発行年月:2016年5月
時は幕末、徳川家に江戸城の明け渡しが命じられる。官軍の襲来を恐れ、女中たちが我先にと脱出を試みる中、大奥に留まった五人の「残り者」がいた。なにゆえ残らねばならなかったのか。それぞれ胸の内を明かした彼女らが起こした思いがけない行動とは――直木賞受賞作『恋歌』と対をなす、激動の時代を生きぬいた女たちの熱い物語。
(双葉社HPより)
最初から最後まで面白かった!
大奥女中の5人が城の明け渡し前夜から明け渡しの日まで一緒に過ごす物語。
・りつ・・・・天璋院付女中、呉服ノ間
・お蛸・・・・天璋院付女中、御膳所
・ちか・・・・天璋院付女中、御三之間
・ふき・・・・天璋院付女中、御中臈
・もみぢ・・・和宮付女中、呉服ノ間
もみぢだけ和宮付ということで、最初は1対4の関係だった。
けれど、御針競べで、りつと競い、その腕の確かさに驚き、りつは素直に
負けを認めたことで、敵対関係が少し緩む。
5人が共通して城に残ったのには、それぞれの理由があるのだけど
最後は、城の受け渡しの様子を静かに見守り、退去しようと決める。
官軍が城に入ってきた場面は、ドキドキ。
無事に見つからずに居られるか?
そのあと、無事に城から出られるのか?
でも最後は、5人のその後の暮らしぶりがわかってホッとしました。
5人の絆は保たれたままだったのも嬉しかった。
読みごたえあって、面白い時代小説!
★★★★★
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発行年月:2015年8月
天野三哲は「面倒臭ぇ」が口癖の江戸の小児医。朝寝坊する、患者を選り好みする、面倒になると患者を置いて逃げ出しちまう出鱈目っぷりで、近所でも有名な藪医者だ。ところが、ひょんなことから患者が押し寄せてくるようになり、三哲の娘・おゆん、押しかけ弟子の次郎助、凄腕産婆のお亀婆さんなど、周囲の面々を巻き込んで、ふらここ堂の先行きは、いったいいかなることに──。
当時の医者事情、教育現場、夫婦と家族の有り様から、恋愛指南まで盛り込んで、人情と笑いたっぷりに描く、お江戸“子育て”小説誕生!
(講談社HPより)
最初は、やる気のない人だなぁ~と苦笑いしながら読んでいましたが、
患者に対する気持ちは優しく、本当に治すにはどうしたら一番いいのかを
考えているお医者さんというかんじ。
ただ、口が悪いので誤解されやすく、子どもを診察に連れて来た母親に
叩かれることも・・・・^m^
三哲の娘・おゆんと三哲の仕事を覚えようとしているおゆんの幼馴染・次郎助の
恋の行方も気になりつつ、取り上げ婆のお亀さんや薬屋の佐吉、その息子・勇太など
魅力的なキャラクターも多く楽しかった。
三哲がこの後、公方様お抱えの医者として過ごす様子もまた読みたいなぁ~。
続編ないかな?
★★★★
発行年月:2010年9月
気鬱を払い、心を養う。庭ってのは不思議なもんだ。
江戸・千駄木町の庭師一家「植辰」に、千両の庭をこしらえる大きな仕事が舞い込んだ。だが、庶民に流行り病が猛威を振るい、武家と商家では謎の失踪事件が連続する。不穏な浮き世に、植辰の面々が立ち向かう。
<「植辰」に集う人々>
●辰蔵……作庭の腕は一流だが、酒好きでおっとりとぼけた親方
●お百合……男所帯をきびきび仕切っている、辰蔵の一人娘
●福助……池泉や流れなどの水読みに優れた庭師。元備前の侍
●玄林……穴太衆の末裔で、石の見立てや石組を得意とする庭師
●ちゃら……辰蔵に拾われて植辰で修業中の元浮浪児。「ちゃんちゃら可笑しいや」が口癖
(講談社HPより)
主人公・ちゃらがとっても魅力的。
庭師・辰蔵の元で庭師として働いて10年。
辰蔵の娘・お百合との会話は実の家族のような気安さで微笑ましい。
千両の庭を作ってくれと言われたり、高級料亭(?)の庭(南蛮好みの庭)を任されたり、
老夫婦の庭を掟破りの雑木で設えたり、ちゃらの庭づくりの考えに親方の辰蔵がアドバイスをしながら作っていく庭造りの様子が楽しい。
孤児として、幼いときに色々な家に貰われては逃げ出していた、ちゃらは
庭師という天職を見つけたんでしょう。
とある出来事から知り合った若侍・佐伯伊織も最初は、ひ弱なイメージでしたが
ここぞというときには頼りになって良かった!
この時代に流行った病、今では「厳しすぎるでしょ?」というお家とり潰しなども
出てくる。
ちゃらが思いを寄せたお都留とのことはちょっと切なかったけれど
お百合との関係は今後、何らかの変化があるのかな?
朝井さんはお庭についての思い入れが強いのかな?
巻末に紹介されていた「実さえ花さえ」も種苗屋の若夫婦のお話だとか。
そちらもまた読んでみたいな。
★★★★
発行年月:2014年12月
江戸中期、松茸は幕府への貴重な献上品であり、松茸狩は尾張藩主が好む一大行事であった。算術が得意な江戸育ちの尾張藩士・小四郎はそれを生かして藩財政の立て直しを夢見ていたが、なぜか「御松茸同心」を拝命。尾張の山守に助けられながらも松茸不作の原因を探る日々が始まった。やがて小四郎は、山に魅せられ、自分の生きる道を切り開いていく――。数式でははかれない世界がそこにはあった! 直木賞作家が描く、傑作時代小説!
(徳間書店HPより)
父の後を継ぎ、江戸藩邸で定府藩士として勤めていた榊原小四郎。
家督を継いだのは18歳の昨年。
亡き母の妹・稲が母親代わりで育ててくれた。
稲が儒学者の娘であったことから小四郎は幼いときから
学問に向かわされ算術が得意。
共に働く者たちを心の中で愚弄していた。
いつかは藩のためもっと重要な仕事を任される立場になりたいと野心を抱いていた。
が・・・・突然の任は「御松茸同心」の命。
江戸を離れ、国許である尾張の地で不作続きの松茸を何とかしなければならない
お役目。
自身の不運を嘆き、渋々役目に励む小四郎。
ともに国許に戻った、3人の父親の古い友人たちが愉快。
小四郎のことを子ども扱いしたり、とろい奴とからかったり・・・・
でも手伝いに来てくれたり小四郎のことを気にかけてくれる。
最初は3年の任期だったが、9年が過ぎてしまう。
松茸を豊作にするヒントも段々と掴んでいく。
松茸に詳しい村人たちにも助けられ、小四郎も「御松茸同心」の仕事に夢中に
なる。
同じく「御松茸同心」の矢橋栄之進が最後に明かした正体は驚きだった。
登場人物たちがいい。
温かい交流が読んでいて楽しい。
小四郎が成長していく姿が良かったぁ~。
徳川家の御三家(尾張家、紀伊家、水戸家)の話は詳しく知らなかったので勉強になりました。
謹慎の身にあった尾張藩主の徳川宗春公に松茸狩りをして貰おうと奮闘する
人々の姿がなんだかジ~ンとした。
子ども騙しのようなものでも、きっと宗春公は嬉しかったでしょうね~。
実話かどうかはわからないけれど、その舞台となった興正寺は、
たまたま、長女が下宿している近くなので、今度訪れてみたいなぁ~。
★★★★★
発行年月:2014年9月
「好色一代男」「世間胸算用」などの浮世草子で知られる井原西鶴は寛永19年(1642)生まれで、松尾芭蕉や近松門左衛門と同時代を生きた俳諧師でもあり浄瑠璃作者でもあった。俳諧師としては、一昼夜に多数の句を吟ずる矢数俳諧を創始し、2万3500句を休みなく発する興行を打ったこともあるが、その異端ぶりから、「阿蘭陀流」とも呼ばれた。
若くして妻を亡くし、盲目の娘と大坂に暮らしながら、全身全霊をこめて創作に打ち込んだ西鶴。人間大好き、世間に興味津々、数多の騒動を引き起こしつつ、新しいジャンルの作品を次々と発表して300年前のベストセラー作家となった阿蘭陀西鶴の姿を描く、書き下ろし長編時代小説。
芭蕉との確執、近松との交流。娘と二人の奇妙な暮らし。
創作に一切妥協なし。傍迷惑な天才作家・井原西鶴とは何者か?
(講談社HPより)
物語の主役は西鶴の娘・おあいかな?
9歳で母は病死。
幼い2人の弟たちはほかの家へ養子に出され、おあいは父親と奉公人と暮らす日々。
おあいは盲目だが、母親が生活に必要なことは教えてくれていたので、
料理や裁縫もこなすことが出来る。
見えない代わりに、嗅覚、聴覚など、ほかの感覚が研ぎ澄まされ家のなかでの生活に
不自由することは殆どない様子。
ここまでに育て上げた母親が素晴らしいなぁ~。
西鶴は、俳諧師としては、なかなか才能を認められず、それならばと考えたのが
一昼夜に2万3500句を詠むという興行。
居直りとも思えるその行い、己こそ新風、一流だと自讃し「阿蘭陀西鶴」を自称。
貧乏なのに貧乏くさいことは嫌いで気位ばかり高い父・西鶴を半ば呆れながらも
見守る娘・おあい。
やがて、浄瑠璃や浮世草子も手掛けるようになり、こちらでの人気が出てくる。
そして、おあいが知る破天荒な父親の本当の気持ち。
下戸だと思っていたけれど、母が亡くなってから暫くして酒を断っていた。
弟たちを外に出したのに自分だけをそばにおいたわけ。
父親の深い愛情を知るおあい。
家族愛溢れる人だったと知り、感動しました。
晩年の二人の生活も穏やかで幸せそうでした。
いまの時代なら、早すぎる一生だけれど・・・。
同じ時代の松尾芭蕉や近松門左衛門も登場して、そういう交流関係だったんだと
知れたのも面白かった。
朝井さんの作品は、読み応えあります!
他の作品も読んでいきたいな。
★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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