発行年月:2018年5月
明治末、13歳の清作は徴兵から逃れ故郷を飛びだす。
一方、清作を曾祖父にもつ現代の女子大生・あさひは、教師を目指し猛勉強中だった…。
時代をへだてたふたりの希望の光が、小さく輝きはじめる。
(集英社HPより)
読み応えあって良かった!!
主人公の馬橋清作は、13歳の時、日露戦争から帰還した父親が変わり果てた
姿であったことと、そのあとすぐ亡くなったのを見て、自分は同じようになり
たくないと徴兵逃れのため出奔する。
手助けをしてくれた町の有力者の息子・浅間幸三郎の手助けによって。
幸三郎は、その後の人生でも大きな支えとなる。
物語は、清作の曾孫(母親のおじいちゃん)にあたる、あさひの日常も語る。
小学校の教師として働く、あさひ。
学校にいる在日朝鮮人の子どもの事、婚約者の姉が在日コリアンと婚約したなど
人種差別的偏見についても考える。
清作は、鍛冶職人として腕を認められるようになるが、兄の追求から
逃れるため、居場所を転々とする。
そして、幸三郎の助けで、川崎市の朝鮮人町に身を寄せる。
そこで知り合った朝鮮人の女性・香里と恋仲になるが不幸な出来事に
より亡くなってしまう。
清作の生き様が凄い。
色々な困難から逃れ、生き延びたから、喜美代と出会い、あさひが
やがて生まれることになる。
生き延びることを優先した清作の13歳の決断は間違っていなかった!
良い物語だったな~
★★★★★
発行年月:2009年7月
大学卒業後に務めた出版社を退社後、埼玉の食肉会社に入社した著者は、翌日から牛豚の解体を生業に働きはじめる。入社初日から「ここはお前なんかの来るところじゃねえっ!」と怒鳴られたものの、しだいにナイフ捌きをおぼえ、牛の皮剥きに熟達していく。牛を屠る喜びと、屠りの技術を後輩に伝えるまでの屠場での十年の日々。 「職業を選ぶ」「働き続ける」とは、自分の人生にとってどういうことなのか――。 屠畜解体従事者への世間の恥知らずな差別と偏見はあろうと「牛を屠る」仕事は続けるに値する仕事だー―。これから世の中に出て行こうとする若い人たちに向けて、著者最初の小説作品である『生活の設計』以来、一度も書かれなかった屠場仲間の生きざま、差別をめぐる闘い、両親・家族をめぐる葛藤をまじえて描く。芥川賞候補作家による渾身の書き下ろし。
(解放社出版HPより)
著者の書く物語が好きで幾つか読んでいますが、これは著者の体験談です。
経歴も今回初めて知り、その意外な経歴にビックリ!
北海道大学法学部卒なんですね~。
出版社に勤めたのに、社長と編集長と喧嘩して退職っていうのも凄いな。
いったいどんな喧嘩をしたのやら??
でも、今回の話は、その後務めた食肉会社の屠殺の現場。
面接で事務職の方での仕事を打診されたのにも関わらず、本人の意志で決めた職場。
そして、その現場で過酷な仕事を黙々とこなしていく著者。
なんて逞しい人なんだろう。
大きな牛を解体する仕事は、考えただけでも重労働。
現場の先輩たちが、すぐに辞めるだろうと予想したのもうなづける仕事内容。
失敗しながら、作業のコツを覚え、その仕事にやりがいを持って働く著者は恰好いい。
職業で人を差別する時代は今はないでしょうけれど、こういう話を読むと
どんな仕事も懸命に働く人は恰好いい。
そんな著者が小説家に転向していく理由は、不妊治療に臨む奥さんに対して自分の考えを伝えるためだったと言うのが、また感動。
本当に恰好いいなぁ~。
こんな逞しい精神と優しい心を持つ男性は、そうそう居ないでしょ!?
今まで著者の作品を好きで読んでいたけれど、これを読んだら著者自身が
好きになりました!
「ジャムの空壜」と「生活の設計」も読んでみたくなった!
★★★★★
発行年月:2014年6月
東日本大震災より1年。耐震基準が問題とされ、存続の危機にある児童養護施設・魴ぼう舎を守るため、仙台から陽介、青森から卓也が駆けつける。けれど、主宰の恵子おばさんは…。シリーズ第一部完結編。
(集英社HPより)
主人公の高見陽介は高校2年生。
札幌の児童養護施設「魴鮑舎」から出て仙台市の私立進学校に通う。
同じ施設で育った柴田卓也は青森の高校でバレーボールの選手として活躍している。
物語の始まりは卓也の試合観戦に訪れた陽介ら施設出身者が顔を合わせる場面。
このシリーズこれが4作目ですが、1作目しか読んでなかった^^;
なので、名前が出て来ても???という感じでしたが、すぐに彼らの個性を
把握して物語を楽しめました♪
児童施設に入った経緯はいろいろ。
幼いながらに辛いことを体験した彼らだけど、仲間っていいな~と
思わせてくれる彼らの会話の場面。
今回は「魴鮑舎」存続の危機が中盤からのテーマかな?
3.11が起きて、耐震基準を満たしてないと診断された施設は、基準を満たされない場合は軽鎖されるという市の方針決定。
改築工事に2千万円の費用がかかる。
恵子おばさんは、施設を閉鎖することに決めたというが、納得出来ない、陽介たち。
どうなる??と心配しましたが、丸く納まった??
一応、存続させていく方向に決まったようだけれど、現実的に考えて
かかる費用はどう集めるのやら??
まあ、その辺は深く考えずともいいか?^^;
でも何気に、登場人物たちの学歴結構高そう。
施設に入る前の環境も皆、結構、親が高学歴っぽいし、恵子おばちゃんだって北大医学部で学んでいたんだものね~。
陽介や卓也たちが、この先どんな風に大人になっていくのかも気になるので
第二部としての「おれたち・・・・」も期待したい。
★★★
周三は大手都銀で不良債権処理に追われる日々を送った。20年後、早期自主退職した周三は趣味の山登りを再開するつもりだった。だが、ある弁護士の恩義に報いるため、母子家庭支援のNPOバンク設立に向けて奔走することになる。任務に充足感を憶え始めた矢先、周三を襲ったのは…? 社会で働くことの意義を見つめる傑作長編!
(双葉社HPより)
一流大学を出て、名も知れた銀行に勤め20年で自主退職した主人公・大鉢周三。
なんでまた!?と思ったけれど・・・・
過去に遡っての話では、いろいろ抱えていたものがあったんだと分かった。
親子関係が特殊。
母親は有名人で結婚しないで、出産した。
父親が誰だか知らされず、祖父母の家で暮らしていた時期が長かった。
周三は母親の考え方が理解できず、憎しみさえ感じていた。
母親との関係のほかには、大学時代の山岳部OBの先輩の死など、周三の胸のうちに秘める重苦しい思いが物語のなかにちらほら。
退職後は山登りをしようとしていたが、ひょんなことから新しい仕事をすることになっていく。
そして、そのことが周三を危険な目に遭遇させることになるのだけど・・・・
ずっと避けてきた母親が周三を救ったかたちになり、親の愛情を感じるラストは良かった。
今までの作品ほど、大きな感動は正直、なかったけど、まあまあ楽しめました。
30代後半の主婦ゆかりは、夫と小学生の長男と1歳半の長女とともに、穏やかで幸せな日々を過ごしていた。あの日、不意に運命が暗転するまでは。
生と死をしずかに見つめなおす傑作中篇4作品。
佐川光晴青春の原点ともいうべき、北大恵迪寮を舞台にした「二月」「八月」も収録。
(左右社HPより)
表題作を含む4つの短編集。
「静かな夜」
小学生3年生の息子を交通事故で亡くし、加害青年に判決が下された直後、夫も急死してしまい、幼い娘と2人の生活が始まった宮本ゆかり。
「崖の上」
中学で教師をしていたとき、職場の人間関係に疲れ、かつての優秀な教え子の突然の訃報と精神的に参ってしまい、うつ病を発症した津田五郎。
「二月」「八月」
北大2年のとき、留年が決定した長谷川和郎。
350名が暮らす学生寮の自治会執行委員長として大学当局との交渉に明け暮れた結果のこと。
授業料を稼ぐ為、与那国島のさとうきび農家に向かう。
その後、フリピィンへ。
4つの話(後ろ2つは同じ話だけど・・・)の主人公達の抱えるものは重たい。
特に最初と二番目の話は、本人たちに何ら落ち度はないのに、どうしようもない状況に置かされてしまう理不尽さに胸が痛くなる。
うしろ二つの話は、著者の学生時代のことが元になっているかんじ。
北大出身で在学中は物語の主人公のように寮生活をしていたらしい。
学生と言えど、寮と言うひとつの組織のなかでリ-ダ-的存在になってしまうと、こんな大変な思いもしなきゃならないのかな?なんてよくわからない世界の話なので、興味深かった。
いずれの主人公達も過酷な状況のなかで、ちょっとした気持ちに変化が置きて、前へ進もうとしているラストはホッと出来るものがあった。
しかし、精神的にかなり疲れました。
自分自身が落ち込んでいるときには、読めないかも・・・。
文章は読みやすく頁をめくる速度は落ちないんだけど・・・。
★★★
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;