発行年月:2022年9月
バラが咲き乱れる家で、新進気鋭の建築家・青川英樹は育った。
上品で美しい母。仕事人間の父。自由に生きる妹。
ごく普通の家族だと思っていた。
だが、妻が妊娠して生まれてくる子が「男の子」だとわかった途端、
母が豹変した。
記憶の彼方にしまい込んでいたあの日、一体何が起きたのか――。
身も心も震える、圧巻の家族小説。
(中央公論新社HPより)
建築家の青川英樹(32歳)、妻の美沙が妊娠しお腹の子は男の子と診断。
英樹の母親・恭子はそれを知り喜び、執拗に美沙に体の心配を気にする
lineを送り、産まれる子どもの準備を着々と進める様子も報せてくる。
異常ともいえる恭子の過干渉ぶりには、読んでいても辟易し
美沙が憔悴していく様子が辛い。
英樹の父親・誠一(58歳)は恭子が好きで結婚したのに、
仕事(大手ゼネコン会社の技術職)が忙しく、家は常に留守がちで、
浮気も繰り返し社内には不倫関係が10年続く・永束悠乃(35歳)がいる。
英樹には、2歳の時に亡くなった弟・和宏と
7歳年下の妹・玲子がいる。
玲子は、以前から母親を嫌い、実家から遠ざかり恋人である羽田完と暮らしている。
異常なまでに息子を溺愛し、今は生まれて来る英樹の子どもに
執着する恭子は、恐ろしささえ感じる。
美沙も嫌悪感でいっぱいになり、英樹が母親と絶縁できなければ離婚したい
と思うほどに。
でも・・・物語が進むにつれて、恭子の生い立ちがわかると
恭子の母親の異常さの方が、それ以上で驚く。
恭子の母親こそ、異常者であり、恭子はそんな母親にずっと虐げられて
成長してきたんだとわかり、恭子が気の毒過ぎて・・・(;O;)
物語の終盤、恭子は自ら命を絶つ。
その心情を思うとやり切れない。
一番、そばにいた夫・誠一がもっと恭子のことをちゃんと理解してあげて
いたら・・・・
恭子自身は、優しく良い人だったんだと思う。
遺した恭子の手記「イオカステ」を娘の玲子が見つけ
自分だけがその存在を知っているという状況になったのは
恭子の思い通りだったのかも。
女同士でなければその手記の内容が正しく理解されないだろうから・・・
最後は、少し明るい雰囲気で終わっていたけれど、
なんとも言えない嫌な気持ちが残った。
しかし、巧い話の進め方は、さすがの遠田さんというかんじ。
★★★★
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発行年月:2025年9月
大らかな性格で孫に優しい偉大な人間国宝の祖父。氷のように冷たく息子に無関心な轆轤の名手の父。物心つく前に母親を亡くした少年・城は、陽と陰のような二者の間で育ち、悩み、苦しんでいた。父に認められたいがゆえに歪んでいく心。それは宿痾のように精神を蝕んでいき……。備前市伊部を舞台に、備前焼窯元父子三世代の心の闇に斬り込み、愛と憎しみの狭間でもがく人間たちを描いた家族史。
(集英社HPより)
*ネタバレ含みます
面白かった!!
親子三代(実際はちょっと違うのだけど・・・)の物語。
人間国宝の祖父・路傍は、孫の城には優しく気安く話が出来るのに
父の大河は、何か近寄りがたい空気を纏い、褒められたりしたこともないし
優しく接して貰った記憶もない。
備前焼きの窯元の家に育つ深田城の視点で物語が進み、終盤、父親の語りで
この父子の深い溝がなぜ生まれてしまったのかがわかる。
う~ん。
一番の元凶は、路傍の父じゃん!
他所に女を作り、産まれた子を息子夫婦(路傍とその妻・良子)に育てさせた
ことから始まったこと。
路傍が大河に対してとる態度と、大河が城にとる態度は
そっくりで、その連鎖が城で止まったことが救い。
城が香月と出会い、一旦は別れても再び付き合い、かけがえのない存在として
家族になり、息子の灯が生まれた。
城はきっと息子を父や祖父とは違う接し方が出来るはず。
父親の体が弱り、初めてじっくり息子に向き合い、過去のこと
いろいろな辛かった思いを吐き出したことで、初めて父を理解する城。
これ、もっと前に出来んかったのぉ~!?(/_;)
備前焼きの作品をつくる過程は、リアルで情景が目に浮かぶようだった。
★★★★★
発行年月:2025年3月
愛する娘を傷つけたくない。著者渾身の人情譚
痛みも後悔も乗り越えて、いつかみんなできっと笑える。
『銀花の蔵』で直木賞候補、
いま注目の作家が放つ“傑作家族小説”!
売れない芸人を続ける娘、夫の隠し子疑惑が発覚した妻、父と血のつながらない高校生……
大阪・ミナミを舞台に、人の「あたたかさ」を照らす群像劇。
◎松虫通のファミリア
「ピアニストになってほしい」亡妻の願いをかなえるために英才教育を施した娘のハルミは、漫才師になると言って出ていった。1995年、阪神淡路大震災で娘を亡くした吾郎は、5歳になる孫の存在を「元相方」から知らされる。
◎ミナミの春、万国の春
元相方のハルミが憧れた漫才師はただ一組、「カサブランカ」。ハルミ亡き後も追い続けたが、後ろ姿は遠く、ヒデヨシは漫才師を辞めた。2025年、万博の春に結婚を決めたハルミの娘のため、ヒデヨシは「カサブランカ」に会いに行く。
(他、計6篇)
(文藝春秋HPより)
大阪に馴染みはないけれど、人情に厚いひとたちの温かい話で
大阪に詳しかったら、もっと楽しめたんだろうなぁ~と思う。
短編集だけれど繋がりがあるので、ああ、あの話は、こういうことだったのか
と気づきながら読めるのもよかった。
共通しているのは、姉妹の漫才コンビ「カサブランカ」のハナコとチョーコ。
彼女たちに憧れて芸人を目指し、コンビを組んだ「はんだごて」の
ハルミとヒデヨシ。
最初の話は、ハルミの子ども・彩(5歳)を祖父である吾郎が
彩を預かっているヒデヨシの元に迎えに行く話。
最初の話を読んだ時点では「?」と思うことが、段々と後の話から分かってくる。
時代は1995年から現在・2025年の大阪万博の頃まで。
1995年・・・・阪神・淡路大震災の年。
彩をなぜ祖父が迎えに行ったのかの背景にあったことは、ちょっと
辛い話だった。
それでも最後の章では、彩の結婚式で、色々大変なことを乗り越えて
その場にいる人たちが皆、穏やかな気持ちで彩を祝っている場面。
良いお話でした!
★★★★
(文藝春秋HPより)
大阪に馴染みはないけれど、人情に厚いひとたちの温かい話で
大阪に詳しかったら、もっと楽しめたんだろうなぁ~と思う。
短編集だけれど繋がりがあるので、ああ、あの話は、こういうことだったのか
と気づきながら読めるのもよかった。
共通しているのは、姉妹の漫才コンビ「カサブランカ」のハナコとチョーコ。
彼女たちに憧れて芸人を目指し、コンビを組んだ「はんだごて」の
ハルミとヒデヨシ。
最初の話は、ハルミの子ども・彩(5歳)を祖父である吾郎が
彩を預かっているヒデヨシの元に迎えに行く話。
最初の話を読んだ時点では「?」と思うことが、段々と後の話から分かってくる。
時代は1995年から現在・2025年の大阪万博の頃まで。
1995年・・・・阪神・淡路大震災の年。
彩をなぜ祖父が迎えに行ったのかの背景にあったことは、ちょっと
辛い話だった。
それでも最後の章では、彩の結婚式で、色々大変なことを乗り越えて
その場にいる人たちが皆、穏やかな気持ちで彩を祝っている場面。
良いお話でした!
★★★★
発行年月:2023年9月
紀州の山間の小さな町に紅滝という美しい滝がある。その滝には運命の恋と信じた相手に裏切られた姫の、哀しい伝説が残されていた。だが、伝説が語らない恋の歴史があった。それは逃れることのできないさだめの螺旋。現代から過去――大正、江戸、安土桃山、そして南北朝へと逆巻きに、二人は出会いを繰り返す。恋に呪いをかけた二人の誓いとは。紅滝に奇跡は起きるのか。
感動のクライマックスが読む者を圧倒する傑作。
(光文社HPより)
5つのお話。
別々の話だけれど、舞台になっている場所は同じ。
紅滝という美しい滝、そのそばに祀られたお姫様の哀しい伝説。
最初の話は、現代。
滝のそばにある旅館・瀧口屋の娘・美鳩。
秋に行われる滝祭りの「紅姫」役を無事に終えたあと不幸な事故で亡くなる。
それから5年ほど経ち、一人の男・望月志郎が引っ越してくる。
美鳩と望月のなんとも哀しい恋。
次の話は大正時代。
その次は、江戸時代、そして安土桃山時代、鎌倉・室町時代へと過去へ進み
紅姫伝説の元の話は最後にわかる。
どの時代にも「望月」という男が出てくる。
この世に未練を遺したまま、時代により姿を変えて蘇ってきているのか?
なんとも不思議な人の強い情念のようなものを感じる。
遠田さんは、哀しい話を描くのが本当に巧い。
★★★★
(光文社HPより)
5つのお話。
別々の話だけれど、舞台になっている場所は同じ。
紅滝という美しい滝、そのそばに祀られたお姫様の哀しい伝説。
最初の話は、現代。
滝のそばにある旅館・瀧口屋の娘・美鳩。
秋に行われる滝祭りの「紅姫」役を無事に終えたあと不幸な事故で亡くなる。
それから5年ほど経ち、一人の男・望月志郎が引っ越してくる。
美鳩と望月のなんとも哀しい恋。
次の話は大正時代。
その次は、江戸時代、そして安土桃山時代、鎌倉・室町時代へと過去へ進み
紅姫伝説の元の話は最後にわかる。
どの時代にも「望月」という男が出てくる。
この世に未練を遺したまま、時代により姿を変えて蘇ってきているのか?
なんとも不思議な人の強い情念のようなものを感じる。
遠田さんは、哀しい話を描くのが本当に巧い。
★★★★
発行年月:2022年3月
圧巻。ついに。
ラストの情景はぴたりと見事に着地が決まって、これしかないという美しさだ。ひとは、こういうカタルシスを覚えたくて、物語を読むのだろう。 村山由佳
父が壊した女。それでも俺はあの女が描きたい。
『銀花の蔵』『雪の鉄樹』『オブリヴィオン』の著者が放つ、
人間の業の極限に挑んだ、衝撃の問題作
しがない日本画家の竹井清秀は、妻子を同時に喪ってから生きた人間を描けず、「死体画家」と揶揄されていた。ある晩、急な電話に駆けつけると、長らく絶縁したままの天才料理人の父、康則の遺体があり、全裸で震える少女、蓮子がいた。十一年にわたり父が密かに匿っていたのだ。激しい嫌悪を覚える一方で、どうしようもなく蓮子に惹かれていく。
(講談社HPより)
一気読み。凄い話で疲れたぁ~。
狂気だらけの世界。
父親のことを憎み嫌いながらも自らも自分の欲望のために同じように堕ちていく。
芸術家って、恐ろしい。
冒頭で、日本画家の竹井清秀(35歳)の余命は短いと知らされているので
こんな狂気に向かっていく姿も想像したけれど、想像以上に壮絶だった。
清秀の伯父・治親は作家で、このなかでは真っ当な考え方をする人かと思われた
けれど・・・違った。
作家として、書かなくてはと思ってしまったんだろうか?
そんな狂気の人たちに利用された少女・蓮子は、このあと、どうなったんだろう。
何処かで穏やかに暮らせていればいいけれど・・・・
嫌な話だけれど、物語としては、面白かった!
★★★★★
(講談社HPより)
一気読み。凄い話で疲れたぁ~。
狂気だらけの世界。
父親のことを憎み嫌いながらも自らも自分の欲望のために同じように堕ちていく。
芸術家って、恐ろしい。
冒頭で、日本画家の竹井清秀(35歳)の余命は短いと知らされているので
こんな狂気に向かっていく姿も想像したけれど、想像以上に壮絶だった。
清秀の伯父・治親は作家で、このなかでは真っ当な考え方をする人かと思われた
けれど・・・違った。
作家として、書かなくてはと思ってしまったんだろうか?
そんな狂気の人たちに利用された少女・蓮子は、このあと、どうなったんだろう。
何処かで穏やかに暮らせていればいいけれど・・・・
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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