                       ★★★
選んで飼うことに。



発行年月:2024年4月


からだは傷みを忘れない――たとえ肌がなめらかさを取り戻そうとも。
「傷」をめぐる10の物語を通して「癒える」とは何かを問いかける、切々とした疼きとふくよかな余韻に満ちた短編小説集。
「みんな、皮膚の下に流れている赤を忘れて暮らしている」。ある日を境に、「私」は高校のクラスメイト全員から「存在しない者」とされてしまい――「竜舌蘭」
「傷が、いつの日かよみがえってあなたを壊してしまわないよう、わたしはずっと祈り続けます」。公園で「わたし」が「あなた」を見守る理由は――「グリフィスの傷」
「瞬きを、する。このまぶたに傷をつけてくれたひとのことをおもう」。「あたし」は「さやちゃん先生」をめがけて、渋谷の街を駆け抜ける――「まぶたの光」
……ほか、からだに刻まれた傷を精緻にとらえた短編10作を収録。

                   (集英社HPより)



身体のどこかに傷痕が残っている人は、多いんじゃないかな?
傷の大小には、違いがあっても・・・。
それに関することも覚えていることが多いと思う。


10の話、どれもそれぞれ良かった。
最初の<竜舌蘭>は、通学途中にあった、竜舌蘭の棘で知らないうちにケガをして
それを機にクラスのなかで無視されていた状況が変わるという話。
見える傷には、人は反応するのに、見えない傷については人は驚くほど
無自覚だということが、印象的だった。

ほかに印象的だったのは
<この世のすべての>
犬に噛まれて顔が変形するほどの大きな傷を持つ男。
犬嫌いで、犬を連れている人に怒鳴ることが多く
それを見て、住人たちは男を疎ましく思う。
わたしもそのうちの一人。
ある日、犬を虐待していた容疑が男にかけられた。
男が犯人ではないと知っているが、否定せず、男が警察に連行
されていくのを見ている。
男の人すべてが怖いから。
後味悪い話だったけど、なんとなくこのこういうこと起こりうる。

<指の記憶>もちょっと、ゾックとする話。
工場の機械で指を切断する大怪我を負い、その時、指のすべてを拾って
救急隊員に渡してくれた恩人が触れた記憶が手術で無事にくっ付いた指が
感覚として覚えているという話。

<あおたん>
刺青で覆われている、おっちゃと親しくしていた。
いつも男の人に顔をじろじろ見られて嫌なかんじだったのに
おっちやんといると皆が視線を向けてこないのが嬉しかった。
新しい担任の先生に体を触られ、顔を舐められて気持ち悪くて泣きながら
おっちゃんの元にいくと、話を聞いたおっちゃんが学校に先生を殴りに
行ってくれた。
そんなおっちゃんが建築現場で高いところから落ちて頭をうち亡くなってしまう

なんだか切ない話。


<慈雨>
父親の誕生日にプレゼントを持って実家へ。
幼い時から、父親と接するのが苦手だった。
母親から自分の額にうっすら残る傷痕の話を聞く。
父親と留守番をしているときに木から落ちて出来た傷。
ずっとそれを気にしているという。

父親とのギクシャクした関係が少しずつ変わっていきそうかな?
良い話。


ひとつひとつは短くて、本自体の頁数も少な目だったので、ササッと
読めてしまったけれど、面白かった。


表紙の写真(絵?)は、結構、痛々しいけれど、そこにある思い出は
案外、悪くないものだったような・・・・



                   ★★★★


発行年月:2023年4月


天才調香師は、人の欲望を「香り」に変える——。
直木賞受賞第一作。『透明な夜の香り』続編!
「君からはいつも強い怒りの匂いがした」
カフェでアルバイトをしていた朝倉満は、客として来店した小川朔に、自身が暮らす洋館で働かないかと勧誘される。朔は人並外れた嗅覚を持つ調香師で、その洋館では依頼人の望む香りをオーダーメイドで作り出す仕事をしていた。
朔のもとには、香りにまつわるさまざまな執着を持った依頼人が訪れる。その欲望に向き合ううちに、やがて朔が満を仕事に誘った本当の理由が分かり……。
香りを文学へと昇華させた、第6回渡辺淳一文学賞受賞作『透明な夜の香り』に続く、ドラマチックな長編小説。

                 (集英社HPより)



続編が出ていることに最近、気づいた!
読みながら、段々と思い出す。


調香師の小川朔の元で働くことになった朝倉満。
厨房で働いた経験から食事担当兼手伝い。
食事は朔のオーダーに基づいて・・・・


満は、幼いとき、母親からちゃんと育てて貰えなかった。
いわゆるネグレクト。
そして施設で育つ。

調香師の朔とどこか境遇が似ているな・・・・と思ったら終盤に
二人は同じ施設にいたという。


前作「透明な夜の香り」で、朔の元で働いていた、若葉一香も再登場。
それから朔の親友・新城(本業は探偵)。
庭仕事担当の源さん。


今回の依頼客は・・・
・世界一の歌姫にふさわしい香り
・在学していた小学校の教室の香り、飼育小屋の香り
・臭覚を取り戻す香り


変わった依頼ばかりだけれど、依頼主のその香りを求める気持ちは理解できた。



この話は、続くのかな?
この独特の妖しく不穏なかんじは好きだけど、そんなに色々なことが
明らかにならなくてもいいかな?とも思う。



                     ★★★







発行年月:2023年8月

私の幸せも不幸も、私が決める。そう、決めた
「離婚って失敗なの?」「恋愛と結婚って別物?」
新直木賞作家が描く、おとなの女性の結婚と幸福をめぐる物語。
桐原まりえは40歳を手前に離婚した。夫の森崎に「恋愛がしたい」と切り出され、2年近い話し合いの時期を経て、7年半の結婚生活に終止符を打ったのだ。理由にはいまも納得がいかないまりえだったが、自分はもう誰にも属していない、そう思うと心は軽やかだった。離婚届を提出する朝、寂しさよりも、手放して一人になることの清々しさをこそ感じたのだ。
「あんたもこれから恋愛できるわね」、行きつけのワインバーでよく遭う年かさのかっこいいマキさんはそう言うが、まりえにはその気はない。駆け引きも探り合いも億劫だし、今のからだを見せる羞恥が性欲を上回る。なにより、すべて自分の自由にできる生活が一番大事でそれを危うくする欲望に呑み込まれたくはないのだ。でも、なにか不安で、なにか取りこぼしている気がする……。
ひょんなことで懐いてきた由井君が粉料理を教わりに訪ねてくるのを好ましくは思うが、物事の受け止め方に7つの歳の差を感じるばかりだ。そんな折、些細なきっかけと少しの興味から、まりえは結婚相談所に登録をした。そこで見聞きする世界は、思いもよらないものだった。マリッジコンサルタントに、紹介された男たちに、婚活仲間に、切実な「現実」や結婚に対する価値観を次々と突きつけられ、まりえは考え続ける。自分が人生に求める幸せとは何なのか。
若い頃のように無邪気に恋愛に飛び込んでいけなくなった眼にだからこそ捉えられる、おとなの女の幸せをめぐる長篇。

                (文藝春秋HPより)



森崎の離婚理由は、「なんだそれ?」だけど、
意外とすんなり受け入れるマリエに違和感。
まあ、自分も働いていて、それなりの責任ある仕事を任されている様子なので
経済的にも一人で生活していける環境が確保されているからなのかなぁ~?

知り合った7つ年下の由井くんとも、良い感じだし
それなりに離婚後の生活も充実している。

マリエの心のなかは、それでも色々、揺れているんだけれど
なるようにしかならないんだから、楽しめばいいんじゃないかな?
とやや冷めた感想しか浮かばないかな~?

まあまあ、楽しめたけれど・・・・
ちょっと物足りなかった。



                      ★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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