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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2020年8月


明治44年、文豪・森鴎外の末子として誕生した類。優しい父と美しい母志げ、姉の茉莉、杏奴と千駄木の大きな屋敷で何不自由なく暮らしていた。大正11年に父が亡くなり、生活は一変。大きな喪失を抱えながら、自らの道を模索する類は、杏奴とともに画業を志しパリへ遊学。帰国後に母を看取り、やがて、画家・安宅安五郎の娘と結婚。明るい未来が開けるはずが、戦争によって財産が失われ困窮していく――。
昭和26年、心機一転を図り東京・千駄木で書店を開業。忙しない日々のなか、身を削り挑んだ文筆の道で才能を認められていくが……。
明治、大正、昭和、平成。時代の荒波に大きく揺さぶられながら、自らの生と格闘し続けた生涯が鮮やかによみがえる圧巻の長編小説。

                   (集英社HPより)


森鴎外の末っ子・類を主人公とした物語。
鴎外の娘・茉莉の本は読んだことがあるけれど、ほかの子どものことは
全く知らなかった。

長男はのみ鴎外の先妻の子。
母・志げとの間には、長女の茉莉、次女の杏奴、次男の不律、そして末っ子の類。
不律は生後半年でこの世を去っている。
名前にどうして不をつけたのか???


類を軸に描かれる家族。
主に、二人の姉との出来事。


末っ子の類は中学2年で学校に行きたくないと退学。
学歴としては中退になるわけだけど、画を学ぶことを中心にその後生活を変えて
行き、次女の杏奴と共にフランスに渡っている。
鴎外の子どもじゃなければ、経験できないことでしょう。


帯に鴎外の子どもであることの幸せの方が、不幸を超えている人生だったんじゃないか?


その留学中に知り合った小堀四郎氏と杏奴は夫婦になる。
次女の杏奴とは、一番同じ時を過ごし、仲が良かったのに、後に家族のことを
書いた内容が酷いと仲たがいしてしまうのは、哀しいことだった。


それでも類自身は、考えを変えず、家族のことを書いて出版社に。
茉莉も最初は腹を立てていたけれど、弟の意思を優先して手助けしてくれた。
杏奴は最後まで、このことを許さないと言っていたけれど
わたしは、杏奴の気持ちに共感。

家族だけが知っていればいいことを世間に知らせてお金を得るって
自分の身に置いて考えたら嫌なこと。


類は、結構遅くに結婚し、奥さんは良く出来た人。
その奥さんが亡くなり、再婚したのにはビックリ。

最後の晩年の穏やかな暮らしぶりは、微笑ましい感じだったけど、
個人的にはそんなに好きな感じの人じゃないなという印象。



でも鴎外の子どもたちの暮らしぶりなどは興味深く、最初から最後まで
楽しんで読んだ。


表紙の絵は、森類氏のものと知って、絵はなかなかいいと思った。



                      ★★★★
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発行年月:2020年4月


「私、女優になるの。どうでも、決めているの」。松井須磨子の舞台に胸を貫かれ、二十七歳で津和野から夫と子を捨て出奔した女は、東京で女優・伊澤蘭奢へと変身した。「四十になったら死ぬの」とうそぶき、キャリア絶頂で言葉通りに世を去った女の劇的な人生を、徳川夢声ら三人の愛人と息子の目から描く、著者一世一代の野心作!

                  (新潮社HPより)



女優・伊澤蘭奢(らんじゃ)の生涯を語る。
40歳目前に亡くなった蘭奢。
4人の男たちが集まり、遺稿集を出そうと話すシーンから始まる。


本名・三浦繁。結構、裕福な家庭に生まれ結婚し、息子まで生まれるのだけど
跡取りが生まれたと姑が手放さず、女優になりたいという夢を捨てきれず
夫も息子も置いて東京へ。

近代劇協会をまとめている上山草人の元で、俳優たちと練習の日々。
舞台にも出られるようになったが、貧乏暮らしのまま。

冒頭集まっていた男たち
・内藤民治・・・欧米生活の経験ある実業家。雑誌社(中外社)を経営し
多くの作家たちとも交流あり。近代劇協会にも出入りし、繁と知り合い、
愛人関係に

・徳川夢声(福原駿雄)・・・活動弁士。有名になるまえから繁とは知り合いで
恋人関係のときも。

・福田清人・・・帝大生時代から、伊澤蘭奢の芝居をみて憧れを抱いていた。

・伊藤佐喜雄・・・繁の一人息子。大阪高等学校に通う。母親ゆずりの美形。



4人の男たちが、蘭奢を介して、良い関係にあるのがいい。
それぞれの才能を活かしながら、遺稿文を作成していったんだろうな。


息子を捨てたかたちになっていたけれど、ちゃんと手紙でのやり取りや
実際に会って二人で過ごす時間もあったのだと知り、ほっとした。


有名な文豪も登場したりして、この時代の空気感を楽しめた。

知らなかった女優さんだけど、過去にも、この人をモデルにした作品が
あるようなので、読んでみようかな。

                     ★★★


発行年月;2019年11月

菜種油を扱う長崎の大店・大浦屋を継いだ希以(けい)26歳。幕末の黒船騒ぎで世情騒がしい折、じり貧になる前に新たな商売を考える希以に、古いしきたりを重んじる番頭の弥右衛門はいい顔をしない。

やがて店は火事で焼け落ち、父は出奔、迎えた婿も気に入らず、いつしか独りで大浦屋を支えることを誓う。幼い頃に亡くなった祖父から聞いた言葉、「海はこの世界のどこにでもつながっとるばい。昔は自在に交易できたばい。才覚さえあれば、異人とでも好いたように渡りあえた」が幾たびもも胸に甦る。

たまたま通詞・品川藤十郎と阿蘭陀人の船乗り・テキストルと知り合い、茶葉が英吉利では不足しているという話を聞き、ここぞと日本の茶葉を売り込む。待ちに待って3年後、英吉利商人のオルトが現れ、遂にお希以は旧弊なしがらみを打破し、世界を相手にするのだ――。

成功と落胆を繰り返しつつ、希以――大浦慶が経たいくつもの出会いと別れ。彼女が目指したもの、手に入れたもの、失ったものとはいったい何だったのか。
円熟の名手が描く傑作評伝。

                            (朝日新聞出版HPより)




幕末の長崎で、異国相手に茶葉で交易した女性・大浦慶の生涯。
凄いなぁ~とただただ感心。

婿養子に入った夫を、あの人は商売に向かないと翌日、追い出したり
番頭の弥右衛門にも自分の意見を押し通すという気の強さもあるが、
入り婿だった父緒が後妻とその息子とともに出奔したすえ、戻ってきたときは
忌々しいと思いながらも受けいれ、父の最後も看取り、腹違いの弟・亥之二のことも
自分の養子として、商を教えるという優しさもあった。

そんな魅力的な人だからこそ、いろいろな人がのちに助けてくれたのだなぁ~。

一時は、信頼していた人に騙され、家財差し押さえというどん底に落ちるが
それでも倒れず、前を向き進む姿は格好良かった!

生涯、独身だったけれど、多くの人の縁に恵まれ充実の一生だったんだろうな。


名前は憶えていなかったけれどNHKの大河ドラマ「龍馬伝」でも活躍していた
女性だった!
凄く印象深く、凄いな、この人とその時は思っていた。
女優は、余喜美子さんだった。やはり威勢が良くって恰好よかったぁ~。
龍馬たち亀山社中の面々を助けていた。


57歳で亡くなっているんですね。
男性以上の働きをして時代を駆け抜けて逝ってしまったんだなぁ~。



                                       ★★★★★


発行年月:2019年8月

花仍は吉原にある西田屋の女将。主の甚右衛門に拾われた花仍は、
店の娘分として育ったのち、甚右衛門の妻になった。
十三年越しの願いが叶い、甚右衛門はお上に傾城町を作る許しを得たが、
築かれたのは果たして「女の城」だったのか? 
江戸幕府公認の遊郭・吉原の黎明を描いた傑作長編小説。

                   (双葉社HPより)



吉原の物語だけど、そこを取り仕切る、西田屋の主・勘右衛門の
妻・花仍(かよ)の目線で語られる。

西田屋の番頭・清五郎やトラ婆たちもいいキャラクター。

雇われている女たちの物語も少しあり、特に花仍が贔屓にしていた
若菜のことが印象的。
年季が明ける寸前に、両親が前借りに訪れ、折角、つかみかけて
いた夢も途絶えてしまい、なんとも哀しい。

でも、その娘・鈴とそのまた娘・菜緒と時代は繋がっていき
若菜の夢は途絶えても、娘たちが未来に繋げていく希望もあるのは
救いだった。

吉原って、こんな風に成り立っていたのか~と知らなかったことを
学んだ。

掟破りの処刑の場面は、ゾッとしたけど、全体的に陰湿な
場面はほとんどなく花仍の一生と吉原の歴史を楽しませて
もらった。


                        ★★★



発行年月:2018年11月

江戸時代をこよなく愛する著者が描く、武家の人生の諸相。仇討ち、学問、侍の就活、嫁取り、剣術、罪と罰……。身分に縛られ、役目に忠実であらねばならなかった武士の暮らしにも、喜怒哀楽に満ちた人の情は流れている。練達の筆がすくい上げる、きらびやかな宝玉のごとき八つの物語。江戸の庶民を描いた『福袋』と対をなす、時代小説短編集。


                      (講談社HPより)



庶民の生活を描いた「福袋」も良かったけれど、こちらも良かった。
武士の世界の厳しさ、生き抜くのも大変な様が描かれていて
辛い場面もあった。

8つの短編集
<紛者>
牢人の信次郎が、尊敬していた兄の仇を討つ機会を狙って紛者から抜け出す。

<青雲>
酒屋で奉公していたが兄が亡くなり実家へ戻る。
武士としての生活へ。「己の運を鍛錬せよ」以前言われた言葉を理解する。

<蓬莱>
四男の平九郎。
格上の旗本・中山家に婿入り。
何故、自分が好まれて?と不思議に思う平九郎。

<一汁五菜>
代々、江戸城本丸の台所人である山口家。
伊織の妹は大奥に仕えていたが自死している。
料理人らしくその仇をとることを決める。

<妻の一分>
大石内蔵助の妻・りく。
主君・浅野は吉良を短刀で刺した罪で切腹となる。
そんな事件後を見守って来た飼い犬・唐之助の眼からみた家族の様子。

<落猿>
藩の留守居役の理兵衛。
刃傷沙汰をおこした罪人に仕置きを伝える。
切腹のほかの一案。

<春夫>
剣術指南所の娘・芙希。
若い頃、道場に武芸修練のため、藩の赦しを得て旅をしているという
原数馬とのことを思い出す。


<草々不一>
前原忠左衛門。56歳の隠居の身。
妻は流行病の麻疹で亡くなり、嫡男・清秀が家を継ぐ。
武術より学問一辺倒の息子の差配が気に入らなかったが
妻が遺した文が見つかり・・・・


最後の話が一番、素敵だった!
妻の書いた文の内容が気になるものの、漢字が読めない忠左衛門。
息子に代わりに読んで欲しいと頼むが、との以外は読んではいけないと
書いてあると。
手習い所で漢字を習う忠左衛門。
そこで出会った利発で少々、生意気な半太郎とのやり取りが愉快。

そして、やっと読んだ文。
妻・直の気持ちが伝わってくる。

なんて素敵な女性なんだろう。

切なく重苦しい話もあったけれど
最後にこの作品があることで、読後感がすごく晴れやか♪


やはり、まかてさんの作品はハズレなしです!



                         ★★★★

 
 

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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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